2008/12/25

    Medicina 2003 Vo.40. No12. 増刊号コ ラム 「yell for you」

深夜にサンタ役としてプレゼントのセッティングをすませたところです。

ついでに皆さんにもプレゼント、ということでもないのですが......

帰国直後ぐらいに日本の研修医の皆さんと接したり、ほかの指導医の教え方を間接的に聞いて、当時感じたことを文章にする機会を頂いたのでエッセイにしたものがあります。

もう時効と思いますのでアップしました。

無駄のない研修 – column “Yell for you” 特集「臨床研修 コアスキル」Medicina. 2003 増刊号; 40(12): 29

Evidence, Style, Community Standard – column “Yell for you” 特集「臨床研修 コアスキル」Medicina. 2003 増刊号; 40(12): 53


「無駄のない研修」

日本での期間も米国滞在中のそれを超えつつありますし、日本の方が良い所もいっぱいありますが、一般に米国の医学生、レジデントは研修といったことをかなりドライにとらえており、優秀な医師になるために通らないといけない通過儀礼、だからさっさと割り切ってsu*k up(あえてこの言葉の由来は書きません。靴をなめる、という表現と同じような意味です。)やるべきことをして早くアテンティングになってしまおう。といった雰囲気です。


あまり学習者としての権利意識、とかはなかったです。それだけ精神的に成熟しているのか。言っても無駄、とあきらめているのか。はたまた、権利そのものが既に保証されるほど制度が整備されているから、権利を勝ち取る必要がないのか。(そうは思いませんが)

下積み期間はさけては通れないもの、理不尽はつきもの、ある程度のインプットなしにアウトプットは生じない、と思うのですが.......

権利と自由は義務と責任と抱き合わせ。権利と自由を得るには義務と責任を果たす必要がある。義務と責任を果たすから権利と自由が生じる。片方だけということはあり得ない。と思っています。だけどいかに権利と自由だけを主張する人の多いことか.....

「Evidence, Style, Community Standard」
現在多くの特に教育施設ではEBMが普通に語られるようになりましたが、EBMでない場合の診療をどう取り扱うか、についてはあまりスタンスを持たない指導医も多いですし、EBMでなければ医療でない、という考えもよくないと思っています。5年も前に書きましたが、今の気持ちと照らし合わせても全く変更点はありません。当時その普遍性をうまく抽出できたからなのか、5年間日本は進歩しなかったからなのか...


Medicina 2003 Vo.40. No42. 増刊号 コラム yell for you





P.S. こんなニュース。生き延びたからよしとするか、最後のfutile careなのか....大変便利なのでなくなってほしくないのですが。なんとか維持できる収益の仕組みを作ってほしいです。個人的には年会費払ってもいいです。

Scribd、$9M調達に成功―これでオンラインPDFの共有サービスが延命

2008/12/18

    日本家庭医療学会認定家庭医療専門医試験要綱および提出書類

本日学会HPに掲載されました.

学会認定研修プログラムの認定について

学会の理事の皆さんが全力でがんばっておられます.

ポートフォリオの提出項目については非常に妥当だと思いました.(しかるべく方が作っているので当然ですが~)

2008/12/17

    家族(代理決定人)は望み薄の予後告知を希望するか

昨日レジデントと食事に行って,脳梗塞後の麻痺がほぼ固定したと思われる人にその後の回復の見込みを伝えるかという話になりました.

そこで出た話でやっぱりあんまり厳しい話はいえないよね~みたいな結論でしたが,今朝タイムリーにわたしの情報源に流れていました.

abstractまでのレビューです

Latifat Apatira et al. Hope, Truth, and Preparing for Death: Perspectives of Surrogate Decision Makers. Ann Int Med.149(12), 2008, pp. 861-868


93%の代理決定人が,たとえ望みを絶ちきられるとしても予後の見込みについて伝えないのはunacceptable(ありえない)と考えている.

あくまで,米国,人工呼吸器につながれて5日目という条件ですが.

理由はやはり
感情的にも,物理的にも準備がいるから
患者のサポートを適切にやりたい
嘘の希望を伝えることのモラルの問題
医者からはあくまで真実(科学的データ?)だけがほしい,希望は別のところから見つける.

ということのようです.

(6 of 179) 5.6%は患者への心理的ダメージが大きいから伝えるべきではないと考えていた.

TPOV (teaching point of view)

米国でも20人に1人は否定的に考える.ー>一方的に伝えることもよくないー>やはり事前指示(絶望的な状況でも予後を知りたいか)を健康なとき,比較的状態のよいときに聞いておくこと

日本ではどうか? よい研究テーマ

Background: Although many physicians worry that openly discussing a poor prognosis will cause patients and families to lose hope, surrogate decision makers' perspectives on this topic are largely unknown.

Objective: To determine surrogate decision makers' attitudes toward balancing hope and telling the truth when discussing prognosis.

Design: Prospective, mixed-methods cohort study.

Setting: 4 intensive care units at the University of California, San Francisco, Medical Center, San Francisco, California.

Participants: 179 surrogate decision makers for incapacitated patients at high risk for death.

Measurements: One-on-one, semistructured interviews with surrogates were conducted on the patients' 5th day of receiving mechanical ventilation. Constant comparative methods were used to inductively develop a framework to describe participants' responses. Validation methods included multidisciplinary analysis and member checking.

Results: Overall, 93% (166 of 179) of surrogates felt that avoiding discussions about prognosis is an unacceptable way to maintain hope. The main explanatory theme was that timely discussion of prognosis is essential to allow family members to prepare emotionally and logistically for the possibility of a patient's death. Other themes that emerged included surrogates' belief that an accurate understanding of a patient's prognosis allows them to better support the patient and each other, a moral aversion to the idea of false hope, the perception that physicians have an obligation to discuss prognosis, and the notion that some surrogates look to physicians primarily for truth and seek hope elsewhere. A few surrogates (6 of 179) felt that physicians should withhold prognostic information because of a belief that discussing death could be emotionally damaging to the family or could negatively affect the patient's health.

Limitation: The authors did not longitudinally assess whether early disclosure about prognosis predicts fewer adverse bereavement outcomes.

Conclusion: Most surrogates of critically ill patients do not view withholding prognostic information as an acceptable way to maintain hope, largely because timely discussions about prognosis help families begin to prepare emotionally, existentially, and practically for the possibility that a patient will die.



レビューから


Patients' Surrogates Want to Discuss Prognosis, Even at the Risk of Extinguishing Hope


Surrogates of incapacitated patients at high risk for death want to talk about prognosis, according to a study in Annals of Internal Medicine.


A researcher interviewed some 180 surrogate decision makers of high-risk intensive care patients who were on mechanical ventilation. Surrogates were asked: "Do you think physicians should avoid discussing prognosis in order to maintain hope?" Almost 95% felt that avoiding such discussions in order to preserve hope was unacceptable.


Many felt that discussions about prognosis would allow them the time to prepare emotionally for the patient's death. Another advantage, according to the surrogates, was in planning, such as making funeral arrangements and having the time to notify relatives and friends in advance of the patient's death.


Only about 3% of surrogates favored withholding information to avoid emotional damage to the family.

2008/12/03

    JIM 特集 医師のためのビジネス・スキル

今月号のJIMです.

表題の通り特集は「医師のためのビジネス・スキル」
です.

この号は私の運営するHANDS-FDFと深い関係があります.

特集として14のアーティクルが載せられていますが,そのうちHANDSの修了生が5名,Pre-HANDS(HANDS開始の2005年より前に,pilotとして参加した人)が3名,HANDS advisory boardが1名とdirectorの私1名を加えてなんと10名がHANDS関係者です.勿論,この10名の執筆内容はHANDSで取り上げる項目,内容もほぼそれらに,ここの執筆者の個人的なアレンジを加えたもので,いわばHANDSのshowcaseの様な感じです.
いつぞやはHANDSの教科書を,と考えて,行動が伴わない私としては,この様な締め切りをもらうことで,HANDSの教科書の試作編を作るチャンスをもらったような気分であり,また,自分が成長のお手伝いをさせていただいた皆さんの成長の証であり,また彼(女)らからの贈り物です.よい冥土のみやげになりました..

執筆者を選んだのは私ではなく,編集委員の先生.こちらからお願いしたお手盛りではなく、本当に予期していなかった所で、この様な機会を頂き、大変うれしく思いました。ありがとうございました.

ビジネス・スキル,と書いてありますが,私の書いた,タイトル・アーティクル,

医師のためのビジネス・スキルをどう学ぶか faculty developmentの視点から


では,
他者と仕事をする上で必ず必要な基本的な能力

と位置づけています.

勝間和代氏のいうOSとアプリケーション「OS」に当たります.勿論医学や,それぞれの専門分野のスキルが「アプリケーション」

どれだけアプリケーションがすごくても,OSが貧弱だと何度もフリーズを起こしたり,大変遅かったり,そもそもインストールできない場合もあると思います.ですから本当はこういったビジネススキルを学んでから医療を学ぶというのがよいかもしれません.ただ,社会に出て初めてその重要性を学ぶことも多いので,やはり,医師としてようやく独り立ちを始める卒後5年目ぐらいからこういったことを学ぶことで,非常に幅と深みのある医師になることができると考えてHANDSを運営しています.

P.S. 当初「HANDS-FDF」と検索したら,最初に「もしかしたら,HANDS-pdf?」とgoogleに聞き返されていましたが,いつの間にかそういうことがなくなっていました.

2008/12/02

    早食い,腹一杯食いは肥満と関係あるか?

日本ではよく言われますね.それは本当か?そんなところから臨床研究は始まります.
以下は,そんな日本人ならではの研究です.(海外では既に研究があるようです)

Maruyama K et al. The joint impact on being overweight of self reported behaviours of eating quickly and eating until full: cross sectional survey.
BMJ. 2008 Oct 21;337:
Comment in: BMJ. 2008;337:a1926.


全文はこちら(pdf)

critical appraisalは何となくしかやっていません.(まあ,良さそうです)


対象:日本の法律で対象となる心血管リスク調査に参加した4140名の成人(30-69才)
過去1ヶ月の食習慣についてのアンケート 
除外:心血管疾患のある人,4000kcal以上や,500kcal未満の食事の人
肥満を BMI25以上と定義

質問の仕方
お腹一杯まで食べるかどうか :はい・いいえ
食べるスピード: とてもゆっくり,ゆっくり,ふつう,はやい,とてもはやい  の5段階
両方とも既に評価された(validated)質問紙を使用 (本人の自己申告のスピードは,友達による評価と相関するそうです)
スピードのとても速い,早いを1つのグループに(早食いグループ),残り3つを1つのグループに(荘でないグループ)
早食いかそうでないか,腹一杯食べるかそうでないかで2x2の4種類の集団に分けて分析

結果
回答率 88%
以下 男女の順で

男性
全体の平均のBMI 25
平均カロリー摂取 2236
喫煙率 47.4%

女性
全体の平均のBMI 22.8
平均カロリー摂取 1773
喫煙率 10.0%

肥満の有病率    33.8% 21.8%
腹一杯まで食べる人 50.9% 58.4% (女性の方が多い!)
早食い       45.6% 36.3%

腹一杯食べることの肥満へのリスク 2.00(95%CI 1.53 to 0.62)   1.92 (1.53 to 2.40)
早く食べることの肥満へのリスク  1.84 (1.42 to 2.38)      2.09(1.69 to 2.59)

どちらの習慣もない人たちに比べて,両方の習慣(早食い+腹一杯)のひとの肥満であるリスク
                 3.13 (2.20 to 4.45)     3.21 (2.41 to 4.29)

早食い+腹一杯グループがもっとも平均身長,体重,BMI,摂取カロリーが多かった
両方の習慣が存在する場合に加算的ではなく,それ以上のリスク増加.

コメント:あくまで相関(association)を示した論文なので,そういう食習慣の人が太るのか,太るとそういう食習慣になるかは不明.ただ,おおざっぱに片方の食習慣で2倍,両方で3倍というのは患者さんには説明しやすい.


以下abstract

Published 21 October 2008, doi:10.1136/bmj.a2002
Cite this as: BMJ 2008;337:a2002

Research

The joint impact on being overweight of self reported behaviours of eating quickly and eating until full: cross sectional survey

Koutatsu Maruyama, graduate student1,2, Shinichi Sato, director2,3, Tetsuya Ohira, associate professor1,2, Kenji Maeda, chief physician2, Hiroyuki Noda, research fellow1,4, Yoshimi Kubota, graduate student1,2, Setsuko Nishimura, dietitian2, Akihiko Kitamura, director2, Masahiko Kiyama, director2, Takeo Okada, director2, Hironori Imano, chief physician2, Masakazu Nakamura, director2, Yoshinori Ishikawa, deputy president2, Michinori Kurokawa, dietitian5, Satoshi Sasaki, professor6, Hiroyasu Iso, professor1
1 Department of Social and Environmental Medicine, Graduate School of Medicine, Osaka University, Yamadaoka, 2-2 Suita-shi, Osaka, Japan 565-0871, 2 Osaka Medical Center for Health Science and Promotion, Osaka, Japan, 3 Chiba Prefectural Institute of Public Health, Chiba-City, Japan, 4 Harvard Center for Population and Development Studies, Harvard University, MA, USA, 5 Division of Health and Welfare, Osaka Prefecture, Japan, 6 Department of Social and Preventive Epidemiology, School of Public Health, University of Tokyo, Japan
Correspondence to: H Iso fvgh5640@mb.infoweb.ne.jp

Objective: To examine whether eating until full or eating quickly or combinations of these eating behaviours are associated with being overweight.

Design and participants: Cross sectional survey.

Setting: Two communities in Japan.

Participants: 3287 adults (1122 men, 2165 women) aged 30-69 who participated in surveys on cardiovascular risk from 2003 to 2006.

Main outcome measures: Body mass index (overweight 25.0) and the dietary habits of eating until full (lifestyle questionnaire) and speed of eating (validated brief self administered questionnaire).

Results: 571 (50.9%) men and 1265 (58.4%) women self reported eating until full, and 523 (45.6%) men and 785 (36.3%) women self reported eating quickly. For both sexes the highest age adjusted mean values for height, weight, body mass index, and total energy intake were in the eating until full and eating quickly group compared with the not eating until full and not eating quickly group. The multivariable adjusted odds ratio of being overweight for eating until full was 2.00 (95% confidence interval 1.53 to 2.62) for men and 1.92 (1.53 to 2.40) for women and for eating quickly was 1.84 (1.42 to 2.38) for men and 2.09 (1.69 to 2.59) for women. The multivariable odds ratio of being overweight with both eating behaviours compared with neither was 3.13 (2.20 to 4.45) for men and 3.21 (2.41 to 4.29) for women.

Conclusion: Eating until full and eating quickly are associated with being overweight in Japanese men and women, and these eating behaviours combined may have a substantial impact on being overweight.

© 2008 BMJ Publishing Group Ltd.

2008/12/01

    第4回 若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー概要決定

表題の件につき,概要が告知されています.


若手家庭医の組織運営~リーダーシップとフォローワーシップ~
 講師:岡田唯男

HANDSの修了生 菅野哲也,千葉大 両氏とコラボレーションの予定です.

2008/11/25

    Google RSS reader 自動翻訳

またgoogleの話になってしまうが.
RSS リーダーで医学情報のwatchをやっているけれど「やっぱり英語では朝のコーヒー飲みながら,というわけにはいかない」という人に.

Googleリーダーに自動翻訳機能が追加、海外RSSを日本語で読める

Google Readerに自動翻訳機能,英語や中国語のRSSフィードを日本語で閲覧可能に

是非おためしアレ

僕は全部は必要ないけれど,英語のせいで読むのを後回しにしている長い長いblogだけ自動翻訳にしました.

2008/11/14

    「肺年齢」で禁煙率2倍

知っていますか「肺年齢」

肺年齢そのものの概念は1985年に提唱されていたらしい.
最近注目度が上がって生きている印象です.「1秒量(FEV1)」と「努力肺活量(FVC)」の数値があれば計算が出来ます.

ここ.

何故,僕が注目するようになったか.肺年齢を知らせるだけで禁煙率が倍になるからです.


Parkes G, Greenhalgh T, Griffin M, Dent R. Effect on smoking quit rate of telling patients their lung age: the Step2quit randomised controlled trial. BMJ. 2008 Mar 15;336(7644):598-600.

OBJECTIVE: To evaluate the impact of telling patients their estimated spirometric lung age as an incentive to quit smoking. DESIGN: Randomised controlled trial. SETTING: Five general practices in Hertfordshire, England. PARTICIPANTS: 561 current smokers aged over 35. INTERVENTION: All participants were offered spirometric assessment of lung function. Participants in intervention group received their results in terms of "lung age" (the age of the average healthy individual who would perform similar to them on spirometry). Those in the control group received a raw figure for forced expiratory volume at one second (FEV1). Both groups were advised to quit and offered referral to local NHS smoking cessation services. MAIN OUTCOME MEASURES: The primary outcome measure was verified cessation of smoking by salivary cotinine testing 12 months after recruitment. Secondary outcomes were reported changes in daily consumption of cigarettes and identification of new diagnoses of chronic obstructive lung disease. RESULTS: Follow-up was 89%. Independently verified quit rates at 12 months in the intervention and control groups, respectively, were 13.6% and 6.4% (difference 7.2%, P=0.005, 95% confidence interval 2.2% to 12.1%; number needed to treat 14). People with worse spirometric lung age were no more likely to have quit than those with normal lung age in either group. Cost per successful quitter was estimated at 280 pounds sterling (366 euros, $556). A new diagnosis of obstructive lung disease was made in 17% in the intervention group and 14% in the control group; a total of 16% (89/561) of participants. CONCLUSION: Telling smokers their lung age significantly improves the likelihood of them quitting smoking, but the mechanism by which this intervention achieves its effect is unclear. TRIAL REGISTRATION: National Research Register N0096173751.


こちらで要点をまとめてくれているのでそこから抜粋.

英国の5つのGPの診療所でリクルートした35歳以上の喫煙者561名
全員に呼吸機能検査を実施,
ランダム化して,片方にはFEV1(1秒量)の生の数字(対照群)を,一方にはそこから計算される「肺年齢」を告げ(介入群),療法共に禁煙外来を紹介.
プライマリアウトカム:1年後の禁煙率測定(唾液のコチニン濃度で確認)
2次アウトカム:報告による喫煙量.新たなCOPDの診断


結果
1年後の禁煙率 13.6% (介入群)vs 6.4% (difference 7.2%, P=0.005, 95% confidence interval 2.2% to 12.1%; number needed to treat 14)
新たなCOPDの診断  17%(介入群) vs 14%

肺年齢が酷い方が止める確率が高いが,肺年齢に以上がない人達に限っても,肺年齢を告げられた方が止める率が高い

1名の禁煙成功者に約 366 euros, $556 

補足 
ベースラインデータ
平均1秒量率 FEV1%=74%
殆どは禁煙に関して準備期になかった
肺機能異常者の割合 23.5% vs 26.8% (介入群)

-------------------------
TPOV(teaching point of view/take home message)
肺年齢を追加するだけで禁煙率が上がる
それでも禁煙の成功率は14%程度
新たなCOPDの診断が1年で10%台

補足:研究者の一人Greenhalgh Tは英国では超高名な家庭医.さすがの研究内容だと思います.

肺年齢のサイトは有用なブックマーク集>「予防,健康維持」>「リスク計算」に入れてあります.

2008/11/13

    インフルエンザ流行のサーベイランスシステム(Google flu trends)

またしてもGoogle.すごいというか,アイデアがすごい.

11/11日発表.


Explore flu trends across the U.S.

流行予測ではなく,実際の流行状況をいち早く集約するシステム.従来のCDCのシステムより2週間早く情報が得られるとのこと.

別にgoogleが感染症事業に乗り出したわけではなく,あくまでgoogleは検索という横軸で全ての物事を考える.これまでの医療からのアイデアは定点観測や実際の届け出症例数などから流行を把握するのだが,全く違う視点から,その時期にどれだけのインフルエンザに関しての検索がなされるかを追いかけることで,流行を把握するということ.

仕組みは,

How does this work?

に.

検索する人が必ずしもインフルエンザとは限らない,という反論は当然織り込み済みで,それでも,一定の検索内容(ここのレシピは企業秘密のようだが,単なる「インフルエンザ」の検索ではなく,「流行」「治療」など何らかの組み合わせの検索の頻度を見るのだろう.単に「these search queries」としかか表現されていない)からその地域ごとのトレンドを見るとCDCの従来の報告とマッチするとのこと.

Of course, not every person who searches for "flu" is actually sick, but a pattern emerges when all the flu-related search queries from each state and region are added together. We compared our query counts with data from a surveillance system managed by the U.S. Centers for Disease Control and Prevention (CDC) and discovered that some search queries tend to be popular exactly when flu season is happening. By counting how often we see these search queries, we can estimate how much flu is circulating in various regions of the United States.


実際に上記のリンクでの過去のCDCとのデータとのマッチ(実際の%には少しずれがあるが,流行の立ち上がり時期,終息時期などは良くマッチしている)しているグラフが過去5年にわたって示され,この方法論はNatureにもacceptされた,とのこと.(方法論をもっと詳しく知りたい人は論文の下書きを見ることが出来ます)CDCの報告は実際の流行から1-2週遅れるが,googleはほぼリアルタイムとのこと.

なんと言ってもこのアイデアがすごいと思います.

注意点としては

このサービスが公開になったのはつい先日なので,今年のシーズンで一致するかどうか,最初の検証(validation phase).
州毎の流行データはこれまでCDCでは公表されていなかったようで,google flu trendsがこれから実施する州毎の流行報告は検証する対照がない(gold standard)
ILI%と形で報告される(医師への総受診数におけるInfluenza like illnessの割合)ので,実際のinfluenzaがどのぐらいかは分からない.

といったあたりでしょうか

コンセプトは流用できるので日本でも是非やっていただきたいところです.(但し日本人の検索行動が米国人と同じかは検証が必要)

また 生データをCSVファイルにてダウンロードも出来るので2次研究にも使えます(open source)

前書きのところで少し触れられていますが,花粉症トレンドや日焼けトレンドなどにも応用されることになるのでしょうか.

知恵とテクノロジーは人のしあわせのために..

2008/11/04

    第4回日本プライマリ・ケア学会秋季実践セミナー

表題のセミナーに講師として参加.

何と3時間のワークショップを2つも依頼されておりました.6時間です.あんまりプレッシャーではなくなったのは,麻痺したからか,慣れたからか.とびとびにしても計9日間のコースデザインと実施をしたり,16時間のコースをデザインしたりという経験,果ては後期研修医を育てる3年間のコースデザインももう5年以上やっているわけですから.
教育をやっている人は,よく分かっていることですが,実は与えられた時間が短いほうが,準備する方は大変なのです.

与えられた時間が短いほど準備には時間をかけよ.


は岡田の教育ルールの一つ.

まあ,1人でやらなくなったから,任せられる人がたくさんいるからそれほどプレッシャーでないという部分が大きいのでしょう.

第4回日本プライマリ・ケア学会秋季実践セミナー
東京都医師会館


講師名は敬称略

11月2日(日) 
ワークショップ8 「診療の質向上」 講師:岡田唯男、田頭弘子
11月3日(月・祝)
ワークショップ12 「産婦人科診療」 講師:岡田唯男、鈴木真

この数年間の自分のテーマはコラボレーション.1+1をどうやったら3や10に出来るか,ということ.
相手には迷惑をかけるけれど意図的に他分野も含め,いろいろな人と一緒に仕事が出来る機会を作っている.


ワークショップ8 「診療の質向上」 昨年初めてやったWSの反省をふまえてのバージョンアップ.英国で医療マネジメントを学んだ友人とのWS.50名の定員がほぼ満員.去年よりも参加者の問題意識も高く,ワークもポイントを突いている.
久しぶりに会う友人との仕事は,最後にあってからその人がどんなことを学び,どんなことを考えて来たのかを知る貴重な時間.そして,友人から教わるまなびの時間.

来年へむけてファシリテータをもうひとりぐらい欲しいという,担当の委員の先生からのリクエスト.
それ以外は概ね良かったと思います.
前半の講義の時間をいかに短くするかが課題.
そこで紹介した本.病院の例ですが,QI:Quality Indicatorの例がたくさん挙げてあります.



ワークショップ12 「産婦人科診療」 講師:岡田唯男、鈴木真

いやあ,コレは緊張しました.ふだんから連携をしている後方病院の周産期センター長とのコラボ.
プライマリケア学会がテーマとしてこのタイトルを挙げてくれたことは大変意味のあることと思っています.
参加者は20名弱でしたが,きめの細かい3時間,あっという間の3時間でした.
準備の段階で鈴木先生と相談,産婦人科医としては非産婦人科医にとって,どのような産婦人科診療のニーズがあるかはサッパリ分からない.これは,私のような女性,妊婦のケアを普通にやっている家庭医にとっても同じ.
こういった非産婦人科医向けの産婦人科領域のセッションはあまりなかったので,まず,ニーズ調査をしましょう,ということで,最初にみなさんから,不断困っていることを出して貰い,投票により優先順位付け,時間いっぱいまで順番に潰していく,という方法を採りました.
一番はやはり妊娠,授乳と薬.一般論のお話,参考にすべきサイト,本の紹介から,結局喘息だの何だのと疾患各論にまで渡ったので,それぞれの妊娠との関連を話したため,このトピックだけで1時間は費やしたのではないでしょうか.全てではないですが紹介した本を挙げておきます.







あとは,更年期,偶然子宮筋腫を見つけたら,血圧の管理などなど,私が思っている以上にやはり,かかりつけの医師は領域を問わない相談を受けるのだと再認識しました.私からは葉酸,ワクチン,母乳サポートなどの話をしました.

次回またあるとすると,少し今度はテーマを絞ってやるという事でしょうか.「妊娠と薬」「更年期」など.

何がうれしいって,家庭医と産婦人科医が一緒になって講師をする.一緒になってお互い出来ることは支え合っていきましょう,というメッセージが伝えられる.その先駆的なロールモデルとなれることでしょうか.

まだ領域審判と考える人も多いですが,そもそも体を部分に分けることは不可能なこと.ワンストップ(プライマリケア)で全て用が足りるならそれほど患者さんにとって都合の良いことはない.
大事なのは質の妥協をしないこと.

今週末は家庭医療学会のセミナー講師.またコラボです.今度はビジネス理論.
減らすつもりが今年も結局23件の講演,講師,座長など.

なぜか懲りませんね.やっぱり好きなんでしょうね,この仕事.

2008/10/28

    平成20年度 第2回 家庭医療後期研修プログラム指導医養成のためのワークショップ 参考図書

表題のWSの資料を upしましたのでリンクを貼り付けておきます.(10/28/2008)

scribd

以下10/26/2008エントリー分

本日行なわれました平成20年度 第2回 家庭医療後期研修プログラム指導医養成のためのワークショップ での私のセッション、

WS 「働き続けたくなる職場づくり」
医師の継続的な勤務をどう維持するか
モチーベーション・マネジメントを中心に


を組み立てる際に参考にした本を挙げておきます

参考図書

人をあきらめない組織―育てる仕組みと育つ現場のつくり方
インスティテュート / 日本能率協会マネジメントセンター ( 2007-03 ) /アマゾンおすすめ度









ご参考まで

2008/10/27

    医療経営最新ニュース

東日本税理士法人の公認会計士,長 英一郎氏のブログ,「医療経営最新ニュース」で,最近の執筆(「病院」誌 Integrated Healthcare Networkにおける家庭医療クリニックの貢献とこれからの課題)についての感想を頂きました.

2008年10月24日 病院と家庭医療

別に長氏にお願いしたわけでも,執筆を紹介したわけでもないのでやらせではありません.
紙面で私が伝えたかったことのエッセンスを抜粋して引用の上、的確なコメントを頂きました.

長様大変有り難うございました.





 

2008/10/22

    日本家庭医療学会認定 家庭医療専門医試験について

本日付の学会のHP公表より

日本家庭医療学会認定 家庭医療専門医試験について
学会認定後期研修プログラムのプログラム責任者および第1期研修医の皆様へ


一部抜粋

試験の日時は、平成21年7月19日・20日(予定)、場所は東京の慈恵会医科大学の予定です。評価の方法は、今後3学会にて企画されますが、現段階では、現在、日本プライマリ・ケア学会が行っているModified Essay Questionによるペーパー試験とObjective Structured Clinical Examination(OSCE)による実技試験の2つによって行われる予定です。さらに、日本家庭医療学会では、事前に家庭医療に関する数件のポートフォリオを提出していただき、これによっても評価をする予定です。ポートフォリオの書式などは、理事会にて合意が得られ次第、ホームページからダウンロードできるようにする予定です。これらの評価にて、基準以上の成績を収められた研修医には、日本家庭医療学会認定・家庭医療専門医の認定をさせていただきます


なお、再来年の関連3学会の合併によって内容に多少の変更がある可能性がありますが、その認定は3学会の合併後も認められる予定です。



皆様準備の期間は十分あります.

2008/10/21

    水痘の子が来て妊婦検診

風が吹けば桶屋が儲かる的かもしれない.

先日,普段は慢性疾患で通院中の7才の子が予約外で来院.予診票に「発疹」と.予診にいったスタッフが「水痘です」と.piece of cake.

診察しても,まったくその通り.

治療方針,予後の展望,登校基準などお話しして,一般の小児を診る医師はここで恐らく終わり.

第1段階(comprehensive care/immunization)

予防接種の記録を確認.ムンプスまだでしたね.ムンプスは案内が来ないけど是非うっといてくださいね.

第2段階(postexposure prophylaxis)

家族に兄弟,小さなお子さん,水痘まだの可能性の人はいませんか?

なぜこの質問をするか・postexposure prophylaxisがある程度有効だからだ.自費だけど.

するとつれてきたお母さん(38才)が
「私多分まだかもしれません」

緊急予防接種のお話し.100%予防するわけではないので,費用と天秤にかけて.2週間(潜伏期)のあと発疹が出てきたらすぐ来て,治療する方法もあります(成人は重症化するので).でも女性なので跡が残るかも.今日打たない場合は,2週間しても発疹が出なければそこで予防接種を.

でも妊娠の可能性は大丈夫?

「そろそろ2人目をと思っているので.なかなかできないんですけど」

第3段階(妊娠のアドバイス)
妊娠するタイミングは知っていますか?

「xx日周期で...」
最近手に入れたiPod Touch(第2世代)に入れてある,Menstrual Calendar
を取り出して,最終月経を聞いて,
今月はxxにちからxx日まで.来月は...と説明.その期間は1日おきにトライを.

第4段階(preconceptional care)
ところで「葉酸」って聞いたことありますか?

妊娠を考えているなら,と一通りの説明.後でパンフレット持ってこさせます.

第5段階(full basket of service)
よろしければうちでも妊婦検診やってますので,妊娠したらうちで診させてください.

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結局緊急予防接種をやることになり,妊娠は少し先延ばしにして頂くことになったが,恐らく,感染症診療に精通した医師で第2段階まで,女性の診療に精通した医師で(勿論子どもも診る医師で)第3と第4段階まで,自分自身で妊婦検診を実施している医師で第5段階まで行けるのだろう.

主訴だけに対応するreactiveな医療ではなく,proactiveな医療を.というのはもうずいぶん言われているが,本当に幅広い視点と知識がないと(あとは時間も必要),水痘の子どもが来て妊婦検診を勧めるという事にはならないと思う.


case gradually unfolds....(よく使われる表現)


表面的な主訴と違うところに沢山の介入の余地があったり,本当の受診理由,患者さんの深い悩みがあったり,最初にこうだろう,と考えたことと,終わりの形が違う.この不確実性が魅力とやりがい.

これだから家庭医の仕事は辞められない.

2008/10/20

    末梢循環障害の診察所見の意義

McGeeの第2版より(Chapter 50)まとめ



以下の議論は基本的に「有症状時」のこと 症状のない患者のスクリーニングとしては適用されない.


1.最も診断価値の高いもの (gold standardのABI<0.8-0.97に対して)

後脛骨動脈と足背動脈の両方の脈拍を触れない  LR 14.9

何らかの四肢のbruit LR+ 7.3

足に傷や潰瘍の存在  LR+ 7.0

足の非対称性の冷感  LR+ 6.1

後脛骨動脈と足背動脈の両方もしくはどちらかの脈拍を触れる  LR 0.3

足の色,蒼白,皮膚の萎縮,足の体毛の消失,capillary rifill>5secなどは診断価値なし


2.障害の位置,分布の診断

部位は大きくaortoiliac,femopopliteal, peroneotibialの3つに分類される

有症状時 症状のある側の足において

大腿動脈の消失か大幅な減弱はaortoiliacの病変を示唆 (sens 39%, spec 99%, LR+ 31.0, LR- 0.6)

膝窩動脈pulseの存在(aortoiliacやfemopoplitealが大丈夫)かつ,bruitの存在は良い血管再建術の適応となる (sens 80%, spc 75%, LR+ 3.2 LR- 0.3)

Buerger`s test陽性は陰性例よりも重症を示唆 (安静時痛,壊疽,より低いABIの率が高い)

参考:成人においても未だにcapillary rifill timeが使用されるが,末梢血管障害においても,失血や脱水の評価においても成人では参考にならないというevidenceがある


最後の参考の所を知っただけでも十分

2008/10/13

    ムンプス(おたふくかぜ・流行性耳下腺炎)の隔離は5日でよい(か?)

表題の通り

出たばかりMMWRのweekly reportから.

Updated Recommendations for Isolation of Persons with Mumps
MMWR October 10, 2008 / 57(40);1103-1105


CDC:Center for Diese Control
AAP:American Academy of Pediatrics
HICPAC:Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee
の合同推奨.

まず結論.

耳下腺の腫脹から5日間の
1)地域,また医療機関内において隔離をする
2)標準的予防措置+飛沫感染予防措置

という変更が行われた.(これまでは9日だった.これでも日本より短い.)

その他の推奨は変更なし(以下の通り)
ムンプスの免疫の証明のない(*)医療従事者でムンプスの患者に接触した場合は最終の接触の日から数えて12日目から26日目まで勤務から外れること.

(*)免疫の証拠がないとは:医師によるムンプス罹患の診断歴,血清学的なムンプスへの免疫の証明,1957年以前の出生のどれか.

地域や医療従事者でのムンプスの予防についての最前の戦略は予防接種による,十分な集団免疫の獲得.
現在の推奨は
*全ての子どもに2回(12-15ヶ月と4-6才)
*全ての子ども,高校以降の集団(大学など),海外へ旅行するもの,医療従事者については免疫の証明がない限り2回の接種
*その他の成人は最低1回のMMRワクチン

その他の流行予防の対策としては
症例の隔離
免疫の証明のない医療従事者の暴露後の業務除外
標準的予防策+飛沫対策
(再掲)

耳下腺の腫脹から5日経った後も唾液や呼吸器分泌物からのウイルスの分離は見られるものの,頻繁に検出されるのは耳下腺腫脹前,腫脹発生時周辺であり,4日経過した後はその分離量も急速に低下する.
そのため,5日後の感染のリスクは低いと考えられ,殆どの感染は耳下腺の腫脹前,そして腫脹から5日以内に生じる.それ以上の隔離は,結局遵守されず(less compliance),それに伴う費用もかかる割に,感染の増大防止への貢献度は少ない.


詳細に興味ない人はここまで.

Based on this review, CDC, AAP, and HICPAC now recommend a 5-day period after onset of parotitis for 1) isolation of persons with mumps in either community or health-care settings and 2) use of standard precautions and droplet precautions. Postexposure recommendations remain unchanged. HCP with no evidence of mumps immunity who are exposed to patients with mumps should be excluded from duty from the 12th day after first exposure through the 26th day after last exposure.

The best strategy for preventing mumps in the community and among HCP is promoting high levels of immunity by vaccination. A 2-dose regimen is currently recommended for all children, with the first MMR vaccine dose administered at 12--15 months and the second at 4--6 years. Unless they have other evidence of mumps immunity,§ all school-aged children, students in post high school institutions (e.g., colleges), international travelers, and HCP also should receive 2 doses of MMR vaccine. Other adults should receive at least 1 dose of MMR vaccine.¶ Other methods for decreasing transmission in the community and health-care settings include 1) isolation of cases, 2) postexposure exclusion from duty of HCP without evidence of immunity, and 3) use of standard precautions (including respiratory hygiene and cough etiquette) and transmission-based droplet precautions while caring for patients with mumps.

§ 1) Documentation of physician-diagnosed mumps, 2) laboratory evidence of immunity (i.e., positive mumps immunoglobulin G), or 3) birth before 1957.


この変更は,AAPが2007年に行った変更に追従するもの(知らなかった...)

今回のレポートでの科学的根拠のまとめ


2006年の米国でのムンプス再興からわかったことは,大学などでは9日間の隔離の遵守度は65%程度(4-5日なら86%)
2007年に過去の文献の再検討により,AAPが外来における医療従事者の隔離の推奨を9日から5日へ短縮.

実際にウイルス分離の研究はワクチン導入前の7つほどしかない.継時的なウイルスの分離率は,(以下 耳下腺腫脹からの日数(腫脹前はマイナスで表示),ウイルスが検出された割合,ウイルス検出検体数/全体の検体数)

-6~7 17% (1/6)
-2~3 40% (4/10)
-1 86% (6/7)
0(発症日) 78% (7/9)
+1 81% (29/36)
+2~3 49% (18/37)
+4~5 40% (6/15)
+6~7 17% (1/6)

8番目の研究
MMR2回導入後の研究が1つ 2006年の大学でのアウトブレイク時のもの.PCRでウイルスを同定

0~+3 35% (7/20)
+4~+22 0%

9番目の研究 日本
数値の引用はされていないがpubMedまでさかのぼりました.

Okafuji T. et al. Rapid diagnostic method for detection of mumps virus genome by loop-mediated isothermal amplification.J Clin Microbiol. 2005 Apr;43(4):1625-31.

+2 90% 30/33
+4以降は減った,としかabstractには書いてありませんでした.その際にSVF(secondary vaccinne failure)の症例の方が同定量は少なかったとのことです.

Mumps virus was isolated in 30 of 33 samples within day 2, and mumps virus genome was amplified by LAMP in 32 of them. The quantity of virus titer was calculated by monitoring the time to reach the threshold of turbidity. The viral load decreased after day 3 and was lower in patients serologically diagnosed as having SVF with milder illness.


病院での医療従事者への感染については86-87年のテネシーでのアウトブレイク時にERでのものが報告されているが,医療従事者でのムンプスの症例の殆どが,ERにおいてではなく,地域で感染したと考えられている.
また適切な症例の隔離によっても感染が生じることより,耳下腺腫脹(診断確定)前に既にウイルスが放出されていることが他の研究結果を裏付けている.とされています.

さて,日本の学校保健法
学校保健法施行規則
(昭和三十三年六月十三日文部省令第十八号)
最終改正:平成二〇年五月一二日文部科学省令第一六号


第二章 伝染病の予防
一部省略


(伝染病の種類)
第十九条  学校において予防すべき伝染病の種類は、次のとおりとする。
二  第二種 インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H五N一)を除く。)、百日咳、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、咽頭結膜熱及び結核

(出席停止の期間の基準)
第二十条  令第五条第二項 の出席停止の期間の基準は、前条の伝染病の種類に従い、次のとおりとする。

二  第二種の伝染病(結核を除く。)にかかつた者については、次の期間。ただし、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めたときは、この限りでない。
ニ 流行性耳下腺炎にあつては、耳下腺の腫脹が消失するまで。


ミソは

ただし、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めたときは、この限りでない。


米国の推奨はMMR2回接種時代の推奨(ただし,研究の根拠となるデータの殆どはワクチン導入前)

ムンプスワクチンの接種率は定期接種でないため正確なものはないが,

勧奨接種移行後7年間の予防接種実施率の検討とムンプスの現状
(Vol.24 p 106-107)


の表1からは30%前後.米国ワクチン導入前に為された7つの研究の結果の法を適用してよさそう.

つまり,(以下再掲)

+4~5 40% (6/15)
+6~7 17% (1/6)


6日目以降も6人に一人がウイルスを排出(量は少ないかもしれないが)をどうとるか,ということ.

勿論ウイルスが1コピーでも見つかれば隔離というと,大変理不尽であるし,恐らく大事を取っても1週間,というところが妥当なのではないだろうか.

たかがムンプスという事なかれ.

「定点当り報告数」とは

正確な発生数は把握できないが,当院でも年に2-3回の地域での流行を見る.

上記リンクより
[流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)   2005年第7週の場合)]
2979件という数字がある(報告全数と思われる)

ここからはフェルミ推定(おおざっぱ推定)なのだが,
半分のお母さんがパートに出ているとして更にその半分が親戚などに預ける統べなく仕事を休みとすると
約25%の750件のお母さんがパートを休むことに.
時給1000円,4時間として 4000x750=300万円 (1日あたり)

この人達が10日間(実感として耳下腺腫脹が消失するまでだとそのぐらい)休むと,3000万円収入を生み出す(このお金が消費されて経済効果を生む)

これが,5日まででよい,となると1500万円分は一般家庭に落ちることになりずいぶんと経済効果は違う.

流行性の疾患なので厳密ではないが,上記が1週間あたりであるから,X50で1年分7億5千万円の経済効果..

ちゃんとした費用対効果の試算をするにはワクチンの費用や,ワクチンによる予防効果などもっとデータが必要なので,ここでとどめるが,30%の接種率では(しかも1回)普通の自然流行と変わらないのではないかと思う.

意外と現在の日本経済の低迷は政治家や銀行,証券パーソンだけのせいではないのでは...

2008/10/12

    日本家庭医療学会認定「家庭医療専門医」

夏期セミナーの際に行われた理事会の議事録より.(私ももはや理事ではないので議事録でしか知る方法がありません)

・名称は、日本家庭医療学会認定「家庭医療専門医」とすることが決まった。
・試験は、2009 年7 月19~20 日に慈恵医科大学にて実施予定であり、評価者としてできる
だけ全ての理事の参加が求められた。
・方向性としては、MEQ やOSCE のみならず、プログラムの項目に沿ったポートフォリオ
も含めて審査をするという形をとることとなった。


ということです.

特に来年春卒業の皆様.待ったなしです~

http://jafm.org/html/giji/gi080810.pdf

2008/10/11

    家庭医認定プログラムで研修中のレジデント

NPO日本家庭医療学会は一会員の声を大切にしてくれます.
各認定プログラムにどれくらいの登録研修医(後期.レジデント)がいるのか公開してください.というお願いを一会員として出しましたら,10/6に対応してくださいました.

学会認定家庭医療後期研修プログラム一覧

登録研修医数によるプログラムの数(9月10日現在)
0名 39プログラム
1名 17プログラム
2名 5プログラム
3名 4プログラム
4名 3プログラム
5名以上10名以下 3プログラム
10 名以上 10プログラム
合計 81プログラム

5-10のところ,10以上の所は正確な数が分からないが,それぞれ最低人数 (5人,10人)としても合計166名の登録後期研修医が研修していることになる.

ただし,毎年8000人の医学生が卒業するうちの3学年24000人に対しては,1%にも満たない.諸外国にはほど遠い.

でもここからがスタート.
学会認定のプログラムがあること,そこに所属し,研修を終える医師がいることの意義は恐らく多くの人(家庭医療業界にいる人も含め)が思っている以上にずっと大きい.

これまでは「家庭医」の定義がなかったために,「家庭医の質」に関しての議論,比較ができなかった.

反対する人がいたり,合意されるかどうかは別問題として,まったく恣意的ではあるが,これからは家庭医を「日本家庭医療学会の認定プログラムを修了した医師」と定義することができ,それに当てはまる当てはまらないが明確にできる.つまり比較調査,研究ができるということ.

これからは日本で生まれる家庭医の質が問われる.それだけに認定プログラムで研修をする医師の責任,そのプログラムを運営する側の責任は大きい.

しかし10名以上いるプログラム10個もあったかな~

2008/10/10

    パーキンソンの法則

医師ならよく知っているパーキンソン病とは何の関係もない

wikipediaより

パーキンソンの法則(Parkinson's law)とは、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」(第一法則)、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」(第二法則)というもの。以下、第一法則について述べる。

パーキンソンの法則は、英国の歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンが、その著作「パーキンソンの法則:進歩の追求」のなかで初めて提唱したものである。パーキンソンの法則は、英国の官僚制を幅広く観察した結果に基づくもので、たとえば、大英帝国が縮小していたにもかかわらず殖民地省の職員数は増加していたとパーキンソンは指摘している。

パーキンソンによれば、このような結果は、 (1)役人がライバルではなく部下が増えることを望むこと、(2) 役人は相互に仕事を作りあう、という2つの要因によってもたらされる。また、パーキンソンは、官僚制内部の総職員数は、なすべき仕事の量の増減に関係なく、毎年5~7%増加したとも指摘している。

パーキンソンの法則には、コンピュータに関するバリエーションもあり、それは「データ量は与えられた記憶装置のスペースを満たすまで膨張する」というものである。システムに組み込まれるメモリー容量の増加は、より多くのメモリーを必要とする技術の発展を促すのである。過去10年間の傾向として、システムのメモリー使用量はおおむね18ヶ月ごとに倍増している(ムーアの法則)。幸いなことに単価当りのメモリー量も12ヶ月ごとに倍増してきたが、この傾向には物理的な限界があり、永遠に続くことはない。

パーキンソンの法則は、より一般的に、「ある資源に対する需要は、その資源が入手可能な量まで膨張する」という形で述べることもできる。



「ある資源に対する需要は、その資源が入手可能な量まで膨張する」

病院の仕事が忙しいので医者の数を増やしたがちっとも楽にならない.
渋滞がひどいので道路を拡張したが,また渋滞がひどくなった.
生活がきついのでより収入の多い仕事に就いたが,相変わらず生活はきつい.(貯金ができない)

等いくらでも例は挙げられると思う.これはシステム理論でも説明できる.

ここから学べるのは単純に足りない資源を獲得するように奔走したところで,その資源はすぐにまた足りなくなる.必要なのは,その資源が枯渇する前に,その資源により依存しない仕組みを作ること.

こちらには第三法則も紹介されている.
パーキンソンの法則

「拡大は複雑化を意味し、組織を腐敗させる」(パーキンソンの第三法則)


TOC/CCPMの提唱者、エリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu M.Goldratt)は、著書「Critical Chain」(1997年)においてプロジェクト遅延メカニズムの1つとして、「パーキンソンの法則」を挙げている。これは、作業が早く終わっても次工程に回さない(与えられた作業時間は自分で消費する)、早期完了の未報告といった現象をいう。


出典については別の説も

パーキンソンの法則


シリル・ノースコート・パーキンソンが1955年にイギリスのエコノミスト誌に発表した記事に由来します。


同様のものに「容積満杯の法則」というのがあります.

転居者マーケティングと『容積満杯の法則』

狭いからといって広いところに引っ越すのに,そこがすぐに一杯になる.

私の場合「かばん」もそうです。
持ち運ぶ荷物がどんどん増えて、それに合わせて、かばんを大きくしていたのですが、かばんが大きくなれば不思議に入れる荷物もどんどん増えていきます。


このことを知っていたので,鞄を買い換えるときに,より小さいものに買い換え増した.

そのせいで鞄2つ持ち歩いてますが....
でも総量は減りました.スペースがないことで,「もしかしたら必要かも」ぐらいのものを何でも入れていたのが,「本当に持って行かなければならないのは何か」とシビアに考えるようになっています.

基本的にはパーキンソンの法則のことですね.

繰り返し:人が足りないから増やす,時間が足りないから増やす(増やせないけど),物が足りないから増やす,は基本的には一時しのぎの解決でしかない.

診療所運営の場合は経営面を考えるとこの法則を逆手に取ることができます.(ヒントはここまで)

2008/10/08

    発達障害理解のために (政策レポート)

公衆衛生ネット 新着情報から


発達障害に関する政策レポートです。自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などの特徴、対応についての解説です。
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html


政策レポート 発達障害の理解のために

本当にさっと読めるので是非一度目を通してください。

こちらも参考に。

発達障害情報サービス



ちなみに公衆衛生ネットには役立つ情報も少しずつたまってきています。
一覧から探す役に立つ情報

2008/10/07

    「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」のホームページ

ロハスメディカル ブログ より

「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」のホームページ

まだ整備はこれからの部分が多いが、このような形で議論がオープンになるのはすばらしいことと思う。
すべての利害関係者を巻き込んで。
できれば患者さん、一般の人の声が聞きたいです。

研究班 班長は国立がんセンター中央病院 院長 土屋 了介先生。 例の家庭医本のアイデアを出した張本人である。

ほんの後書きに、土屋先生の言葉として(逐語ではないが)、「癌センターの専門医にかかるのは一生に1回あるかないか。ほとんどの人がしょっちゅうかかる家庭医の本の方がいいのでは?」という意見で、企画ができたとのこと。

専門医の立場でgeneralistの必要性を訴えてくださる人がいるのは本当にありがたい。自分たちの仕事をやりやすくするために、generalistが優秀でなければならないことをよく理解しているからなのだと思う。

ロハスメディカルの記事で、

知って得する診療科のナゾ【9月30日UP】
2008年9月号掲載(512KB)


にも、わかりやすい形で現在の標榜科の問題と、家庭医の必要性がかかれています。

    New joint WHO/Wonca report 'Integrating mental health into primary care - a global perspective'

WONCA APR 2008 Melbourneより無事戻りました.
たくさんの刺激を貰い,アイデアを持って帰ってきました.
アジア太平洋地域は時差が少ないのでずいぶん楽です.
今日はまたいつもの日常にすぐに戻りましたが.アタらしく短期研修にくるひとが3人いて,スタッフのS医師が中心に研修の目標設定.

WONCAについては1参加者としてではなく,APR(Asia Pacific Region)の運営側の立場で参加した視点で少しずつ報告をしていきたいと思います.

まず最初.
学術集会の初日.開会式でWONCAのpresident Dr. van Weelよりプレゼンテーション.
メルボルンは1972年にWONCAが結成された地.そして前任のWONCA CEO Dr.Wes Fabbのhomeのために,しばらく事務局があった土地.

今回はWHOとの協働プロジェクトとして,メンタルヘルスをプライマリケアの診療にしっかりと統合していくことを重点に置きたいという話をされました.

Press Releaseはこちら

抜粋.

Integrate mental health better into primary care

Friday, 3 October 2008, 3:33 pm
Press Release: World Health Organisation

New report calls for mental health to be better integrated into primary care

Melbourne, 3 October 2008–The World Health Organization (WHO) and the World Organization of Family Doctors (Wonca) today released a joint report that aims to offer help to hundreds of millions of people who are affected by mental disorders but cannot receive the care and treatment they need.

The report "Integrating mental health in primary care - a global perspective" shows through detailed examples of best practices from 12 nations that, even though the current provision of mental health in primary care is still globally insufficient and unsatisfactory, integration can be successfully achieved in a variety of socio-economic contexts.

The report also outlines 10 broad principles to guide countries in their efforts to successfully integrate mental health into primary care. These principles have been derived from an in-depth analysis of the best practices, and range from clear policy directions and resource allocation at national level through to local-level commitment and capacity building on the ground.


関連するWHOのHPがこちら

Mental health Improvements for Nations Development: The WHO MIND Project

そして,レポートそのものがここ.

New joint WHO/Wonca report 'Integrating mental health into primary care - a global perspective'[pdf 4.03Mb]

From Blogger の画像


当日はDe. van Weelにつづいて,今回の報告書のWHOがわの統括のDr. Michelle Funkも檀上にあがりその重要性を話していました.

reportの本文は是非Part1とPart2のイントロまでは目を通してほしいのですが,(残りは各国の工夫や成功事例)エッセンスだけ.

Part1のChapter2
Seven good reasons for integrating mental health into primary care

1. The burden of mental disorders is great
2. Mental and physical health problems are interwoven
3. The treatment gap for mental disorders is enormous
4. Primary care for mental health enhances access
5. Primary care for mental health promotes respect of human rights
6. Primary care for mental health is affordable and cost effective
7. Primary care for mental health generates good health outcomes


我々にとっては当たり前の話ですね.

その中で印象的だったのは,Dr. van Weelがプレゼンで用いた一枚の図.いわゆる我々の世界では前提となるWhiteのdiagram (もしくはGreenのdiagram,ecology of careとも呼ばれています.1000人が1ヶ月の間にどのぐらい病気になるか,専門医にかかるか,入院するか,といった統計.)
のmental healthに限定したバージョンの図.

図は引用できませんが,その元となる文献を.(以下のリンクのどれでもみれます.Dr. van Weel自身の関わった研究であるところがみそ)

http://cat.inist.fr/?aModele=afficheN&cpsidt=18383208
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17256447
http://www.websciences.org/cftemplate/NAPS/archives/indiv.cfm?ID=20064890

Int J Clin Pharmacol Ther. 2007 Jan;45(1):23-9.

Treatment of mental health problems in general practice : a survey of psychotropics prescribed and other treatments provided

VAN RIJSWIJK E. ; BORGHUIS M. ; VAN DE LISDONK E. ; ZITMAN F. ; VAN WEEL C. ;

Objective: Real-life data on the treatment of patients with mental health problems are important as a reference to evaluate care and benchmarking. This study describes the treatment of mental health problems in general practice as diagnosed by general practitioners (GP). Material and methods: Data on mental health problems were available from structured psychiatric interviews in the general population and data on mental health problems diagnosed by general practitioners. Pharmacological and non-pharmacological treatment data were taken from patients records held electronically in general practices. Results: GPs diagnosed a mental health problem in 13.2% of the 1,756 cases examined and 86% of these patients were treated by the GPs themselves. Of the 16% referrals, the majority were referred within primary care. Nearly all patients with a mental health problem received counseling or advice from their GP. Half of the patients with a medication-related disorder, a (single) mood disorder or an (single) anxiety disorder and all patients with a combined anxiety and depressive disorder received a prescription for psychotropic drugs (antidepressants and/or benzodiazepines). Nearly all patients with a sleep disorder received a prescription for benzodiazepine. In patients with psychosocial problems, 20% received benzodiazepines. Conclusion: The majority of mental health problems, when professionally treated, are treated in primary care. More than half the patients are treated with antidepressants and/or benzodiazepines. Most patients also receive supportive counseling or advice.
Revue / Journal Title
International journal of clinical pharmacology and therapeutics ISSN 0946-1965
Source / Source
2007, vol. 45, no1, pp. 23-29 [7 page(s) (article)]


GPの診療で13.6%がメンタルヘルスの問題で,そのうち86%がGPにより治療される.abstractには書いていませんが,その約半分は何らかのカウンセリングのみで,残りがカウンセリング+投薬とのこと.本文に立ち返って読む必要があります.

WHOのreportに戻ります.Dr. Funkも強調し,reportの中でも強調されている,

10 principles for integrating mental health into primary care

1. Policy and plans need to incorporate primary care for mental health.
2. Advocacy is required to shift attitudes and behaviour.
3. Adequate training of primary care workers is required.
4. Primary care tasks must be limited and doable.
5. Specialist mental health professionals and facilities must be available to
support primary care.
6. Patients must have access to essential psychotropic medications in primary care.
7. Integration is a process, not an event.
8. A mental health service coordinator is crucial.
9. Collaboration with other government non-health sectors, nongovernmental
organizations, village and community health workers, and volunteers is required.
10. Financial and human resources are needed.


当たり前のことばかりですが,その中でもさらにDr. Funkは

7. Integration is a process, not an event.


ということを強調していました.
統合は一夜にして生じない.過程である.

いい言葉ですね.

これらの中でも我々のできることはまだまだありそうです.


8. A mental health service coordinator is crucial.


PSW (psychiatric social worker)という職種があることをどのぐらいのプライマリケア医が知っているでしょう.また自分の地域にいるのか,どうやって連絡を取ればいいのか.を把握しているでしょうか.

またこの報告書の付録には

Suggested functions that general practice physician trainees should be able to
perform before graduation

といった研修到達目標

• Serve as the first point of contact with the health care system for all patients, regardless of age or sex.
• Use a patient-centred approach, oriented to the individual, his/her family, and
the community.
• Use a biopsychosocial approach to understand and manage health problems.
• Identify health problems at an early stage where possible.
• Manage both acute and chronic health problems of individual patients.
• Provide care that is coordinated over time and determined by the needs of
the patient.
• Use health care resources efficiently through coordinating care, collaborating
with other primary care workers, and managing interfaces with medical specialists.
• Undertake health promotion with individual patients and communities.
• Provide population-based care, by considering the health needs of the local
population and undertaking interventions to reduce risks or improve quality of
life in specified groups.


英国での紹介のタイミング

Summarized guidelines for referring adults and children to secondary mental
health services, United Kingdom
(コレは引用しません)

等様々なリソースが含まれています.

あとは,こういった世界レベルの取り組みが,減衰することなく,国,行政,病院,医師レベルまで下りてくるか.ということです.うちのプログラムでも早速取り組んでいきたいと思います.

その他のWONCA報告は少しずつ.

2008/10/06

    Integrated Healthcare Networkにおける家庭医療クリニックの貢献とこれからの課題

以前予告したとおり,表題のタイトルで執筆した原稿が発表になりました.

Integrated Healthcare Networkにおける家庭医療クリニックの貢献とこれからの課題
【家庭医療クリニックと病院の連携例:亀田ファミリークリニック館山】
病院 特集「病院と家庭医療」 Vol. 67 No.10 2008 October pp.897-901


まだ日本ではそれほど知られていませんが IHN(Integrated Healthcare Network),という概念があります.

そもそも徹底的に縦割りにされた(Fragemented care)米国の医療システムでそれをなくすための仕組みとして出てきたものですから,割とシームレスに医療が提供されている日本では敢えて取り立てて生江をつける概念ではないかも知れません.が日本でも縦割りの診療,医療,福祉などの連携がまずいばかりに肝心な患者さんが迷惑を被っている例も多々ありますから,日本でもIHN,ということを意図した医療の仕組みづくりしてもよいかなと思います.

そのためにプライマリケア部門は抜きにして語れない.高度専門医療を目指す,それをウリにしたい医療機関ほど,プライマリケア部門の充実が必要なことは,逆説的ではありますが,generalistとspecialistとの協働について理解のある人であるほど,自明なことだと思います.

上記雑誌の巻頭言より.

 勤務医は疲弊している.そして,勤務医のほとんどが専門医である.複数の症状を持つ1人の患者は,複数の専門科を受診する.この時から病院を来院した1人の患者は,のべ数人の患者になるのである.そして,各専門医は多くののべ患者の診察で疲弊するのである.


この視点は非常に大事である.複数の問題を抱える患者であっても1人は1人として診療する.家庭医は1回の診療で平均3-4個の問題を扱う.だから病院の中にgeneralistがいるだけでも,延べ外来患者数は3-4分の1になる可能性を秘めている.その分病院の収入が減ってしまうところが大きな問題.米国はそのvisitのcomplexity(複雑度)によって,初診料も再診料も数段階に分けられている.

2008/09/29

    たくさんの方が視察に来られます

家庭医療の実践と教育の場として現在のクリニックがスタートしてから2年半.多くの家庭医療学会認定プログラムが出来,初期研修でも名を知られた病院が,家庭医療プログラムに本格的に取り組み始めています.そんな中,少しだけ先を行く者の利点として,そういったプログラムの準備,立ち上げに関わる人が見学,相談に来られます.

関西のo病院
北方のk会t病院
九州のk病院(i病院関連)

を始め,本当に多くの方が館山という遠いところまで来られ,相談を受けます.

「その成功,失敗,反省,苦労などを聞かせて下さい.」

とのことです.

全部お話ししています.それらを踏まえてよりよいサテライトクリニック,家庭医療研修プログラムを作って頂ければ先に走り出した者の冥利に尽きます.

私たちも追い抜かれないように精進します.

    WONCA APR Melbourne 2008

サポートをするということ

私は10月3日からオーストラリアのメルボルンで開催されるwonca APR(世界家庭学会 アジア太平洋地区)の運営委員(書記官)としての準備で目がまわりそうです.学術会議は3日からですが,COUNCIL MEETING(加盟国の代表が集まって行う国際会議)が2日からで当日入りは危険なのでその準備もかねて前日入りするために明日出発です.

英語でのAGENDA(議事案+資料)作製です.また終了後は英語での議事録の作成が待っています....

リーダーはリーダーについて行く人たちのために働く(尽くす)のが仕事.マネージャーはそのリーダーを支えるのが仕事.会議がうまく運ぶように混乱の種を取り除いて資料や議事案を用意するということで,影のサポーターです.

会期中はたくさんのランチ,ディナー,レセプション,カクテルパーティーなどの社交イベントに招待されており,参加しないわけにも行かず,内向的な性格(信じられない人もいるかもしれませんが)としては気疲れをすごいしそうで心配です.

いわゆる外交.です.
世界中の人の健康のために,(今回はアジア太平洋地区の人のために,ですが)プライマリケアの質と底へのアクセスを向上させることを通じて貢献しようというのがWONCAの使命です.その共通の目的のためにに国境を越えて協力しましょうということです.
そのために運営委員会(EXECUTIVE COMMITTEE)は各国の代表と連携をして協働をスムーズに出来るようサポートをします.

知っていることと出来ることは別物だなとしみじみ感じます.ただ,あるべき姿が分かっているのでゆっくりでも正しい方向に進んでいけるため不安はありません.

サポートというのはGIVINGということです.(見返りを求めずに)
それをするのは大変なことです.

でも見返りは必ずあるものなのです.(金銭的見返りにこだわらなければ)


徹底的に断ったこの仕事,他にやる人もいないため渋々受けたのですが,行ったことのない国に行くチャンスをもらい,苦手な種類の仕事に取り組むチャンスをもらいと,大変ありがたい限りです.

苦手分野に取り組むのは仕事を振られるのが一番ですね.

自分が時間と労力を提供することで,何かがうまくいく,何かが変わる,感謝される,世の中が少しだけ良くなる,何か少しだけ学んで今までの自分より成長する.

逆にそういう見返りはお金で買うことは出来ません.自ら身を挺して何かを提供することでのみ得られる成果なのでしょう.

ボランティア精神旺盛な人,というのはそういった世の中の本当の仕組みをよく知っている人のことを言うのでしょう.

これからまだ書類の準備が一杯残っています...

2008/09/25

    専門医更新試験合格!

表題の通り.米国の家庭医療学専門医.多くが通る試験ほど,落ちたらどうしようというプレッシャーは大きい.しかも現在の立場的には落ちたら恥ずかしすぎる.落ちたらそ~っといなくなって,試験浪人しようと思っていました.現在専門医更新制度は過渡期にあり仕組みや要求事項が変わってきており,従来は7年毎の更新で仕組みの変更が2000年頃から進んでいますので,私は,古い方の制度で更新をする最後の組です.これから更新する人には一部しか参考になりませんが...

現在進行形の家庭医療レジデンシーの生々しい体験記はあっても(いったことある人間だとかなり面白いです.全部体験済みですが,自分の記憶を追体験するようで),中々認定医,再認定の体験記もないと思うので,参考まで.(結果報告の部分だけ)

全部で360問 (260問を2回に分けて+選択分野各45問x2分野で一日がかり.ハワイへ受けに行きましたが,ホントにそれだけでした.選択分野はAmbulatory Family Medicine:外来,Child and Adolescent Care:小児,思春期,Geriatrics:老年医学,Women's health:女性医学,Maternity Care:マタニティケア,Emergent/Urgent care:救急,Hospital medicine:病棟,Sports Medicine:スポーツ医学の8領域から2つです.)

認定学会のHPには各認定医が個別のIDとパスワードで認定,再認定,生涯学習についてフォローできる用になっており,まずは電子メールで「試験の結果が見られます」とだけ送ってくる.(結果は書いていない)

自分のHPに行くと以下のようなページ.

結果のページ

合格でした.隠してありますが,全体での自分の位置づけも分かります.

そのページの下の方にPDFのリンクが3つあります.

プレスリリース


地域の新聞に出したり,待合室やニュースレターに乗せるように学会が一般向けに説明をした記事.

あなたの町の家庭医が,まじめで優秀でないと通らない試験に通ったんですよ.アメリカの家庭医療学会はこのように家庭医の質の保証に取り組んでいます.

という内容.一般の人には専門医試験やその維持がどのようなものか分からないことなどから,学会としては重要なシグナリングの一つ.degree of fellowを頂いたときも,同じようにプレスリリースの手紙を発行してくれました.

日本家庭医療学会もささやかながら始めました.

学会が認定する家庭医療専門医について

まだですが,鋭意準備中です.というもの.HPの隅っこでわかりにくいのですが.

是非専門医制度が出来たときには.同じようにやって下されば助かります.

医師の学会はプロ集団として,世の中に何らかの意見を出していく必要があります.

国民の皆さんへ:日本医学教育学会主催、第34回「医学教育者のためのワークショップ」に参加した医学部・医科大学教員や研修病院医師からのメッセージ
医学教育に協力して欲しいというメッセージ

日本小児科学会 提言,主張

ずらずら~っと,たくさんの要望,主張が並んでいます.このぐらいのロビー活動をやるべきだと思います.

閑話休題.

2つめのPDFは合格通知





いわゆる正式な合格通知の手紙です.従来は封書で送っていたと思われます.費用削減と環境への配慮.

最後はパフォーマンスレポート
2頁目に,どの分野が平均より出来ているとか出来てないとかが分かり,今後の生涯学習のガイドとすることが出来ます..
これは私のよく知る友人に匿名の約束をして,何とか許可を貰って公開させて頂きました.中々見ることの出来ない貴重なものです.


それぞれの分野の出題比率は

blueprint

に説明されています.

I. Cardiovascular 12%
II. Endocrine 8%
III. Gastrointestinal 7%
IV. Hematologic/Immune 3%
V. Integumentary 6%
VI. Musculoskeletal 12%
VII. Nephrologic 3%
VIII. Neurologic 3%
IX. Nonspecific 9%
X. Psychogenic 7%
XI. Reproductive―Female 4%
XII. Reproductive―Male 1%
XIII. Respiratory 13%
XIV. Special Sensory 2%
XV. Population-based Care 5%
This includes topics such as biostatistics and epidemiology, evidence-based
medicine, prevention, health policy and legal issues, bioterror, quality
improvement, and geographic/urban/rural issues.
XVI. Patient-based Systems 5%
This includes topics such as clinical decision-making, communication and
doctor-patient interaction, family and cultural issues, ethics, palliative care,
and end-of-life care.


これからの再認定の仕組みはMC-FPといわれる,普段からの勉強,質改善活動の証明が要求され,(用は7年に1回の試験のための一夜漬けの瞬間最大風速だけではダメ,ということ)そのうちのある程度の割合を7年サイクルの最初の3年で済ませると認定期間が3年追加の10年更新に出来るという,incentiveつき.でもこの公式生涯学習プログラム,費用がかかるんです.結構.
その内容もまだ色々議論の余地はあるようですが....

まあとにかく安心して今の仕事が続けられます.

これで今年の目標4つのうち
日本プライマリ・ケア学会認定医更新 (無事終了)
米国家庭医療学専門医認定更新試験(無事合格)
が達成.
あと2つ(一つは医師として,一つはprivate)は残り3ヶ月半の間に出来るか?

2008/09/24

    『職業とは何か』

「やりたい」仕事は「やりがい」につながらない~『職業とは何か』
梅澤正著(評:荻野進介)
講談社現代新書、700円(税別)


より.自分探しは止めなさい.社会の要請にただ応えよ.という発想の転換を提案.
確かにニーズのないものには価値は生じないので.しかし,価値は一方で作り出すことも出来るのです.まあ,ニーズはそこにあって,誰にも気付かれていなかったのものを日の目にさらしただけ,という意味ではニーズのないものに価値は生じない,で間違いはない.


著者は語源や言葉の意味にこだわるタイプらしく、漢和辞典を参照しつつ、「職」とは微細なところまでわきまえ務める仕事のことで、「業」とは難しくて厳しい仕事のことだ、という。元々、古代中国では、役人が果たす(高度で、位の高い)役割が「職業」とされ、生計を立てるためだけの「生業(なりわい)」とは、しっかりした区別があった。
 社会が複雑化するなか、仕事に質の高いやりがいや充実感を期待するのであれば、生業ではなく、専門的な職業に就くことを著者は勧めるのである。


「神は細部に宿る」(出典は諸説あり)は大好きな言葉だが.職業とはそういうことだ.

職業は人生資源を得るための活動とのこと.やりたいことほど経済的資源は得られない事の方が多い,というのは私の持論.その代わりに教育的資源,関係的資源などを得ているのだ.もちろん「楽しみ」「やりがい」も.

 人生資源は、収入や貯蓄といった「経済的資源」、知識・教養などの「教育的資源」、家族・知人に代表される「関係的資源」、権威・人望などを意味する「威信的資源」の4つに分けられる。確かに、こういう考えに立てば、「適職だと思う」「やりたい」という動機から考える職業選びは、いかにも一面的に思えてしまう。


著者が挙げる3つの誤解として

● 誤解その1「自分に適した仕事が職業である」。
● 誤解その2「人が職業を選ぶ」。
● 誤解その3「一番やりたい仕事につくのが職業である」。


がある.

以前のキャリア論は,3年後,5年後,10年後になりたい姿を思い浮かべて,そこから逆算して,目標まっしぐらに.ということが言われていたが,現在のキャリア論はplanned happenstance theory(計画的偶発性理論.クランボルツ)が主流.大きな成功,発見などは得てして予期せぬ出来事,上から突如与えられた仕事などをきっかけにしている事が多い.ノーベル賞の田中さんなどもそう.ただし,chance favors prepared mind.(準備された心にだけチャンスは訪れる.パスツール)その偶然を前向きに受け入れ,自分にとってのプラスにしようという気概と好奇心が必要.ということを言っているのが,planned happenstance theory

自分の好き嫌いに好まず降ってきた仕事を何とか自分にとって意味があるものにしようと取り組む.しかも楽しんでやる.

そもそも「選り好みしない」というのがgeneralistの立ち位置なのだがから.

好きだから楽しめるとは限らない.そして好きでなくても楽しむことは出来る.

与えられたものを前向きに,楽しんでやる.それだけ.

最後に
“好き”と“楽しむ”の違い:遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」 
を.


職業とは何か (講談社現代新書 1955)
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2008/09/23

    知的プロフェッショナルの五つの条件

とりあえず引用.
そう言う意味ではうちにもいる.たくさんのアマチュア.

先日のテレビ朝日の特番 

「お仕事年収図鑑!子どもにつかせたい職業ベスト30最新版!!」。3000人の親にアンケートした結果を発表。


でも美容師さんが「やりがいは自分の手の中で一人の女性が変わっていくという作品を作り上げること」みたいなことを言っていました.(ちなみに医師は,千葉西の循環器の院長.2500万円.家庭医はそんなにもらえない...)

職業の定義に
「職業とは世界の渇望とあなたの喜びの出会う場所」(今ちょっと引用元が示せません)というのがある.

以下の5つをじっとかみしめて,再度自分が「プロ」として働いているかを振り返りたい



  • プロフェッショナルは、自分のことを「労働者」とは思っていません。

  • プロフェッショナルは、自分のことを「商品」とは思っていません。

  • プロフェッショナルは、自分の仕事を「作品」と思っています。

  • プロフェッショナルは、「目に見えない報酬」を求めて仕事をします。

  • プロフェッショナルは、自分の「個性」を大切にした仕事をします。


知的プロフェッショナルの五つの条件 - *ListFreak





田坂広志氏著 これから何が起こるのか より
これから何が起こるのか
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  • おすすめ度 4.0

2008/09/22

    日経産業新聞フォーラム2008

下記のフォーラム.私がしゃべったのでも,参加したのでもないのですが,うちの名誉理事長がぜひ,これからのプライマリケアをテーマに話したい,とのことで数週間前から,何度か面会を重ね,その間にこれからのプライマリケアのあるべき姿,現在の私たちの診療所の取り組み,実績などを話させて頂き,かなり骨のある論文もいくつか提示させて頂きました.
私の話した部分は名誉理事長の話のほんの一部分ではありましたが,今私が注目しているPersonal Medical HomeやIHNの話をしっかり取り上げて頂きました.
500人の参加者(しかも抽選をしたとのこと)が対象ですから,少しでも聴衆の頭に残っているといいのですが.

日本の医療とホームヘルスケアの可能性

開催日時: 2008年9月10日(水) 13:30~17:00
場所: 日経ホール(東京都千代田区大手町1-9-5 日本経済新聞社東京本社8階)
開場: 13:00
受講料: 無料
定員: 500名

13:35~14:35 基調講演
テーマ :「明日の日本医療を考える」 講 師 :亀田 俊忠氏(医療法人鉄蕉会 名誉理事長)


15:30~17:00 パネルディスカッション
テーマ :「生活の中のヘルスケア ~ホームヘルスケアへの期待とその役割」(仮題) パネリスト :神野 正博氏(特別医療法人財団董仙会 理事長)
木下 賢志氏(厚生労働省 医政局 経済課長)
好本 惠氏(アナウンサー)
上條 誠二氏(株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン 代表取締役社長)


最近何かと話題の金沢,石川県七尾市の恵寿総合病院理事長 神野正博先生もシンポジウムのパネリストでしたが,早速自身のブログで報告をされていました.こまめです.

日本の医療とホームヘルスケアの可能性:神野正博のよもやま話

亀田理事長(写真左)は、明日の日本の医療として、
 ・家庭医を中心にしたMedical Homeの必要性
 ・日本版IHNを目指した医療の垂直統合
 ・DPCの入院初期医療費の値上げを肝とした入院医療の見直しと、人頭払いとP4Pを基本にした外来医療の見直しを提言しました。


医学書院の 「病院」という雑誌の11月号で「病院と家庭医療」と題して特集が組まれます.
IHNの実践例として当院の例を歴史的経緯もふまえて書かせて頂きました.
お楽しみに.

IHN: Integrated Healthcare Network
P4P: Pay for Performance

    優れたメンターの7つの条件



  • 絶対の信頼を置ける人物であり、その清廉潔白さゆえに、内容の是非を問わず、いかなるメッセージにも耳を傾けたくなる人物

  • 耳の痛い事柄を伝えつつ、こちらの言い分にも耳を貸してくれる人物

  • 向上心をかき立ててくれる人物

  • リスクを冒しても大丈夫であるという気持ちにしてくれる人物

  • 内なる不安や疑問を乗り越えられるだけの自信を与えてくれる人物

  • ストレッチ・ゴール(既存の目標よりもさらに高い目標)の設定を後押ししてくれる人物

  • チャンスを提供し、自分では気づかなかった挑戦課題に目を向けさせてくれる人物


優れたメンターの7つの条件 - *ListFreak




『標準化された形式的なメンタリングはかえって害である。かつての師弟関係のように、個人対応で血の通ったメンタリングこそ有効である。』





ここまではなかなか難しいですが...

2008/09/20

    亀田家庭医後期専門研修レジデント募集のご案内

レジデント募集の季節です.
各プログラムのディレクターは募集要項やパンフレットのupdate,面接日の設定など忙しいことと思います.
亀田の家庭医でも漸く募集の概要が決まりましたので,以下にupしておきます.

同時に、
*指導医として働いて頂けるhospitalist(GIM:総合診療、病棟中心)、ER医、在宅専門医、もちろん家庭医
*専門を持っているがプライマリケアへ軌道修正したいという方の再研修(特に、小児科、透析、精神科、産婦人科)
*既に家庭医の後期研修を始めているが移籍を考えている方(これについては学会の厳密なルールがありますので慎重にご検討下さい.移籍は原則として認められていません,また推奨するものでもありません.やむを得ない方のみ)
も募集いたします。
こちらは随時募集、詳細は個別に応相談ですので、私のメールアドレスへ直接ご連絡をお願いいたします。

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亀田家庭医後期専門研修レジデント募集のご案内

【概要】
当プログラムの特徴
*レジデントも含めて10人以上の家庭医が行なうグループ診療のスタイル(ピアサポートと協同学習)
*3年間基本的に同じ地域で継続診療を行う(継続性を最重視した研修プログラム)
*家庭医療の指導医が常勤3名+非常勤2-3名
*幅広い診療領域
*3次医療機関(亀田メディカルセンター)との綿密な連携(Integrated Healthcare Networkにおける家庭医療)
*日本家庭医療学会認定プログラム
*プログラム修了生6期12名の実績(修了生はその行き先で家庭医としてそれぞれ高い評価を受けています)

今年度の改善点として
*チーム制の導入
*病児・病後児保育室との連携

来年度からの改善点として
*中規模のcommunity hospital(安房地域医療センター:当診療所から10分)との連携強化
を見込んでいます。


【重要】
面接日は2008年10月17~18日と24~25日です。
募集要項を参照の上、書類を揃える前に受験の意思表明(申込)を先に行なってください。

【詳細】
募集要項や事業報告、詳細なプログラム紹介は以下のリンクをごらん下さい。
http://www.kameda-resident.jp/latter/examination/internal/internal07.html


すべての人にとって完璧なプログラムというのは存在しませんし、プログラムとレジデントの相性というのもあります。
現在認定プログラムが数多く存在する中、それぞれの皆さんが自分にとって最適のプログラムを見つけられるが一番と思っています。
そのためには、出来るだけ多くのプログラムを見たり、いろいろな人のアドバイスをもらうことが大切と思います。

多くの方の応募をお待ちしております。

2008/09/13

    K-CAPPICシンポジウム~家庭医療は周産期医療危機を救う~開催。約250名が参加【PDF】

以前のentry

金沢大学周生期医療専門医養成プログラムK-CAPPICシンポジウム

に関連して,当日の抄録冊子がpdfで公開されていましたので, entryに追加をしました.

主催をした金沢大学附属病院 周生期医療専門医養成センター・プログラムは「周生期」という言葉を前面に出して,周産期よりも長いスパンで拇指のサポートのできる医師の養成を考えています.更にユニークなのが,その推進に家庭医の役割が欠かせないとして,コンセプトの中心に家庭医の育成,家庭医療の推進を据えていることです.

周生期医療専門医養成研修

なんだか夢のような話だな,という人もいるかもしれませんが,Your imagination it the only limit.ということで...

想像力の限界:楽園はこちら側

(2008/9/12追加)

プログラム冊子pdfがアップされていたのでリンクを追加しました.私の思いが抄録に込められています.(また,最近一番お気に入りの写真を使っています)

[2008/07/24]
K-CAPPICシンポジウム~家庭医療は周産期医療危機を救う~開催。約250名が参加【PDF】

2008/09/11

    MEALS-ON-WHEELS(高齢者の食欲不振・体重減少の鑑別診断)

自分用の覚え書きに(暗記できないので)

高齢者の食欲不振・体重減少の鑑別診断

MEALS-ON-WHEELS
車輪の上に乗った食事.ということで配食サービスの意味

M:Medication

E:Emotional
特にうつ病

A:Alcoholism, Abuse, Anorexia

L:Late life paranoia

S:Swallowing problems

O:Oral Problems

N:Nosocomial infections, No money

W:Wandering
dimentiaなど行動異常

H:hyperthyroidism, Hyperglycemia

E:Enteral problems
吸収障害など

E:Eating problems
自分で食べられない

L:Low salt, Low cholesterol
カロリー不足など

S:Stones, Shopping problems, Social Problems
isolation, inability to obtain preferred foods

参考文献
Evaluating and Treating Unintentional Weight Loss in the Elderly AFP, 2002, Feb15
http://www.aafp.org/afp/20020215/640.html

Morley JE, Silver AJ. Nutritional issues in nursing home care. Ann Intern Med 1995;123:850-9, with additional information from Reife CM. Involuntary weight loss. Med Clin North Am 1995;79:299-313.

超高齢者の生理学的特徴-診断と治療上の留意点- JIM 16(2),2006 p106-110

2008/09/09

    米国医学生の半数は燃え尽き,1割が自殺念慮

Annals of Internal Medicine
ACADEMIA AND CLINIC Burnout and Suicidal Ideation among U.S. Medical Students
Liselotte N. Dyrbye, MD et al. 2 September 2008 | Volume 149 Issue 5 | Pages 334-341


こちらは全文無料です.

Background: Little is known about the prevalence of suicidal ideation among U.S. medical students or how it relates to burnout.

Objective: To assess the frequency of suicidal ideation among medical students and explore its relationship with burnout.

Design: Cross-sectional 2007 and longitudinal 2006 to 2007 cohort study.

Setting: 7 medical schools in the United States.

Participants: 4287 medical students at 7 medical schools, with students at 5 institutions studied longitudinally.

Measurements: Prevalence of suicidal ideation in the past year and its relationship to burnout, demographic characteristics, and quality of life.

Results: Burnout was reported by 49.6% (95% CI, 47.5% to 51.8%) of students, and 11.2% (CI, 9.9% to 12.6%) reported suicidal ideation within the past year. In a sensitivity analysis that assumed all nonresponders did not have suicidal ideation, the prevalence of suicidal ideation in the past 12 months would be 5.8%. In the longitudinal cohort, burnout (P < 0.001 for all domains), quality of life (P < 0.002 for each domain), and depressive symptoms (P < 0.001) at baseline predicted suicidal ideation over the following year. In multivariable analysis, burnout and low mental quality of life at baseline were independent predictors of suicidal ideation over the following year. Of the 370 students who met criteria for burnout in 2006, 99 (26.8%) recovered. Recovery from burnout was associated with markedly less suicidal ideation, which suggests that recovery from burnout decreased suicide risk.

Limitation: Although response rates (52% for the cross-sectional study and 65% for the longitudinal cohort study) are typical of physician surveys, nonresponse by some students reduces the precision of the estimated frequency of suicidal ideation and burnout.

Conclusion: Approximately 50% of students experience burnout and 10% experience suicidal ideation during medical school. Burnout seems to be associated with increased likelihood of subsequent suicidal ideation, whereas recovery from burnout is associated with less suicidal ideation.


燃え尽きの判定は
The Maslach Burnout Inventory is a 22-item instrument that is considered the gold standard for measuring burnout


鬱の判定はスクリーニングとして
2-item Primary Care Evaluation of Mental Disorders
を使用.引っかかった人に精神科医にかかってもらうのではなく,(ここがうまいところ.飛躍といえばそうだが)
This instrument has a sensitivity of 86% to 96% and a specificity of 57% to 75% for major depressive disorder (29, 30). With a reported positive likelihood ratio of up to 3.42 for the diagnosis of major depression (30) and an estimated 25% prevalence of depression among medical students (12), a positive result implies a 50% probability of current major depression.

検査特性(感度特異度など)と有病率(医学生で25%!それはそれでびっくり)が分かっていれば,陽性的中率が検査できるので,引っかかった人の半分はうつと判定.

Medical Outcomes Study Short Form-8 (SF-8)も測定


結果はタイトルの通り.

自殺念慮と相関するのが,独身(or離婚後),借金10万ドル以上,燃え尽きスコア高値など

また燃え尽きになった人の27%が翌年に回復.

ただし.

回収率が52.4%.(アンケートにしては上等)
回答しなかった人が全員自殺念慮がないとすると,自殺念慮の割合は約半分の5.8%(燃え尽きも同様)

最後にこの論文の書き出しから.


Death by suicide is a major occupational hazard for physicians (1). The suicide rate among male physicians is more than 40% higher than among men in the general population, whereas that of female physicians is a staggering 130% higher than among women in the general population (1, 2).


医師の自殺は職業病.特に女性.自分の命と引き替えに他人の命を守っているのでしょうか.アンパンマンみたいになくなったら新しいのもらえるといいんだけど.

日本でも同じ

医学界新聞 第2601号 2004年9月20日 特集 医学生のメンタルヘルスを考える
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-12-01/10_01.html

筑波大学卒後臨床研修部の前野哲博助教授の研究グループがことし行った調査では、研修医の平均労働時間は平日で十三時間、休日で五時間でした。平均して週八十時間以上働いていることになります。(過労死ラインは週六十時間以上、年三千百二十時間以上といわれています)

 研修医の四分の一が研修開始から二カ月でうつ状態になったことも分かりました。関連する要因として、受け持ち患者数、勤務時間、キャリアや家庭生活への不安をあげています。とくに、うつ状態の研修医の受け持ち患者数が平均で約八人あったのに対して、そうでない研修医の受け持ち患者数は約六人でした。

2008/09/08

    スコットランドにおける公共の場での禁煙法実施の効果(NEJM)

Smoke-free Legislation and Hospitalizations for Acute Coronary Syndrome
Jill P. Pell, M.D. et al. NEJM Volume 359:482-491 July 31, 2008 Number 5


病院で見ているので,もしかしたらアクセス権が必要かも.

ABSTRACT

Background Previous studies have suggested a reduction in the total number of hospital admissions for acute coronary syndrome after the enactment of legislation banning smoking in public places. However, it is unknown whether the reduction in admissions involved nonsmokers, smokers, or both.

Methods Since the end of March 2006, smoking has been prohibited by law in all enclosed public places throughout Scotland. We collected information prospectively on smoking status and exposure to secondhand smoke based on questionnaires and biochemical findings from all patients admitted with acute coronary syndrome to nine Scottish hospitals during the 10-month period preceding the passage of the legislation and during the same period the next year. These hospitals accounted for 64% of admissions for acute coronary syndrome in Scotland, which has a population of 5.1 million.

Results Overall, the number of admissions for acute coronary syndrome decreased from 3235 to 2684 — a 17% reduction (95% confidence interval, 16 to 18) — as compared with a 4% reduction in England (which has no such legislation) during the same period and a mean annual decrease of 3% (maximum decrease, 9%) in Scotland during the decade preceding the study. The reduction in the number of admissions was not due to an increase in the number of deaths of patients with acute coronary syndrome who were not admitted to the hospital; this latter number decreased by 6%. There was a 14% reduction in the number of admissions for acute coronary syndrome among smokers, a 19% reduction among former smokers, and a 21% reduction among persons who had never smoked. Persons who had never smoked reported a decrease in the weekly duration of exposure to secondhand smoke (P<0.001 by the chi-square test for trend) that was confirmed by a decrease in their geometric mean concentration of serum cotinine from 0.68 to 0.56 ng per milliliter (P<0.001 by the t-test).

Conclusions The number of admissions for acute coronary syndrome decreased after the implementation of smoke-free legislation. A total of 67% of the decrease involved nonsmokers. However, fewer admissions among smokers also contributed to the overall reduction.


日本で言う健康増進法のようなものの実施によって,ACS(急性冠動脈症候群)による入院が,喫煙者でも,非喫煙者でも減ったということ.

こういったRCTのない単純介入による研究は,その介入と結果の因果関係の証明が難しい.

この研究がやっている工夫

他国と比べる(こういった法律を実施していない英国の同期間の減少率が4%に対して 17%減少)
法律施行前と比べる

非喫煙者でも減っていることは実際のACSの減少と,受動喫煙の総計時間の自己報告,血中のコチニン濃度の減少にて示している.

table 2
皆さんも見られるとよいのですが.

法律施行前後で,喫煙経験者(以前の喫煙者),非喫煙者両者に置いて
自宅,他人の家,車,バス,電車では変化なし
パブ(スコットランドといえば!),バー,クラブ,その他の公共の場所では減少

喫煙経験者に置いてのみ
仕事場での受動喫煙時間減少

ただしこれはself reporting biasがあるかもしれません.

該当する人数が多い場合は公衆衛生的なアプローチ.(勿論個別の禁煙指導もですが)
日本は健康増進法で何かが変わったか.タスポ導入では?

この研究は法律施行前後の10ヶ月ずつ計20ヶ月のデータ.日本でもできるはず.

2008/09/02

    メタボより、知っておきたい 予防接種

表題のタイトルで一般の方向けに公開医学講座が行われます


公開医学講座
【開演/終演】14:00/16:00 【入場料】無料
【主催者】(社)安房医師会 0470-22-0228


前半は一時間 神戸大学に移られた岩田健太郎先生の講演

後半は自治体の保健師さんや地区医師会の先生を交えて公開討論。(司会進行をつとめさせて頂きます)

肺炎球菌ワクチンを中心として、任意接種の予防接種についても重要性を認識してもらえれば、というのがねらい。

岩田節の聞きたい方、予防接種は本当に必要か疑問な方、残暑の暑さを逃れたい方、どなたもどうぞ。

肺炎球菌ワクチンについて

【MEDICALホットニュース】肺炎球菌ワクチンを知っていますか?
この記事作成時の2007年4月では公費助成を行っている市町村は21だったのが、
現在は72市町村に。


肺炎球菌ワクチン接種に公費補助を!

墨田区でも9月から始まりました 補助額4000円!

肺炎球菌ワクチン ニューモバックス

米国の65歳以上の高齢者における肺炎球菌ワクチンの接種率は64%と推計されています。一方、本邦では1987年に認可され市販後約20年が経過するも、いまだに接種率は4%未満です。この接種率の大きな差は保険適応のない任意接種で、費用は全額自己負担であることが大きく影響していると考えられます。2007年11月時点で本ワクチンの意義に理解のある全国64市区町村の自治体においてのみ公費助成がなされているのが現状です。今後、医療従事者のみならず国および各自治体にも本ワクチンの重要性を理解していただき、肺炎球菌感染症から一人でも多くの人を守るために、予防医学的・医療経済的視点からもインフルエンザワクチンと合わせて、特に高齢者への公費助成の推進が切望されます。



医療ルネサンス
健康へのデザイン 瀬棚町の挑戦
肺炎ワクチン初の公費補助

2008/09/01

    北海道新聞2008年8月18日<時代の肖像>

今年のHANDSは第1回を念願の北海道家庭医療学センター(HCFM)の重要拠点である更別村国民健康保険診療所で,行い,HCFMのレジデントの皆さんとも交流をすることが出来た.
以前から親しい山田所長の愛する仕事場とそれを支える更別村の村長はじめ職員の皆さんの愛情(本当に,村を上げて家庭医を育てる.というのがたて前でなく伝わってきました)
診療所は,小回りのきく行政単位だからこその 行政,福祉,医療を一箇所にまとめた建物で,非常に効率よくできている.「ああ,家庭医ならこんな所で仕事すると幸せだろうな」という感じの場所.

その時の活動が,縁あって,HANDSの活動を読売新聞の教育ルネサンスに続き取り上げていただいた.ありがたいことである.

北海道新聞のこの<時代の肖像>シリーズはネットでは公開していないシリーズなのだが,更別村国民健康保険診療所の山田所長が公開許可を取って,彼らのブログにのせて下さった.

どんぐり村の診療所
指導医の養成 ~北海道新聞 2008年8月18日(月曜日)朝刊より~


新聞記事そのものは,クリックで更に拡大すると読めます.

去年は関西家庭医療インタレストグループFPIGとコラボ開催が出来,それに続いて今回HCFMと,意識的にコラボレーションを進めてきた.

今年のHANDSの参加者は狭義の家庭医療,プライマリケアを超えて広義のgeneralistを採用した.
今年のキーワードの一つがcross border collaboration.
最近の ○○○ x △△△ というやつ.

去年のHANDSのキーワードにchange agent(catalyst) というのを挙げた.
「触媒」何かと何かを混ぜ合わせて,化学反応を起こし,またそれを促進するために必要なモノ.
人と人が出会うところで何だか素晴らしい何かが起きる,その切っ掛け作りになれたらと思っている.

今月はHCFMから選択研修でうちに1人レジデントがやってくる.どんな化学反応が起きるのか,楽しみである.

それにしても帰りに小嶋先生と食べた更別の豚丼は美味しかった.
レストハウスかしわ~更別村~
豚丼といえば十勝・帯広 十勝への招待状 - 豚丼(ぶたどん)コーナー
帯広,十勝 豚丼の店


追加)
まるかん人プラト一ク
で北海道新聞全文が読めます。(ありがとうございました)(2008/10/21)
http://marukanpurato-ku.blogzine.jp/marukan/2008/10/post_d6f5.html#more

2008/08/18

    楢戸健次郎先生のこと・家庭医は腰を据えてじっくりと.

「ただ日本のようにこれがいいとかあれがいいといってすぐに出来るわけではないので,うちの団体では,はじめの3年間は,極端なことをいうと活動するなと言われているのですね.はじめは言葉を覚え,友達を作り,問題がどこにあるかをしっかり見なさいと.今までの経験だけでものを言ったら間違える,ということで,新しいところにったら3年間は黙っていなさいと.そして次の3年間で,その問題の1つでもいいから,地域の方々と一緒にそこにある資源を使って解決する努力をしなさいと.さらに次の3年間で,その地域の方々にバトンタッチしなさい,という団体なのですね.
(中略)
私が帰ってきてしまったら,またなくなってしまったというのでは何もならないので,向こうの方が出来るものを少しずつ提案していくような形でやっていきたいと考えています.」


『月刊地域医学』 というコアな雑誌(地域医療振興協会)より.(かなりおもしろいので毎月楽しみに読んでいます.)

Vol.22.No.8 2008
Interview「日本の家庭医の先達が,今,ネパールで新たに挑む」

として,楢戸健次郎先生のインタビューから.自分が一番印象を受けた下り.

今はあまり知る人もないのかもしれないが,楢戸健次郎先生は日本の家庭医としては先駆け.

以下はインタビューからの要約.

海外医療協力を元々やりたくて,そのためには全科ができないとだめだろうと考えていたとのこと.
学生時代に,(恐らく1960年代後半)米国で家庭医療が専門として立ち上がるのを目の当たりにして,その当時に作られようとしていた米国の家庭医療の研修プログラムと同じような物を日本で自分で構築.卒後2年は内科研修の合間に外科のopeに参加,週1日の休日に産婦人科の研修.3年目からは北海道で小児科1年,外科,整形外科系の診療所で2年.また東京に戻って産婦人科,皮膚科,眼科,耳鼻科等を含め,計7年半で,自分なりに家庭医の初期研修にピリオドをつけたと.

その後北海道新冠の国保病院で内科小児科産婦人科を担当,健康管理課の課長補佐を兼任,老人病棟の開設,学校医,産業医の勉強をしながら4年半.

それからたまたま無医村になった地域の美流渡診療所(2500人)でグループ診療を開始.(卒後10年ちょっとと推測)
ここへ行ったのは明確に3つの目的があったとのことです.
1.人口の出入りのない地域で医療の実践をやりたかった(家庭医はdefined populationを責任を持ってケアするという意味で,救急医と区別される)
2.海外で一般的になっていたグループ診療を試したかった.
3.家庭医は日本でも受け入れられるか試したかった

長い間美流渡で診療をされた後(20年以上),後進にに現場を引き継いでようやく,学生時代からの念願の海外医療協力のために,ネパールへ.

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そのほか家庭医療学会の前身である家庭医療学研究会の発起人だったり,数年だけ続いた家庭医療という幻の雑誌の立ち上げ役だったりといううろ覚えの僕の記憶.

現在とは隔世の感のある当時に,学生時代に家庭医を明確に目指し,その研修を自ら組み,グループ診療を意図的に開始,など先駆的なその功績はその価値は測りしれません.

個人的には一度だけ医学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナーでお話を聞いたことがあるだけですが,非常に穏やかな方だという印象を受けました.

楢戸健次郎ワーカー報告会実施中

楢戸先生については

地域に根ざした家庭医を見学して

地域医療に取り組む

〔座談会〕家庭医になりたい君へ(このメンバーの全員がHANDS関係者となってしまいました)

で少し知ることが出来ます.(以前医療ルネサンスの家庭医の特集で取り上げられていましたが,ネットでは見つけられませんでした)

そのような背景を踏まえて,

はじめの3年間は,極端なことをいうと活動するなと言われているのですね.はじめは言葉を覚え,友達を作り,問題がどこにあるかをしっかり見なさいと.今までの経験だけでものを言ったら間違える,ということで,新しいところにったら3年間は黙っていなさいと.そして次の3年間で,その問題の1つでもいいから,地域の方々と一緒にそこにある資源を使って解決する努力をしなさいと.さらに次の3年間で,その地域の方々にバトンタッチしなさい


これは何も外国に限ったことではない.日本中にたくさんの文化圏があり,様々なお国言葉がある.

家庭医の研修制度が進み,最短で初期2年+後期3年で,一通り家庭医の基礎は作れるようになったが,それから家庭医として本当の意味で地域で何かをするには9年かかるということ.そのぐらいの腰の据え方で.

地域に出た若き家庭医たちよ.まだ皆さんはその地域の「言葉を覚え,友達を作り,問題がどこにあるかをしっかり見る」段階でしかない.「今までの経験だけでものを言ったら間違える」から.

家庭医は腰を据えてじっくりと.

冒頭のインタビューは数ヶ月後にそのHPで読むことが出来るようになると思います.

2008/08/17

    総合医者

息抜きにどうぞ
忘年会のネタとしてよいかな,と

総合医者(バカリズムライブ)

2008/08/16

    専門家というのは、自分の専門においておかしうる間違いをすべて知り尽くした人のことだ

小さな、静かなる持続の力 | lifehacking

より(途中何カ所か省略)

陶芸のクラスで、クラスを二つに分けて、作品の「質」と「量」で評価をしたところ、「量」をこなした方には「質」も付いてくるようになったというのです。このことは、理論立てて考えるよりも先にやってしまう方が早い、また失敗から多くを学べるということを示していると思えます。

また、これが陶芸のというのも注目に値します。陶芸などの芸術は「無駄の排除」あるいは「デザインの欠如」がかえって完成度を増すことが多いですので、数をこなすことはクリエイターたちの手つきから陶芸にとってむだな部分を削ぎ落としていった結果とも言えるものです。



まずは始める。質はあとからついてくる
才能云々よりも、まずは作り出すこと・作っている状態を持続することが、十中八、九、いや、百中九十九くらいの場合は正しい選択になるのだなあ、ということを、いろんなことを小難しく考える癖のある自分は、毎日のように痛感しています。


物理学者ニールス・ボーアは「専門家というのは、自分の専門においておかしうる間違いをすべて知り尽くした人のことだ」と言っています。おかしうるすべての間違いというのは、膨大な量です。大学のとき、理論物理学は論理的に正しいことだけを鋭く細く探求する学問だと思っていたときに、この言葉に接して愕然としたのを覚えています。


こうしてみると、ただ量を生み出すだけでなく:

量をたたき出して、その分野における知識を地と肉に覚え込ませるフェーズ
一定量を持続的に作り出すことによって、生産性の高い状態を自己フィードバックで維持するフェーズ

この二つがからみあっているように見えます。「自分の能力が低い」と思っている人は、「一度まとめて勉強しよう」などと考えずに、毎日最小限の行動を持続して、ゆっくりとそれを広げてゆく方が効果があるのではないでしょうか。


質より量に学ぶ | Radium Software

引用ばかりだが,言い尽くされている感があるので,追加することはありません.

たくさんやろうとすればするほど,たくさんやればやるほど,

「時間的効率」に意識的・無意識的に直面せざるを得ないため,無駄がそぎ落とされる.

しかしながら,

私の持論

「practice makes perfect(繰り返しによって完璧になる)」は間違いである.繰り返しによって確実になるのは,「あなたが繰り返しやっていること」であり,間違ってやりかたを何度も繰り返しやればそれが確実になり,余計に変更が困難になる.


からすると,数やるだけではダメで,やはり,1回1回毎にうまくいったこと,行かなかったことを検証し,次のトライに活かす,いわゆるreflective practiceでなければ改善は望めない.とおもいます.


practice makes perfect(繰り返しによって完璧になる)
改め


reflective practice makes perfect(思索を伴う繰り返しによって完璧になる)


結局Kolbの学習サイクル を何回回すか.ということ.

そして

「専門家というのは、自分の専門においておかしうる間違いをすべて知り尽くした人のことだ」


は名言.

2008/08/05

    本日発表のUSPSTF (D recommendation)

75才以上もしくは10年余命のない人には前立腺癌のスクリーニングは害の方が多いのでやらないで.とのこと


CLINICAL GUIDELINES
Screening for Prostate Cancer: U.S. Preventive Services Task Force Recommendation Statement 
U.S. Preventive Services Task Force
5 August 2008 | Volume 149 Issue 3 | Pages 185-191


75才までは今まで通り I recommendation


あくまで米国の話ですが.

日本泌尿器科学会の見解はこちら
どちらが正しいかは別として,日和見的,事なかれ的ではなく,professional集団として明確な見解を発表する,というやり方は好感が持てます.

そもそもI recommendationなので,正解はなく,あるのは価値観と立場のみ.よくよく患者さんと相談しましょう.ということ.

2008/08/01

    日本人で北米家庭医療臨床留学をした人たち

米国家庭医療学専門医の更新試験、あさってに迫って準備不足。ストレスが極限で、逃避行動のように一気にまとめた。

日本人で米国家庭医療臨床留学をした人たち

個人的に、この数年間人づてで、日本人として北米の家庭医療臨床研修に入った人たちのリスト(卒業大学、プログラム、終了後の進路)などを毎年updateしている。(今年はまだだが)
単純に個人的興味なのだが、最近家庭医を目指しての渡米を考える人も増えており、このリストを見せて欲しいという依頼も時々ある。しかしながら、米国に家庭医を目指してわたる人のすべてが、日本の家庭医療の発展を考えているわけではない、また、後から追いかけてくる人に手助けをしようと考えているとも限らない。渡米を目指す人から相談や連絡を受けて迷惑と感じる人もいるに違いない。単純に米国での生活を夢見てたまたま入りやすかった分野だから家庭医療を選んだとか、いろいろ。
そんな理由で、各個人の了承なしで口コミで集めた情報なので、間違っている場合もあるだろうし、個人情報保護の昨今、本人に無断で他人に情報を提供することは、失礼に当たる。

でもできるだけ後身のサポートはしたい。でも個人情報の問題や失礼は起こしたくない。半年ほど考えていた結果が前述のリンク。「Web上で獲得できる情報は基本的に不特定多数がみることができるので、本人が公開を容認した」と考えてよかろう。ということで、webで得られる情報だけで(その情報源とアクセスの日時も明記した上で)、構築したリスト。当然連絡先などは書いていない。でもこれだけのwebの世の中だから、あとは、各自糸口をたどれば何とかなるだろう。
webにはなっていない出版物も含めれば、もう少し載せられるのだろうが、そこまでの手間はかけられない。
今日の時点で24名。(私の持つリストの60-70%ぐらいの人数)
情報の間違い、また、現在明らかになっていない人の情報がwebで得られた場合は是非連絡をされたし。

ノウハウはこちら。でももはや海外に行かなくても立派な家庭医になれる時代がきています。これだけのプログラムがあるのだから。

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