2008/10/22

    日本家庭医療学会認定 家庭医療専門医試験について

本日付の学会のHP公表より

日本家庭医療学会認定 家庭医療専門医試験について
学会認定後期研修プログラムのプログラム責任者および第1期研修医の皆様へ


一部抜粋

試験の日時は、平成21年7月19日・20日(予定)、場所は東京の慈恵会医科大学の予定です。評価の方法は、今後3学会にて企画されますが、現段階では、現在、日本プライマリ・ケア学会が行っているModified Essay Questionによるペーパー試験とObjective Structured Clinical Examination(OSCE)による実技試験の2つによって行われる予定です。さらに、日本家庭医療学会では、事前に家庭医療に関する数件のポートフォリオを提出していただき、これによっても評価をする予定です。ポートフォリオの書式などは、理事会にて合意が得られ次第、ホームページからダウンロードできるようにする予定です。これらの評価にて、基準以上の成績を収められた研修医には、日本家庭医療学会認定・家庭医療専門医の認定をさせていただきます


なお、再来年の関連3学会の合併によって内容に多少の変更がある可能性がありますが、その認定は3学会の合併後も認められる予定です。



皆様準備の期間は十分あります.

2008/10/21

    水痘の子が来て妊婦検診

風が吹けば桶屋が儲かる的かもしれない.

先日,普段は慢性疾患で通院中の7才の子が予約外で来院.予診票に「発疹」と.予診にいったスタッフが「水痘です」と.piece of cake.

診察しても,まったくその通り.

治療方針,予後の展望,登校基準などお話しして,一般の小児を診る医師はここで恐らく終わり.

第1段階(comprehensive care/immunization)

予防接種の記録を確認.ムンプスまだでしたね.ムンプスは案内が来ないけど是非うっといてくださいね.

第2段階(postexposure prophylaxis)

家族に兄弟,小さなお子さん,水痘まだの可能性の人はいませんか?

なぜこの質問をするか・postexposure prophylaxisがある程度有効だからだ.自費だけど.

するとつれてきたお母さん(38才)が
「私多分まだかもしれません」

緊急予防接種のお話し.100%予防するわけではないので,費用と天秤にかけて.2週間(潜伏期)のあと発疹が出てきたらすぐ来て,治療する方法もあります(成人は重症化するので).でも女性なので跡が残るかも.今日打たない場合は,2週間しても発疹が出なければそこで予防接種を.

でも妊娠の可能性は大丈夫?

「そろそろ2人目をと思っているので.なかなかできないんですけど」

第3段階(妊娠のアドバイス)
妊娠するタイミングは知っていますか?

「xx日周期で...」
最近手に入れたiPod Touch(第2世代)に入れてある,Menstrual Calendar
を取り出して,最終月経を聞いて,
今月はxxにちからxx日まで.来月は...と説明.その期間は1日おきにトライを.

第4段階(preconceptional care)
ところで「葉酸」って聞いたことありますか?

妊娠を考えているなら,と一通りの説明.後でパンフレット持ってこさせます.

第5段階(full basket of service)
よろしければうちでも妊婦検診やってますので,妊娠したらうちで診させてください.

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結局緊急予防接種をやることになり,妊娠は少し先延ばしにして頂くことになったが,恐らく,感染症診療に精通した医師で第2段階まで,女性の診療に精通した医師で(勿論子どもも診る医師で)第3と第4段階まで,自分自身で妊婦検診を実施している医師で第5段階まで行けるのだろう.

主訴だけに対応するreactiveな医療ではなく,proactiveな医療を.というのはもうずいぶん言われているが,本当に幅広い視点と知識がないと(あとは時間も必要),水痘の子どもが来て妊婦検診を勧めるという事にはならないと思う.


case gradually unfolds....(よく使われる表現)


表面的な主訴と違うところに沢山の介入の余地があったり,本当の受診理由,患者さんの深い悩みがあったり,最初にこうだろう,と考えたことと,終わりの形が違う.この不確実性が魅力とやりがい.

これだから家庭医の仕事は辞められない.

2008/10/20

    末梢循環障害の診察所見の意義

McGeeの第2版より(Chapter 50)まとめ



以下の議論は基本的に「有症状時」のこと 症状のない患者のスクリーニングとしては適用されない.


1.最も診断価値の高いもの (gold standardのABI<0.8-0.97に対して)

後脛骨動脈と足背動脈の両方の脈拍を触れない  LR 14.9

何らかの四肢のbruit LR+ 7.3

足に傷や潰瘍の存在  LR+ 7.0

足の非対称性の冷感  LR+ 6.1

後脛骨動脈と足背動脈の両方もしくはどちらかの脈拍を触れる  LR 0.3

足の色,蒼白,皮膚の萎縮,足の体毛の消失,capillary rifill>5secなどは診断価値なし


2.障害の位置,分布の診断

部位は大きくaortoiliac,femopopliteal, peroneotibialの3つに分類される

有症状時 症状のある側の足において

大腿動脈の消失か大幅な減弱はaortoiliacの病変を示唆 (sens 39%, spec 99%, LR+ 31.0, LR- 0.6)

膝窩動脈pulseの存在(aortoiliacやfemopoplitealが大丈夫)かつ,bruitの存在は良い血管再建術の適応となる (sens 80%, spc 75%, LR+ 3.2 LR- 0.3)

Buerger`s test陽性は陰性例よりも重症を示唆 (安静時痛,壊疽,より低いABIの率が高い)

参考:成人においても未だにcapillary rifill timeが使用されるが,末梢血管障害においても,失血や脱水の評価においても成人では参考にならないというevidenceがある


最後の参考の所を知っただけでも十分