先週末にHANDS-FDF2007の最終回を終え,うちの後期研修医より一足先に13名の修了生を出した.多くの修了生やadvisory boardの助けあってのことである.
修了生
informalはプログラムへのフィードバックは既にもらったが(改善の余地はまだまだある),これから近日中にformalなフィードバックをもらい来年への構想の種にする.
毎年年4回も沢山の人を動かして,お金と資源を動かして,大変は大変なのだが,最終回のセッションや発現,課題の内容を見るとフェロー達の成長がはっきりとわかる.(なかなか個別に全部フィードバックできないが,殆ど感心するばかり)
最終回ではいつも「教育カリキュラムの評価」のセッションで,何をどのように測定するか(アウトカムをどう設定するか)についてフェローと議論をする.詳細は置いておいて,一つのアウトカムがここにある.
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日本家庭医療学会
第3回 若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー
2008年2月9日(土)13時~2月10日(日)13時
http://jafm.org/wakate/touki03/index.html
の講師として多くのHANDS修了生が関わっています.
8つのワークショップ中5つ+閉会講演
講師(指導医を除く)24名中10名
指導医1名(岡田以外)
がHANDS修了生
私も指導医として関わっております.
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その他の実績
すごい貢献ではないか.どのようにセッションの内容と担当が決定されたかはわからないが,
希望者先着順であれば HANDS関係者にmotivationの高い人もしくはボランティア精神の強い人が多い
依頼,もしくは選抜であれば,彼らの何らが講師としてのクオリティとして評価されたということ
として良いのではないか.
勿論HANDSの参加者はそもそも,というselection biasを用いての反論も可能である.
前回のentryでも書いたように,自分がこだわるのは,本当にHANDSの効果か,ということより,世の中が変わればそれでよい,つまり研究の視点(新事実の発見 discovory)というより質向上の立場.(application/practice/teaching)
気がついたら5年間日本でFDをやってきたことになる.そして37名が優秀な指導医になる家庭をサポートしたことになる.継続は力なり,数は力なり.
数はまだまだではあるが,「どんな小さな前進であってもいいから,休憩してもいいから絶対に後退しない」のモットーで指導医養成も家庭医の養成も,家庭医療の実践や普及もやってきた.(多少家庭医の養成は迷走中の感はあるが)そうしたら少し一緒に歩いてくれる人が出てきた.飴の一滴一滴が集まってせせらぎに,せせらぎが集まって小川にそうすればいつか大河になる.人間の一生では間に合わないかもしれないけれど,いつかそうなる.そんな根拠のない楽観主義でいられるからずっとやっていける.
なるようになる.なるようにしかならない.出来ることしかできない.
継続は力なり,数は力なり.
「どんな小さな前進であってもいいから,休憩してもいいから絶対に後退しない」
意外に頑固なんです.
2008/02/07
継続は力なり,数は力なり (HANDS-FDF)
2008/02/05
インパクトファクターと読者数(academic value vs fidelity)
書き始めると際限がなくなって,公開できなくなるので,とりあえず.
関連医学雑誌についてのimpact factorをまとめた.
ここ
なぜこんなことを調べているかというと,どこに発表するのがもっとも世の中を変えるのに効果的か(費用対効果)ということを考えているから.これが「どこに発表するのが大学で評価されるか,academic rank のpromotionに効果的か」という質問になると間違いなくimpact factorの高い雑誌という答えであることに疑いの余地はない.ところが,私が興味があるのはそうではなく,
どこに発表するのがもっとも世の中を変えるのに効果的か(費用対効果)
ということであり,多くの論文が実際には診療の現場に影響を及ぼしていない,いわゆるエビデンスー診療ギャップが存在しているため,(fidelityという言葉で下記の論文に詳しく記されている)academic journalへの発表が本当に診療の中身を変えるのに効果的かと疑問を抱かざるを得ない.実際,academic journalを読んで,自分の診療を変えた経験,頻度はどのぐらいであろうか.
Woolf et al.The Break-Even Point: When Medical Advances Are Less Important Than Improving the Fidelity With Which They Are Delivered . Annals of Family Medicine 3:545-552 (2005)
では,その代替え案としてどのような発表手段をどのような基準について選ぶかについて,readership(読者数,leadershipと間違えないよう)を基準にすることを模索する必要があると感じている.
医学雑誌読者数
これをみてみると,日経メディカルが圧倒的な発行部数であることがわかる.もちろん読者数,という点では有名タレントのブログには及ばないが.
しかしここでも,fidelityの問題がつきまとう.発行された雑誌のうちどのぐらいが実際に読まれているのか,そのうちどのぐらいの診療家が自分の診療をその結果変更するのか.何となく,個人的にはacademic journalよりも日系メディカルの方が実際に読んだものが役に立つ割合が高いようなが気がする.
ここは研究が必要なところ(すでにあるのかもしれないが)
このことは大学人やacademicianにはけしからん問題かもしれない.しかしacademic journalといわゆるthrow away journal(アメリカでは,スポンサーの広告がいっぱい入った,読み物的な医学雑誌を,軽蔑を込めてこのように呼ぶ.academic journalは本棚に保管されるが,日○メディ○ルなどは読んだら捨てられるため)の取り扱う内容には多少方針の違いがあり,どちらがよいということではない.(もちろんきちんと吟味されて書かれた,という前提がつくが)
まず,学者としての活動には大きく4種類ある.以下のページを参考にされたい.
1.The scholarship of discovery(発見)
2.The scholarship of integration(統合)
3.The scholarship of application/practice(適用、実践)
4.The scholarship of teaching(教育)
4種類のscholarship
今でも多くの大学人がそう考えていると思われるが,いわゆる学者(大学人)の仕事は1.という定義.その定義に基づけばimpact factorの高い雑誌に採用される研究をすることが学者のとしての価値である,ということになる.
私がこだわるのは,現場がどう変わるか,多くの知識の集積であるガイドラインや質の高いエビデンスのどれだけ多くを実際に患者さんに届けることができるか.現場でのfidelityの向上であり,質改善なのである.これは研究とCQI(continuous quality improvement)活動の目指すところの違いである.高血圧の治療をたとえにすると
研究:血圧を下げると健康寿命が延びる,という普遍的事実を発見,証明すること
QI:証明された普遍的事実がきっちりとできるだけ多くの患者さんに届けられるように工夫,実践の活動をすること.
実際に高血圧と病名がついた患者さんの多くは,管理目標まで血圧が下がると長生きできる,というほぼ普遍的事実があるにもかかわらずその利益の享受ができていない(管理目標まで下がっていない).このギャップには多くの障害があるとされているが(今回は省略),そのギャップを取り除く作業をQIと呼び,また別の視点からは教育とよぶ.
従来は,狭義の1の活動のみが学術活動と考えられてきたが,たくさん世の中に出る論文をわかりやすくまとめること(統合.質の高いreviewをわかりやすくまとめること),現場で体系的に質の向上に努めること(適用、実践),患者さんに,他の医療者に,研修医,医学生にわかりやすく伝えること(教育)もすべて学術的活動とかんがえられている.しかし,それぞれ,体系的であったり,計画的であったり,その効果が測定されている必要があるなど,学問として認められるには少しの縛りはある.
ただ,白い巨塔にいなくても学者として学問はできるということは間違いない.
最終的にもう一つ重要な条件がある.OHSU(オレゴン健康科学大学)の家庭医J.SaultzとS.Fields氏がいっていたことだが,「学術的活動はdissemminationをもって初めて学術的活動となる.」つまり,どれだけすばらしい活動をやっていてもそのことが世界に知らされなければ学問としての価値はないということ.「知識は人から人へ伝えられるまで何の価値も持たない」という動的知識論と整合性をなしている.つまり発表,論文.ということ.私が一番苦手なことだ.
そしてdissemminationにはwebがもっともよい.フューチャリスト宣言の梅田望夫氏の言葉を借りるまでもなく,もっとも多くの人の目にさらされる可能性を秘めているのだから.
さて,impact factorの高い雑誌での発表か,読者数の多い雑誌やメディア,またはwebでの発表か.どれが世界を効果的に変えるのだろう.新たな発見はimpact factorの高い雑誌での発表,それ以外は,うまく媒体を選んで,ということになるのだろう.
現場の臨床家は,自分たちがよいと信じてやっている様々な活動,工夫の効果測定と発表をもっと.
大学人は,純粋な知識の発見以外の学術活動(2.3.4)に対しての大学での正当な価値評価のための認識とその仕組み作りを.
P.S.現場で研究ができないわけでもしてはいけないわけでもない.現場にしか研究の種は転がっていない.しかし,圧倒的に資源が足りない.大学と現場の協働が不可欠である.
impact factorについては,下記の書籍がもっともよくまとまっている.なぜ学術集会の抄録が(suppliment:付録)なのかなども,そして,impact factorが全てではないこともわかる.
- インパクトファクターを解き明かす
- 発売元: 情報科学技術協会
- 発売日: 2004/03
- 売上ランキング: 1039447
posted with Socialtunes at 2008/02/05
1 コメント 時刻: 13:12 ラベル: academic value, career, fidelity, impact factor, readership, scholarship, インパクトファクター, 研究, 読者数