academic medicineより抜粋.
Viewpoint: Why the Clinical Ethics We Teach Fails Patients.
Autumn Fiester, PhD
July 2007, Volume 82, Issue 7
Abstract
研究論文ではなく,総説,論評に当たるもの
医療倫理の専門家による.
医療倫理の古典と呼ばれるBeauchamp&Childressの教科書(私も勉強しました)にあげられる4原則,
autonomy(自己決定権),beneficence(患者利益),nonmaleficence(患者に害を与えない),justice(公平性,公益性)に基づいた倫理教育を行うことで,医療が望ましくない方向に行っているという主張.
(これをprinciplist paradigmと著者は呼んでいる)
この原則論のみをジレンマの際の医師の行動規範とすることで,そのほかの重要な倫理的責務が見逃される.
それは
1)遺憾の念を表す義務 obligation to express regret
2)謝る義務 obligation to apologize
3)修正をする義務 obligation to make amends
4)患者の信頼と自信を確保する義務 obiligation to secure patient's trust and confidence
つまり
1)は誰かが苦しんでいるときに,その苦しみを共感し,認識する義務
2)は間違ったときに人としてはどうすべきか
3)4)は人が誰かに何かを約束し,それが達成されなかったとき
これらを症例を通じて,principlist paradigmからみると十分に対応したと思われる場合も,見逃された医師として(人として)の義務が存在することを主張し,医学教育,医療倫理教育において,principlist paradigm以外の倫理的責務についても考慮した教育をしなければ医療は危ういとしている.
最後に自問自答として,これらの責務は倫理のレベルではなく,単なるコミュニケーションではないかという反論に対し,コミュニケーションがまずいと患者に害が及ぶという視点で,それは倫理の一部であり,倫理の部分とは関係ないと分けるのは誤りであるとしている.
コメント:
1)-4)の責務は確かに当たり前と言えばそうだが,教える側が当然と思っていても教わる側はそうでないこともしばしばある.何か上手くいかないときに,これらの責務について考えることで,上手く解決できることも多いのではないか.
気になったのが,本文中obligationを3つと言ったり4つと言ったりしていたこと.(最後までいくつなのか明確にできなかった)