「やりたい」仕事は「やりがい」につながらない~『職業とは何か』
梅澤正著(評:荻野進介)
講談社現代新書、700円(税別)
より.自分探しは止めなさい.社会の要請にただ応えよ.という発想の転換を提案.
確かにニーズのないものには価値は生じないので.しかし,価値は一方で作り出すことも出来るのです.まあ,ニーズはそこにあって,誰にも気付かれていなかったのものを日の目にさらしただけ,という意味ではニーズのないものに価値は生じない,で間違いはない.
著者は語源や言葉の意味にこだわるタイプらしく、漢和辞典を参照しつつ、「職」とは微細なところまでわきまえ務める仕事のことで、「業」とは難しくて厳しい仕事のことだ、という。元々、古代中国では、役人が果たす(高度で、位の高い)役割が「職業」とされ、生計を立てるためだけの「生業(なりわい)」とは、しっかりした区別があった。
社会が複雑化するなか、仕事に質の高いやりがいや充実感を期待するのであれば、生業ではなく、専門的な職業に就くことを著者は勧めるのである。
「神は細部に宿る」(出典は諸説あり)は大好きな言葉だが.職業とはそういうことだ.
職業は人生資源を得るための活動とのこと.やりたいことほど経済的資源は得られない事の方が多い,というのは私の持論.その代わりに教育的資源,関係的資源などを得ているのだ.もちろん「楽しみ」「やりがい」も.
人生資源は、収入や貯蓄といった「経済的資源」、知識・教養などの「教育的資源」、家族・知人に代表される「関係的資源」、権威・人望などを意味する「威信的資源」の4つに分けられる。確かに、こういう考えに立てば、「適職だと思う」「やりたい」という動機から考える職業選びは、いかにも一面的に思えてしまう。
著者が挙げる3つの誤解として
● 誤解その1「自分に適した仕事が職業である」。
● 誤解その2「人が職業を選ぶ」。
● 誤解その3「一番やりたい仕事につくのが職業である」。
がある.
以前のキャリア論は,3年後,5年後,10年後になりたい姿を思い浮かべて,そこから逆算して,目標まっしぐらに.ということが言われていたが,現在のキャリア論はplanned happenstance theory(計画的偶発性理論.クランボルツ)が主流.大きな成功,発見などは得てして予期せぬ出来事,上から突如与えられた仕事などをきっかけにしている事が多い.ノーベル賞の田中さんなどもそう.ただし,chance favors prepared mind.(準備された心にだけチャンスは訪れる.パスツール)その偶然を前向きに受け入れ,自分にとってのプラスにしようという気概と好奇心が必要.ということを言っているのが,planned happenstance theory.
自分の好き嫌いに好まず降ってきた仕事を何とか自分にとって意味があるものにしようと取り組む.しかも楽しんでやる.
そもそも「選り好みしない」というのがgeneralistの立ち位置なのだがから.
好きだから楽しめるとは限らない.そして好きでなくても楽しむことは出来る.
与えられたものを前向きに,楽しんでやる.それだけ.
最後に
“好き”と“楽しむ”の違い:遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」
を.
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