2008/06/18

    講演回数とうわさ

年に2回,自分の仕事のupdateを締め切りに追われるように行う(なければやらないので)
一つはHANDS-FDFの履歴書の書き方のセッションで自分のものを例として出すためにそれに合わせて(通常冬),もう一回は所属法人の事業報告のため(今,もう締め切りすぎています)

その下書きとしてここにまとめたのだが,

2006年は30回
2007年は20回
2008年は20回(予定)
という感じで去年から減っている.というより意図的に減らしている.しかも今年は予定も含め学会関係のものが多いのでどちらかというと自分のlife workに関わるものや,後進のためなどそれほど金銭報酬の高いものはない(金銭以外の報酬は十分得られるので構わない).

何でこの話かというと,先日のプライマリケア学会の懇親会場で,現在の組織の別の科のレジデントにいわれたこと

「先生最近ケチになったから,きっとお金を貯めて別の土地に引っ越すんだわ,という噂です」
「沖縄に行きたいと言っているらしいですね」

ケチになったのは上記の通り,講演回数を減らしたのと,しかもその中で純粋に金銭報酬による契約のものの割合が減ったから,また子供にかかるお金が増えてきた,(もう一つはある投資活動の回数も減ったため),等の理由で事由になるお金が減った,というそれだけのことなのだが,
最近は本当に火のないところに思いもよらぬ色の煙が立つ.
沖縄も,引っ越しも興味はあるけれどcommittmentではありません.(注)

それだけ僕の動向が一大関心事,ということなのでしょう.

みんなが周りに左右されず独り立ちになれることを願います.

(注)最近の僕の中でのテーマ.「興味とcommittmentを分ける」家庭医は興味分野が多くて.全部に関わると本当に大事なこと,やりたいことの時間が無くなってしまうのです.

2008/06/17

    高齢者は避けて欲しい薬のリスト

最近日経メディカルでも小さく取り上げられたので知っている人もいるだろう.

国立保健医療科学院の疫学部 今井博久氏による仕事

高齢者は避けて欲しい薬のリスト

高齢者全てに注意すべき薬剤のリストと,特定の疾患や状態を持つ高齢者で注意すべき薬剤のリストをまとめ,それぞれに問題となる副作用などが起こった場合の重症度(重要度)がつけられている.

詳細は上記リンク内のpdfを見ていただくとして,自分があまり意識していなかったもの,それから,以外に頻繁に使っているものを抜き出してみた.

インダシン CNS副作用
トリプタノール
トレドミン
アダラート 便秘
H2blocker せん妄
チラージン(乾燥沫のみ) チラージンS(合成製剤) は別
パナルジン 
ジフェンヒドラミン
抗コリン作用の強い抗ヒスタミン アタラックス,ペリアクチン,ポララミン
SSRI SIADH
腎機能低下症例でのH2blocker

トリプタノールについてはかなり頻繁に使用するので,副作用などは把握しているが,やはりリストでやり玉に挙げられると...もちろん禁忌のリストではないのだが.H2Blockerも安全な薬,との印象が強いのではないだろうか.


2001年ー2006年の 4045の論文 からのリスト作成とのこと.
このリストを取り上げた記事では日本のBeers Criteriaを目指す,という但し書きがついていることが多いので,今まで知らなかったBeers criteriaについて調べた.

Wikipediaにも存在
Beers Criteria

1991年にオリジナルが発表.今回の2003年に3度目のupdateが行われている,”Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults”のリスト.

The Center for Clinical and Genetic Economics (CCGE), established in 1999 in the Duke Clinical Research InstituteのHPにリストとその用法へのリンクがまとめられている

Potentially Inappropriate Medications for the Elderly According to the Revised Beers Criteria

2003年の論文は以下で見られる.



Donna M. Fick, PhD, RN.et al. Updating the Beers Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults. Results of a US Consensus Panel of Experts. Arch Intern Med. 2003;163:2716-2724. (Vol. 163 No. 22, December 8, 2003)


リストの厳密な定義は以下の通り

(1) medications or medication classes that should generally be avoided in persons 65 years or older because they are either ineffective or they pose unnecessarily high risk for older persons and a safer alternative is available and (2) medications that should not be used in older persons known to have specific medical conditions.


Results This study identified 48 individual medications or classes of medications to avoid in older adults and their potential concerns and 20 diseases/conditions and medications to be avoided in older adults with these conditions. Of these potentially inappropriate drugs, 66 were considered by the panel to have adverse outcomes of high severity.


全文は読まないとしても以下の3つの表には目を通して置いても良いだろう

Table 1. 2002 Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults: Independent of Diagnoses or Conditions

Table 2. 2002 Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults: Considering Diagnoses or Conditions

Table 3. Summary of Changes From 1997 Beers Criteria to New 2002 Criteria

注意するべきは”日本のBeers Criteriaを目指す”とした今井のリストはBeers Criteriaの日本語訳ではなく,オリジナルに文献検索から行われ,作成されたリスト,ということ.挙げられた薬剤の一致などの検証はしていないが,一部重ならないところもあると思われるので注意.また今井のリストは文献検索のみのようであるが,(原文の調査方法には当たっていないので定かではないが)Beers Criteriaは論文検索を元にして,専門家集団がそれを何度か叩いて調整して出来たconsensusということ.方法論はデルファイ法と呼ばれ,前回のエントリーで詳述した.

デルファイ法(未来予測,合意形成,質的研究)

いつまでたっても新しいことがでてくるなぁ.Beers Criteriaも2003年の発表...

    デルファイ法(未来予測,合意形成,質的研究)

デルファイ法
これで何のことか解る人は以下は読む必要はないだろう.

元々は予測が難しい未来のことを予測するための方法
最近はそれを転じて合意形成の方法としても用いられることが多く,また質的研究者にとっては一つの方法として習熟しておくべき方法である.

デルファイはギリシャのアポロン神殿がありそこで様々な神託が得られる場所であるが,それとは直接は関係なく,以下のリンクにあるように,

@IT総合トップ > 情報マネジメント > 情報マネジメント用語事典 > デルファイ法
デルファイ法 delphi method / delphi technique


デルファイ法は1950年代に米国のシンクタンクであるランド・コーポレーションで開発されたものである。もともとは、米空軍が専門家の意見を応用して「ソ連の戦略立案者の立場から、米国産業を目標にしたときに必要になる原子爆弾の数の推定する」研究である“Project Delphi”をランドに依頼したことに始まる。デルファイとは、神託で有名なアポロン神殿のあった古代ギリシャの地名である。


オリジナルの出典は

Dalkey N, Brown B, Cochran S. The Delphi Method, III: Use of Self Ratings to Improve Group Estimates. Santa Monica, Calif: Rand Corp; November 1969. Publication RM-6115-PR.
ちゃんとRand Corp.の名前がはいっています.

必要な原爆数を推定するプロジェクトを神託に関連するデルファイの地にちなんで“Project Delphi”と名付けるあたりが,どうよ.なのだが,方法論としての記述は上記に詳しい.(非常に詳しいので一読を)

専門家グループなどが持つ直観的意見や経験的判断を反復型アンケートを使って、組織的に集約・洗練する意見収束技法。技術革新や社会変動などに関する未来予測を行う定性調査によく用いられる。

 デルファイ法ではまず、予測したいテーマについて詳しい専門家や有識者を選んで意見を求める。得られた回答は統計的に集約して意見を取りまとめ、これを添えて同じ質問を各専門家に対して行い、意見の再検討を求める。この質問とフィードバック、意見の再考という過程を数回、繰り返すとグループの意見が一定の範囲に収束してくる。この意見集約によって、確度の高い予測を得ようというわけである。

 一般に、専門家同士の意見の集約・合意を得る方法として、会議や審議会、パネルディスカッションといった意見交換法が用いられるが、これらの方法は「グループにおける優位者や権威者、声の大きな者の影響」「テーマと無関係な意見、反対のための反対」「意見の統一に対する圧力」などによる偏りが考えられる。

 デルファイ法は「匿名の回答」「反復とコントロールされたフィードバック」「統計的なグループ回答」という特徴を持ち、師弟関係や友人関係といったテーマと関係のない影響力を極力排除するよう配慮される。


ある意味多数決の方法とよく似ており,現在の不特定大多数の意見が真実に近くなる(大統領選の勝者も,フットボール決勝戦の勝者も正確に予測できた)というウェブ進化論の指摘する「民意」のことなのだと思う.


 デルファイ法は広い分野で受け入れられたこともあって、初期のころからその妥当性に関する議論が活発に行われてきた。デルファイ法の問題としては「専門家の定義や選出方法」「アンケート質問の適正さ」「意見一致への強要や誘導」「集約手法の信頼性や妥当性」「未来予測の限界」などが指摘される。デルファイ調査を実施する際には、手法に内在する限界を十分に理解したうえで、適切に行うことが必要である。

はてなダイアリー > キーワード > デルファイ法

医学分野ではmodified Delphi(デルファイの変法)が用いられることが多いが,何がmodifiedなのかはまだ勉強不足.

もう一つ説明のリンクを.

■ デルファイ法

実際の使用例はもともとの将来の技術予測では,

[技術予測調査] ( 2001.7 文部科学省 発表)pdf

[連載]日本の科学技術の現状と今後の予測 デルファイ調査‐概要

先日の家庭医療学会でも私が座長をさせていただいた口演の一つで使用されていた.

L-08 寺田 豊 デルファイ法を用いた地域健康ニーズの把握

この発表では,ニーズの把握の妥当な方法としてのデルファイ法,というよりも特に地方ではまだまだ医者に向かって色々意見が言えないので,その敷居を取り払うことと,住民がみんなで意見を集約した,という当事者意識を高めるための(その結果そこで策定された計画には積極的な参加が得られる)「エンパワーメントツール」としてのデルファイ法という扱いをしていた.

以前のエントリーでデルファイ法を用いた論文を2件レビューしたが,

家庭医療の特徴や定義についての研究2編

家庭医とはどの様な仕事か,家庭医療の将来はどうなっているべきかなどの,意見集約方法として比較的使いやすいと考えられる.

最後に,医学研究で使われる例といて,具体的にmethod sectionをレビューするのが最もわかりやすいと思われるので,最近読んだ


Donna M. Fick, PhD, RN.et al. Updating the Beers Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults. Results of a US Consensus Panel of Experts. Arch Intern Med. 2003;163:2716-2724. (Vol. 163 No. 22, December 8, 2003)


のmethod sectionを読んでみよう.

RESEARCH DESIGN

The modified Delphi method is a technique to arrive at a group consensus regarding an issue under investigation that was originally developed at the RAND Corporation (Santa Monica, Calif) by Olaf Helmer and Norman Dalkey.25 The Delphi method is a set of procedures and methods for formulating a group judgment for a subject matter in which precise information is lacking (such as medication use in older adults). The Delphi method provides a means to reach consensus within a group of experts. The method relies on soliciting individual (often anonymous) answers to written questions by survey or other type of communication. A series of iterations provides each individual with feedback on the responses of the others in the group. The final responses are evaluated for variance and means to determine which questions the group has reached consensus about, either affirmatively or negatively.

modified Delphiについての説明.何がmodifiedかは相変わらず不明.正確な情報が不足している領域においてグループで何らかの決定を下すための手順と方法論と.

順序としては
1.デルファイ法の最初の1巡に使うための調査票の作成
2.デルファイ法に参加する専門家集団の選定
3.デルファイ法の実施

と,実施までに準備が必要.

1を3段階に分割
phase 1 1994年から2000年までの地域に住むか入居の(入院でない)高齢者での投薬に関する論文(副作用,使用問題などのキーワードと絡めて)を抽出
phase 2 それらで見つかった論文の参考文献を全て手作業で当たり,更に関連論文を抽出し,それらを加えて論文のリストとする.
phase 3 次のステップで選ばれる専門科集団にデルファイ法の1巡目の後にそのリストを見せ,追加すべき論文がないかたずね,あれば加える.
そのあと,研究者2名が独立して,その論文の
研究デザイン,対象となった薬剤,結果のサマリーと主要ポイント,対象となった薬剤の種類,分類,副作用の重症度
についてまとめる.

注:この論文リストの作成方法はsystematic review, meta-analysis, cost-effectiveness studyなどの2次研究の元論文の収集方法として典型的である.ただし,より厳密に,論文検索の包括性(comprehensiveness of literature search)を保証するには,大学院の修士,博士論文,現在進行中の研究,製薬会社の持つ未発表のデータ,終了したが論文になっていないデータ,学会発表(抄録)のみで,論文になっていないもの,についても検索をかけることが必要.

LITERATURE REVIEW

The selection of articles for formulating the survey involved 3 steps and was phase 1 of the study. First, we identified literature published since January 1994 in English, describing or analyzing medication use in community-living (ambulatory) older adults and older adults living in nursing homes. From that, we created a table and bibliography. We used MEDLINE, searching with the following key terms adverse drug reactions, adverse drug events, medication problems, and medications and elderly for all relevant articles published between January 1994 and December 2000. Second, we hand searched and identified additional references from the bibliographies of relevant articles. Third, all the panelists were invited to add references and articles after the first survey to add to the literature review. Each study was systematically reviewed by 2 investigators using a table to outline the following information: type of study design; sample size; medications reviewed; summary of results and key points; quality, type and category of medication addressed; and severity of the drug-related problem.

EXPERT PANEL SELECTION

The panel of members were invited to participate via letter by the 4 investigators and a consultant and represented a variety of experience and judgment including extensive clinical practice, extensive publications in this area, and/or senior academic rank. They were also chosen to represent acute, long-term, and community practice settings with pharmacological, geriatric medicine, and psychiatric expertise. Lastly, they were selected from geographically diverse parts of the United States. We initially invited (via regular mail) 16 potential participants with nationally and/or internationally recognized expertise in psychopharmacology, pharmacoepidemiology, clinical geriatric pharmacology, and clinical geriatric medicine to complete our survey. Our response rate for the initial invitation to participate as a panelist was 75% (12/16). Our final panel thus consisted of 12 experts who completed all rounds of the survey.

2.専門家集団の選定
4人の研究者と,彼らに相談を受けたコンサルタントにより臨床経験が豊富で,この領域での論文が多いか,大学で高いランク(教授など)にある人達を代表するようにメンバーが同定され,手紙により参加の招待をする.また,メンバーは,急性期,慢性期,地域,のそれぞれの臨床現場,また薬理学,老年医学,精神医学の専門分野を代表するように留意された.最終的には米国の様々な地域をまんべんなく代表するようにも留意した.最終的に16名に招待状が送られ,75%の12名がパネルメンバーとなり,デルファイ法の全ての過程に参加した.

注:この対象抽出法は質的研究によく見られる方法で,量的研究で良く用いられる,random samplingに対し,意図的サンプリング,クラスターサンプリングなどと呼ばれる.

3.デルファイ法の実施
先ず第1巡目のためのたたき台の作成.
4つのセクションに分けた
セクション1,2は1997年の基準のレビュー(今回の研究は1997年のcriteriaのupdateが目的なので)
セクション3,4は今回のupdateに加える必要があるかもしれない薬剤及び,薬剤と疾患の組み合わせのリスト.29この候補が加えられた.
最後のセクションに,セクション1-4以外で加えるべき薬剤がないか意見を求めた.
1巡目実施.

DATA COLLECTION AND ANALYSIS

We used the systematic review of the literature to construct the first round questionnaire. The first-round survey contained 4 sections. Parts 1 and 2 reviewed the latest 1997 criteria. Parts 3 and 4 were medications added for the 2002 update for medications alone (part 3) and medications considering diagnoses and conditions. Parts 3 and 4 included 29 new questions about medications or medication classes and conditions. The last question in part 4 asked panel members to add medications to the list. The panel was then surveyed via Delphi technique to determine concordance/consensus with the round 1 survey and invited to add additional medications prior to and during the second-round meeting.

専門科パネルの意見により,薬剤にその重症度の程度を加えることになった

We created the second and third questionnaires (severity ratings) from panel input and the results of the previous round survey. We completed all mailed and face-to-face rounds between October 2001 and February 2002. We constructed the questionnaire statements according to the original Beers criteria published in 1991 and the updated criteria published in 1997. The instructions accompanying the survey asked the respondents to consider the use of medications only in adults 65 years and older. The second-round survey included the statements included from round 1 and any statements added by the experts from the first round. In the second round and the face-to-face meeting, the respondents were given information about their answers and the anonymous answers of the other members of the group and were given the opportunity to reconsider their previous response.

ここは推測:
それぞれの薬剤に最も重要を1とし,どちらとも言えないを3,最も重要ではないを5とした評価をつけてもらい,その薬剤毎の平均評価の95%信頼区間が3を含むものと,3を含まずそれよりも小さいものを2巡目のリストに加えた.
(この棄却の基準がオリジナルと違うのでmodifiedといわれるのではないか.あとはface-to-face meetingが実施されたところがmodifiedだろう)

After analyzing the responses from the first round of the survey, we examined each question for inclusion or exclusion in the revised criteria or for further consideration in the second round of the survey. We calculated the mean rating and corresponding 95% confidence interval (CI) of each statement or dosing question collected from the first round of the survey. Those statements whose upper limit of the 95% CI was less than 3.0 were included in the updated criteria. Those statements or dosing questions whose lower limit of the 95% CI was greater than 3.0 were excluded from the updated criteria. Statements whose 95% CI included the value of 3.0 were included for further determination in the second-round face-to-face meeting.

The face-to-face meeting was convened on December 10, 2001, in Atlanta, Ga. Each panel member was given the results of the first-round survey and the added medications (from the other panel members) to review approximately 10 days before the meeting. For statements that needed further examination (neither included or excluded during round 1), each rater was given his or her previous rating and the mean rating of the group of experts in the second survey.

Any additional statements or dosing questions that had been made on the open-ended portion of the first round of the survey by any expert was included in the survey for the second round. Forty-four questions were added by expert panelists during round 1 of the survey, and 9 questions were added during the round 2 in-person survey and voted on during the in-person meeting. These questions/medications made up part 5 of the survey. Twenty-four questions from parts 3 and 4 had 95% CIs greater than 3.0 after the round 1 survey. During the second-round face-to-face meeting, the group debated these remaining statements and then rerated them using the same Likert scale. The mean rating and 95% CI were calculated. The technique used for the first round for inclusion or exclusion of the statement or dosing question in the updated criteria was used. Those statements whose 95% CI included 3.0 were excluded from the updated criteria. Lastly, in January 2002, we surveyed panelists on a 5-point scale for the severity of the potential medication problem.

ここまでを読む限り3巡目で修了したようで,そこで合意に達したかどうかも不明


以上のような感じ,イメージできただろうか.

うちの研修プログラム,診療所では時々重要決定にこの方法を使うことがあります.

追加:おそらくmodified Delphiに相当するmini-Delphiについての表現を英語のWikipediaにて発見.
Delphi method From Wikipedia, the free encyclopedia
Delphi法の説明についてもこちらも別の視点から詳細に書いてあります.方法論の限界についてもAcceptanceのセクションにあります.専門科の暴走とか.

The technique can be adapted for use in face-to-face meetings, and is then called mini-Delphi or Estimate-Talk-Estimate (ETE).

2008/06/16

    研修を終え現場に出るレジデント達への十戒

古典(Classic)を読むことは非常に大切である.

日本では余り知られていないが,1982にまとめられたG.Gayle Stephensの1965年から1980年までの23編の著作集”The Intellectual Basis of Family Practice”は米国の初期家庭医療を形作る基盤となった思考である.
先日このオリジナルを手に入れる機会に恵まれ,少しずつ目を通している.
その巻末に,"A Decalogue For Family Practice Residents Entering Practice(研修を終え現場に出るレジデント達への十戒)"と題された付録A .1979年 サウスキャロライナ大学の家庭医療講座での講演の一部ということでたった1ページなのだが,ここに挙げておきたい.(日本語訳と訳者注は私)

A Decalogue For Family Practice Residents Entering Practice
研修を終え現場に出るレジデント達への十戒

*Don't give up the reform ethos. Keep on the side of responsible change in education , practice, and social justice.
改革の気風をあきらめるな.教育,臨床,そして社会正義に置いて責任を持った変化の一端を担い続けよ.

*Don't lose faith in the power of relationship and the therapeutic use of self.(Or, don't hire anybody to save you from spending time with patients.)
医師患者関係の力と,治療としての医師自身への信念を捨てる事なかれ.(つまり,患者さんと過ごす時間を節約するために誰かを雇うようなことはするな)

*Don't turn your practice into a mere business. It may not be less, and it should be a great deal more.
診療を単なるビジネスにしてしまうな.それ以下では当然ダメだが,それよりもずっとずっと崇高なものでなければならない.

*Learn to distinguish between uncertainty and ignorance; only the latter is remediable and potentially culpable.
不確実なものと無知(無視)の区別がつけられるようになりなさい.後者だけが修正可能で,場合によっては有罪となる.(無知や無視のせいではない本当に不確実なものはどうしようもないが.勉強不足によるものは許されない)

*Find some way to practice charity; i.e., willingly give a part of your services consistently to those who cannot pay.
慈善を実践する何らかの方法を見つけよ.あなたの能力を継続的に,弱き者に喜んで提供しなさい.

*Try to see that the groups in which you hold membership are at least as moral as you are.
あなたが所属する集団のメンバーは少なくともあなたと同じぐらい倫理的であると常に考えるようにせよ.

*Humanize and personalize the microsystems in which you work.
あなたが働くマイクロシステム(通常は診療所や診療環境のこと)を出来る限り人間的で,個人的なものにせよ.(無機質で殺風景なものでなく)

*Act at all times as if the patient is fully autonomous; the weaker the patient is , the more vulnerable you are to violating his/her personhood.
患者は常に自己決定権を持つものとして振る舞え.患者が弱ければ弱いほど,あなたはその人の人間の尊厳を簡単に破壊しやすい状況になる.

*Reflect on your professional experiences. Within the bounds of protecting patients' privacy, think, talk, and write about your clinical stories.
自分のプロとしての経験を振り返りなさい.患者のプライバシーを尊重した上で,臨床の様々な物語について,よく考え,よく話し,書きなさい.

*Worry less about patients becoming overly dependent on you than about your becoming undependable.
患者があなたに必要以上に依存することを心配するよりは,あなたが頼りがいが無くなる・あなたに頼れなくなることを心配しなさい.


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ほぼ30年前の言葉だが現在の北米家庭医療がその流れをくんでいること,今改めて重要と考えられていることがそのときに既に重要視されていることなど驚く.
振り返りreflectionの重要性は言うまでもない.FFM(future of family medicine)Projectでは家庭の才能の一つとして"humanizing medical experience"というのがあるが,ここに源流を発するのではないか.
耳の痛い話も多い.

Gayle Stephensは米国家庭医療の基礎を作った重要な一人とされている.Keystone conferenceについては知る人もいると思うが,そのI, IIについての発起人.IIIでは発起人4人"the quartet"の一人.
Keystoneについては次を.

KEYSTONE III アメリカ家庭医療学の自己再発見への旅

以前から自分のteachingの中で,”歴史家としての家庭医”ということを時々話してきたが,出展については不明だった."The Intellectual Basis of Family Practice"の第14章が"The Clinician as Historian"と題されている.彼が言い出しっぺだった.

この本をざっと眺めてみると,今我々generalistが大切にしていることが殆ど書かれている.
医学が進化していないのか.generalismが進化していないのか,それとも,あまりに本質的なので,30年の時代を超えて変わらないのか.

The Intellectual Basis of Family Practice
  • 発売元: Society of Teachers of Family
  • 発売日: 1982/06

    学会賞受賞演題スライド,読み原稿,審査基準

過去の栄光にすがるつもりはありません.皆さんに乗り越えてもらうのが目的です.

日本家庭医療学会 学会賞 受賞!

共同研究者全員の許可が得られましたので,スライドと読み原稿をアップしておきます.当日は6分発表4分質疑応答のところ,リハーサルでは7分ちょっとだったのが,8分をオーバーしています.読み原稿は改善の余地有りです.

審査基準については,学会賞受賞の発表の場で公開していたので,問題ないと思います.以下の9点です.

-先行研究のレビュー (0, 25, 50, 75, 100)
-研究方法の適切さ (0, 25, 50, 75, 100) 
-考察の論旨 (0, 25, 50, 75, 100)
-オーラルプレゼンテーション (0, 25, 50, 75, 100)
-スライド・AV機器の効果的利用 (0, 25, 50, 75, 100)
-家庭医療との関連性 (0, 25, 50, 75, 100)
-発展性のある研究 (0, 25, 50, 75, 100)
-研究全体の印象 (0, 25, 50, 75, 100)

(     )/800 +「倫理的配慮」(あり、なし)

我々の演題を含め,それぞれの発表が何点だったかは公表されていません.

以前のエントリーでも書きましたが,学会としてはより質の高い研究が出てくることを願って,学術集会や学会賞などを設ける訳なので,最初から判断基準を開示して,最低限の形式を整えるのは大前提として,そこからどうやって他者に差をつけるか,で切磋琢磨できる方が良いのではないでしょうか.また得点についても公表しなくとも,それぞれの発表者にはフィードバックをかけるとよいと思います.学会賞を決める為の総括的評価であると同時にそれぞれに対しての形成的評価になったほうがよい,ということです.

効果的な学会抄録の書き方


メインとなったこちらでも,話題として取り上げています.

2008年06月08日
第23会日本家庭医療学会 学会賞受賞!



2008年 6月 4日 第3回 日本家庭医療学会 学会賞 受賞演題 於:第23回 日本家庭医療学会 学術集会 2008年5月31日、東京 医学生は家庭医療コース参加の結果 どのように変わるのか?              川崎市立多摩病院 麦谷 歩 武者 幸樹子 喜瀬 守人 亀谷 学 岡田 唯男   鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山 0川崎市立多摩病院の麦谷歩と申します。よろしくお願いいたします。「医 学生が家庭医療講義を受けて、どのように変わるのか」というテーマで発表 させていただきます。 2008年 6月 4日 背景:日本のプライマリ・ケア卒前教育(先行研究)  【全国70の医学校でのプライマリ・ケアプログラム】            PC講義     42%            地域医療実習 65%      PC教育は現状で十分であると思う 1割未満 日本でのプライマリ・ケア卒前教育は不十分と認識されている (高屋敷明由美他:プライマリ・ケアに関する卒前医学教育カリキュラムの現状.  医学教育. 2003,34(4):215-222) 1 1背景 この先行研究では、 プライマリケアの講義を導入している大学は42%、地 域医療実習を導入している大学は65%ありましたが、その内容が学生にと って十分であると考えている担当者は1割に満たず、多くの医学校がまだプラ イマリケア教育が足りないと認識していました。 2008年 6月 4日 背景:先行研究 • 卒前の家庭医療講義の評価を行っている研究は少ない 対象学年 佐藤他 (2003) 柴田他 (1999) 橋本他 (1987) 鈴木他 (1996) 松村他 (1997) Laura E 他 (2003) 5 介入 開業医実習(3日間) 方法 前後のフォーカ スグループ アンケート アウトカム 開業医の イメージ 開業医の イメージ なし 結果 イメージの変化, 開業医が行 う医療に理解 イメージが変化したと回答 6 講義, 開業医実習 講義(1日), 開業医 実習(2‐7日間) 開業医実習(3日間) 2,3,4 報告書 開業医の医療に理解 4,5 学生時実習 した研修医 報告書 なし 開業医の医療に理解 医の倫理,家庭医機能を学ん だ,進路に影響 開業医実習 アンケート なし FPに興味の ある学生 FP主導の講義,実 習,WS,SGDなど アンケート FPに対する認識は,FP主導で ないものと変化なし 2 2背景 また、家庭医療やプライマリケアの講義や実習の報告はいくつかありますが 、海外を含めその評価を行っている研究は少なく、特に講義の評価を行って いるものはほとんど見当たりませんでした。 2008年 6月 4日 方法 【対象】 ‘07年に選択科目「家庭医療」を受講した第4学年10名 【介入】 60分の講義12回(概要後述) 【比較対象】 介入前 【方法】 質問紙法によるmixed method       学生の評価には影響しないこと、匿名性の保持を明示 【アウトカム】  ① 家庭医療、プライマリ・ケア、総合診療に対してのイメージ  ② 症例5件について関わるべき専門医の列挙(設問後述) 【分析】  ① イメージの変化 → 質的  ② 家庭医の診療範囲、能力の理解の変化   →家庭医を含むべきと考えた学生の増加 (McNemar test)   →必要と考えた専門分野の数の平均値 (paired-t test) 【倫理的配慮】    聖マリアンナ医科大学生命倫理委員会 承認番号 第1386号 3 3方法 方法です。聖マリアンナ医科大学では、2002年より第4学年の選択科目 として「家庭医療」という科目を設けています。今回、2007年にこの講 義を受講した、第4学年、10名を対象に、全12回の講義を実施し、受講前 後に質問紙による調査を行いました。この研究は聖マリアンナ医科大学生命 倫理委員会による承認を得ています。 アウトカムは、1つが、受講前、受講後それぞれの時点での家庭医療、プラ イマリケア、総合診療に対してのイメージの自由記載と、もう1つは、症例5 件を呈示し、それぞれに関わるべき専門医を列挙してもらうという内容です 。 分析はイメージの変化を質的に評価し、症例に関わるべき専門医の回答から 、家庭医の診療範囲及び能力の理解の量的変化を統計学的に検定しました。 2008年 6月 4日 方法 【講義の目標】   「家庭医療」「家庭医」とはどんな医療、医師であるかを講義を通して具体 的イメージとして捉えられるようになる。 【質問内容① イメージについて】 a. 現時点であなたが持っている「家庭医療」「プライマリ・ケア」「総合診療」に ついてのイメージを教えてください。 b. 「家庭医」がいわゆる「専門医」より優れている・得意としている所が、ある とおもいますか。あるとしたらどんな所でしょうか。 c. いわゆる「専門医」の方が「家庭医」より優れている・得意としている所が、 あると思いますか。あるとしたらどんな所でしょうか。 4 4方法 介入である講義の目標は「家庭医療」「家庭医」について講義を通して具体 的イメージとして捉えられるようになることとしました。 ひとつめのアウトカム、家庭医療、プライマリケア、総合診療に対するイメ ージについての質問内容はここに示すとおりです。 2008年 6月 4日 方法 【質問内容② 家庭医の診療範囲、能力について】  以下の症例の普段の定期的な通院として、どのような分野の医師にかか れば良いと思いますか。「家庭医」を含めて必要最小限の分野を挙げて ください。   症例1.   4歳 男児: 喘息、両親が喫煙者   症例2. 49歳 女性: 糖尿病/高脂血症/高血圧、更年期様症状あり、                 夫は単身赴任中、姑と同居、最近ふさぎがち   症例3.  65歳 男性: 5年前に前立腺癌手術、術後安定   症例4.  23歳 女性: 喘息でステロイド吸入中、最近妊娠が発覚   症例5.  17歳 女性: ニキビに悩んでいる、最近彼氏ができた 5 5方法 もう1つのアウトカムである「家庭医の診療範囲、能力についての評価」は 、ここに示す症例5件を呈示し、「症例の普段の定期的な通院として、どのよ うな分野の医師にかかればよいと思いますか。「家庭医」を含めて必要最小 限の分野を挙げてください」と質問しました。どれも基本的には家庭医単独 で対応できると思われるものです。 2008年 6月 4日 講義内容 題目 家庭医療とは 生物心理社会的モデル 地域志向型医療 患者教育・行動変容 患者のライフサイクルへの取り組み 幼小児期へのアプローチ 思春期へのアプローチ 成人へのアプローチ、婦人の健康 壮年期のケア 老年期のケア 家庭医療におけるEBMの活用 日本で家庭医になるために レク チャー ロール プレイ ディスカッ ション 講師 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 6 ● ● ● ● ● ● 小野沢滋 亀田総合病院在宅医療部 松下明 奈義ファミリークリニック 森敬良 兵庫民医連家庭医療学センター 岡田唯男 亀田ファミリークリニック館山 田頭弘子 The University of Manchester ● ● 6講義内容 介入である講義内容はスライドの通りです。内容は、疾患各論ではなく、家 庭医の考え方の基盤となる理論について、教育方略はできるだけ具体的な症 例を多く用い、ロールプレイやディスカッションを取り入れて、参加型学習 を重視しました。講師は、約半数が外部講師です。 2008年 6月 4日 結果: 基礎データ、質的分析 回収率    前 10名(100%) 後 9名( 90%) 家族に開業医や家庭医、プライマリ・ケア医がいる割合  3名(33%) ① 家庭医療、プライマリ・ケア、総合診療のイメージ 家庭医療  受講前 「地域」という言葉はみられるが、「家庭の医学」「内科総合」など漠然  受講後 「地域」という言葉が増加。「家族」「要望」「ニーズ」という言葉が新た        に見られた。 プライマリ・ケア  受講前後とも 総合、終末期、ファーストタッチ、振り分け などのイメージ 総合診療  受講前後とも 総合、内科、ファーストタッチ、振り分け、低い専門性 などの  イメージ 7 7結果 結果を示します。回収率は講義前が10名100%、講義後は9名90%で した。また家族に開業医や家庭医、プライマリケア医がいる割合は3名33%で した。 イメージに関する回答では、家庭医療に関しては、受講前は「地域」という 言葉は見られるものの「家庭の医学」「内科総合」「よくわからない」など 漠然としたイメージでしたが、受講後は「地域」という言葉が増加し、「家 族」「要望」「ニーズ」といった言葉が新たに見られました。対照としての プライマリケア、総合診療のイメージは、総合、振り分け、ファーストタッ チなどのイメージがあがりましたが、受講前後で大きな変化はありませんで した。 2008年 6月 4日 結果: 質的分析 「家庭医療のイメージ」(受講前) • • • • • • • • • • • 内科総合 町の内科のお医者さん かかりつけ医 薬を飲むだけで、具体的な治療は行っていない(家庭の医学) 名前は聞いたことがあるが、具体的なことは知らない 軽度の症状を診る 地域に密着した医療 在宅医療 女性に向いていそう アメリカの家庭医 敷居が低い、患者との距離が近い 8 8結果 これが受講前の家庭医療のイメージとして挙げられたものです。 2008年 6月 4日 結果: 質的分析 「家庭医のイメージ」(受講後) • • • • • • • • • • • • • • • • • • • 患者の要望にできるだけ多く答え られる 多くのニーズに答えることができる 地域のニーズに合わせた分野の 医療をする医師 地域に密接な関係を持った医師 で、総合的な診療を行える 地域により密着した、病気だけでな く家族や社会を診る診療 家族など周囲の環境も含めて患者 さんを診る家族・周囲の人も治療 対象にできる 患者を家族や社会の中の一人とし て捉える 疾患だけでなく、家族背景や予防 に力を入れている 具合が悪くなったらまず行く医者 患者の人生に影響できやすい 一つの専門分野で、きちんとしたト レーニングをつむことが必要 あらゆる分野の患者をみれる より社会性に優れ、「患者」という 人の支えになりうる 赤ちゃんから老人まで全ての世代 の人を診る ライフサイクルを通して診る 全体的に総合診療を行える 専門医より多くの疾患に対応でき る 患者が来たらどんなものでも診る Generalist 9 9結果 これが受講後の家庭医療のイメージとして挙げられたものです。「家族」「 地域」「ニーズ」「ライフサイクル」など家庭医療を特徴づける言葉が増加 しています。 間 2008年 6月 4日 結果: 量的分析 (*は統計学的に有意) 01234567 喘息 49歳 更年期等 65歳 前立腺癌 23歳 喘息,妊婦 17歳 ニキビ,彼 ,-' 4歳 ) ( ) P= 0.0455 * P= 0.0833 P= 0.6547 P= 0.0253* P= 0.0047* P< 0.0001* #!" 01238 0129:;2 :;238 $!" %!" &!" '!!" ,-# ,-/ ,-$ ,-. *+ ( ) ( ) ( ) ( ) ( !" <=>:;23?@ 10 10結果 次に症例を提示して、関わるべき医師の分野を挙げてもらった結果です。左 の薄い青色が「家庭医のみで診られる」と答えた者の割合、濃い青色が「家 庭医に加え、その他の専門医」を挙げた者の割合、黄色は「専門医のみ」を 挙げた者の割合です。 ご覧のように、どの症例においても介入後において青色部分が大幅に増加し ており、併診を含め「家庭医」が必要と考えた学生の割合が増加しています 。各症例に必要最低限の専門分野を挙げてもらったので、家庭医でなければ 提供できないケアの存在が認識されたと考えられます。 間 2008年 6月 4日 結果: 量的分析 (*は統計学的に有意) 各症例において、家庭医以外の分野で挙げられた医師(併診も含め)の数 の平均の変化 前 症例1 (4歳、喘息) 症例2 ( 49歳、更年期等) 症例3 ( 65歳、前立腺癌) 症例4 ( 23歳、喘息,妊婦) 症例5 ( 17歳、ニキビ,彼) 全体 後 0.78 1.11 0.44 0.89 0.11 0.67 p value 0.0843 0.0039* 0.4714 0.0497* <0.0001* <0.0001* 1.89 3.11 0.78 1.56 1.00 1.67 前後で必要とされる医師の分野数が減少 → 家庭医のカバーできる領域の広さが認識された 11 11結果 同様に、各症例において、家庭医療以外の分野で併診も含めて必要と考えら れた医師の数の平均も介入前に比べると半分以下に減少しており、家庭医の カバーできる領域の広さが認識されたと考えられます。 間 2008年 6月 4日 結論 4年生に対しての選択科目「家庭医療」は ① イメージ ① イメージ –  「家庭医療」のイメージを変化させ、「家庭医療」の具体 的イメージを捉えることができるようになった。 ② 家庭医の診療範囲・能力 ② 家庭医の診療範囲・能力 – 呈示した症例について家庭医が関わるべきと考える学生 が大幅に増加 – 必要と考えられる診療科の数が減少 – 家庭医療の診療範囲・能力を認識できたと考えられる 12 12結論 結論です。4年生に対しての選択科目「家庭医療」は、「家庭医療」のイメ ージを変化させ、「家庭医療」の具体的なイメージの獲得に寄与したと考え られます。 また、提示した症例のケアに家庭医が必要と考える学生が大幅に増加し、必 要と考えられる診療科の数が減少しました。このことは、家庭医療の診療範 囲、能力を正しく認識できたと考えられます。この変化は対象が9人にもか かわらず、大半で統計学的有意差を認める大きなものであり、介入のインパ クトは大きいと考えられます。 2008年 6月 4日 限界と今後の課題 【両方】 • 質問紙のみのため、学生の学びの質と量の一断面しか評価されていない • セレクションバイアス(選択制のため、興味のある学生が参加)の可能性 【質的】 • 理論的飽和に達していない可能性がある(数、方法) • 講師がデータ解析を行ったことでのバイアス 【量的】 • 対照群をおいていない • 講義直後の評価のため、変化が維持されるかは不明 【今後の課題】 • 対照群をおいた調査 • 質問紙以外のデータ収集 • 理解度の長期的追跡(キャリア選択も含めて) 13 12限界 本研究の限界としてはここに挙げる項目が考えられ、今後の課題として、対 照群をおいた調査や、インタビューなど質問紙以外のデータ収集法が望まれ ます。また受講した学生の理解度の持続や、その後のキャリア選択への影響 も調査が必要です。 2008年 6月 4日 結語 今回、学生は「講義」を通して、家庭医療の概念や家庭医の 提供する医療を認識することができた。 現在、日本の大学病院で家庭医のロールモデルを見つけるこ とは難しく、卒前教育で学生全員が「家庭医」のもとで「実習」を することには様々な制限があるが、家庭医による「家庭医療講 義」を行うことで、より大人数を対象に家庭医療への理解を促 す効果があると考えられる。ひいては家庭医療に携わる人材を 増やす効果を生む可能性もある。 今後、より多くの大学で全学生を対象にした「家庭医療講義」 の実施が望まれる。 14 13結語  まとめです。今回、学生は「講義」を通して、家庭医療の概念や家庭医の 提供する医療を認識することができました。  現在、日本において卒前教育で学生全員が「家庭医」のもとで「実習」を することには様々な制限がありますが、家庭医による「家庭医療講義」を行 うことで、より大人数を対象に家庭医療への理解を促す効果があると考えら れます。ひいては家庭医療に携わる人材を増やす効果をうむ可能性もありま す。  今後、より多くの大学で全学生を対象にした「家庭医療講義」の実施が望 まれます。 以上です。ご清聴ありがとうございました。