2009/08/13

    Twitter, Facebookそしてプロフェッショナリズム

漸く日本にもfacebookやtwitterの波が押し寄せて来つつあります.diffusion of innovation theoryから行くとearly adopter/early majorityのステージでしょうか.

twitterはmicrobloggingとよばれるぐらいですので,blogやHPと何が違うの?と思うかもしれませんが,
いわゆる「有名人」のひとたちや,これまで質の高いblogを書くので注目していた人たちをtwitterでフォローするようになり大変ショックだったことがあります.

公式のblogやHPで書かれている記事やそこで投影されるそのひとのイメージとtwitterから流れてくるメッセージとが全く違うのです.

仕事柄,仕事術についてのexpert,guruと呼ばれる人達,これまでblogや書籍などであこがれを持っていた人達のことが多いのですが,その人達がtwitterでは赤裸々に「午前様だった」「締め切り超過○日」「xxxのマウスがよい」「食事に○○を食べた」といった内容を投稿(写真まで)しています.

「あの人達のようになりたいが,自分には無理だろう」と思っていた人達が意外と自分と同じようにジレンマや悩みを抱えており,失敗もするということが分かった時点で,ある意味,やっぱり同じ人間なんだ,とホッとする部分もある一方で,それまでblogやHP,書籍から持っていたそのひとに対するイメージ(もちろん自分が勝手に作ったイメージなのですが,戦略的にそのようにイメージ作りもしているはずです)がガラガラと崩れてしまう.

清純派のアイドルだった人が覚醒剤でつかまった時のような.

そこへタイムリーなarticle

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Sachin H. Jain, M.D., M.B.A. BECOMING A PHYSICIAN:Practicing Medicine in the Age of Facebook. NEJM. Volume 361:649-651 August 13, 2009 Number 7

医学生として出産に立ち会った妊婦さんからFacebookで友達のリクエスト,一旦了解し,取り上げた赤ちゃんの成長を写真と共に定期的にみることが出来るようになるが,はたと「本当に良いのだろうか?」とたちどまる.


仕事場で経験した困難な患者について書いている看護師の例
あとから皮膚科のレジデントが独身であることをしってアプローチしてきた外来患者
パーティーでへべれけになっている写真を載せて信用を落としたアテンディング

等の例が挙げられる


米国の一部医学部では既に学生へその使用と載せる内容について注意を喚起...
「自分のキャリアに悪影響を与えかねない」と.
もちろん研修病院側は応募してきた候補者についての情報源としてtwitterやfacebookも有効活用することになる..

最初の患者さんはその後,「実は医学部へ行きたい」という相談を持ちかけてきて,著者は安堵と共にアドバイスを少しし始める.「SNSに載せる内容には注意して」と沿えて.


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現在流行の始まりやマーケティングのチャンネルとしてtwitterやfacebookなどのSNSが重要視されていますが,そこでどのような口コミが拡がっているのかに関して,効果的に検索をする方法がまだ試行錯誤レベルで,大手ネット検索事業者はその一番乗りを目指しています.

Googleの次世代検索エンジンはそれに対応する事を目標として開発されているはずです.
関連記事
http://journal.mycom.co.jp/news/2009/08/12/017/?rt=na
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/11/news036.html

ネットでの暴露の多い人でtwitterやfacebookをやっていると分かっている人の検索を現在のgoogleと新しいものとで比べてみると,違いが分かります.次世代エンジンだとそのひとのtwitterやfacebookが引っかかってきます.

これまで,検索に引っかからないことから「そっと」つぶやく事が出来るために「本当の顔」を覗かせてきたハズが,それも全て検索に引っかかるようになってきています.そうするとこれまで書籍やHPで一生懸命に作ってきたイメージ戦略にも悪影響が出ます.

僻地での医療は医師の公私がなくなってしまう.買い物をしていても,泳いでいても,誰かしらに見られている,そしてそれは殆どが自分の患者さん.ということでglass wall(自分の生活が全部筒抜けになってしまうことから透明な硝子の壁で出来た家で生活をするような感じを例えて)と言われてきました.

そして,そのことを敬遠するために,僻地で医療を行うことをためらう人も多いのです.

しかし,ネットで自らのプライベートを公開するとそれは誰からもアクセス可能になり,例え都会に住んでいても,ネット上では「glass wall」の中での生活をしているような物です.

さっき診察した患者さんは言わないだけであなたのtwitterやfacebookでの投稿を知っているかもしれないのです.

本当は人間らしくおこったり,泣いたり,失敗もしたりするのだけれど,自分のアイドルとしていて欲しいから,そういう部分は見せて欲しくないと自分が歌手やアーティスト,スポーツ選手に求めるように,患者さんは同じ事を医師に求めているかもしれません.

「輝き続けている(様に見せること)」これも医師の重要な役割なのです.特に指導医は.

一方で,そういった隣人的な日常性がみえることで,かえって親近感を持ってもらえることもあります.
特に患者さんと同じ地域に住んで,相手の生活を知らないと仕事にならない家庭医としては,その為に自分のプライベートも少し開示しないとうまくいかない.

どこまで,どれだけ,どこで見せるか.これはとっても難しい問題ですが,意識しながらネット上でも,リアルライフでも活動をするしかないのでしょう.