2009/12/23

    収穫と振り返り

最近だいぶ静脈の仕事が出来るようになってきました.まだまだ改善点はありますが.
やりっ放しで,何をどれだけやったのかをこまめに記録して振り返っていかなければ,それははたけに大量の種をまいたにもかかわらず,その成果(収穫物)には目もくれず,ひたすら種だけをまいているようなものです.
1年間の実績(講演,学会,執筆など)はこまめにまとめていかないと,どんどんやる気がなくなります.
私の場合は年に3回強制的にやらざるを得ない締め切りが用意されておりそれに合わせて年に3回自分の活動をまとめます.
1.5月頃 所属する法人の事業報告の原稿作成に合わせて(通常遅れます)
2.夏から秋にかけてHANDS-FDFの2回目のセッションで履歴書についてのコマがあります.そこで実例をフェローの人に見てもらうために,再度update (実質の自分の履歴書のupdate)
3.年末にかけて,その1年間の総括の意味も込めて.そしてこのときのまとめは重要な意味を持ちます.
年賀状の送付先リストの基礎データになるのです.
その1年お仕事を依頼してくださった方と,新年度既に依頼頂いている方々に年賀状を送るようにしています.ですから漏れを認めるわけにはいきません.

どうやって確認しているか.日常スケジュールの管理はgoogleカレンダーですがカレンダーを何種類も併用しています.(そこがgoogleカレンダーのよいところ,それぞれの色が違います)
1.日常的に館山でやる業務を入れるカレンダー
2.プライベートの用事を入れるカレンダー
3.館山以外の場所でやる仕事のカレンダー(これに出張,講演等が入ります.鴨川での会議や外来も入りますが,秘書さんにとってはこのカレンダーで予定が入っていたらとにかく館山にはいない,ということが分かるので電話対応などがしやすい)
4.医局行事のカレンダー
5.館山に見学や訪問に来られる方,短期研修の人の予定のカレンダー
6.医局秘書の予定
まだあったかな?
普段依頼が入ったらgoogleの3のカレンダーに予定を入れます.
googleカレンダーはそれぞれ独自に表示,非表示が切り替えられるので
今回のようにまとめをする段になったら,3以外のカレンダーを全部非表示にするだけで簡単に確認することが出来ます.それを一箇所にまとめていけばよいのです

さて振り返り
講演,講師活動

2009年は30件
ちなみに 2008:24件 2007:20件 2006:30件
2006年で多すぎると反省したはずなのに..またリバウンド.
現在のやり方の問題は1年の最後まで数を数えないので全部終わってから多すぎた,と気づく.来年から番号を振るか.
学生さんとの関わりも公式の講義,非公式の勉強会を交えて聖マリアンナ医科大学,千葉大学,北里,杏林,東海,医科歯科と増えており,ありがたい限りです.
また今年は製薬会社さん(これはプロフェッショナリズムの観点からお受けするかどうか大いに悩みました),看護師さん,薬剤師さんなどこれまで余り無かった方にお話しすることが出来ました.感謝.
またインフルエンザについて有料の講習会の講師をするという貴重な経験
総合医スキルアップセミナーのシリーズ
などなど秋口はきつかったですが,それなりの収穫もありました.
来年早々からいろいろと依頼をいただいています.
今年もまた来年も何件かは予定が合わずお断りをせざるを得ない依頼がありました.
体が一つなのでどうかご理解の程をよろしくお願いいたします

学会発表
学術活動(学会)

9件(公募WS含む) 主演者は2件でした.
2008:8件 2007:13件 2006:11件
まずまずですね.ただこれまでは指導教官的な立場の発表(主演者が別)の物が多かったため今年は自分が主演者として意図的に取り組む物を入れました.数だけではない,質的な挑戦が出来たと思います.

論文、執筆活動
淋しい限りです.
一番苦手とするところで,ここが,まだ弱いと感じている静脈の仕事.
来年もここを重点課題にすることになりそうです.

様々な過去の活動の中身は可能な限り以下で公開しています.
http://www.scribd.com/familydoc

2009/12/22

    質的研究 修士論文 共有

もうずいぶん前の話になってしまいましたが,同様の研究テーマを考える人もいるようなので,参考になればと公開して共有することにしました.研究の結果は協力頂いた研究参加者に返すのが最も正当な成果の還元,ということもあります.


ピッツバーグに住む永住目的以外の日本人が医療を利用する必要が生じたときにどのような経験をするのか ということについての質的研究です.
半構造化面接で結果的には18人の型からお話しをきき,9つのテーマが浮かび上がりました.

日本の医療はまんざらでもないと考えていますが,この研究もそう考えるに至ったきっかけの一つです.
それまでは待ち時間=医療機関に入ってから医師の診察を受けるまでの時間と考えていましたので日本は3時間待ち3分診療といわれるように,ほぼ予約制でしかもそれほど時間がずれない米国とくらべると見劣りすると考えていたのですが,お話しを聴いていく中で,

「待ち時間=かかりたいと思ってから医師の診察を受けるまでの時間」

という認識をしていることが判明,そうすると通常米国は電話をした当日に診てもらうのは至難の業ですから,「いくら待ったとしても当日には必ず診てもらえる」日本の方が待ち時間は短い,という認識なのです.

その他の知見は読んで頂けると幸いです.英語ですが.

エントリーの最後に質的研究の参考となるまとめへのリンクを載せています.


A Qualitative Research on the Experiences of Getting Medical Care in the United States by Members of the Japanese Community in Pittsburgh

A Qualitative Research on the Experiences of Getting Medical Care in the United States by Members of the Ja...

参考
2008/03/13 質的研究 qualitative research のリソース

2009/12/21

    Plagiarismって知っていますか?

自分のことをアカデミアに生きる人間(大学にいる人間だけがアカデミアに生きているのではないし,大学にいる人間がアカデミアに生きているとは限りません)と考える人にとっては知っておきたい単語です.
日本語では知っていると思います
Plagiarism=盗作
のことです.
私も厳密なacademic writingについてきちんと教わったのは,米国の大学院に行ってからです.通常は大学(undergraduate)の最初の最初できちんと教わるのですが,私の場合は医療倫理学のコースの課題を出したときにこっぴどくしかられて学びました.
要は自分の提出した課題論文に引用元から大量に引っ張ってきていたのです.勿論出典は書いていたのですが,大量にそのまま引用したことが問題とのことでした.詳細は忘れました.

それ以降,それだけが理由ではないのですが,このことについてはまじめに考えるようになり,これまでもあちこちで発言しています.

2007/11/13
Authorship(学会や雑誌での学術発表を前提とした研究、プロジェクト)


特にコンピュータが発達していわゆる「コピペ」が簡単になって状況はひどくなる一方です.特にそれが授業の成績評価の対象になる課題論文だったり,入学試験や入社試験の論文の場合は,評価をする側がかなり注意をしないと,大半がネットからのコピペにもかかわらず合格点を出してしまう,といった事態が生じかねません.

実は米国のアカデミアでもそういうことが起きています.
Plagiarism in Graduate Medical Education. Ariel Forrester Cole, MD Fam Med 2007;39(6):436-8(pdf)
とある病院の老年医学のフェローシップへの応募書類 過去2年間で総数26件のうち3つのpersonal statement(志望動機)が同一のWebsiteからの盗用部分を含んでいた.(10%!)
どうやって見つかったかは,レジデンシーディレクターが全く別の地区からの応募の書類が驚くほど似ていることに気づき,調べてみたところ,現在も存在するwebsiteから入院中に治療した高齢者が良くなって外来で再開するというちょっとしたいい話が数十行にわたってコピーされていた,とのこと.(原文にはそのまま盗用部分が出典と共に引用してあります)さすがに最後はそれぞれが独自に書いたようですが.
現在もfamily medicine personal statementと検索すると大量にサンプルを見つけることが出来ます.
前出の著者はなぜ盗用をするのかについての考察として
1.インターネットによって簡単に手にはいるから
2.英語が主言語ではなく,また医療をする上では正確な文法に則った英語が要求されるわけではないから,英語で医療が出来ても,きちんとした英文を書くというトレーニングを受けてないし,英語を母国語とする人にとってもまとまった文章を書くことからしばらく離れて居るために,ついつい (そういう意味ではblogを書くことは良いトレーニングかも知れません)
3.世代によって盗用に関しての価値観が違う(それほど悪いこととしての意識がないかも知れない)学生が別の学生のために提出課題の文章を書いたことを指摘したら「それは出版がされるわけでもないし,”大した”科目でもないし,友達を手伝って上げたという良いことをしたからそれでバランスがとれるでしょ」といわれた話を引用.

この後エッセイは
このことはプロフェッショナリズムの問題ではないか,ではそれは教える必要があるのではないかと続きます.

当然問題は医学分野だけではないようで,最近,それを解決するする支援ソフトが出来たようです.

ネット上からの不正コピペを判断する支援ソフト「コピペルナー」12月11日13時15分配信

 機能としては、1つもしくは複数の文書を読み込み、webページや文献データベースを検索。それにより、コピー・アンド・ペーストが行なわれている箇所を解析するとうたう。判定結果には、コピペ割合やコピー元の文献などを表示。コピペしたと思われる箇所は、完全一致またはあいまい一致によって色別で表示されるという。さらに複数の文書を読み込み、文書間のコピペを点検し、グループ化して相関関係を表示することができる。

 教育機関向けのスタンダードライセンスは45,675円。スターターライセンス(シングルチェッカーのみの機能)は9,450円。スターターライセンスからのアップグレードは38,850円。ビジネス向けのスタンダードライセンスは67,200円。全て1ユーザーあたりの価格で、スタンダードライセンスについては、ユーザー数に応じてボリュームディスカウントを提供する。


しかし医療も教育もベースに信頼し合う人間関係があるから成り立つはずなのに,どちらかがその信頼を裏切り始めると,予防線のために使う資源(時間,人,金)が増える一方で,コピペは時間節約のようで間接的に相手の時間を奪い,それは,回り回って自分に割いてもらえる資源を奪っていることになるのです.

大切なことは,書く場合も,しゃべる場合も自分のオリジナルではない事柄については引用し出典を明確にすることで,

どの部分が自分のオリジナルか


を明確にするということです.

plagiarismについて学びたい人は以下のサイトが紹介されています(英語ですが)
www.plagiarism.org
http://www.web-miner.com/plagiarism

盗用の問題ではないのですが,沢山の応募書類(留学,初期研修,後期研修)を見ていると,本当に内容が似通ってきていることが気になります.

サンプルや例を参考にするのは,標準の型を知ることと,如何に自分しか表現できない物語を語るかを見つけ出すために,既に他者によって為された表現を「禁忌肢」として認識するため,と心得たいですね.そのためにはむしろ大量に参照すべきと思います.

付記:(12/23/09)
触発された記事を引用しておきます.エントリー作成当時は見つけられなかったのですが,見つかりましたので
「コピペ」は「効率アップ」じゃない

いまretweetやreblog全盛で,簡単に編集できてしまうので,引用と盗用の境界に気をつけないと気がつかずに誰かの気分を害してしまう可能性がありますね.