2009/03/28

    妊娠が判明してからの禁煙も遅くない

3/26/2009発表 BMJより

妊娠15週までに禁煙した場合、早産とSGAの発生頻度にに関しては非喫煙妊婦のものと同等まで戻る。
そうでない場合はリスクは高い 早産(4% vs. 10%, RR 2.5, NNH 16.7) SGA(10% vs. 17%, RR 1.7, NNH 14.3 ).

喫煙者の10人に一人が早産、6人に一人がSGA,非喫煙者、禁煙者でも10人に一人がSGAというのは結構驚きです。日本の場合もう少し少ないかもしれませんが、喫煙はやはり思っている以上にリスクを上げるのですね。

「早くやめればリスクは帳消しにできる」


1. McCowan LME, Dekker GA, Chan E, et al. Spontaneous preterm birth and small for gestational age infants in women who stop smoking early in pregnancy: prospective cohort study. BMJ. March 26, 2009 2009;338(mar26_2):b1081-.

http://www.bmj.com/cgi/content/abstract/338/mar26_2/b1081


2500人の初産婦、南半球、前向きコホート
80%が非喫煙者
10%は妊娠15週(+-1週)前に禁煙
10%継続喫煙

結果は上記の通り

禁煙をした妊婦について、ストレス、不安、うつの増加もなく、

「吸わないとストレスなんです」という言い訳は無用とのこと。

ただし、baseline characteristicsのに多くの項目おいて、3群に差があり、交絡因子の存在は注意。

Objectives To compare pregnancy outcomes between women who stopped smoking in early pregnancy and those who either did not smoke in pregnancy or continued to smoke. Design Prospective cohort study. Setting Auckland, New Zealand and Adelaide, Australia. Participants 2504 nulliparous women participating in the Screening for Pregnancy Endpoints (SCOPE) study grouped by maternal smoking status at 15 ({+/-}1) week's gestation. Main outcome measures Spontaneous preterm birth and small for gestational age infants (birth weight <10th customised centile). We compared odds of these outcomes between stopped smokers and non-smokers, and between current smokers and stopped smokers, using logistic regression, adjusting for demographic and clinical risk factors. Results 80% (n=1992) of women were non-smokers, 10% (n=261) had stopped smoking, and 10% (n=251) were current smokers. We noted no differences in rates of spontaneous preterm birth (4%, n=88 v 4%, n=10; adjusted odds ratio 1.03, 95% confidence interval l0.49 to 2.18; P=0.66) or small for gestational age infants (10%, n=195 v 10%, n=27; 1.06, 0.67 to 1.68; P=0.8) between non-smokers and stopped smokers. Current smokers had higher rates of spontaneous preterm birth (10%, n=25 v 4%, n=10; 3.21, 1.42 to 7.23; P=0.006) and small for gestational age infants (17%, n=42 v 10%, n=27; 1.76, 1.03 to 3.02; P=0.03) than stopped smokers. Conclusion In women who stopped smoking before 15 weeks' gestation, rates of spontaneous preterm birth and small for gestational age infants did not differ from those in non-smokers, indicating that these severe adverse effects of smoking may be reversible if smoking is stopped early in pregnancy.



Women who stopped smoking did not have increased stress, anxiety, or depression — which, the authors say, "should reassure" women who fear that quitting could cause them undue stress.


WHAT IS ALREADY KNOWN ON THIS TOPIC
 Smoking is the single most modifiable risk factor for
adverse pregnancy outcomes in developed countries
 Stopping smoking in pregnancy increases birth weight
and reduces rates of all preterm birth
 The gestation by which smoking must stop to reverse
effects of smoking on spontaneous preterm births and
small for gestational age infants is not known

WHAT THIS PAPER ADDS
 Stopping smoking early in pregnancy, before 15 weeks’
gestation, results in rates of spontaneous pretermbirths
and small for gestational age infants similar to those in
non-smokers
 Women who continue to smoke at 15 weeks’ gestation
are more likely than those who stop smoking to have
spontaneous preterm birth
 Pregnant women should be offered support and
interventions to help them stop smoking early in
pregnancy

2009/03/26

    熟練医から“日常診療のさまざまなコツ”を伝授

下記の本にて2ページだけ執筆させていただきました。

治 療 <月刊> 3月臨時増刊号 Vol.91 ……………… 南山堂 
編集:日本プライマリ・ケア学会
定価1,575円(本体1,500円 税5%)
熟練医から“日常診療のさまざまなコツ”を伝授


目次

担当分は
”院内の設備環境/ITによる情報収集と管理”のコツ
のセクションで
「莫大な情報の海でいかに有用な情報にたどり着くか」についてです。


巻頭にもありますが、依頼があったのが昨年の12月25日、本日著者提供分が届きましたので本当にスピード執筆です。

その成功の裏には
*一著者2ページだけ。複数章書いている著者もいるが実に120−130人の著者による合作。ほんの少しx莫大な人数=何らかの量/価値というウェブ進化論の主張をそのまま地で行く。厳密には少しずれるが、クラウドソーシングのような感じ。
*いっさい郵送はなし。ほとんどメール+一部fax
*包括的、網羅的であることを目指していないので、「締め切りに間に合わなければ掲載されない。それだけのことですよ」と最初から締め切りありき。(おかげで私も守れました)

といったことがあると思います。これからの執筆の一つのあり方になるのではないでしょうか。
当然執筆料、印税といったものは2ページ分。ですが。やはり自らの「経験知」を「形式値」にするナレッジマネジメントのプロセスは重要ですのでその後押しをしてくれた企画にむしろ感謝です。(これまでずっと書こうと思ってかけなかったテーマでした)

正直な所玉石混淆ではありますが、それそのものがプライマリケアが持つ「幕の内弁当」的であり、我々の仕事そのものの雑多な感じを表彰しているように思います。

逆に130近くもトピックがありますから、必ずすべての人に何らかの新しい「コツ」発見があると思います。(最近流行の言葉では「ハックス」でしょうか)

2009/03/25

    医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究 総括研究報告書(骨子)の公開

本日班会議最終回にて早速最終報告書の骨子が公開されています。

多くの皆さんが頭を寄せ集めて時間を割いて作ったものを一言でまとめてしまうことは大変失礼とは思うのですが、

非常によくまとまっていることと、基本的には海外(特に米国)の制度に倣って卒後医学教育認定機構(仮称)を設立しましょう(名称も米国のACGMEに倣ってJCGME)ということです。意義は大きいと思います。画餅にならないようにこれからそれぞれが汗を流さなければなりません。

関係者の方はぜひ全文を読んでいただきたいと思います。

医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究
総括研究報告書(骨子)の公開にあたって



総括研究報告書の骨子
医療における安心・希望をもたらす
専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)の方向性
〜卒後医学教育認定機構(仮称)設立の要望〜
平成21年3月25日

以下、一部抜粋します



我が国において、現時点で家庭医療、総合診療に従事している医師の大多数は、内科、外科を含めて各診療科の診療に専ら従事し、該当する診療領域において(専門医研修を含め)研修教育を受けた病院勤務医師が、第2のキャリアパスとして診療所において開業したものである。
専門医としてのプライマリケア領域を担うべき体系的な研修プログラムの課程を修めた家庭医は現状ではごくわずかしか存在しない。今後も各診療科の専門領域からの総合診療領域への移行は続くと考えられる。
このとき問題となるのは、「専門医からの移行による総合診療医ではプライマリケアが担うべき地域医療のニーズに対応できず、そのため地域における偏在の問題を解消できない、へき地医療体制を確保できないということと、その総合診療医としての質の担保ができないということである。
(鍵括弧 太字強調 岡田による)

中略)


家庭医・総合医は幅広い疾患の管理だけでなく、生活、家庭環境などの背景を踏まえた上で、予防や健康増進までを含めた医療を展開することから、地域に根ざした医師として、各々の地域の特性に応じた連携や、医療の提供体制の中に位置づける必要がある。
こうした医師を養成する、あるいはこれからの医療提供体制に位置づけるという視点で考えると、その養成プロセスや行う医療の具体像をより明確にすることができる。つまり、疾患の特性や公衆衛生、社会的な背景基盤などの地域性に根ざした医療、つまり「地域が育てる医師」による医療ということになる。

家庭医・総合医の具体像を得ることで、その研修には地域におけるプライマリケアを行う診療所、より高次の専門医療を担う病院での研修、さらには救急や周産期管理、小児、メンタルヘルス領域、在宅医療など、地域住民の健康増進と安心、公衆衛生の向上にとって必要な要素が含まれることになる。逆に言えば、こうした前提を踏まえることなく、
各専門診療領域や医療機能毎の横断的なローテーションを足し合わせることによるのでは、家庭医・総合医として必要な資質を得ることができないことを認識する必要がある。」

(鍵括弧 太字強調 岡田による)

家庭医・総合医の具体像と医療システムにおけるプライマリケアの担うべき役割を明確にした上で制度として位置づける必要がある。つまり家庭医・総合医は専門性を有する医師として、充実した教育体制と厳格な専門
医認定制度のもとに認証されるものでなければならない。
家庭医・総合医の認証制度は、地域医療体制や教育指導体制と関連づけられるものである必要がある。具体的には、認証制度を運営するための人員や組織、費用が、地域医療の提供体制や教育研修の実施計画の中に位置づけられ、互いに連携するものでなければならない。

プライマリケアを担う家庭医・総合医への受療について、地域住民の継続的なケアを行うことが可能になるよう、何らかのアクセス制御を行うような連携と各診療領域を担う専門医への誘導の仕組みの整備が必要である。
(鍵括弧 太字強調 岡田による)


家庭医・総合医がプライマリケアを担う専門医としての役割を医療提供体制の中に明確に位置づけられ、継続的な健康管理と一般的な救急時の対応などを担うことによって、患者にとって最適な医療を行うことができるとともに、救急、周産期、小児、精神神経を担う専門医の負担が軽減され、それぞれの専門医はよりその専門性を発揮できるようになる。

(鍵括弧 太字強調 岡田による)

さらにグループ診療を含めた地域の医療体制に応じた連携の取り組みが促進されることが期待される。
この提言はこれからの医療の方向性についての私たちの考えを示している。


24ページほどですが、非常によくまとまっていますし、勇気づけられる文章だと思います。

3/26/2009 追記
既に通読5回ほどやりましたが、本当によくまとまっています。


骨子は(私なりの解釈)
家庭医・総合医という名の専門家の養成。その分野の社会的位置づけ(定義)の明確化
各分野の医師の予測需要、ニーズ分析に基づいたある程度の分野ごとの定数のコントロール
この2つを専門的に行う第三者機関を設立し利害関係に縛られず実行する。(5年間のロードマップまで具体的に提案されています)

12ページに海外諸国との比較表が載っていて、いかにも「完全自由なのは日本だけですよ〜」的なプレッシャーを感じます。

私が家庭医になって10年足らずですが、当時の日本の状況からすると隔世の感があります。
両方とも医師会がずっと反対してきたことですから、提言にすぎないこの報告書から実行に移すまでがまた大きな一仕事と思います。

まだまだやらなければならないことはいっぱいありますね。

2009/03/23

    館山市、南房総市、鋸南町で肺炎球菌ワクチン公費助成決定

1年越しでずっと動いてきましたが、3月19日付けで館山市、南房総市、鋸南町がH21年度より肺炎球菌ワクチンの公費助成(75歳以上、1500円ですが)を開始するとの通知を医師会より受けました。

実施はH21.6.1〜H22.3.31

昨年 8/28に今の医療機関を代表して、私の名前で館山市議会へ陳情を出し(9/18に「了承できる」との決議)、9/6に岩田先生を招いて、安房医師会の講演を得ての市民公開講座のあと、「市議会は通ったが予算に組まれるか..」という心配もありましたが、幸い、市民公開講座をきっかけに南房総市の開業医の先生も市へ働きかけてくださり、2市1町での一斉実施になりました。議会へ提出した資料一生懸命費用対効果の試算したかいがありました。

ずいぶんと時間がたちましたが、それぞれの種まきが(もちろん他の多くの人たちの努力も含め)実ったようで、自分としては、自分一人でやったのではないにせよ、公衆衛生の立場で形の残る仕事ができた初めてではないかと思います。やはり、規模の大きな仕事ができ、じわじわとこみ上げてくる喜びがあります。

たしか、家庭医関係の人がいる地域では奈義町の次ではないでしょうか。

これからは実際の接種率向上ですね。(そのためにはまず測定からです。。)

キャンペーンの準備しなければ...