質的研究は、公衆衛生大学院の修士論文のテーマとして「データ収集開始までに方法論が完成してなくても良いから(とりあえず始めてから修正できる)」というだけの理由で方法論として選択し、泥縄式にそれから勉強したのだが、(本来はresearch questionありきで、それに適した方法論を選ぶ)、自分の人生にとって大きな収穫となった。その詳細は別の機会にしたいが、世の中のデータのほとんどは量的な物ではなく、質的なものであることを考えると、一般に狭義で「サイエンス」と呼ばれる医学、理学、工学、物理学などが伝統的に使用してきた量的研究で解明できる現象は質的な方法で解明できるそれよりもずっと少ないことだけ言及しておく。アインスタインの名言にもある通りです。
Everything that can be counted does not necessarily count; everything that counts cannot necessarily be counted. Albert Einstein.
「数えられるもののすべてに意義があるわけではない。意義のあるものすべてが数えられるわけではない。」
家庭医療、プライマリ・ケア、という領域において質的な研究が重要であることはいうまでもない。
現在いくつかの質的研究を先輩としてサポート中であり(反応が遅くて済みません)、質的研究が初めての人たちに手っ取り早い取っ掛かりをまとめる良い機会となったので世界の皆さんと共有します。
今本当に無料でオンラインで手に入るものの質も、量も豊富になりました。知識は持っているだけでは価値がなく、人と人の間を動いて初めて意味を持つということを噛みしめる必要があります。(このエントリーの後半)
次の2つのリンクは参考 (4/25/2008に追加)
量的研究と質的研究
プライマリケアでの研究ニーズ(分野、領域)
1)
“Qualitative Research in Health Care”
著:CATHERINE POPE, NICHOLAS MAYS (c)BMJ Publishing Group 1996
の現在東京医科大学教授の大滝純司氏らによる翻訳
入門としてはうってつけですウェブで読むのがあわない人は本にもなっています(途中で紹介します)
概略だけ知りたい人は第8回までとりあえず読んでみましょう。
大滝純司(北大医学部附属病院総合診療部):監訳
杉澤廉晴(同):訳
黒川 健(同):訳
瀬畠克之(北大医学部研究科):訳
藤崎和彦(奈良医大衛生学):用語翻訳指導
Appendix(付録)より
――保健医療サービス調査研究部門の廊下での議論
質的研究入門 第1回
ブラックボックスを開く(1)
医学界新聞 第2357号 1999年10月4日
http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2357dir/n2357_05.htm#00
質的研究入門 第2回
ブラックボックスを開く(2)
医学界新聞 第2359号 1999年10月18日
http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2359dir/n2359_04.htm#00
質的研究入門 第3回
ブラックボックスを開く(3)
医学界新聞 第2363号 1999年11月15日
http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2363dir/n2363_03.htm#00
第1章より
質的研究入門 第4回
保健医療サービスにおける質的研究方法とは(1)
医学界新聞 第2365号 1999年11月29日
http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2365dir/n2365_05.htm#00
用語説明もあり
質的研究入門 第5回
保健医療サービスの研究における質的研究方法とは(2)
医学界新聞 第2371号 2000年1月17日
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2371dir/n2371_04.htm
質的研究入門 第6回
保健医療サービスの研究における質的研究方法とは(3)
医学界新聞 第2374号 2000年2月7日
http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2374dir/n2374_03.htm#00
第2章より
質的研究入門 第7回
質的研究と正確さ(1)
医学界新聞 第2378号 2000年3月6日
http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2378dir/n2378_03.htm#00
質的研究入門 第8回
質的研究と正確さ(2)
医学界新聞 第2380号 2000年3月20日
http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2380dir/n2380_05.htm#00
第3章より
質的研究入門 第9回
保健医療の現場における観察法(1)
医学界新聞 第2388号 2000年5月22日
http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2388dir/n2388_04.htm#00
質的研究入門 第10回
保健医療の現場における観察法(2)
医学界新聞 第2390号 2000年6月5日
http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2390dir/n2390_02.htm#00
第4章より
質的研究入門 第11回
医療の研究における質的面接法(1)
医学界新聞 第2402号 2000年9月4日
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2402dir/n2402_06.htm
質的研究入門 第12回
医療の研究における質的面接法(2)
医学界新聞 第2406号 2000年10月2日
http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2406dir/n2406_03.htm#00
オリジナル。翻訳当時の第1版から2006年に第3版に改訂されています。
翻訳はこちら
2)
Qualitative Research Guideline Project http://www.qualres.org/index.html
Robert Wood Johnson Foundationによる。
英語であるが、無料でこれ以上まとまっているものはない。さらに深く知りたい人のために出典、リンクも充実
Research In Family Medicine Wiki What is Qualitative Research?からたどりつきました。
3)Doing Qualitative Research (Research Methods for Primary Care)
私が質的研究の勉強に使用した本。質的研究について教える時にもよくここからの引用をします。
編集の1人Benjamin F. Crabtreeは米国プライマリケア領域のトップリサーチャーです。
もう1人のWilliam L. Millerもそうで、特に質的研究の第1人者ではないでしょうか。米国家庭医療においてかなり重要な論文の著者でもあります。修士論文の計画の段階で直接アドバイスをいただきました。
4)質的研究方法ゼミナール―グラウンデッドセオリーアプローチを学ぶ
自分の論文ではcodingおよびimmersion and crystarizationという方法論をとったので、最も代表的なグラウンデッドセオリーについては理解が不十分でした。昨年の
研究ワークショップで質的研究を教えるに当たり、それではいかんということで勉強するのに使用した本です。実際のゼミに参加している感じで段階的に、実際の分析を交えながらやるので非常に理解しやすいです。ただし、グラウンデッドセオリーはあくまでやり方の一つなので、この本だけで質的研究が解るわけではない。
その他参考文献
Catherine Pope, Nick Mays. Education and debate: Qualitative Research: Reaching the parts other methods cannot reach: an introduction to qualitative methods in health and health services research. BMJ 1995;311:42-45 (1 July)http://www.bmj.com/cgi/content/full/311/6996/42
用語の定義もあり Box2も参考に (質的研究と量的研究の違い)
Editorials. Why do qualitative research? BMJ 1995;311:2 (1 July)http://www.bmj.com/cgi/content/full/311/6996/2
一部以下に引用
Qualitative research takes an interpretive, naturalistic approach to its subject matter; qualitative researchers study things in their natural settings, attempting to make sense of, or interpret, phenomena in terms of the meanings that people bring to them. Qualitative research begins by accepting that there is a range of different ways of making sense of the world and is concerned with discovering the meanings seen by those who are being researched and with understanding their view of the world rather than that of the researchers.
Britten et al. Qualitative research methods in general practice and primary care. Fam. Pract..1995; 12: 104-114 http://fampra.oxfordjournals.org/cgi/reprint/12/1/104?ijkey=d85e467a11f0c3c452cabed6fab3fdf38739c5d4&keytype2=tf_ipsecsha
(要subscription)
質的研究の代表例は以下のリンクで
http://www.qualres.org/HomeExem-4288.html以下は効果的な申請書の書きかた。
Penrod J. Getting funded: writing a successful qualitative small-project proposal.Qual Health Res. 2003 Jul;13(6):821-32.http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12891716?dopt=AbstractPlus
As a program of research is developed, the small-project grant is a perfect means for initiating discrete projects to build support for larger funding. The author describes the development of a successful small qualitative project proposal on the disabling effects of osteoporosis. She dissects the process of writing a small-project proposal to assist novice or junior researchers in securing funding for small projects that, she hopes, will build toward funding on a larger scale. Major portions of the proposal are included in this article to demonstrate the keys to success in getting small qualitative projects funded.
PMID: 12891716
本文は残念ながら読めません。
一つのエントリーを30分ぐらいで書けないのはインプットが不十分であるからだ、という意見がありますが、そういう意味では、まだまだインプットが足りないようです。(90分近くかかりました。マックが遅いせいもあるのですが)