2009/12/23

    収穫と振り返り

最近だいぶ静脈の仕事が出来るようになってきました.まだまだ改善点はありますが.
やりっ放しで,何をどれだけやったのかをこまめに記録して振り返っていかなければ,それははたけに大量の種をまいたにもかかわらず,その成果(収穫物)には目もくれず,ひたすら種だけをまいているようなものです.
1年間の実績(講演,学会,執筆など)はこまめにまとめていかないと,どんどんやる気がなくなります.
私の場合は年に3回強制的にやらざるを得ない締め切りが用意されておりそれに合わせて年に3回自分の活動をまとめます.
1.5月頃 所属する法人の事業報告の原稿作成に合わせて(通常遅れます)
2.夏から秋にかけてHANDS-FDFの2回目のセッションで履歴書についてのコマがあります.そこで実例をフェローの人に見てもらうために,再度update (実質の自分の履歴書のupdate)
3.年末にかけて,その1年間の総括の意味も込めて.そしてこのときのまとめは重要な意味を持ちます.
年賀状の送付先リストの基礎データになるのです.
その1年お仕事を依頼してくださった方と,新年度既に依頼頂いている方々に年賀状を送るようにしています.ですから漏れを認めるわけにはいきません.

どうやって確認しているか.日常スケジュールの管理はgoogleカレンダーですがカレンダーを何種類も併用しています.(そこがgoogleカレンダーのよいところ,それぞれの色が違います)
1.日常的に館山でやる業務を入れるカレンダー
2.プライベートの用事を入れるカレンダー
3.館山以外の場所でやる仕事のカレンダー(これに出張,講演等が入ります.鴨川での会議や外来も入りますが,秘書さんにとってはこのカレンダーで予定が入っていたらとにかく館山にはいない,ということが分かるので電話対応などがしやすい)
4.医局行事のカレンダー
5.館山に見学や訪問に来られる方,短期研修の人の予定のカレンダー
6.医局秘書の予定
まだあったかな?
普段依頼が入ったらgoogleの3のカレンダーに予定を入れます.
googleカレンダーはそれぞれ独自に表示,非表示が切り替えられるので
今回のようにまとめをする段になったら,3以外のカレンダーを全部非表示にするだけで簡単に確認することが出来ます.それを一箇所にまとめていけばよいのです

さて振り返り
講演,講師活動

2009年は30件
ちなみに 2008:24件 2007:20件 2006:30件
2006年で多すぎると反省したはずなのに..またリバウンド.
現在のやり方の問題は1年の最後まで数を数えないので全部終わってから多すぎた,と気づく.来年から番号を振るか.
学生さんとの関わりも公式の講義,非公式の勉強会を交えて聖マリアンナ医科大学,千葉大学,北里,杏林,東海,医科歯科と増えており,ありがたい限りです.
また今年は製薬会社さん(これはプロフェッショナリズムの観点からお受けするかどうか大いに悩みました),看護師さん,薬剤師さんなどこれまで余り無かった方にお話しすることが出来ました.感謝.
またインフルエンザについて有料の講習会の講師をするという貴重な経験
総合医スキルアップセミナーのシリーズ
などなど秋口はきつかったですが,それなりの収穫もありました.
来年早々からいろいろと依頼をいただいています.
今年もまた来年も何件かは予定が合わずお断りをせざるを得ない依頼がありました.
体が一つなのでどうかご理解の程をよろしくお願いいたします

学会発表
学術活動(学会)

9件(公募WS含む) 主演者は2件でした.
2008:8件 2007:13件 2006:11件
まずまずですね.ただこれまでは指導教官的な立場の発表(主演者が別)の物が多かったため今年は自分が主演者として意図的に取り組む物を入れました.数だけではない,質的な挑戦が出来たと思います.

論文、執筆活動
淋しい限りです.
一番苦手とするところで,ここが,まだ弱いと感じている静脈の仕事.
来年もここを重点課題にすることになりそうです.

様々な過去の活動の中身は可能な限り以下で公開しています.
http://www.scribd.com/familydoc

2009/12/22

    質的研究 修士論文 共有

もうずいぶん前の話になってしまいましたが,同様の研究テーマを考える人もいるようなので,参考になればと公開して共有することにしました.研究の結果は協力頂いた研究参加者に返すのが最も正当な成果の還元,ということもあります.


ピッツバーグに住む永住目的以外の日本人が医療を利用する必要が生じたときにどのような経験をするのか ということについての質的研究です.
半構造化面接で結果的には18人の型からお話しをきき,9つのテーマが浮かび上がりました.

日本の医療はまんざらでもないと考えていますが,この研究もそう考えるに至ったきっかけの一つです.
それまでは待ち時間=医療機関に入ってから医師の診察を受けるまでの時間と考えていましたので日本は3時間待ち3分診療といわれるように,ほぼ予約制でしかもそれほど時間がずれない米国とくらべると見劣りすると考えていたのですが,お話しを聴いていく中で,

「待ち時間=かかりたいと思ってから医師の診察を受けるまでの時間」

という認識をしていることが判明,そうすると通常米国は電話をした当日に診てもらうのは至難の業ですから,「いくら待ったとしても当日には必ず診てもらえる」日本の方が待ち時間は短い,という認識なのです.

その他の知見は読んで頂けると幸いです.英語ですが.

エントリーの最後に質的研究の参考となるまとめへのリンクを載せています.


A Qualitative Research on the Experiences of Getting Medical Care in the United States by Members of the Japanese Community in Pittsburgh

A Qualitative Research on the Experiences of Getting Medical Care in the United States by Members of the Ja...

参考
2008/03/13 質的研究 qualitative research のリソース

2009/12/21

    Plagiarismって知っていますか?

自分のことをアカデミアに生きる人間(大学にいる人間だけがアカデミアに生きているのではないし,大学にいる人間がアカデミアに生きているとは限りません)と考える人にとっては知っておきたい単語です.
日本語では知っていると思います
Plagiarism=盗作
のことです.
私も厳密なacademic writingについてきちんと教わったのは,米国の大学院に行ってからです.通常は大学(undergraduate)の最初の最初できちんと教わるのですが,私の場合は医療倫理学のコースの課題を出したときにこっぴどくしかられて学びました.
要は自分の提出した課題論文に引用元から大量に引っ張ってきていたのです.勿論出典は書いていたのですが,大量にそのまま引用したことが問題とのことでした.詳細は忘れました.

それ以降,それだけが理由ではないのですが,このことについてはまじめに考えるようになり,これまでもあちこちで発言しています.

2007/11/13
Authorship(学会や雑誌での学術発表を前提とした研究、プロジェクト)


特にコンピュータが発達していわゆる「コピペ」が簡単になって状況はひどくなる一方です.特にそれが授業の成績評価の対象になる課題論文だったり,入学試験や入社試験の論文の場合は,評価をする側がかなり注意をしないと,大半がネットからのコピペにもかかわらず合格点を出してしまう,といった事態が生じかねません.

実は米国のアカデミアでもそういうことが起きています.
Plagiarism in Graduate Medical Education. Ariel Forrester Cole, MD Fam Med 2007;39(6):436-8(pdf)
とある病院の老年医学のフェローシップへの応募書類 過去2年間で総数26件のうち3つのpersonal statement(志望動機)が同一のWebsiteからの盗用部分を含んでいた.(10%!)
どうやって見つかったかは,レジデンシーディレクターが全く別の地区からの応募の書類が驚くほど似ていることに気づき,調べてみたところ,現在も存在するwebsiteから入院中に治療した高齢者が良くなって外来で再開するというちょっとしたいい話が数十行にわたってコピーされていた,とのこと.(原文にはそのまま盗用部分が出典と共に引用してあります)さすがに最後はそれぞれが独自に書いたようですが.
現在もfamily medicine personal statementと検索すると大量にサンプルを見つけることが出来ます.
前出の著者はなぜ盗用をするのかについての考察として
1.インターネットによって簡単に手にはいるから
2.英語が主言語ではなく,また医療をする上では正確な文法に則った英語が要求されるわけではないから,英語で医療が出来ても,きちんとした英文を書くというトレーニングを受けてないし,英語を母国語とする人にとってもまとまった文章を書くことからしばらく離れて居るために,ついつい (そういう意味ではblogを書くことは良いトレーニングかも知れません)
3.世代によって盗用に関しての価値観が違う(それほど悪いこととしての意識がないかも知れない)学生が別の学生のために提出課題の文章を書いたことを指摘したら「それは出版がされるわけでもないし,”大した”科目でもないし,友達を手伝って上げたという良いことをしたからそれでバランスがとれるでしょ」といわれた話を引用.

この後エッセイは
このことはプロフェッショナリズムの問題ではないか,ではそれは教える必要があるのではないかと続きます.

当然問題は医学分野だけではないようで,最近,それを解決するする支援ソフトが出来たようです.

ネット上からの不正コピペを判断する支援ソフト「コピペルナー」12月11日13時15分配信

 機能としては、1つもしくは複数の文書を読み込み、webページや文献データベースを検索。それにより、コピー・アンド・ペーストが行なわれている箇所を解析するとうたう。判定結果には、コピペ割合やコピー元の文献などを表示。コピペしたと思われる箇所は、完全一致またはあいまい一致によって色別で表示されるという。さらに複数の文書を読み込み、文書間のコピペを点検し、グループ化して相関関係を表示することができる。

 教育機関向けのスタンダードライセンスは45,675円。スターターライセンス(シングルチェッカーのみの機能)は9,450円。スターターライセンスからのアップグレードは38,850円。ビジネス向けのスタンダードライセンスは67,200円。全て1ユーザーあたりの価格で、スタンダードライセンスについては、ユーザー数に応じてボリュームディスカウントを提供する。


しかし医療も教育もベースに信頼し合う人間関係があるから成り立つはずなのに,どちらかがその信頼を裏切り始めると,予防線のために使う資源(時間,人,金)が増える一方で,コピペは時間節約のようで間接的に相手の時間を奪い,それは,回り回って自分に割いてもらえる資源を奪っていることになるのです.

大切なことは,書く場合も,しゃべる場合も自分のオリジナルではない事柄については引用し出典を明確にすることで,

どの部分が自分のオリジナルか


を明確にするということです.

plagiarismについて学びたい人は以下のサイトが紹介されています(英語ですが)
www.plagiarism.org
http://www.web-miner.com/plagiarism

盗用の問題ではないのですが,沢山の応募書類(留学,初期研修,後期研修)を見ていると,本当に内容が似通ってきていることが気になります.

サンプルや例を参考にするのは,標準の型を知ることと,如何に自分しか表現できない物語を語るかを見つけ出すために,既に他者によって為された表現を「禁忌肢」として認識するため,と心得たいですね.そのためにはむしろ大量に参照すべきと思います.

付記:(12/23/09)
触発された記事を引用しておきます.エントリー作成当時は見つけられなかったのですが,見つかりましたので
「コピペ」は「効率アップ」じゃない

いまretweetやreblog全盛で,簡単に編集できてしまうので,引用と盗用の境界に気をつけないと気がつかずに誰かの気分を害してしまう可能性がありますね.

2009/12/19

    札幌医大山本教授来る

先日恩師である札幌医科大学地域医療総合医学講座教授の山本和利先生が訪問して下さいました.
何を隠そう私が卒後2年目のぺーぺー(にもかかわらずいきがっていた)の頃に,京都大学総合診療部の助教授として大変多くのご迷惑をおかけした恩師です.(当時は何も分かっていませんでした.済みませんでした....)
本来は昼の特別講演として,山本先生の多読ぶりやカオス理論,患者中心の医療の方法など色々と話を頂きたかったのですが,ご多忙な立場で,半日ちょっとの滞在,かつ,研究のためのインタビューが目的とのことで昼の時間をフォーカスグループに使わざるを得ず,また前夜も私が不在のためおいしいお魚をごちそうできずで,まったくもって失礼な弟子のもてなしになってしまったことが重ね重ね悔やまれます.

さて,簡単な報告が山本先生の教室のブログにあげられています.

2009年12月16日水曜日
研究取材:亀田ファミリークリニック館山
地域こそが最先端!!
札幌医科大学地域医療総合医学講座のブログ


門前薬局は元マク○ナ○ドではなく,KFCなのですが,そこはご愛敬として

シニアレジデントの診察を脇で見学させていただいたが、一人15分の予約患者さんに対して丁寧な診察をしていた。高齢者へのインフルエンザの予防接種の勧めや転倒を懸念して家族に防止策を提案するなど、家庭医らしさを感じる診察風景であった。診察室には同伴者のための座り心地のよさそうなソファが設置されていたのが印象的であった。


とのことでした.

身体がいくつもあれば一人分は山本先生のところで働かせていただきたいと思っているのですがなにぶんまたクローン技術やコピーロボットは存在せず,申し訳ない思いばかりです.館山の地で出来る限りのことを一生懸命やるのが一番の恩返しと信じて.

わざわざお忙しい中遠くまで本当に有り難うございました.

2009/12/10

    P4Pにおいて診療所毎のパフォーマンスの差を検出するだけの十分な症例数の診療をしているのか?

[サンプルサイズ]
何かを実現するためのインフラを整備するための研究。このタイプの研究が好みだったりします。今回もアブストラクトのみ。

背景
P4P(成果連動型診療報酬)についてそれを導入するに際してそもそも,診療所毎のパフォーマンスの差を検出するだけの十分な症例数の診療をしているのか?

Medicareの患者において2005年の一年間で外来のプライマリケア医のコストや質の指標について診療所毎の10%の差を検出する為に必要な症例数があるか。

使用した指標 1)66−69歳のマンモグラフィ実施率、2)66−75歳の糖尿病患者におけるA1c測定率、3)予防可能な入院の発生率、4)心不全退院後の30日以内再入院率

1),2)において10%の差を検出するのに十分な症例数があったのは医師が11人未満の診療所では全診療所の10%未満。一方で50人以上の診療所では全ての診療所

3)4,)においては10%の差を検出するのに十分な症例数があった診療所は存在しなかった。

考察)

10%の差を検出するのに十分な症例数があったのは医師が11人未満の診療所では全診療所の10%未満。


成果連動型診療報酬を導入するには医師、診療所が納得のいく成果の評価方法でないといけない。
ソロプラクティスが中心の日本ではP4Pを導入するには症例数が不十分か?
医師50人以上なら,ということでまず病院からの導入となるか。そうするとまた診療所の質が後回しに。
10%でなく5%の差の検出ならばもう少し症例数は少なくて済むだろう。ではそこで証明された統計学的有意差は、診療報酬の差に反映してしかるべき臨床上意味のある差か、という問題は別。 (例えば診療所Aと診療所Bでマンモグラフィー実施率80%vs90%の場合と85%vs90%の場合など)


http://jama.ama-assn.org/cgi/content/short/302/22/2444?rss=1

Relationship of Primary Care Physicians' Patient Caseload With Measurement of Quality and Cost Performance
David J. Nyweide, PhD; William B. Weeks, MD, MBA; Daniel J. Gottlieb, MS; Lawrence P. Casalino, MD, PhD; Elliott S. Fisher, MD, MPH
JAMA. 2009;302(22):2444-2450.
Context Sufficient numbers of patients are necessary to generate statistically reliable measurements of physicians' quality and cost performance.
Objective To determine whether primary care physicians in the same physician practice collectively see enough Medicare patients annually to detect meaningful differences between practices in ambulatory quality and cost measures.
Design, Setting, and Patients Primary care physicians in the United States were linked to their physician practices using the Healthcare Organization Services database maintained by IMS Health. Patients who visited primary care physicians in the 2005 Medicare Part B 20% sample were used to estimateMedicare caseloads per practice. Caseloads necessary to detect 10% relative differences in costs and quality were calculated using national mean ambulatory Medicare spending, rates of mammography for women 66 to 69 years, and hemoglobin A1c testing for 66- to 75-year-olds with diabetes, preventable hospitalization rate, and 30-day readmission rate after discharge for congestive heart failure (CHF).
Main Outcome Measures Percentage of primary care physician practices with a sufficient number of eligible patients to detect a 10% relative difference in each performance measure.
Results Primary care physician practices had annual median caseloads of 260 Medicare patients (interquartile range [IQR], 135-500), 25 women eligible for mammography (IQR, 10-50), 30 patients with diabetes eligible for hemoglobin A1c testing (IQR, 15-55), and 0 patients hospitalized for CHF. For ambulatorycosts, mammography rate, and hemoglobin A1c testing rate, the percentage of primary care physician practices with sufficient caseloads to detect 10% relative differences in performance ranged from less than 10% of practices with fewer than 11 primary care physicians to 100% of practices with more than 50 primary care physicians. None of the primary care physician practices had sufficient caseloads to detect 10% relative differences in preventable hospitalization or 30-day readmission after discharge for CHF.
Conclusion Relatively few primary care physician practices are large enough to reliably measure 10% relative differences in common measures of quality and cost performance among fee-for-service Medicare patients.

2009/12/06

    医療従事者の仕事満足度に関連する要素

HANDS-FDFの現在のフェローの質問に触発されてざっと目を通した論文(ほとんどabstractのみだが)
医療従事者の離職と満足度に関して
結構meta-analysisとかまであるのは驚きました.まだまだ勉強不足.
The Journal of Nursing Administration:から3つも見つかりました.日本にも看護管理という雑誌がありましたね.

相関はあくまで相関.どちらが先かは分からない.ストレスー>満足度のような気になるが,満足度が低いからストレスが高いという順序もあり得る
記述的研究の限界

当たり前の所見が多いような印象でしたが,逆にそれだけ当たり前のことが実現されていない職種なのでしょう.

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なぜ職場満足度が重要か

J Health Care Mark. 1996 Winter;16(4):14-23.
Happy employees lead to loyal patients. Survey of nurses and patients shows a strong link between employee satisfaction and patient loyalty.

Atkins PM, Marshall BS, Javalgi RG.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10169075

職員の満足度が高いと患者満足度も高い
内部顧客と外部顧客の相関.


その要素についての考察


Factors Associated with Nursing Home Staff Turnover
The Gerontologist 1996 36(4):512-517; doi:10.1093/geront/36.4.512
http://gerontologist.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/36/4/512

高齢者ナーシングホーム(特別養護老人ホームのようなもの)の職員の入れ替わり
助手(ヘルパー的な人)の離職率は多職種のケアプラン会議への参加による激減
利益追求型のホームでは離職率が高い
入居者の評価,研修や労働量,入居者の重症度,支払者(保険など)の種類,施設規模などは助手の離職率には関係なかった


Nurses' Job Satisfaction: A Meta-Analysis Of Related Variables
BLEGEN, MARY A.
Nursing Research: January/February 1993 - Volume 42 - Issue 1
http://journals.lww.com/nursingresearchonline/Abstract/1993/01000/Nurses__Job_Satisfaction__A_Meta_Analysis_Of.7.aspx

看護師15000人 48の研究から
仕事満足度と相関が高いのが
ストレス(-0.609)
組織の貢献(仕事満足度への?)(0.526)
ついで相関係数が0.2~0.5のものとして
上司とのコミュニケーション,自己決定権,認識,ルーチン化,同僚とのコミュニケーション,公平性,裁量権
関係が低かった物として
年齢,学歴,終身雇用(tenure)かどうか,専門レベル



The Relation Between Leadership Style and Empowerment on Job Satisfaction of Nurses
Morrison, Ruby S. DSN, RN; Jones, LaDon PhD, RN; Fuller, Bryan MBA
The Journal of Nursing Administration:
May 1997 - Volume 27 - Issue 5 - pp 27-34
http://journals.lww.com/jonajournal/Abstract/1997/05000/The_Relation_Between_Leadership_Style_and.7.aspx

地域の中心的な病院の看護師に匿名で
自分のリーダーシップスタイル(Bass's Multifactor Leadership Questionnaire)
エンパワーメントされている感じ(Spreitzer's Psychological Empowerment instrument)
仕事満足度(Warr, Cook, and Wall's job satisfaction questionnaire)
を記入

transformationalリーダーシップのスタイル
transactionalリーダーシップのスタイル
エンパワーメント
のそれぞれが仕事満足度と相関


Factors Influencing Satisfaction and Anticipated Turnover for Nurses in an Academic Medical Center
Shader, Karen PhD; Broome, Marion E. PhD, RN, FAAN; Broome, Carroll D. PhD; West, Mary Ellen RN; Nash, Mary PhD, RN, FAAN
JONA: The Journal of Nursing Administration:
April 2001 - Volume 31 - Issue 4 - pp 210-216
http://journals.lww.com/jonajournal/Abstract/2001/04000/Factors_Influencing_Satisfaction_and_Anticipated.10.aspx
大規模医育医療機関での看護師の調査

ストレスが多いと,チームの一体感が下がり,仕事満足度が下がり,離職率が上がる
仕事満足度が上がるとチームの一体感が上がり,離職率が下がる
より安定したシフトスケジュールでストレスが減り,離職率が下がり,仕事満足度が上がる

仕事のストレス,仕事満足度,チームの一体感,週末の残業はそれぞれ高い離職率の予測因子

週末の残業!


Nurses' Job Satisfaction, Organizational Commitment, and Career Intent
Ingersoll, Gail L. EdD, RN, FAAN, FNAP; Olsan, Tobie MS, MPA, RN, CNAA; Drew-Cates, Jessie PhD, RN, CFNP; DeVinney, Bonnie C. MHA; Davies, Jan PhD, RN
JONA: The Journal of Nursing Administration:
May 2002 - Volume 32 - Issue 5 - pp 250-263
http://journals.lww.com/jonajournal/Abstract/2002/05000/Nurses__Job_Satisfaction,_Organizational.5.aspx

最も仕事満足度が高く,貢献意欲の高い看護師の多くが5年以内に看護師を止めるつもりであると答えた.!

「やる気のない人との仕事がやる気のある人の気持ちをそぐ,という構造」


以下は医療従事者かどうか不明

Determinants of Employee Job Satisfaction: An Empirical Test of a Causal Model
Augustine O. Agho
Human Relations, Vol. 46, No. 8, 1007-1027 (1993)
DOI: 10.1177/001872679304600806

Price-Mueller turnover modelという離職に関するモデルがあるらしいがそれでは49%しか予測できず,それに別の要素を加えるとより説明できる可能性が高いという話.Price-Mueller turnover modelはネットでは見つけきれず


Five-factor model of personality and job satisfaction: A meta-analysis.
By Judge, Timothy A.; Heller, Daniel; Mount, Michael K.
Journal of Applied Psychology. Vol 87(3), Jun 2002, 530-541.
http://psycnet.apa.org/index.cfm?fa=buy.optionToBuy&id=2002-01666-011&CFID=4672912&CFTOKEN=27585900

5-factor model(性格分類の中では最も研究されている古典的な物の一つ)と仕事の満足度との関係
Big Five personality traitsとはOpenness, Conscientiousness, Extraversion, Agreeableness, and Neuroticism (OCEANと略す)の5つ
http://en.wikipedia.org/wiki/Big_Five_personality_traits

Neuroticism(神経症的性格:物事を陰性にとらえる傾向)とExtraversion(外向的な性格)のみが関連があった(相関係数はそれぞれ-0.29, 0.25) 5大重要性格全体としては0.41の相関

2009/11/24

    第20回 日本臨床スポーツ医学会 学術集会 参加まとめ

頑張って静脈の仕事(input->output、記録)を追いかけてやっています。この活動が自分自身のportfolioにもなります。
今年始まったプライマリケアスポーツ医学フェローシップ1期生の発表の指導教官として、自分自身も勉強をしなければと参加してきました。母校が開催主幹だったこともあると思います。

第20回 日本臨床スポーツ医学会 学術集会

まず、フェローの発表を貼付けておきます。

「家庭医がスポーツ医になる!~スポーツ外来とフェローシッププログラム~」第20回 日本臨床スポーツ医学会 学術集会 池尻 好聰 他

学会のメイン会場が無線LANフリーだったこともあり、そこで参加したものについてはtwitter経由で随時中継を実験的に行いました。
記録は
こちら
他の方からのレスポンスも含めたものは
こちら(こっちはうまく全部表示されないことがあるようです)

断片的な記録ですので,全体像がつかみにくいかもしれませんが、逆にその場でこの記録をしなかったトピックについては未だに振り返りとまとめが出来ていません。
完璧を目指すよりとりあえずの記録を目指す方が良さそうです。

気づいたこと
*スポーツ医学は集学的学問。本当に幅広い領域を取り扱うのでそれだけで専門分野となり得る。よってgeneralistがベースにある方がうまく行くだろう。
*各種委員会は 整形外科委員会(筋骨格系)、内科委員会(ぜんそく,心臓など)、産婦人科委員会(妊娠とスポーツ)、脳神経外科委員会(脳しんとう)、リハビリテーション委員会(リハ)として構成されており、それそのものが現状しかたないとしてもいびつ。
*発表は医師以外の参加者も多く(トレーナーなど)手術をしない人間でも十分勉強になるトピックが多い(妊娠とスポーツだけでシンポジウムがあったり、また動作解析といった運動整理学的なもの、歯科(マウスピース/マウスガードや競技と抜歯との関係)、鍼灸とスポーツなど本当に様々)
*第20回ということで実は家庭医療学会の発足と割と同じぐらいで学問としては若い。まだ学問としての混乱(内部での意見の相違)は見られる。参加している整形外科医の中にもスポーツ医は整形外科ではなくgeneralistの方がよく、スポーツ整形医はconsultantとして関わる方がよいのではという意見も。
*整形外科医、スポーツ整形外科医と、generalをベースにするスポーツ医は視点が違う。
*筋骨格系の軟部組織の診断に使用するエコーは整形外科医にとっても新しい領域。エコーを使い慣れた内科系generalistがより高いレベルに先に到達する余地は十分ある。
*スポーツに関わる医師は予防をかなり重点的に考える(彼らの言葉ではupstream治療と呼ぶ)。その意味でもプライマリケアの視点とかなり親和性が高い。
*清原選手のトークショーは学会参加者だけに向けて実施されたもので、膝の障害との戦いを中心に一個人としての強烈なナラティブで、大量の客観的データよりもいかに個人のナラティブの方が説得力があるかを再認識。大変よかった。

他流試合(異業種との交流)は大変価値のあること。来年もぜひ参加したい学会のひとつとなりました。

2009/11/16

    見えないものの重要性

教育の話はしばしば哲学的な議論へと発展します。できればリンク先も全部読んでみてください。

行動主義vs認知主義とも言えますが,認知にまで上っていない無意識のところの話なので、また少し違うかもしれません。
それを含めての技術移転(研修)というのは可能なのでしょうか。

以前CDが出始めた頃にLPには収録されている耳には聞こえない周波数の部分がなくなってしまうので質が落ちる、といって反対したオーディオマニアが多数いましたが、いかがでしょうか。

いまでもオーディオマニアは非可聴域を再生するために追加でそれ専用の高額のスピーカーをつけて(超高音はtweeter、超低音はサブウーファー)、「やっぱり違う」といっています。

アインスタインの名言
Everything that can be counted does not necessarily count; everything that counts cannot necessarily be counted. Albert Einstein.
「数えられるもののすべてに意義があるわけではない。意義のあるものすべてが数えられるわけではない。」

にも通じるところがありますが、可視化,言語化できないものは教えられるのか、教えられるとして,どのように教えるのか、そもそも教える必要があるのか。というところを考えていく必要がありそうです。
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行動の前に無意識は既に活動している。行動や、書かれたもの(形式知)はその結果でしかない。暗黙知はcaptureされた時点で暗黙知ではなくなってしまうというジレンマ。

暗黙知の次元 2009年11月15日 情報考学 Passion For The Future


形式知は暗黙知という巨大氷山の一角であり、たとえ自分の知識を書き出せる限り全部文字に書き出しても、なお知の本質的な大部分は隠れている。インターネット上に現れる知は膨大だがすべて形式知である。水面下にあるInvisibleな膨大な知をどう引き出すかが次の知の構造化の課題だ。「想像上の衝迫」はたぶん、活発なコミュニティの中にあるように思う。


2008年01月15日 マインド・タイム 脳と意識の時間


表現行為の多くが無意識の創作を意識が追認していくプロセス

「私たちの感覚世界へのアウェアネスは、実際に起こった時点からかなりの時間遅延することになります。私たちが自覚したものは、それに先立つおよそ0.5秒前にすでに起こっていることになるのです。私たちは、現在の実際の瞬間について意識していません。私たちは常に少しだけ遅れていることになるのです。」


関連エントリー
2008/03/13 質的研究 qualitative research のリソース

2009/11/02

    混乱の状況ほど本質に忠実に.週末の振り返り(2009/11/1)

昨日,気持ち的にずっと乗ってなかったインフルエンザのセミナー講師終了.苦手意識の強いモノだからこそ学びが大きいはずと言い聞かせて.

感染症の山本俊悟先生にはずいぶんと助けて頂きました.それぞれのスライドを併せて新型インフルエンザに関してだけで240枚 (4時間のセミナーですが)!

家庭医は通常一つのトピックについてかなり深いところ(通常専門的とよばれるところ)までつっこむことは少ないのですが,「教えることは2度学ぶことである」の言葉通り,改めて新型インフルエンザについての理解を深めることが出来ました.

専門家に相談することの目的は色々あると思いますが今回は,自分がやっていることが大丈夫であることの確認,という結果になりました.

参加者は少なかったですが居眠り率は低く,また帯広から80歳の現役のドクターも参加され,しかも一番質問数も多く,医師は生涯勉強ですが,襟を正す思いでした.

ネット中継も同時にされたのですが,ネット参加者からもなかなか鋭い質問があり,皆さんよく勉強されているな,という感想でした.

一方でまだ流行に入っていない地域の方もおられ,流行地域の人も含め蔓延期における事業継続計画についてはノーマークの方も結構おられました.

一般医療機関のための新型インフルエンザまん延期の診療継続計画作り(第2版)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/090430-01.html

4時間いったいどう埋めようか,ということで始めましたが,今どんどん新しい情報が出ているということもあり,作り始めるとあれもこれもと逆に「何を削るか」を考える羽目に.

最終的には,長時間だからこそ伝えるべきメッセージを明確に,の原則に沿って,きちんとこちらの意図は達成できたのではないかと思います.(フィードバックはまだもらっていませんが)

特に最新の分野については改めてMcWhinnneyの言葉を引用しておきたいと思います.


「もっとも未分化な科学の領域ほどもっとも情報量が多い」非常にうんちくの多い言葉です。今の新型インフルエンザの例を考えてみましょう。わからないことや真理がまだ無いからこそ、多くの調査報告が出てくるんですね。
Sir Peter Medawarを引いて、「サイエンスにおける具体的な知識量の負荷はその領域の成熟度と逆比例する。サイエンスが進むにつれ、個々の小さな事実はその大領域の中で理解され、ある意味、一般化しつつある根本理論の中に取り込まてしまう。つまり、意識的に明文化され、意識されなければならないものではもはやないとして。」(成熟している領域ほど、その上位にあるメタ理論的なものの応用で対応可能だったり説明可能だったりしてとりこまれてしまうから。ということです)

続けて、McWhinneyはinformationとknowledgeを混同してはならないといいます。informationは確かに指数関数的に増える一方だが、それらの多くはほとんど価値が無く、寿命が短く、スペシャリストに対してのみの技術的な興味のみであり、そしてその多くは、医学の本質的なknowledgeに組み込まれるか、最終的に否決されることになる仮説を検証するためだけのものなのである。と


2009/06/25 ジェネラリストになろうとする際に感じる不安の元となるジェネラリストとスペシャリストの役割に関する6つの誤解 (McWhinneyより)

最後のスライドでは
目の前の危機なので対応せざるを得ないが,本当に亡くなる方が多いのは,やっぱりガン,脳卒中,心臓病です.糖尿病や高血圧,癌検診の推奨などやるべき事を粛々とやることを忘れずに,ということをお伝えしました.

リスク認識のゆがみを直すのも医師の大切な仕事です.(リスクコミュニケーションといいます)

真実はおもしろくない、とるにたらない、という態度ー感染症診療の原則
(一般の人のリスク認識はメディアによってゆがめられている)

Doctors have a duty to engage in social media OCTOBER 29, 2009 -Kevinmd.com
(特定の医療行為や情報に対しての根拠なきor悪意あるネガティブキャンペーンがtwitterやfacebookなどのsocial mediaを通じて大量に流れるので,医師も意識的にsocial mediaを通じてそれらを駆逐するほどの正しい情報の発信をしなければならない)

準備に徹夜だったため,帰りの運転が心配で休めるところを探したら都会では安い値段で仮眠をとれるところがあるのですね.ということも発見.それでも帰りは眠かったのですが..

嫁さんには「あなたの生活はびっくりするぐらい規則的に不規則ね」と言われてしまいました.でも本当はirregulary irregularなのよ.私は心房細動か!

昨夜は爆睡.

2009/10/30

    米国レジデンシーの全て(米国レジデンシーのデータ ACGME 2008-2009 data resource bookより

ACGME 2008-2009 data resource book
が公開されています。
レジデンシーとは日本でいう後期研修と考えて頂ければよいと思います。

気になったデータをピックアップ

レジデンシープログラムディレクター 
コア専門科の13%が新しいディレクターに交代
新しいディレクターの就任時 平均教育歴は14年
家庭医療のプログラムディレクターの交代の平均期間(平均寿命)は5.8年 (どちらかというと他の分野より短めです。私は7周年を迎えました)

レジデント
全領域の27%が外国の医学部出身(IMG: International Medical Graduate)
家庭医療では40%
家庭医療からのフェローシップで老年医学は57% スポーツ医学は16%
IMG率の高さで気になったのは内科からのフェローシップいくつか
集中治療 64%
老年医学 69%
呼吸器 85%!

IMG率の高い領域の順位は p.65
(一応IMG率の高さと研修中,または専門医取得後のQOLの高さとは反比例するといわれております。現金なアメリカ人ですから)

p.84 各分野の全体に対する比率
プログラム数は家庭医療が最大(全プログラム数の11.4%)
レジデント数は内科が最大 (全レジデント数の24.6%)
家庭医のレジデントは10.6%

家庭医療のレジデンシー修了者数 3070名
何らかの理由で修了しなかった,できなかった人381名 3.9%

人的資源の豊富さにはまだまだ負けています。
もしかしたら質の話よりもまずは数かもしれません。(この議論は結論がでないのですが)

2009/10/29

    少し体裁を変更しました。(twitter,tumblrとのリンク)

あまりにもblogの更新が滞っているのですが、
自分が手に入れた情報をそしゃくして原稿に起こしてblogエントリーにするというプロセスを踏むというプロセスの敷居が高いために結局発信できなくなってしまう情報が多いので、それほど加工しなくてよい物は数ヶ月前から実験的にtwitterで,最近はtumblr経由で発信しています。
それはこのblogとは別物としてやってきましたが、それなりに軌道に乗りましたので、リンクさせるために、このブログの左側にtumblrの最新エントリー、そして岡田唯男の頭の中にtwitter(twilogにて)とtumblrへのリンクを張りました。
ご参考まで。

2009/10/24

    第22回 医学生研修医のための家庭医療学夏期セミナー ブログ

秋の大型連休に合わせてわざわざ高知からお友達と一緒に来てくださった家庭医療学学生部会代表が見学記を書いてくださいました。

天気がよかったので外へ椅子を持ち出して振り返りと議論をしたのをよく覚えています。僕自身も対話の中で初めて言語化されて、またそれを受け取った他者によって言語化されて初めて気づく事がたくさんあります。

「何でも診るから家庭医なのではなくて、家族・地域を診るから何でも診られなくてはいけない」

今まで無意識の中にあった事ですが、このときの対話によって言語化を助けて頂きました。感謝。

遠いですが、見学の皆さんお待ちしております。

亀田ファミリークリニック館山 実習報告
2009.10.08.11:42

2009/10/23

    [募集] KFCT 家庭医レジデント スポーツフェロー マタニティ/ウィメンズフェロー スタッフ

亀田ファミリークリニック館山 家庭医プログラムでの スタッフ、フェロー、レジデント、短期研修の募集です。

特に急激な立ち上がりを見せているプライマリケアスポーツ医学のフェローがおすすめです。

また、レジデントの募集に関しては面接日が迫っておりますが、まだほんの少し空きがありますので滑り込み可能です!

複製、転送は大歓迎ですので、「そういえばあの人家庭医に興味があったな」という人に心当たりがありましたら、転送をお願いいたします。

当院では、深さはもちろん、日本で最も幅の広い家庭医療の実践、教育、研究を目指します。

現在の重点事項
*得意分野を持った家庭医の育成 (differentiation, GPwSI: General Practitioner with special interest)
*点でなく面での展開(他施設との連携)
*地域、行政との連携推進
*研究、福祉推進事業への取り組み 
平成21年度社会福祉推進費補助金事業の実施状況について
http://www.kameda.com/about/facilities/tateyama/index.html

特徴
*日本家庭医療学会プログラム認定。プログラム認定制度発足に先立って、2000年より運営しています。
*他の認定プログラムが設立の際に参考にするプログラムです。(現在立ち上がっている多くのプログラムの設立担当者の方が見学に来られました。事業報告参照)
*他のプログラムの指導医を育成した指導医が管理するプログラムです。 (HANDS-FDF 修了生参照)
http://mywiki.jp/familydoc/HANDS-FDF+%28Faculty+Development+Fellowship%81j/%8FC%97%B9%90%B6/
*レジデントも含めて10人以上の家庭医が行なうこれからのグループ診療のスタイル(ピアサポートと協同学習)
*3年間基本的に同じ地域で継続診療を行う(継続性を最重視した研修プログラム)
*家庭医療の指導医が常勤5名+非常勤3名
*3次医療機関(亀田メディカルセンター)との綿密な連携(Integrated Healthcare Networkにおける家庭医療)
*プログラム修了生7期16名の実績(修了生はその行き先で家庭医としてそれぞれ高い評価を受けています)

同時に、
*指導医として働いて頂けるhospitalist(GIM:総合診療、病棟中心)、ER医、在宅専門医、もちろん家庭医
*専門を持っているがプライマリケアへ軌道修正したいという方の再研修(特に、小児科、透析、精神科、産婦人科からの転向。)現在も1名研修中です。
*既に家庭医の後期研修を始めているが移籍を考えている方(これについては学会の厳密なルールがありますので慎重にご検討下さい)
*他プログラムの選択研修の期間の受け入れ(現在公式の連携が4プログラム 初期:3 後期:1あります)も募集いたします。
こちらは随時募集、詳細は個別に応相談ですので、私のメールアドレスへ直接ご連絡をお願いいたします。

もちろんそれ以外もできる限り要望を考慮致します。

各プログラムの詳細は
http://www.kameda-resident.jp/senior/examination/internal/internal07.html
をご覧ください。

家庭医後期専門研修プログラムの面接日は、2009年11月9~10日です。
【参考】
亀田は倍率が高いのではないか?という噂があるようですが、それは初期研修の話です。
家庭医のプログラムは設立以来実質倍率2倍を超えたことはありません。

迷っている方もまずメールを!

2009/10/19

    Column : 自業自得?. MMJ (Mainichi Medical Journal) (2009) vol. 5 (9) pp. 573

生涯学習として手軽に読めるMMJ (Mainichi Medica Journal)。毎月楽しみにしていましたが、ご縁を頂きコラムを書かせて頂く事になりました。

第1回目が9月号です。

ボクシングや格闘技のリングサイドドクターというしごとは倫理的に成立するのか?という疑問から初めて、家庭医としての普段の診療に話を展開しました。

引用している
ボクシング存廃論
http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/appliedethics/boxing.html
古いですが内容は秀逸.ぜひ皆様のプログラムでカンファレンスの種としてどうぞ.

発行部数7万5000ということですが、全く反応がなかったのはやはり最後の方の単なるコラム,という事だからなのでしょうか...

blogともその他のソーシャルメディアとも書きたい内容がちがうのは、やはりコミュニケーションチャンネルによって親和性のある内容や対象が違ってくるからなのでしょう。
隔月なのでなんとか頑張って続けようと思います。

Webへの時期、公開方法については出版社の許可を得ています。(9/15/2006公開)

Column : 自業自得?. MMJ (Mainichi Medical Journal) (2009) vol. 5 (9) pp. 573

2009/10/15

    予防接種についての6つの誤解

以前のblog entryより再掲。
新型インフルエンザのワクチンの事がありますので,この時期に改めて。

--------------------------

日本のワクチン行政のひどさには驚くが、一般の人たちの認識も積極的なワクチン推進活動の生涯になっていることがある。米国CDCが、子供のワクチンを打っている医療従事者向けに、子供の親への説明方法としてよくある誤解への説明方法の文書を作成し、現在はWHOでも採用されて、公開されている。

Six common misconceptions about immunization

6つの誤解とは以下の6つです
「予防接種が出来る前からの公衆衛生、生活レベルの向上などで対象の病気は制圧されつつあった」
「病気にかかる人の大半はワクチンを打った人たちだ」(ワクチンを打ってもインフルエンザにかかった)
「ワクチンの特定のロットが高率に副反応をおこす。そのようなロットの番号を明確に突き止めて回収するべきだ」
「ワクチンは多くの副反応、病期、ひいては死亡の原因となる。我々がまだ知らない長期的な影響の可能性など言うまでもない」
「自分の国ではワクチンが予防しようとしている疾患はほぼ制圧された。もうワクチンなど必要ない。」
「同時に多くの病気のためのワクチンを打つことで、有害な副反応の危険が増えたり、体の免疫の仕組みに過度の負担がかかったりする」

以上全て、誤解として、事実の説明が本文でなされていますが、小児の医療に関わる皆さんは上記のような理由でワクチンを拒否する親に、きちんと説明が出来るでしょうか。自信のない人は是非これを機会に勉強してください(英語ですが)

以下でも同様のトピックが取りあげられています
http://www.drspock.com/topic/0,1504,471,00.html

2009/10/14

    Blog, Twitter, Facebook, Tumblrその他。。

現在blogの更新頻度が減っていると感じているみなさま。

更新頻度は減ったが、意味のないエントリーは減ったと思っているみなさま。

blogのエントリーになるほどではないが、という情報や考え(主に自分の考えではなく他者のもの)はTumblrというサービスを使って公開しています。

ここ

blogエントリーになる前の私の頭の中がどうなっているか興味のある方はどうぞ。

2009/10/03

    病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー 7月ケースカンファレンス 微熱、咳嗽、深呼吸時の胸痛で来院した23歳女性

10/8まで限定です!

※2009年7月26日東京都内で収録
この映像は、医療の向上に役立てていただく目的で、
主催者の御厚意により、期間限定で配信しております。(10月8日まで)


以前も担当させて頂いた、

病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー
ケースカンファレンス担当
C&R グループビル2階大会議室 〒102-0083 東京都千代田区麹町二丁目10番9号

http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/special/career/jamep/

ですが、7月も担当させて頂き、10/8まで限定で日経メディカルオンラインで公開されています。
下記のページの下の方にスライドが見えるようになっているので、答えが見えてしまいます。診断名を伏せてカンファレンスを楽しみたい方は,動画から下はみないようにしましょう。

ケース 微熱、咳嗽、深呼吸時の胸痛で来院した23歳女性
【司会】亀田ファミリークリニック館山 院長 岡田 唯男 氏
2009. 9. 24


最終診断自体はまれな疾患ですが、特徴的な所見もあり、病歴、身体診察、検査値を丁寧に検証する事で診断可能な症例と思います。
いつも聖路加国際病院のチーフレジデントの皆さんの症例のため、外来での診断や治療が困難な紹介例が多いのですが、「もしあなたが外来の初診だったら」「自分のかかりつけの患者さんがこの症状で来院したら」という状況で考えて頂く事で、家庭医としても現実身を以て考えられるようにカンファレンスを進めました。

まだ公開されていませんが、次回は11月の担当です。

病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー
ケースカンファレンス担当
C&R グループビル2階大会議室 〒102-0083 東京都千代田区麹町二丁目10番9号

http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/special/career/jamep/

関連エントリー
2009/05/25 病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー ケースカンファレンス ケース 慢性腎臓病の管理目的で紹介された77歳男性

2009/09/30

    Integrated Healthcare Networkにおける家庭医療クリニックの貢献とこれからの課題 その後

家庭医はinterface(接触面)を扱う仕事という発言を時々しています。

当直明けや勤務交代での申し送り(hand off)でよく、情報のもれや勘違いが生じ、医療の質低下の原因となることが最近研究のテーマとしてもよく取り上げられています。

当然,医師の間での紹介、逆紹介のときにも同じ事は起こりえます。紹介状の書き方などが重要です。その問題を少なくするひとつの方法論として Integrated Healthcare Network:IHNという方法が模索されているのは以前のエントリーで紹介しました。

大病院が力のあるプライマリケア部門をその内部に持つ事の利点、欠点について一年ほど前にまとめさせて頂きました。

ほぼ一年前のエントリー

2008/10/06  Integrated Healthcare Networkにおける家庭医療クリニックの貢献とこれからの課題

2008/09/22    日経産業新聞フォーラム2008

の本文、そろそろ解禁です。

Integrated Healthcare Networkにおける家庭医療クリニックの貢献とこれからの課題 【家庭医療クリニックと病院の連携例:亀田ファミリークリニック館山】 病院 特集「病院と家庭医療」 Vol....

2009/09/29

    Lynn Carmichaelの死亡記事から米国家庭医療の歴史をひもとく

歴史をひもとくのは懐古趣味だからではありません。歴史は勝者によって記されたものである(勝てば官軍)という事はありますが、それでも、予想する事のできない未来に対して最善の決断をするための重要な示唆が得られるからです。
また、継続性を大切にし、Contextを重要視する診療をする家庭医として、現在の自分や家庭医療という学問の立ち位置が大きな歴史的な流れという継続性の延長線上、現在どのようなcontextの中であるのか、という視点を踏まえて考える,というのはごく自然な流れでもあります。

最新号のFamily Medicine誌より。

John Frey, MD.  “Who Is Going to Take Care of the People?” Lynn Carmichael and His Times (Fam Med 2009;41(8):552-4.)(pdfです)

今は米国の家庭医すらLynn Carmichaelの事を知る人は少ないでしょう。私がFaculty Developmentの話をするときに必ず「予言」を引用する人です。

1967年 Lynn Carmichael「この新しい分野はすぐに教師に対し ての切実な,増大する必要性に直面する事になる.現実的には全ての教師が臨床からひっぱりこまれ,教育の経験のあるものはほとんどいないだろう」


米国の家庭医療の誕生は1969年です。その数年前に、この分野の急成長を予測しての発言です。最近の日本のgeneralistの指導医不足の状況とよく似ています。

彼がどういう人か。

北米家庭医療の創始者の一人。STFM(Society of Teachers of Family Medicine)の発起人。雑誌Family Medicineの最初の編集長。北米の家庭医の最初のレジデンシートレーニングの設立者。しかもそれらの仕事を35歳から40歳の間にやった。というとそのすごさと重要性が伝わるかと思います。

Founding President Lynn Carmichael, MD, died on June 19 at age 80

今年6月に彼が天に召されたということで、やはり北米家庭医療の創始者の一人であるJohn Freyが彼を忍んで当時の状況とともにまとめた追悼文が先述のリンクです。

まずは,当時の米国と米国家庭医療の状況に関する記述を彼の生涯と絡めて抜き書きしてみましょう。

*1960年代 テクノロジーと専門分化の波の中でGP(General Practitioner:現在の英国などでの他の専門分野と同程度のトレーニングを受けたgeneralistという意味ではなく、短期間のインターンシップ的なものだけで、開業してしまう人たちをそう呼んでいた)達の中で意見が割れていた(このまま幅広く診ることをつづけるか、それぞれが専門を持つか)

*当時のGPの団体AAGP(American Academy of General Practice)は1971年に最終的に家庭医療という専門としてやっていこうという決議にこぎ着けるまで1961年からの10年で6回この動議を否決している。(そういう意味では,日本の3学会の合併はましな方でしょうか)

*1年間ハーバードの小児科講座でフェローとしてFamily Careについて学んだその仕上げとして、1965年に彼が米国の歴史では初めて家庭医の育成に関する論文を発表(ちなみにJAMAに発表.日本では日本医師会雑誌に相当)

*AMA(American Medical Association: 日本医師会に相当)が市民団体を助成し卒後教育に関する報告書の提出に至る.(この報告書はMillis reportと呼ばれ、家庭医療の設立に重要な役割を果たした当時の3つの報告書(Millis, Willard, Folsom)のうちのひとつ。
"Primary Physician"というのを養成しましょう。というのが骨子。全文は以下で。ありがたい事です。
Mills report on Citizens Commission Graduate Education

*AMAはこの時期に,医学教育に関する委員会にこの報告書の内容をふまえたレジデンシー改革を周知徹底するためにだれかを採用するよう依頼、彼とLee Blanchard(彼も北米家庭医療の歴史では重要人物です)がその仕事を任せられ,全米中を奔走。

*レジデンシープログラムとして家庭医療が認められるためには最低15のプログラムが必要という事で、自分自身がひとつを設立。

*当時はプログラム認定基準も国の補助金も大学の家庭医療学講座もなく、当時なんとなく実施されていた2年間のGPレジデンシーを借用、内科や小児科と同レベルにするために一年追加して3年にした。そして,最も改革的だったのは研修の現場を地域に設定した。そしてその研修サイトを'model family practice clinic'と呼んだ。
(この辺りはプログラム認定の前で認定基準のなかった頃からレジデンシーを運営していた頃の自分やそのずっと前から、先進的に教育診療所として奈義ファミリークリニックを作った川崎医科大学総合診療科のこととかぶります)

*1968年の12月ぎりぎりに15のプログラムをなんとか確保。AMAが家庭医療の卒後研修を開始する事を承認。

*同時期に、AMAにいた同僚から、学問として家庭医療を追求する団体を設立する事を考慮するようアドバイスを受け、1967年の10月に45名がニューヨークに集まり、STFMを設立。命名はLynn Carmichael。

*家庭医療の理論形成と組織形成のこの過程で、多くの他職種(教育者、精神科医、ソーシャルワークなど)を巻き込んだ。彼の設立したレジデンシーの指導者はこれらの多職種で構成されていた。

*他職種が必要だという信念からSTFMは当時はほとんどの団体が医師のみの団体だったにもかかわらず、意図的に学生やレジデントの教育に関わった人間を全てメンバーとするようにした。

*当時、家庭医の育成のリーダーとなったのはほぼ全員が30代半ばから40代半ばだった。

*1968年からほぼ40年で合計90385名の家庭医がレジデンシーを修了した。

今これらの史実から我々が学べる事は何でしょうか。(あえて書きません)

もちろんこのarticleには彼の人柄が垣間見えるエピソードがいくつもちりばめられており、当時の医師像とは一線を画する飾らない、威張らない、聞き役に徹する、しかし信念は譲らない人である事が伝わってきます。

若いエネルギーは家庭医療学会にあります。しかし多職種でなければならない,という信念はプライマリケア学会に一日の長があります。
米国の家庭医療創設はアメリカ医師会(AMA)なしには起こりえませんでしたが、日本医師会は40年後に「日本の家庭医療の確立は日本医師会なしには不可能だった」といわれるか、「日本の家庭医療の確立は日本医師会の少なくとも2度の妨害行為にもかかわらず日本プライマリ・ケア連合学会と市民によって達成された」となるか。

今月号のFamily Medicine誌はもうひとつ興味深い投稿がありましたので追って。

2009/09/28

    家庭医がチームドクターとしてデフリンピックに参加

デフリンピック。聞き慣れないかもしれません。パラリンピックは聞いた事があるかもしれません。

ろうあの皆さんのオリンピックです。

デフリンピック
提供: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


今年は台北9月5−15日まで行われ日本はメダル20個と大健闘でした。

その影からのサポートとして、亀田家庭医後期専門研修を終えて家庭医となった田口智博医師がチームドクターとして選手団のサポートをしてきました。

現在地 ≫ トップページ ≫ 日本選手団 ≫ 日本選手団名簿 ≫ 日本選手団本部

ずっとライフワークとして手話を勉強しており、卒業発表も「聴覚障害者に優しいクリニック作り」でした。

チームドクターというと整形外科の医師,というイメージが強いかもしれません。もちろん整形外科の医師はチームをサポートする上で重要な役割を担います。しかしフィールドには手術室はなく、普段からの健康管理、サイドラインマネジメント、栄養面,心理面なども含めトータルにサポートするには家庭医がベストポジションにあります。

通常の診療と同様家庭医が中心となってトレーナー、リハビリ、スポーツ整形医と連携をとりながらというのがベストの形です。

実際にインフルエンザの発生もあったようで、家庭医であったからこそ適切な対応ができたと考えます。
日本選手団におけるインフルエンザの発生について
掲載日: 2009/09/11 カテゴリー



チームドクターのカバーするべき領域は以下にもあるように、筋骨格系にとどまらず家庭医のような幅広い領域の能力がベースに必要で,実際海外ではオリンピックチームのチームドクターでさえスポーツを得意にする家庭医の方が多数派を占めます。
日本でも自転車のオリンピックチームのチームドクターは家庭医がつとめました。

KFCT プライマリ・ケア スポーツ医学 フェローシッププログラム 概要と募集要項 KFCT-PCSM Fellowship Program

これから伸びてくる分野です。

2009/09/27

    Air TaggingとAugmented Reality、そしてセカイカメラ

どんどんSFで見た世界が現実になってくる、これほど、生きていてexcitingな時代はないと思います。
iphoneはいろいろな意味で革新的ですが、意外と目立たないが,個人的に非常に意味が大きいと考えているのが位置情報を写真につける(geotag)仕組みの構築。Web 2.0のひとつの特徴としてfolksonomy(利用者が勝手に分類タグをつける)が大きな役割を果たし,電子情報の整理方法が変わりましたが(というより整理をせずに検索をする,という情報利用の仕方に変わった)、その検索軸に「位置情報」が加わった事が画期的なのです。

twitterやblog、facebook、tumblrなどそれぞれが勝手に書き込みをしコミュニケーションをはかるソーシャルネットワーク技術がほぼ一般化していますが(古くは2ちゃんねるでしょうか)、その書き込み情報にgeotagをつけるのがair tagging。

Augmented Reality (AR)は仮想現実と訳されています。駅の大きな広告が話しかけてきたり、動画だったりという風景をSFなんかで見た事があるかも知れませんが,かなり実現に近くなっています。

まずセカイカメラについてのいくつかの動画やリンクを見るのがよいと思います。というか見てもらうしかない。



セカイカメラとは関係ないですが、魚の図鑑のARがわくわくします。

セカイカメラは、ある特定の位置情報がつけられた発言や情報をその位置に来たらAR(仮想現実)として見せる、という組み合わせ技です。

2009年09月24日 11時21分 更新
App Town ソーシャルネットワーキング:
「セカイカメラ」 App Storeで配信開始


動画で見せる、ここまで来たケータイAR
iPhone+セカイカメラで「電脳コイル」体験
2009年02月19日 12時00分更新


セカイカメラの世界観--Air Tagging The RealWorld
鳴海淳義(編集部)
2008/09/26 14:58


トブ iPhone 2009年9月24日
頓智・CEOに学ぶ「セカイカメラ」の秘密とコツ10


個人情報の未来(バーチュアル名刺) Augmented Reality - PRESIDENT's BLOG - Beat Communication(ビートコミュニケーション) AR名刺。

ややこしい事は抜きにして、見ているだけでわくわくする(未来がやってくる)感覚です。(書き込みが増えるとARの世界は大変そうですが)

ipod touchを持っているのでまだiphoneを買うつもりはないのですが、この2つの明確な差はGPS機能とカメラ機能です、その両者の特徴を最大限に発揮させる可能性のあるセカイカメラ。またiphoneへの誘惑が強くなりました。

しかしどんどんdigital divideは広くなっていく一方です.取り残される人々が心配。。

2009/09/26

    男もすなる「つわり」といふものを..(part2)

前回のエントリー 男もすなる「つわり」といふものを..
の補足。

以前どこかで読んだ、という男のつわりについての出典。

赤ちゃん誕生の科学
正高 信男
PHP研究所 ( 1997-01 )
ISBN: 9784569555133
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


章立てそのものが結構面白い。
第1章 男の子と女の子の生み分けは可能か
第2章 つわりはなぜ,起こるのか
第3章 胎教はどこまで本当か
第4章 出生前診断を受けるか受けないか
第5章 どのようなお産を選択するのか


医学、生物化学的な部分の裏付けはあまりしっかりしていないが、現象としての意味や、社会学的な解釈を中心に書かれている印象。

その第2章で
様々な仮説の中で「コミュニケーションとしてのつわり」という下りがある。
そこで、男を試す試金石としての役割 というセクションがある。
以下抜粋+要約

妊婦自身が意識している訳ではないが、「吐き気」をもよおすことに、何らかの反応を見込んで、体がそのような現象を起こす、とするならば、それを効果的に利用する方が得策であろう。
男性は当人の意思次第で、子供の養育の負担をかぶる事もできるし,逃げる事も,妊娠だけさせておいて、姿をくらます事も可能である。
子供を育てるには膨大な時間と資源が必要であり、女性にとってはできるだけ早く父親にあたる男がどのような態度を取るか見極め,必要に応じて迅速な対応策をとる事が必要。
その心構え(どの程度子供のある過程を長期的に維持する事に責任を持つ気があるのか)を知るための最初の試金石として、つわりに対する反応を利用しているのではないか。


先述の日本のあちこちに残る男のつわりの例も挙げながら、最も代表的なものとして、南アメリカ先住民の例を挙げている
その中でいくつかの特徴として
*一般に夫が嘔吐するほど妻のつわりは軽くなると言われている
*広大な南アメリカ先住民の部族のうちのかなりの数に同様の例がみられる
*男のつわりがみられる文化に共通する特徴が存在し、それは,それらの文化がおおむね母系社会である

母系社会とは財産や権利なども含め母、娘の流れを中心として継承される。男性は通常入り婿のような形をとり,よりその地位は低い(亭主関白、男尊女卑の反対)。
要は、女性が様々な決定権を持つ社会で、男性がその利益に預かろうとするために、生まれてくる子供の養育に夫がどれだけ貢献するつもりがあるかの「証し」を見えやすく表現する事が求められているという背景からではないか。との仮説。


社会現象としての解釈なので、証明は難しいけれど、つわりのひどさとその後の離婚率の関係という形で研究にはできそうです。

2009/09/23

    男もすなる「つわり」といふものを..

「女も」の間違いではない。
男もつわりをするのである。だいぶ前に読んだ本で既に知っていたが(出典を失念。その時は南洋のとある民族の話として知った)、改めて確認。

立派にwikipediaにもまとめられています。(出典に柳田国男監修・(財)民俗学研究所編『民俗学辞典』なども使われています)

男のつわり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


より

男のつわり(おとこ-)とは、妻が妊娠すると夫の身体の調子が悪くなることをいう。福島県では「トモクセ」、岩手県沿岸地方では「男のクセヤミ」といい、ひどい人は妊婦と同じく汗をかいて衰弱し、嘔吐をもよおしたりもするが妻の出産が終わると治る。「病んで助けられるのはクセヤミばかり」という民俗語彙もある。岩手県岩手郡では「クセヤマイ」、長野県下伊那郡地方では「アクソノトモヤミ(悪疽の共病み)」、奈良県高市郡地方では「アイボノツワリ」と呼ぶところがある。未開社会では、妻が妊娠すると男が産褥(出産用の寝床)につく真似をする風習をともなう地域があり、couvade(擬産)と呼称される。
医学的には、男性が妊婦のマタニティ・ブルーと同じような症状、すなわち嗜好の変化、吐き気、めまい、頭痛、食欲不振、体重の変化、感情の変化、睡眠時間の変化などを総称してクーヴァード症候群(couvade syndrome)と呼ぶことがある。



Couvade syndromeもきちんとまとめられています。

男性のつわりはpsychosomaticに説明するしかないのですが、元々読んだ他の民族の例では、男性のつわりが強いほど女性のつわりは軽くて済む、また、男性のつわりが強いほど女性への愛情やケアの強さを示している、という風に理解されるようです。
その事を知っていて潜在意識で何かが働いていたせいかもしれませんが、自分自身の子供のときに男として軽いつわりを経験しています。

わかばまーくくらぶ 1000人以上のつわり体験談では、
夫、家族のつわり??体験談というページがあり、

すこし眉唾的なもの?もふくめて、結構面白い体験談が数多く寄せられています。

例)KLMさん  05/10/05
4回の妊娠のうち、2回目・3回目・4回目の妊娠は、主人が先に気がつきました。主人は私が初めて妊娠をしたときに、日常であまり体験することのない船酔いのような、おかしな感覚を味わったと言っていました。
そして2年後、またその感覚に襲われたので、私に「お前、妊娠したんじゃないか?」と冗談交じりで言いました。しかし、実際検査して見ると、なんと陽性!妊娠6週目になっていました。そして3回目、4回目の妊娠もそのようにして主人に教えられました。


babycom お産の民族学では
つわりが激しい夫を持つ妊婦はつわりを経験しないという話もある。これは、現代でもみられる現象で、気の弱い男性に多いといわれている。


という表現があり、自分は気が弱いのだ.と再確認。

“つわる”という言葉は、初潮の頃のこと、すなわち成熟する寸前の状態のことを意味する。また、木の芽が出て花のつぼみがふくらむことを“つわぶく”というところもあり、いずれも完熟一歩手前の状態を意味するところから“つわり”の語源はきているといわれている。



猿でもオスざるの体重が増えるという現象がある
【ファンキー通信】男だって、妊娠中はつわりになっちゃう!
2006年02月23日00時07分


生物医学的には説明できないと思いますが(もしかしたらそのうちできるようになるかもしれません)、mind-body connectionを前提に医療を行うのがgeneralism。医療文化人類学的には簡単に説明できてしまう事ですし、その立場からは更年期の症状も日本ではかなり他の文化と違った症状を示す事が知られています。(生物学的な理由だけで生じるのなら、それほど大きな人種差はみられないはずです。この話はまた日を改めて。)

言い古された事ですがが、言葉はあるものにその社会や文化についての意味付けを持たせるための「記号」であり、病名や症状もその例から漏れることはないのです。(その事を忘れてしまっているために、医療現場で多くの齟齬が生じています)

2009/09/22

    やっぱり3つのうち2つまで。




2007年10月12日 誠実なお店の看板 秋元@サイボウズラボ・プログラマー・ブログより。

バイク店にかかっていた正直な看板の写真だそうで。

「良いサービスを、安く、早く。3つのうちどの2つでもお選びいただけます」

良いサービスを安く、という場合は時間がかかります
良いサービスを早く、という場合はお代がかかります
とにかく安く早く、という場合はサービスの質を落とさせていただきます


医療政策を少しかじっているとピンと来るメッセージです。


2つまでしか選べない「コスト」「アクセス」「質」
週刊医学界新聞
第2469号 2002年1月14日
【特別寄稿】
理念なき医療『改革』を憂える
第1回 日本の医療費は過剰か?
李 啓充(マサチューセッツ総合病院・ハーバード大学助教授)


 
米国オレゴン州の低所得者用医療保険「オレゴン・ヘルス・プラン(註)」の管理部局には,「Cost, access, quality. Pick any two(コストとアクセスと医療の質。このうち,2つまでなら選んでもよい)」という言葉が額に入れて飾られているが,この言葉ほど医療保険政策のエッセンスを的確に言い当てた言葉はないだろう。
 「コストを抑制してアクセスも保証して質もよくする,3つとも同時に達成することなど夢物語だ」と,言っているのであるが,英国の場合はコストを抑制しすぎたがために,手術待ちが著しく長くなるなどアクセスが障害されたのである。このオレゴン・ヘルス・プランの「2つだけルール」を日本の医療に当てはめたらどうなるだろうか。


日本医師会 李医師 講演資料9ページ目 (pdf)


再度、最初に出したブログから

ソフトウェアの開発も同じことで、3つを同時にいくらでも満たすのは無理。できますと言うエンジニアがいたら詐欺師かダンピングのどっちかだろう。

機能とコストと納期は、x-y-zの三軸に張り付いたゴムの膜みたいなもので、一つをグーッと引っ張ろうとすると、他の二つがつられて短くなっていくものだ。

相手が顧客でも営業でも、それまで無かった新しい制約条件を追加されたときに、「それを実現すると、代わりにこれが犠牲になります」と言えなければ、プロジェクトを制御しているとは言えないと思う。

そういう意味で、この看板はただの冗談じゃなく、「誠実」と思った次第。


開き直る訳ではないけれど、限られた資源の中ではやはり3つともは無理だと思います。
そのときに、国は、国民に3つともは無理ですよ、という事実をきちんと示し、医療政策としてどの2つを優先するのか(どのひとつを、後回しにするのか)ということを決めていかなければ、何をやるにしても中途半端になってしまうような気がします。そして国が決めた2つの優先軸を基本方針としてきちっと提供するのを国立、県立、自治体立などの公的医療機関できちっとやっていく。そうすると民間はまた動きがとりやすい、うちは国が後回しにした○○を優先します。ということで、うまく住み分けもできる。

世の中のものやサービスで3つとも成立させたものどれだけあるでしょうか?

検索用キーワード:Good、Cheap、Fast

2009/09/21

    芸術と医療は両立するのか

芸術家の仕事は観客(聴衆)にできるだけ自由な解釈の余地を提供する事。

シンガーソングライターが歌を歌う時、その作り手の元となった体験や考えは特定のなにかに根ざしているのだが、発信された瞬間に1000人の聴衆がいたら1000人がそれぞれ自分の体験との交点で自分なりの解釈をして共感する。別のシンガーがそのひと独自の解釈でカバーされて、全く新たな作品になりでもしたらそれほど本望なことはない。歌に限らずどのような芸術家でも同じ。

モノ作りはある程度その形態と機能が使い道を規定してしまい、それはアフォーダンスという意味では最も成功した形なのだけれど、逆にそれ以外の使い道(解釈)を許さないという自由度のなさを意味する。(まれにiphoneのような電話機能以外は持ち主がそれぞれらしい使い方をアフォードする、という例もあるが)。

芸術家は、特に大衆性の高い芸術家は、非常に「私的な」な体験からスタートするにもかかわらず、その表現の形をできるだけ多くの人がそれぞれの「私的な体験」と結びつけられるような、最も解釈の多い形で発信するという意味で、「インスピレーション」を提供する仕事といえる。ある意味「誤解」や「齟齬」は歓迎されるものである。

再度まとめると、芸術家は

発信者の「私的体験」ー(1)ー>最も解釈の可能性の広い「普遍性」(自由度が高い)ー(2)ー>受信者の「私的体験」

の(1)のプロセスにその仕事のほとんど全ての努力を費やしている。そこがうまくいけばいくほど(2)は労力を必要としない。

一方医師の仕事は、医学という普遍性、しかも受け手が自由に解釈をする可能性を限りなく少なくしなければならない普遍性を取り扱うため、最も自由度の低い普遍性(受け手が交点を見つける事が困難な)と様々な感性を持つ受け手(患者)との交点を見つけ出し、紡ぎだす、という作業をする仕事である。つまり上記の(2)に労力の多くを費やしている。

ある個人が最も自由度の高い(解釈の多い)普遍性を生み出すためにその労力の多くを費やす芸術家の仕事と、最も自由度の高い(解釈の少ない)普遍性を、できるだけ多くの感性と結びつけることにその労力を費やす医師の仕事(ある先人はdiseaseとillnessの擦り合わせと呼んだが)の両立を目指して芸術的に医療を行おうとするとき、次のような共通点を見いだす。

芸術家は最も自分らしいやり方で自分を表現する(つまり、それぞれがそれぞれの感性でそれを解釈できるようにする)事で、聴衆はそれぞれが「自分はありのままでよいのだ」というメッセージを受け取る。つまり「自分らしくある事」をアフォードする。

医師はそれぞれの患者が最も自分らしく人生を送れるようにその妨げとなり得るもの(病気や障害)を除去したり、軽減できるよう手助けをする。その手助けのやり方にはそれぞれの医師の「自分らしいやり方」を持ち込む事ができる。(ただし相手にもそれなりの努力を要求する、という意味でアフォードする事からは残念ながらほど遠い)

芸術家も医師もその人がその人らしくある。という事や人生や生きている事のすばらしさを確認するための手助けをする仕事という大きな共通点を持っている。

芸術家の端くれが

佐野元春のザ・ソングライターズ


のような番組を見ていると、ついそんな事まで考えさせられてしまう。

また難しい事を難しく書いてしまった....

2009/09/19

    館山について2題(やわたんまち、鳩山荘)

今日、明日は館山(南房総)で最も大きな祭礼「やわたんまち」(この辺りでは祭りの事を「まっち」または「まち」といいます。関東三大八幡神社である館山の八幡(やはた)神社でおこなわれるので、やわたんまち。無形文化財指定)なので、午後の外来は閑古鳥です。(たまになら、閑古鳥もok)海のそばの土地なので、祭りは漁師気質の荒いものが多いですが、やわたんまちでも最大の見所では八幡神社の長い長い参道を各町の山車を全速力で引っ張って、その突き当たりにある本堂のぎりぎりのところで止める、という「チキンレース」を5回(各町の分)やります。明日の午後です。
今年は大型連休と重なっていますので人手がすごい事になるのではと思います。

やわたんまち
http://yawata.bakufu.org/

ビデオはたくさんyoutubeでみられます
やわたんまちのビデオ


そして急遽話題になった鳩山首相。ゆかりの土地が館山にあります。(個人的に宿泊した事もあります)
館山の別荘跡 旅館「鳩山荘」 一躍脚光
鳩山総理きょう誕生「友愛プラン」も打ち出す
9月15日 房日新聞


人々が愛着を持つ土地は間違いなく「個性」があります。その個性は歴史が伴う事が多いです(そうでない場合もありますが)。
そして、館山は間違いなく「個性」を持った土地です。

関連エントリー

2009/04/26 出没!アド街ック天国:房総 館山

2009/09/16

    たまごクラブ10月号 掲載(取材を受けました)

働かせて頂いている亀田ファミリークリニック館山が先日 妊娠から出産までを応援する雑誌、「たまごクラブ」から取材を受けました。

毎月特定の地域に限定してその地域の妊婦さんを応援するスポットや情報(医療機関だけでなく、安産の神社や、妊婦限定プランの用意されたお店やテーマパーク、ホテルなども含めて)を紹介する連載

地域限定 たまご通信


において、10月号が千葉房総特集、という事でその中で、「注目ホスピタル」として妊婦健診もできて小児も診る事のできる医師(もちろんそれ以外も)である、母子サポーターとしての家庭医のいる医療機関として紹介されました。

もちろんどの領域においても理解ありしかも実力のある各分野の専門医の強力なバックアップがあって成り立つ我々幅広く診る専門医ですが、助産師が産婦人科医のバックアップを得て助産師外来が成立するように、我々家庭医と産婦人科医とでも十分に成立します。海外においてはそのようなモデルが実際に長年にわたって運用されています。

そして南房総館山では、母体の三次医療機関の産婦人科の全面的バックアップはもとより、市内の開業の産婦人科の先生方からも多大なるご理解と支援を頂いています。

妊婦健診と小児の診療の両方できる医師(家庭医)にかかる事の多くのメリットの中からひとつだけ挙げるとするとその簡便性と継続性です。

かなり前から「プレネイタルビジット」と呼ばれる受診が推奨されています。これは、予定日が近くなったら赤ちゃんを診てもらう予定の子供を診る医師の所にいって、ある程度の不安と手間を解消しておきましょう、という事です。
解消になる理由は
特に初めての子供の場合は生まれてばたばたする時期に小児を診る医師がどこにいるか探して、予約を必要に応じて取って、どんな医者かな、という想像と「怖い先生だったらどうしよう」という心配をして、妊娠と出産の経緯をはじめから話して(新生児を診る医師にとっては妊娠と出産の経緯を詳しく聞く事は重要な情報です。ですが、どれほどの産婦人科医から新生児の主治医に妊娠と出産の経緯の紹介状が書かれているでしょうか)それから、いろいろな不安や心配事をようやく話ができる

ということを、出産後慌ててやるよりも、出産前にやってしまえば少し慌てずに済むでしょう、ということです。これはその通りですが、
妊婦健診をしてくれた医師がそのままずっと子供も(もちろん産後のお母さんも)一緒に診てもらえるとしたら

上記で挙げた障壁は、
赤ちゃんを診てもらう医師を探さなくてよい(妊婦健診をしてくれた医師がそのまま診てくれる)
その医院の場所を探さなくてよい(妊婦健診をしたところで診てもらえる)
もう十数回妊婦健診にかかっている医師なので「どんな先生だろう」と心配しなくてよい
妊娠と出産の経緯を詳しく話す必要もない(その医師が診たのだし、そこにカルテもある)
産褥の健診と1ヶ月健診を別々の場所へ行く手間もない
ということによって、

産後の最初からよそよそしい挨拶や、詳しい問診を省略して「おかえりなさい、どうでしたか」から始められるという利点があります。
医師にとっても初めての赤ちゃんとお母さんに会うのは少し緊張し、ストレスもかかりますし、先に書いたように、お母さんの質問や不安に答える前にたくさんの情報を聞き出す必要があるのですが、妊婦健診から診せてもらっている事で、我々にとっても、多くの手間を省略して、すぐにお母さんのサポートに取りかかる事ができるという利点があります。

そもそも、わざわざプレネイタルビジットが必要と知らなくても、知ってたとしてもわざわざそのために努力する必要もなく、

妊婦健診に通う事そのものがプレネイタルビジットとして成立している


ということなのです。


15日発売なので、まだ本文は載せられませんが、表紙をのせておきます。月刊誌なのですぐになくなります。みんな本屋へ急げ!



これまでの妊婦健診の実績はこちらから


9/18/09追記
以下のようなPOP広告を近隣の本屋さんのたまごクラブが並んでいるところに置かせて頂きました。
うちのスタッフが作ってくれました。感謝!

POP広告

10/22/09追記
実際の原稿のスキャンです。
公開時期と方法については出版社の許可を得ています。

たまごクラブ10月号(2009)鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山 掲載(取材を受けました)

2009/09/15

    2009年 プライマリ・ケア関連学術集会連合学術会議 京都. 2009年8月21日-23日(今年も学会賞頂きました)

怒濤の8月が終わりその残務処理をしていたらあっという間に9月も半分。
残務処理は何も生まないようですが、fidelityを上げるために必要な作業です。

「僕の前に道はない。僕の後に道はできる。」
いい加減に歩いたら消えてしまうかもしれない足跡をしっかり付けて、できた道を明確にする作業です。

共同発表者全員の了承が得られたものだけWEBにアップしてあります(後半にリンクを張ってあります)。今回、
2009年 プライマリ・ケア関連学術集会連合学術会議 京都
で行った発表、WSは4件。
そのすべてが僕の力だけではなし得なかった事です。主役は共同発表者の人たちです。僕はアイデアとアドバイスをできる限り提供して、よりよいものに、その人のポテンシャルが最大限に引き出せるようにする仕事です。

*若林 秀隆 、喜瀬 守人, 岡田唯男. 学会賞候補演題(口演)「FMCD-1 家庭医はリハビリテーションにおいてどのような臨床能力を必要と考えているか」 (学会賞受賞)
http://www.scribd.com/doc/19730168/2009-

*本山哲也、清水幸子、鈴木真、岡田唯男. 学会賞候補演題(口演)「FMCD-3 家庭医による妊婦ケア – 日本の家庭医はどこまでできるのか? - 」
http://www.scribd.com/doc/19730171/FMCD3-2009-

*大石愛、関根龍一、岡田唯男、林章敏、長美鈴、岡崎正典、櫻井宏樹. ポスター 「PS05-2 家庭医が遺族ケアとしての外来継続を行った一例~家庭医が提供できるグリーフケアの可能性について」

*伊藤彰洋、岡田唯男. ポスター 「PS23-2 後期専門研修プログラムにおいて侵襲的手技を行うにあたり、指導医による直接観察による評価と指導の機会を増やし、患者への安全性を向上させるシステム作りの試み」
http://www.scribd.com/doc/19730172/-2009PC-

*WS: ジェネラリストのための総合的な学習の時間~前立腺がんのPSAスクリーニングを題材に~ (委託ワークショップ. 伊藤彰洋 小宮山学 池尻好聰 栗原大輔 寺内勇 平洋  家研也  竹内治氏と)

幸い、昨年の、
日本家庭医療学会 学会賞 受賞!
に続き、今年も学会賞を頂く事ができました。

研究はチームの成果なのに、賞状は主発表者の名前しかないのは納得いきませんが。
ついでに、自分の経歴もupdate.

学術活動
http://mywiki.jp/familydoc/Multifaceted+Tadao+Okada/%8Aw%8Fp%8A%88%93%AE/

論文・執筆活動
http://mywiki.jp/familydoc/Multifaceted+Tadao+Okada/%98_%95%B6%81A%8E%B7%95M%8A%88%93%AE/

学会そのものは合同学会としてはこれが最後で、来年からは日本プライマリ・ケア連合学会として合併をして、その学術集会として再始動、我々の業界では歴史的な出来事が続いています。

出来事の価値やその意味付けは後になってみるまでわかりません。ただいえるのは「勝者が記したものが歴史」ということ。これまでは。

これからもしばらくは混乱が続きますが、地面が固まるための雨と前向きにとらえましょう。


学会賞候補演題(口演)「家庭医はリハビリテーションにおいてどのような臨床能力を必要と考えているか:質的研究」2009年 プライマリ・ケア関連学術集会連合学術会議 京都. (学会賞受賞)


学会賞候補演題(口演)「FMCD-3 家庭医による妊婦ケア – 日本の家庭医はどこまでできるのか? - 」2009年 プライマリ・ケア関連学術集会連合学術会議 京都.

ポスター 「PS23-2 後期専門研修プログラムにおいて侵襲的手技を行うにあたり、指導医による直接観察による評価と指導の機会を増やし、患者への安全性を向上させるシステム作りの試み」2009年 プライマリ・ケア関連...

2009/09/11

    家庭医ポリデント論

木曜日の夜は家庭医療学の理論的基盤についてのカンファ。昨夜は先週から引き続き在宅医療、とくに導入時面接を切り口に。発表者は「安心」をキーワードに。場所が変わる.医療従事者が変わる。環境が変わる。安心とはその継ぎ目で継続性をいかに担保するかのこと。いかに家に帰る患者さんとその家族に安心してもらえるか、そのためには自分たち医療者が安心して病院の医師から引き継ぎをするかが重要、といった話に。

以前から家庭医は通訳/翻訳の仕事(違う言語の間を取り持つ)、もしくはコンピュータでいうOS(コンピュータの2進法の言語と、人間の言語を取り持つ)という主張をしてきました。

違うもの同士の接触面(interface)を扱う仕事。

難しい医学という学問と患者さんの生活というinterfaceを扱う仕事。

「そのもの」「そのこと」自身というより、それらを取り巻くモノ、コト、との関係性を取り扱う。

どこまでいっても関係性(relationship)をうまく取り持って整合させる仕事。relationship based medicineという言葉が思い出させる。

少し前に誰かとの会話で思いついたアイデア。

面と面との間(interface)を取り持って、うまく合わせる、という意味では家庭医はポリデント。

うまくやらないと間に物が挟まって痛いんです。


追記)通訳、OS、ポリデント一応僕が言い出しっぺという事にしてください。
追記2)ポリデントとは総入れ歯と歯茎の隙間を組まなく埋めて、噛みやすくしたり、その隙間に食べ物が入り込んだりしないようにする、ゲル状の接着剤のようなもの。

2009/09/07

    東京Jazzに行って学んだこと(Jazzと家庭医療の意外な共通点)

東京Jazzに行って学んだこと
東京Jazzという3日間のイベントに行ってきました(日曜の夜だけ)

http://www.tokyo-jazz.com/

情操教育の一環として子どもも連れて行ったのですが,19時開演で4バンドが出演予定.1つめが終わったところで50分+15分休憩...全部終わったら何時?

結局最後のバンドの途中で退出,勿論館山まで戻ったら深夜1時前.
子ども達よ済まん!明日(今日)学校・幼稚園なのに!
どうかjazzのこと嫌いにならないで.

Jazz playerとして,家庭医として色々と思うところがありましたので少し.

Jazzについて

1.現在のjazzは複雑になりすぎている.

芸術の一つである以上originalityを追求することが必要で,特にJazzはこれまでの流れに自分らしさを乗っけて新しい「何か」を生み出すことを要求されるので,ともすれば,「良い物を作るための破壊」ではなく「破壊のための破壊」になってしまっていることがある.
間違いなく自分ではマネなどできっこないレベルだがそれだけ.面白くない.
かなり自慰的なartistもいたように思います.すごいことは分かるが,理解できなくなったら一部の人だけの物になってしまう.
一方で3つめのLou Donaldsonのバンドはすごかった.昔のまま(60年代)の昔のヒットソングで,昔の通りやるんだけれど,観客の反応が最も良かった.観客が一番正直.the less is the more. the simple is the best.
jazzは小さなライブハウスで息づかいの分かるところで聞くのがベストなので,今回のような何千人も入るところではやっぱりダメだな,artistがあんなに遠いもん.そのせいで自分は面白くないんだ,と思っていたら,Lou Donaldsonは観客がみんな入り込んで,感情移入して.ホール全体が一体化.
Duke Ellingtonの言葉が思い出される.「世の中には2種類の音楽しかない.良い音楽と悪い音楽だけだ」

大衆に受けなくなればその芸術はそのまま廃れてしまう.

2.エンターテイメント(娯楽)と芸術

そんなことを考えながらコンサートを聴いていたら,死後まで価値の認められなかった画家ゴッホのことやら,理解されにくいピカソやダリのことを思い浮かべていた.
パリはもちろんのこと,東京の露店でも写実的なもしくは印象派ぽい油絵はそれなりに手軽に手に入る(勿論無名のartistだけれど).基本的な技術が有れば恐らく描ける類の絵.それは芸術と呼べるのか.そこに費やした制作時間(基本的な作業時間とキャンバス,絵の具代)以上の価値はあるのか.一方で現代美術館にあるようなコンテンポラリーアート(恐らくフリージャズや,現代の多くのjazz musicianはこれに相当する)は一見理解できない物も多く,お金を出す気も起きないか,ひょんな事でお偉い批評家に取り上げられて,とてつもない値が付くかのどちらか.
芸術家であること(originalityを追求すること)とエンターテイナーであること(大衆に広く受け入れられること)は両立するのか.
1つめのバンドは芸術的なレベル,技術レベルはとてつもなく高かったが,聴衆と分かり合えたか,聴衆に伝わったかは疑問.いわゆる自分の価値観の押しつけのような.(一方的なパターナリズムの医療の風景を見ているよう)

Lou Donaldsonは往年のテクニックにこそかげりは見えていたが最も聴衆とつながっていた.最も聴衆が喜んだ,満足した.

commodity化の話は以前も書いたので

  芸人と芸術家の違い(goods, service, experience)
これ以上は書かないが.

大衆性(大衆に受けること,幅広く行き渡ること)と希少価値(one and onlyであること)の両立は限りになく不可能に近いのではないかと考えている.
医療をやる上で,自分が家庭医としての技能を磨く上でこれが永遠のテーマのように思える.

家庭医療とのからみ
1.海外の大御所を呼べばそれで何とかなると思っている

確かに今回のチケットも最も大御所の名前の多い回を選んだのは自分なのだが(そのせいで子ども達に迷惑が),某大御所ピアニストはミストーンだらけ,某ギタリストとのコラボは明らかに打ち合わせ不足,しかも2人とも「こなし」「流し」の演奏.
忘れてしまっていた「年取ったかつての大御所の演奏は失望のことが多い」の原則を再認識することになった(勿論例外もあるのだが)
残念ながら,何千人というホールを埋めるには出来るだけ知名度の高い人を目玉に据える必要があるのだが,そういう人が最もコストパフォーマンスが悪い.限界効用逓減の法則ということもあり,有る程度の金額を超えると追加して投入する資源に対してのリターンはだんだん減ってくるが,出した金額に対しての見返りの期待は通常限界効用逓減が起きないので,期待と現実のギャップが大きくなる.図でかけるとよいのだが..

ともあれ,家庭医療に限らず,医学に限らず,海外の物・人が珍重されてしまうが,それはある意味人寄せパンダでしかなくて,ずっと効率よく近場から,質の高い講演や指導医を確保することは出来るはずなのに.
単発の講演やセミナーが気合いやエネルギーを注入する以上でも以下でもないことはもうみんな知っているはずなのに.

食べ物だけではなく,人という資源においても自給率(指導医国内自給率,指導医施設内自給率)といったことやフードマイレージに相当するヒューマンマイレージ(その講師,指導医を読んでくるのにかかるコスト)を考慮した,人的資源の地産地消(千葉県では千産千消といいます)を考えていかなければならないのではないか.

2.家庭医療とjazzの類似性

Clinical Jazzという教育法が家庭医療の世界にあります.臨床という医療行為とjazzとの相似性を良く表していますが,jazz playerとしては,jazzを知らない人がアドリブだコードだという表現を使うのを聞くことには何となく違和感があります.(非常に表面的に感じます)

私はjazzと家庭医療はもっと深いレベルで共通点を持っていると考えています.

jazz legendの一人チャーリーパーカーの言葉

Music is your own experience, your thoughts, your wisdom. If you don't live it, it won't come out of your horn. ~Charlie Parker
音楽はおまえ自身の経験であり,思考であり,知恵なのだ,音楽を生きるという行為なしに,それはおまえの楽器からは出てきやしない.

→人生経験が豊富でなければ,自分の人生と真っ正面に向き合わなければ,その人の医療行為も薄っぺらい物になる.

そして現代のlegend winton marsalisの言葉
jazzをうまくやるにはまず音を出すのではなく,周り・相手のいっていることを良く聴くことだ.それなしにjazzは始まらない.
→補足不要ですね.まず患者さんの話を良く聴きましょう

長くなりましたが,非常にコストパフォーマンスの悪かったコンサートで腹が立ったのでとっても批判的なエントリーになってしまいました.

それでも,大衆に受けなくなればその芸術はそのまま廃れてしまう.

さて振り返って,

家庭医療はきちんと大衆に受けること(患者満足度)とその芸術性(学問としての家庭医療と質の高い医療)の両立を目指しているか.


P.S. 成人はあらゆるところで学ぶのであった.

2009/08/21

    家庭医募集第1弾 2010年 亀田ファミリークリニック館山

第1弾の情報をupしました

来年はフェローとスタッフの充実が目標です。
もちろんレジデントの募集は継続的に行っていきます。

みなさまのお問い合わせをお待ちしております。

家庭医募集2010 亀田ファミリークリニック館山

2009/08/16

    フィードバック 「ほめる」ということ

フィードバックについてのWSはもう数えるのをやめるほどやりました。
現場での指導では基本中の基本です。
ずっと同じ事をやっていると自分の側に情熱がなくなってくる事と、また自分自身も世の中も少し変わったり医師の間で周知も進んでくるので、元々の内容ではそぐわない部分も出てきます。
ですから、最近、私自身がフィードバックのセッションをやるときは「ほめる」ということに重点をさらに置くようにしています。
時間が限られているときはこの資料だけで済ませる事もあります。

そのときに使う資料をアップしておきます。

カリスマ指導医の多くが医師としてのキャリアの最初の時期を過ごした某XX病院の卒業生達は未だに指導は厳しくなければならない、叱る事は必要という信念を強く持っている人たちが多いです。

叱る事は不要ではありません。しかし、実際に本当に必要な状況というのは多くの人が思っているほどありません。皆さん過剰使用と感じます。

抗菌薬は適切に適応を考えて使うのに、なぜなのでしょうか。

叱る事は相手や状況、使い方を間違えると大きな副作用を引きをこします。必要最小限に。

この辺りの事は以前に書かせて頂きました。

ただし、今年の医学教育学会での九州大学でのポスター発表では医学生に対する模擬患者からのフィードバックに関してはNegativeなものが最も役に立ったという結果が出ていました。

あくまで叱るとNegative feedbackは別のもの、という事を書き添えておきます。

フィードバックに関しては興味が尽きません。まだ読み込んで自分のWSに取り込まなければならない資料が山積みです。

「ほめる」ということ



ほめ言葉ハンドブック
本間 正人, 祐川 京子
PHP研究所 ( 2006-12-21 )
ISBN: 9784569659237
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短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント
石田 淳
ダイヤモンド社 ( 2007-09-29 )
ISBN: 9784478300756
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

2009/08/13

    Twitter, Facebookそしてプロフェッショナリズム

漸く日本にもfacebookやtwitterの波が押し寄せて来つつあります.diffusion of innovation theoryから行くとearly adopter/early majorityのステージでしょうか.

twitterはmicrobloggingとよばれるぐらいですので,blogやHPと何が違うの?と思うかもしれませんが,
いわゆる「有名人」のひとたちや,これまで質の高いblogを書くので注目していた人たちをtwitterでフォローするようになり大変ショックだったことがあります.

公式のblogやHPで書かれている記事やそこで投影されるそのひとのイメージとtwitterから流れてくるメッセージとが全く違うのです.

仕事柄,仕事術についてのexpert,guruと呼ばれる人達,これまでblogや書籍などであこがれを持っていた人達のことが多いのですが,その人達がtwitterでは赤裸々に「午前様だった」「締め切り超過○日」「xxxのマウスがよい」「食事に○○を食べた」といった内容を投稿(写真まで)しています.

「あの人達のようになりたいが,自分には無理だろう」と思っていた人達が意外と自分と同じようにジレンマや悩みを抱えており,失敗もするということが分かった時点で,ある意味,やっぱり同じ人間なんだ,とホッとする部分もある一方で,それまでblogやHP,書籍から持っていたそのひとに対するイメージ(もちろん自分が勝手に作ったイメージなのですが,戦略的にそのようにイメージ作りもしているはずです)がガラガラと崩れてしまう.

清純派のアイドルだった人が覚醒剤でつかまった時のような.

そこへタイムリーなarticle

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Sachin H. Jain, M.D., M.B.A. BECOMING A PHYSICIAN:Practicing Medicine in the Age of Facebook. NEJM. Volume 361:649-651 August 13, 2009 Number 7

医学生として出産に立ち会った妊婦さんからFacebookで友達のリクエスト,一旦了解し,取り上げた赤ちゃんの成長を写真と共に定期的にみることが出来るようになるが,はたと「本当に良いのだろうか?」とたちどまる.


仕事場で経験した困難な患者について書いている看護師の例
あとから皮膚科のレジデントが独身であることをしってアプローチしてきた外来患者
パーティーでへべれけになっている写真を載せて信用を落としたアテンディング

等の例が挙げられる


米国の一部医学部では既に学生へその使用と載せる内容について注意を喚起...
「自分のキャリアに悪影響を与えかねない」と.
もちろん研修病院側は応募してきた候補者についての情報源としてtwitterやfacebookも有効活用することになる..

最初の患者さんはその後,「実は医学部へ行きたい」という相談を持ちかけてきて,著者は安堵と共にアドバイスを少しし始める.「SNSに載せる内容には注意して」と沿えて.


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現在流行の始まりやマーケティングのチャンネルとしてtwitterやfacebookなどのSNSが重要視されていますが,そこでどのような口コミが拡がっているのかに関して,効果的に検索をする方法がまだ試行錯誤レベルで,大手ネット検索事業者はその一番乗りを目指しています.

Googleの次世代検索エンジンはそれに対応する事を目標として開発されているはずです.
関連記事
http://journal.mycom.co.jp/news/2009/08/12/017/?rt=na
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/11/news036.html

ネットでの暴露の多い人でtwitterやfacebookをやっていると分かっている人の検索を現在のgoogleと新しいものとで比べてみると,違いが分かります.次世代エンジンだとそのひとのtwitterやfacebookが引っかかってきます.

これまで,検索に引っかからないことから「そっと」つぶやく事が出来るために「本当の顔」を覗かせてきたハズが,それも全て検索に引っかかるようになってきています.そうするとこれまで書籍やHPで一生懸命に作ってきたイメージ戦略にも悪影響が出ます.

僻地での医療は医師の公私がなくなってしまう.買い物をしていても,泳いでいても,誰かしらに見られている,そしてそれは殆どが自分の患者さん.ということでglass wall(自分の生活が全部筒抜けになってしまうことから透明な硝子の壁で出来た家で生活をするような感じを例えて)と言われてきました.

そして,そのことを敬遠するために,僻地で医療を行うことをためらう人も多いのです.

しかし,ネットで自らのプライベートを公開するとそれは誰からもアクセス可能になり,例え都会に住んでいても,ネット上では「glass wall」の中での生活をしているような物です.

さっき診察した患者さんは言わないだけであなたのtwitterやfacebookでの投稿を知っているかもしれないのです.

本当は人間らしくおこったり,泣いたり,失敗もしたりするのだけれど,自分のアイドルとしていて欲しいから,そういう部分は見せて欲しくないと自分が歌手やアーティスト,スポーツ選手に求めるように,患者さんは同じ事を医師に求めているかもしれません.

「輝き続けている(様に見せること)」これも医師の重要な役割なのです.特に指導医は.

一方で,そういった隣人的な日常性がみえることで,かえって親近感を持ってもらえることもあります.
特に患者さんと同じ地域に住んで,相手の生活を知らないと仕事にならない家庭医としては,その為に自分のプライベートも少し開示しないとうまくいかない.

どこまで,どれだけ,どこで見せるか.これはとっても難しい問題ですが,意識しながらネット上でも,リアルライフでも活動をするしかないのでしょう.

2009/07/28

    初期研修医は地域医療研修に何を求め,何を学んでいくか?(医学教育学会2009ポスター)

週末の医学教育学会よりうちのスタッフ(HANDS-FDF修了生でもある)との共同発表。
いちおう一部数を数えましたのでmixed methodとしましたが、基本的には質的研究です。
彼のお父さんは文化人類学者ということもあり、非常に的確な質的分析をします。

同じ状況で仕事をしている人にとってはごく当たり前の結果かもしれません。しかし多くの人がそう思えば思うほどその事象の本質をとらえている(つまり外的妥当性が高い.研究とのしての質が高い、ということ)

もう一つの方は、多少内部事情に関係する部分もありますので、関係者に配慮して、公開は控えさせていただきます。参加いただいた方だけの特権ということで。

第41回医学教育学会2009 発表 篠原

2009/07/27

    ロード第1弾 医学教育学会

職場のスタッフに迷惑をかけて4泊の学会出張+講演。1回東京に出るのに往復4時間かかりますから3つの用事を同じ日程でぶつけると8時間節約になります。(厳密にはそうでもないのですが)
それにしても都会は暑かった。メインは医学教育学会です。

木曜日の朝 医学教育学会- モデルコアカリキュラム共用試験委員会 委員として出席 (そのために水曜夜東京泊)
夕方 プレコングレスワークショップ III 「臨床研修指導医講習会のあり方」にOMP: One Minute Preceptorの資料を提供させていただいた関係で見学させていただく。

金、土は
第41回日本医学教育学会大会
自分の発表
岡田 唯男, 西野 洋, 片多 史明 口演 新臨床研修制度の影響とその対応 
O12-1 亀田メディカルセンターにおいて初期研修必修化前後の大幅な方針転換は有効であったか? Was the major strategic change in recruiting of junior residents effective at Kameda Medical Center after initiation of the national mandatory postgraduate training?

うちのスタッフ2名の発表
篠原 翼, 岡田唯男 ポスター 地域医療 P10-3 初期研修医は地域医療研修に何を求め、何を学んでいくか? ー地域の診療所が提供できる研修ー
伊藤彰洋 口演 ITの活用 O6-9 e-ラーニングによる仮想模擬患者を利用した臨床推論教育の試み

そして急遽当日の2日ほど前に頼まれた座長

土曜日の夜そのまま大阪で講演
服薬指導研究会 第4回研修会「家庭医の視点」
/サエラ薬局グループ 学術勉強会 主催 株式会社 オーパス

日曜日は総合医スキルアップセミナーのケースカンファレンス 20代女性 2週間の咳、微熱、胸痛

医学教育学会の報告書けるかな〜
また2週後、4週後、5週後にロードが。。

2009/07/25

    5マイクロスキル(OMP: One Minute Preceptor)one pager

現在医学教育学会に参加中です
いろいろなことを学んでいます。

プレカンファレンスワークショップに誘っていただき、少しだけお手伝いをさせていただきました。
具体的には5マイクロスキル(OMP:One Minute Preceptor)の一目で分かる資料を作成して配布資料の中に入れていただきました。新たに出たエビデンスのレビューなどを追加しています。

5マイクロスキル(OMP)one pager

どうぞご自由にWSや院内勉強会でお使いください。

懇親会で頂いた質問

Q:マイクロスキルは岡田がオリジナルですか?
A:オリジナルは
Neher et al. A five-step "microskills" model of clinical teaching. J Am Board Fam Pract (1992) vol. 5 (4) pp. 419-24
です。
ただ日本へ紹介したのは私、ということになっているようです。(エビデンスがないことの証明や最初であることの証明は難しいのが常ですが)
初演は2002年。

岡田唯男,藤沼康樹.「機会を逃さないための外来指導 」,ワークショップ.第17回家庭医療学研究会学術集会・総会 ,東京,2002年11月


文献としては2004年。(下記)

Q:6つのマイクロスキル、という方法もあるようですが。。
A:6つ目が今後の学習テーマを見いだすというのだと思います。別に加えてよいと思います。
ただある程度エビデンスが検証されているのは5つのものです。(上記One Pager参照)


--------
これが唯一の方法でもありませんし、その他には

The Aunt Minnie model
The SNAPPS model
Activated demonstrations
などがあり、
最近は
The GRIPE Model
というのも言われています。

気に入ったものがあればどれでもよいと思いますし、自分のスタイルがあればそれでもよいと思います。いつも話しているのは、様々な患者さんがいて、同じ診療スタイルや説明方法では全ての人に対応できないのと同様、学習者も千差万別。その方法に乗り換えましょう、ということではなく、自分のn番目の新たなる教育レパートリー/スタイルとして追加してください。ということ。
今までやっていたことがうまくいっていればそれをやめる必要はありません。ただし、本当に「うまくいっている」か確証がありますか?

プロセスはわかりやすくしたり、多くの人に知ってもらうために重要ですが大事なのは学習者が学び、患者さんのケアが向上すること。
本質を見失わないよう。

効果的に外来で教育を行う—5つのマイクロスキル - 特集 地域で医師を育てる—地域保健・医療研修で何をするか 診療所研修を魅力的にするために.JIM.2004; 14(5): 399-403

岡田 唯男. 1分間プリセプティング one minute preceptor. In:日本プライマリ・ケア学会 編.プライマリ・ケア用語集.東京:エルゼビア・ジャパン株式会社;2005:22.
プライマリ・ケア用語集
日本プライマリケア学会
エルゼビア・ジャパン ( 2005-05 )
ISBN: 9784860345396

2009/07/19

    日本人が米国へ行くと太るが家族との時間が増える

Lifestyle changes of Japanese people on overseas assignment in Michigan, USA

Kazuya Kitamura , Michael D Fetters , Kiyoshi Sano , Juichi Sato and Nobutaro Ban

Asia Pacific Family Medicine 2009, 8:7doi:10.1186/1447-056X-8-7

Published: 16 July 2009

ミシガンに限って,ということになるかも知れませんが...
女性は特に身体症状と不安が増えるそうです.またたばこ,アルコールの習慣については変化なしと.

暫定のabstractから

Results
Most participants reported increased caloric intake, weight gain, and less exercise. They also reported increased time with family. More women than men reported physical symptoms and anxiety related to stress. Smoking and alcohol intake were essentially unchanged. No associations were identified between length of residence in the US and health lifestyle habits or other health outcomes.

Conclusions
Negative lifestyle changes occur in diet and exercise for overseas Japanese people, but a positive change in increased family time was found. Women appear to be at a greater risk for somatic disorders than men. As duration of stay does not appear predictive of adverse changes, clinicians should advise patients going abroad of these risks regardless of the term of the work assignment.


滞在期間との関係はないそうです.
海外出張予定の方には予防接種などの話だけでなくこういうアドバイスも.

独り言:最近医学誌へ投稿する側が費用を払う例が増えています.この雑誌も所属施設が BioMed Centralのメンバーでなければ$1525です!

これは,利益相反やPublication biasに繋がらないだろうか..

2009/07/18

    第1回 日本家庭医療学会認定家庭医療専門医 認定審査

ようやく実施されるところまで来ました.来年度合併ですから,家庭医療学会としては最初で最後,ということにはなりますが.

20日の海の日です.

その模様がNHKで放映されるようです.

試験日と同じ7月20日月曜日午後9時のニュースウォッチ9」という番組で7-8分ほどとのことです.

報道番組は突発的なニュースによって内容が入れ替えになることがありますのであくまで予定,ということで.

受験される皆さんは頑張ってください.

これまできちんと研修をしていれば心配ないと思います.

第1回 日本家庭医療学会認定家庭医療専門医 認定審査のご案内

2009/07/07

    学会発表に役立つ過去エントリーまとめ

多くの人の学会発表のサポートをする中でいつもお話しすることの多くは既に過去のエントリーに含まれているのでそちらを参照してもらうことが多いですが、今回、それらをまとめましたので再掲としておきます。よい研究をするためのアイデア、研究方法などは別の機会に。

抄録、タイトルの作成に関して

抄録の書き方,情報の価値 2008/02/27
http://tadao-okada.blogspot.com/2008/02/blog-post_27.html

効果的な学会抄録の書き方 2007/09/15
http://tadao-okada.blogspot.com/2007/09/blog-post_15.html

人の集まるタイトルを付ける方法(セミナーなど)2008/02/28
http://tadao-okada.blogspot.com/2008/02/blog-post_28.html

よい発表の基準の例
学会賞受賞演題スライド,読み原稿,審査基準 2008/06/16
http://tadao-okada.blogspot.com/2008/06/blog-post_16.html 

誰を発表者に加えるべきか
Authorship(学会や雑誌での学術発表を前提とした研究、プロジェクト)2007/11/13
http://tadao-okada.blogspot.com/2007/11/authorship.html

そもそもなぜ発表をするのか
インパクトファクターと読者数(academic value vs fidelity) 2008/02/05
http://tadao-okada.blogspot.com/2008/02/academic-value-vs-fidelity.html


キーワード:学会 発表 抄録 タイトル authorship