昨日,気持ち的にずっと乗ってなかったインフルエンザのセミナー講師終了.苦手意識の強いモノだからこそ学びが大きいはずと言い聞かせて.
感染症の山本俊悟先生にはずいぶんと助けて頂きました.それぞれのスライドを併せて新型インフルエンザに関してだけで240枚 (4時間のセミナーですが)!
家庭医は通常一つのトピックについてかなり深いところ(通常専門的とよばれるところ)までつっこむことは少ないのですが,「教えることは2度学ぶことである」の言葉通り,改めて新型インフルエンザについての理解を深めることが出来ました.
専門家に相談することの目的は色々あると思いますが今回は,自分がやっていることが大丈夫であることの確認,という結果になりました.
参加者は少なかったですが居眠り率は低く,また帯広から80歳の現役のドクターも参加され,しかも一番質問数も多く,医師は生涯勉強ですが,襟を正す思いでした.
ネット中継も同時にされたのですが,ネット参加者からもなかなか鋭い質問があり,皆さんよく勉強されているな,という感想でした.
一方でまだ流行に入っていない地域の方もおられ,流行地域の人も含め蔓延期における事業継続計画についてはノーマークの方も結構おられました.
一般医療機関のための新型インフルエンザまん延期の診療継続計画作り(第2版)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/090430-01.html
4時間いったいどう埋めようか,ということで始めましたが,今どんどん新しい情報が出ているということもあり,作り始めるとあれもこれもと逆に「何を削るか」を考える羽目に.
最終的には,長時間だからこそ伝えるべきメッセージを明確に,の原則に沿って,きちんとこちらの意図は達成できたのではないかと思います.(フィードバックはまだもらっていませんが)
特に最新の分野については改めてMcWhinnneyの言葉を引用しておきたいと思います.
「もっとも未分化な科学の領域ほどもっとも情報量が多い」非常にうんちくの多い言葉です。今の新型インフルエンザの例を考えてみましょう。わからないことや真理がまだ無いからこそ、多くの調査報告が出てくるんですね。
Sir Peter Medawarを引いて、「サイエンスにおける具体的な知識量の負荷はその領域の成熟度と逆比例する。サイエンスが進むにつれ、個々の小さな事実はその大領域の中で理解され、ある意味、一般化しつつある根本理論の中に取り込まてしまう。つまり、意識的に明文化され、意識されなければならないものではもはやないとして。」(成熟している領域ほど、その上位にあるメタ理論的なものの応用で対応可能だったり説明可能だったりしてとりこまれてしまうから。ということです)
続けて、McWhinneyはinformationとknowledgeを混同してはならないといいます。informationは確かに指数関数的に増える一方だが、それらの多くはほとんど価値が無く、寿命が短く、スペシャリストに対してのみの技術的な興味のみであり、そしてその多くは、医学の本質的なknowledgeに組み込まれるか、最終的に否決されることになる仮説を検証するためだけのものなのである。と
2009/06/25 ジェネラリストになろうとする際に感じる不安の元となるジェネラリストとスペシャリストの役割に関する6つの誤解 (McWhinneyより)
最後のスライドでは
目の前の危機なので対応せざるを得ないが,本当に亡くなる方が多いのは,やっぱりガン,脳卒中,心臓病です.糖尿病や高血圧,癌検診の推奨などやるべき事を粛々とやることを忘れずに,ということをお伝えしました.
リスク認識のゆがみを直すのも医師の大切な仕事です.(リスクコミュニケーションといいます)
真実はおもしろくない、とるにたらない、という態度ー感染症診療の原則
(一般の人のリスク認識はメディアによってゆがめられている)
Doctors have a duty to engage in social media OCTOBER 29, 2009 -Kevinmd.com
(特定の医療行為や情報に対しての根拠なきor悪意あるネガティブキャンペーンがtwitterやfacebookなどのsocial mediaを通じて大量に流れるので,医師も意識的にsocial mediaを通じてそれらを駆逐するほどの正しい情報の発信をしなければならない)
準備に徹夜だったため,帰りの運転が心配で休めるところを探したら都会では安い値段で仮眠をとれるところがあるのですね.ということも発見.それでも帰りは眠かったのですが..
嫁さんには「あなたの生活はびっくりするぐらい規則的に不規則ね」と言われてしまいました.でも本当はirregulary irregularなのよ.私は心房細動か!
昨夜は爆睡.
1 コメント:
私も今、自分がインフルエンザの診療と予防接種の両方に振り回されているように感じています。
混乱しそうになったら、「混乱の状況ほど本質に忠実に。」という言葉を思い出したいと思います。
例えば、小児の患者さんだったら、迅速検査陽性に気をとられて、家族の喫煙の話しなど、今後に影響する大事な話などを忘れないようにしたいと思います。
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