2010/08/26

    亀田ファミリークリニック館山(KFCT)家庭医後期専門研修募集事前告知

亀田ファミリークリニック館山(KFCT)家庭医後期専門研修への来年度の応募をお考えの医師の皆様
面接日は
10/15(金)午後〜16(土)昼頃 (出来るだけこちらをお願い)
9/24(金) 午前〜25(土)昼頃
を予定しております
たくさんの面接官にあって頂くために日程が限定されてしまいますがなにとぞご理解のほどをお願い致します。
詳細は来週中に公式HPにて告知予定です。

2010/06/27

    IDEAL Study:透析早期導入に疑問符

本日発表のonline firstから
しかし、いつもこの方は早い。


IDEAL Study:透析早期導入に疑問符

背景は上記blogに端的にまとまっている

長期透析の増加が世界でも問題となっており、開始時期は尿毒症の兆候・症状の存在により開始することが世界的には一般的となっている。確かに、観察コホートや症例対照治験で、透析早期導入にて患者の生存率、QoL、労働能力、コンプライアンスなど改善したと報告がある。しかし、この研究の多くは、lead timeによるバイアス、患者選択、参照期間などのバイアスがあるが、析開始時期目標早期化が臨床ガイドラインに用いられている。

しかしながら、最近の観察研究にて、早期導入は有害ですらあるという報告がなされてきたため、ランダム化対照治験が求められていた。


Published at www.nejm.org June 27, 2010 (10.1056/NEJMoa1000552)
A Randomized, Controlled Trial of Early versus Late Initiation of Dialysis


批判的吟味

P 828名 eGFR 10-15 平均60歳、355人が糖尿 3.59年のフォロー ニュージーランド
E 透析導入 early start eGFR10-14で導入
C late start eGFR 5-7で導入 (恐らくこちらが標準的な診療)
O primay outcome 全ての理由による死亡


early start vs late start群の順で

primary outcome
death from any cause    37.6% vs 36.6% (hazard ratio 1.04; 95% CI, 0.83 to 1.30; P=0.75)

導入までの期間中央値    1.8ヶ月  vs   7.4ヶ月
実際の透析導入時eGFR 12 vs 9

その他のアウトカム
心血管イベント、感染症、透析合併症に有意差無し

鍵となるグラフは上記blogに


pitfall
late start群の75.9%が症状発現のために、eGFR<7まで待てずに透析導入
early start群の18.9%が実際はeGFR<10になってから導入
両方とも差を減らす方へのバイアス。sample数は予定通り確保できているが、結果としてのβエラーはあり得るか?

take home message
どちらにせよ透析導入から4年弱で36~37%の人が死亡 (日本の統計でもほぼ同じ 4年生存率0.68)
上記のデータが本当とすると透析導入まで約5ヶ月の差
figure 2-Aの表面積の差の分だけ医療の質を変えずに透析回数が節約できることになる
(単純計算で、国・患者さんにとって一人あたり150万円、通院12-13回・月x5ヶ月分の負担、時間として300時間ぐらいー>その分、仕事や他の生産的活動に従事できる。医療機関にとってはその分の収入損失)
日本での年間新規導入は36000人ぐらい (x150万円で540億円ですね〜)

疑問と課題

日本ではスコアを元に導入しているが、そのなかにクレアチニン値は用いられていても
eGFRの具体的な数値は提示されていない
K-DOQIでは eGFR<15+尿毒症症状で導入とされている

30.1 血液透析への導入基準
http://202.216.128.227/%93%A7%90%CD%95S%89%C8/30.01.htm

eGFRで診たときの日本の透析導入時期の実態はこの研究で言うどちらの群に近いのか?
この研究を元に、日本でも透析導入の決定にeGFRの数値を織り込むか
それとも、日本の基準で、変更可能な物があるか探すために新たにRCTを行うか

さて、この診療が本当なら自分の診療は変わるか?
透析導入の決定には直接関わらないという意味ではno
導入直前で症状のない患者さんで、導入を出来るだけ先送りにしたいという希望があれば、専門医にこのデータを元に相談を持って行ける。

総作業時間約30分

2010/06/23

    第1回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 (今週末)演題一覧

第1回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 (今週末)

いよいよ記念すべき第1回の連合学会が今週末に東京フォーラムにて開かれます
先日送られて来た第1回の雑誌も非常に読み応えのある物でしたね。

さて、僕は自分が主演者での発表の実績を積む余裕もないままサポーター/コーチの立場を取ることが多くなりましたが、今回も口演1件、ポスター3件、WS1件、プログラム紹介1件と盛りだくさんの内容です。

では順番に。

口演 26日(土) GS1-14 G602 6F 14:00頃

家庭医診療所における 適正な抗菌薬選択のための ローカルファクターのとしての 細菌培養検査の分析
中山 久仁子1、岡田 唯男2  1みなと医療生活協同組合 協立総合病院、2鉄蕉会 亀田 ファミリークリニック館山
【目的】 外来感染症に使用する抗菌薬選択には地域の耐性 菌状況であるローカルファクターを考慮することが望 ましい。今回我々は外来での細菌培養結果から抗菌 薬使用について検討したので報告する。
【対象・方法】 調査期間は2007年1月から2009年12月までの3 年間。対象は亀田ファミリークリニック館山の医科外 来受診または訪問診療において、細菌培養検査を 実施された全患者。細菌培養検査結果を横断分析 し、培養陽性率、尿路・女性生殖器・呼吸器感染症 の原因菌の種類と割合、それぞれの薬剤耐性菌の 割合について調査した。
【結果】 総検体数 2361 件。培養部位は尿(41%)婦人科分 泌物(20%)痰(11%)。起因菌が検出され感受性試 験を行ったのは 676 件(陽性率 28.6%)で、尿 (46.5%)婦人科分泌物(11.5%) 痰(25%)であった。 尿培養では Escherichia coli (58%)が最多、耐性菌 検出率は CEZ(3.1%)、LVFX(8.4%)、ST(5.4%)であ った。婦人科分泌物は GBS (56% )が多く PCG 耐性 菌はなかった。喀痰培養は Streptococcus pneumoniae ( 50% ) と Haemophilus influenzae(37%)が多く、S.pneumoniae の耐性菌 検出率は PCG(3.7%)、AMPC、CTX、LVFX(0%)、 H.influenzaeの そ れ はAMPC(25%) 、 CTX 、 LVFX(0%)であった。H. influenzae の 15%はラクタ マーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR)であった。
【結論】各検体での主たる原因菌とその感受性,耐性菌率 が判明した。この結果に基づいてエンピリック治療に おける第一選択薬剤の推奨が可能となった。薬剤感 受性は変化するため、今後も定期的な調査が必要と 思われた。さらに BLNAR が 2 年連続検出され、Hib ワクチンも積極的に推進する必要がある。

http://www.primary-care.or.jp/primary2010/subj/gs1.pdf


昨年度1年限定で研修に来て下さった方との発表。ちょっとしたアイデアひとつで、大きな手間なく質の改善と発表が出来るという好例です。データは細菌検査室に出してもらえばよいので。もちろんデータからどのような意味を見いだしどのようなアクションを起こすか,というところに、能力が問われる訳です。



ポスターセッション(3件)

開催日時 26日(土)16:30~17:30
会場 ホールB5  5F

http://www.primary-care.or.jp/primary2010/subj/pt1.pdf

3件が、1番目,3番目、4番目にあたっていますので、時間通りで進むと16:30, 16:50, 17:00の予定です。慌ただしいですが、以下発表順に(発表の列が違うのでご注意)


PT1-071

3年間の後期研修における研修内容の分析 (数字で見る家庭医研修)

岡田 唯男1、吉田 賢史2  1鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山 家庭医診療科、2鉄蕉会 亀田総合病院 在宅医療部

【目的】日本家庭医療学会においてプログラム認定 が開始されたが、とくに外来研修の量については設 定されておらず、現状もあまり把握されていない。ま た、日本においてはマンパワーとしての後期研修医 への期待から業務と研修のバランスにも留意する必 要がある。1施設による家庭医療後期研修医の研修 実績を明らかにし、今後の後期研修プログラムの改 善につなげる
【対象・方法】鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山 家庭医療後期研修プログラムにおいて 2007 年4月 から 2010 年3月まで後期研修医として在籍した4名 の勤務スケジュールと外来診療データをもとに、外来 診療、訪問診療、他科ローテーションのそれぞれの 時間比率、外来診療数の実績と単位時間あたりの生 産性などについて測定,分析を実施した。半日を1単 位とし、時間比率については勤務スケジュールの手 カウント、外来診療数については法人の医療情報管 理室からのデータを利用した。
【結果】3年間の総時間数に占める各種診療の割合 は、家庭医療診療所における外来診療39%(予約2 3%、当日16%)、訪問診療21%、他科研修(ローテ ーション35%)であった。外来診療に関して、後期研 修医一人あたりの外来数は3年間で654単位 (4.4 回/週)、1単位あたりの診療患者数はのべ 16.8 人、 一人の患者あたりの平均診療時間は 12.6 分であっ た。
【結論】他施設のプログラムと比較してもおおむね外 来,訪問、他科研修の割合はそれほどかけ離れてい るものではない。外来診療コマ数や診療患者数につ いては今後他施設の報告などを待ち、研修上の適正 数、経営上の適正数などについて更なる議論が深ま ることを期待する。


今年春にうちの後期研修を修了した先生。卒業プロジェクトとしての取り組みが学会発表につながりました。なかなか個性的な人です。デザイン力に隠れた才能があり、このポスターも、そしてもうひとつの彼の作品であるプログラム紹介のポスターもよくできています。粘り強さと集中力があり、今回の調査にあたっても、3年間のシフト表を根気づよく手カウントしてくれました。



PT1-133

医学生は家庭医療コース参加の結果 どのように変わるのか?(第二報)

武者 幸樹子1、岡田 唯男2、喜瀬 守人3、 麦谷 歩4、亀谷 学1
1川崎市立多摩病院 総合診療科、2鉄蕉会 亀田ファミリー クリニック館山、3川崎医療生協 久地診療所、4医療法人相 生会 臨床薬理センター 墨田病院,大阪市立大学大学院医 学研究科 公衆衛生学 博士課程

【目的】2008 年,我々は家庭医療講義が「家庭医療」 のイメージを変化させ,具体的なイメージの獲得に寄 与すること,および受講後は家庭医療の診療範囲と 能力を正しく認識できるようになることを報告した.た だしこの調査は家庭医療のイメージの変化,診療範 囲の理解という面からのみ学びを評価している点,ま た対象者が9名と少ない点で,医学生の変化を具体 的に把握することが困難であった.今回の研究は, 「家庭医療」講義を受講することで医学生がどのよう に変化するのかをより詳細に明らかにする.
【対象・方法】聖マリアンナ医科大学で 2007~2009 年度に選択講義「家庭医療」を受講した医学生を対 象とした.研究デザインは,医学生の具体的な変化 を把握するため質的研究とした.半構造化されたフォ ーカスグループインタビューを講義終了後2~6か月 の間に実施した.グラウンデッドセオリーアプローチを 用いて複数の研究者が独立して分析した.
【結果】3~6人のフォーカスグループインタビューを5 回行った時点で,理論的飽和に達したと判断した. 参加者は 20 人.受講前の状態(知識,受講のきっか け),家庭医療の機能・特徴に関する理解(身近な主 治医,+αの機能,普及の必要性,アイデンティティ), 他科との比較(家庭医の長所,専門医の長所,家庭 医の意識),進路としての家庭医療(志望,不安,働 きやすさ),講義の評価(形式,要望)の5つのカテゴ リーが抽出された.
【結論】家庭医療講義による医学生の変化が明らか になった.講義は大変好評であった.講義前は家庭 医療を知らない医学生がほとんどであったが,受講 により家庭医療の機能・特徴を正しく理解した.新た に家庭医療という分野を知り、将来の進路選択肢に 加える学生が多かった.この結果を踏まえて,全国の 医学部において家庭医療講義を行うことは,家庭医 療普及に有用であると考えられる.


2008年に学会賞を頂いた研究のフォローアップ。

2008/06/02  日本家庭医療学会 学会賞 受賞!


学会賞は頂いたものの、当時の審査委員長の講評で「質的の部分のデータ量が少ない、ぜひフォローアップを」のご指摘をいただき、真摯に受け止めてようやくたどり着きました。もちろん今回の筆頭発表者の努力と根気があってこそ。
本格的に研究をするのはやはり長い時間がかかります。なので,それだけ長い時間かかってもやめたくならない(それだけずっと情熱の注げる)テーマ選び、というのがとにかく重要と思います。
この発表もすばらしい結果の提示が出来ると思います。質的研究のポスターはこんな風にやるのがいいですよ。というプロトタイプがお見せできると思います。

PT1-114
家庭医が行う産後ケア -産後ファミリー外来の実績調査

平 洋1、岡田 唯男2、上川 万里子2  1はるな生活協同組合 高崎中央病院、2医療法人鉄蕉会 亀 田ファミリークリニック館山

【背景】亀田ファミリークリニック館山(以下 KFCT)で は、従来から行われている妊婦健診に加え、産後ケ アの取り組みとして、2007 年 8 月より、出産後 2 週と 1 ヶ月の母子をセットにした健診(産後ファミリー外 来)を家庭医が助産師とともに行っている。
【目的】KFCT における家庭医が行う「産後ファミリー 外来」の実績調査を行い、母乳育児継続率などのア ウトカムへの影響を検討する。
【対象・方法】2007 年 8 月~2009 年 12 月の期間に、 KFCT の「産後ファミリー外来」を利用した方(のべ 109 人)を対象に、カルテレビュー及び郵送による無 記名アンケート調査を実施。
【結果】2 週と 1 ヶ月の両方の健診を利用された方は 全体の 34.8%であった。生後 1 ヶ月時点での完全母 乳栄養の割合は 46.8%で全国平均(2009 年厚労省 調査:48.3%)並みであった。KFCT で妊婦健診を受 けた方の 1 ヶ月時点での母乳栄養の割合は 40.0% であった。産後うつスクリーニング(エジンバラ産後う つ病質問票)陽性者は、1 ヶ月時で 1.8%で全国平均 (同調査:10.3%)と比し低率であった。風疹抗体価が 低い方の産後の予防接種実施率は 63.3%であった。 アンケート調査(回収率:51.4%)では、「診察時間」、 「不安の解消」、「医師と助産師の連携」の項目で概 ね良好な回答が得られた。回答者の 99%は、その後 も何らかの理由で KFCT に受診されていた。
【結論】家庭医と助産師の連携による新たな産後ケア を提供できた。妊産婦・小児とも継続的に関わること のできる家庭医の特徴を活かした取り組みと言える。 今後は、母乳育児継続率や風疹予防接種の実施率 などのアウトカムの向上のため、産後 2 週の健診利用 者の増加や妊娠中・出産直後の介入の強化などが 課題と考えられた。日本で普及させるためには、産後 ケアの教育システムの整備、産科・産院・小児科施設 との連携が重要である。



ライフワークであるマタニティケア周辺のテーマ。産後ファミリー外来については、以前にもすこし取り上げました。

2007/08/02  バースレビューの論文 review on birthreview


この春後期研修を修了して群馬へ戻った先生が卒業プロジェクトとして取り組んで下さいました。
まだまだ,改善課題の多い領域ですが、既に実践を続けている,という事実、その発表を行うという行為自体が価値のあることと信じて、引き続き取り組んでいきます。

ここで1日目終了。
プログラム紹介、懇親会,二次会を楽しみにしています

2日目。

WS-06詳細
テーマ プライマリ・ケア医が知っておきたい産婦人科診療
開催日時 27日(日)9:00~12:00
会場 G502(第8会場)


縁あって,この数年間毎年、このテーマで任せて頂いています。
全く自由な3時間なので,毎年試行錯誤ですが,今年は

45分x3コマのWSというよりはレクチャーが中心になるとは思いますが、2名の素晴らしい仲間に手伝ってもらって

1. 家庭医による避妊と性教育         手稲渓仁会          小嶋 一 先生
2. 在宅高齢者の婦人科的症状への関わり方   亀田ファミリークリニック館山 家 研也 先生
3. 妊娠とくすり、授乳とくすり        岡田

という、豪華ラインアップでお送りします。

上記以外の時間は仕事の打ち合わせをしたり、旧交を温めたりという感じです。
より多くのみなさまとポジティブなエネルギーのやり取りが出来ることを楽しみにしています。
見かけたら声をかけて下さい。

2010/06/15

    たまごクラブ 2010年7月号 大特集 梅雨&夏ニンプ の生活 やっていいこと・ダメなこと

以前ちらっとお話ししていたのですが、

14ページにも渡る特集の大半を,職場で大変頑張って下さっている助産師(かつ国際ラクテーションコンサルタント)のKさんとともに監修させて頂く機会を頂きました。本日発売です。

たまごクラブ 2010年7月号 大特集 梅雨&夏ニンプ の生活 やっていいこと・ダメなこと

ということで,本当に様々な質問に応えさせて頂きました。





経緯は,以前にほんとに小さなスペースで取り上げて頂いた際に(以下のリンク参照)「家庭医」のことをなんとなく覚えていて下さった編集長が、今回の企画担当者から相談を受けたときに、こまごました生活のことだから家庭医の方がいいんじゃないか、と思い出して薦めて下さったとのことです。この場を借りて改めてお礼申し上げます。

2009/09/16 たまごクラブ10月号 掲載(取材を受けました)

事前に大量の読者からの質問のリストを頂き、編集者の方と2時間ほどの取材で全部にお応えして、レイアウトや文面はさすがプロ、きれいに体裁を整えて下さいました。
それなりに事前に文献による確認も必要な質問もあり、大変勉強になりました。(ピレスロイド,って知ってますか?)

相談先をどう呼ぶか,という言葉の使い方は最後まで議論がまとまりませんでしたが、現時点での落とすべきところに落ちた,という感じです。

妊婦さんの一番の味方であるたまごクラブさんが、意図的に家庭医を指名して下さったこと、本当にうれしく思います。

著作権などのことで、もちろん全文の公開は出来ません。私やKさんがどのように応えているか,妊婦さんがどんなことを心配、疑問に思うかなどは、ぜひ本誌を購入し手にとってご覧ください。(月刊誌なので,なくなるのが早いです、急げ!)

たまごクラブ 2010年7月号 大特集 梅雨&夏ニンプ の生活 やっていいこと・ダメなこと たまごクラブ  2010 Jul

近隣の書店には以下のようなpop広告を置かせて頂きました



P.S. 発行数平均月17万部、とのことです。

2010/06/14

    現状報告

いつもつたないブログを読んで下さってありがとうございます。ブログの更新が長い間滞っています。まあ義務ではないのですが、ブランクが長いほどまた再開することへの敷居が上がる訳ですので,場つなぎ的にエントリーを。

え〜、twitterで言い訳はしないのが信条,と書いたのですが(こちら)、もしかしたらblogを楽しみにしている方や、心配をしている方もいると思いますので、一応いい訳ではなく現状説明,ということでさせて下さい。かつて医師のキャリア

を考える上でprofessional, academic, personalの3つの軸で考えましょう,という話をしていたことがありますが、まさにそのpersonalの軸でかなり大きなプロジェクトが動いていますので、そちらにかかりきりになっています。

たとえるなら一生に1回できるかできないか、という大きなプロジェクトで、やるかやらないかをずっと検討して、構想を何年も練って、ちょうど1年前の7月末から本格始動して,この1年間はそのプロジェクトに取られる時間がどんどん増えています。

て言っても、最近は、あまりに時間が取られるので、やるべきではなかったのでは?と考えることも時々ありますが、一区切りついたらきっとやってよかった,と思えると信じて取り組んでいます。

まあ、もったいぶらずに、何かって?ほら、僕ぐらいの年齢で一生に1回できるかできないかで1年がかり,というと、あれしかないでしょ。

すてきなことなのですが、全世界に向けて公表する類いのことではないので、気になる方は個人的に聞いて下さい。もうすぐ連合学会もあるし。このエントリーよく読めばわかるかもね。

2010/04/25

    メトホルミンの投与2250mgまで可能に

ちょっと?な感じですが

メルビン(metformin)を出している大日本製薬がフランスのmetformin(グルコファージ)を輸入して、別の商品名のmetformin製剤メトグルコ250mgとして開発、4月16日付で発売となっています。

こちらは従来のmetforminとの違いとして
最大2250mgまで投与可能 (1日9錠分3)
食直前でもよい(αGIなどと合わせられる)
従来のmetforminで禁忌であった軽度腎障害、軽度肝障害、高齢者に対して慎重投与と基準緩和

とかなり使いやすくなっています。

ただし、新薬のため1年間は14日処方限定

薬価は従来のmetforminと同じ9.9円

です。

従来のmetforminの投与量の変更申請よりも新しいクスリの方が申請の敷居が低かったのか、はたまた新薬として発売することでジェネリックのないクスリとしてより高い薬価をねらったのか(結果としてはそれは叶っていませんが)わかりませんが、海外の標準治療とのギャップを埋めるべく頑張ってくださった大日本製薬さんの努力には感謝です(薬価も変わらないのでそれほど利益も出ないはずです。ただし、ジェネリックが既に出ていますから、再度自社のシェアを取り戻すには格好の手段と思います)

基本的には新薬には飛びつかないスタンスですが、新薬と呼ぶには微妙ですし、ちょっと分かりにくいながらも良い知らせとして捉えたいと思います。

2010年4月26日 (月)
2型糖尿病治療薬「メトグルコ錠」を発売 大日本住友製薬
http://www.yakuji.co.jp/entry19021.html


メトグルコ、1年間は14日の処方制限つきに
http://blog.t-shimoyama.com/2010/04/114.html

2010/04/23

    (期間限定) 病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー 4月ケースカンファレンス 発熱を主訴に来院した30歳女性

病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー 4月ケースカンファレンス 発熱を主訴に来院した30歳女性

最近twitterでの活動にシフトでblogの発信がめっきり減っていますがそれはそれでよいと思っています。

5/6までの期間限定です
動画のページには下の方にスライドが全て開けっぴろげになっており、ネタばれになりますから、診断推論の妙味を楽しみたい方は要注意。(下までスクロールしないよう)

※2010年4月22日東京都内で収録
この映像は、医療の向上に役立てていただく目的で、
主催者の御厚意により、期間限定で配信しております。(5月6日まで)


病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー
ケースカンファレンス担当

http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/special/career/jamep/

実際の映像とスライドはこちらこちら

お手伝いをしてくれる聖路加の先生のメンバーが新年度で入れ替わり、若い先生とペアとなりました。

新しいメンバーと言うことでまた、レジデントの先生の症例ということで診療所の私にとってはある意味またawayでした。また発熱の症例でしたので主催者の方に聞いてみたらこのセミナーの過去のケースカンファレンス10数回中半分が不明熱の症例。。

まあそれだけある意味診断推論としては最も面白いのでしょう、ということで、できるだけ「家庭医らしい」切り口でのカンファレンスになるように心がけました。

診断推論に優れた先生なら、講師としても最終診断を聞かずにその場で、診断を当ててそのすごさで圧倒するということになるのでしょうが、1時間という短時間と、やはり教育に携わる物としては私のすごさを見てもらうより(まあ診断できなかったらどうしよう、というのはあるのですが)、参加者に最大限の学びを提供することを優先したい、ということで事前にスライドを送ってもらい、変更要請をして私がスライドを追加して、この症例から最も学べることに効果的に焦点が当たるようにしました。

ちなみに、この症例、とあるpathognomonic(疾病特徴的:そのキーワードが出たら、直ぐに病気が想定される)な所見が出るのですが、焦点は、その所見が出るまでにその疾患を鑑別に想定できるか、といことを議論の重点としました。

そのため当日の参加者の先生方に、pathognomonicな所見の出る直前に鑑別診断のリストを作って頂き、「もう変更しないでね」と横に置いておいて貰ったのですが、複数のドクターがその診断を鑑別に上げておられ、あれだけ、非特異的な症状しかないところで能力によっては診断にたどり着けることが可能であることが確認できると共に、では、その鑑別が上げられなかった人が、どうやったら上げられるようになるかということを私からの提案としました。最後の議論では更にいわゆるclinical pearlと呼ばれる知恵をフロアから提供頂き、「teaching is learning twice(教えることは2度学ぶことである)」の文字通り自分が勉強になった(勿論参加者の方も勉強になったと思います)セッションでした。

一旦ケースカンファレンスの担当はおろして頂き、11/28に3時間の予防についてのセッションを担当させて頂く予定です。


関連エントリー

2010/01/15 病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー 11月ケースカンファレンス 水痘の7歳男児

2009/10/03 病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー 7月ケースカンファレンス 微熱、咳嗽、深呼吸時の胸痛で来院した23歳女性


2009/05/25 病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー ケースカンファレンス ケース 慢性腎臓病の管理目的で紹介された77歳男性

2010/04/08

    後輩を持ったら (教育についての過去エントリーのまとめ)

引き続き、教育に関する過去エントリーのまとめです

初めて後輩を持つ2年目研修医、後期研修医、突然部下をあてがわれた方、少しの原則を知っているだけで大分違うと思います。

「ほめる」ということ
まずほめるところから始めましょう

物事を伝える際の基本(フィードバック3部作)

feedback flowchart (効果的なフィードバックのため のフローチャート)

効果的なフィードバックのためのチェックリスト

効果的なフィードバック(解説/改変)




成人学習理論
成人学習理論、とされていますが、現在は子どもにも当てはまる学習の本質と考えられています。


【年度末特別企画】後輩がやってくる! 彼らの学びをサポートしよう!. レジデントノート 2006年3月号(Vol.7 No.12):1688-1694
いくつかの参考になる理論、ZPD、マズローなど


2009/07/25 5マイクロスキル(OMP: One Minute Preceptor)one pager

一ページでわかるマイクロスキル。詳しく知りたい人は次のリンク。

効果的に外来で教育を行う—5つのマイクロスキル - 特集 地域で医師を育てる—地域保健・医療研修で何をするか 診療所研修を魅力的にするために.JIM.2004; 14(5): 399-403


読売新聞 日本の知力 2008年 抜粋
昔型の教育はもう時代遅れなのか,と悩んでいるあなたに。そんなことはありません。

以下は上級編。
”彼/彼女を教育するのは難しい”と感じたとき Difficult teaching encounterへの対応. In:尾藤 誠司, 藤沼 康樹 編.<総合診療ブックス> 決定版!スグに使える臨床研修


どうしても辛くなったら以下のエントリー
2009/06/29    医師としてストレスがたまったときの12のルール / Rules for Physician Survival (M. Stuart, 1993)


学ぶ側の人にも前述のエントリーを参考として教えてあげましょう。

2010/04/07

    新しく勉学/研修を始める皆さんへ

手抜きで過去の投稿のまとめですが、新学期に併せて学ぶ側として参考にしたいエントリーをまとめています。

お役に立ちましたら幸いです。

Medicina 2003 Vo.40. No42. 増刊号 コラム yell for you

下働きは本当に意味のないことか? 医療分野の人は もうひとつのコラム「evidence, style, community standard」も

2009/04/06  一人でできる学び(最後はやっぱり個人)

最終的には一人でも学び続けられる能力を身につけることが肝要と考えています。

2009/04/05  ボス・マネジメント! 上司の7つの役割

上司/指導医はあなたにとって最大のサポーターにも最大の邪魔者にもなり得ます。

2009/01/21  のうだま―やる気の秘密

やる気の3つのスイッチ 脳の仕組みを理解して。

どうしても辛くなったら以下のエントリー
2009/06/29    医師としてストレスがたまったときの12のルール / Rules for Physician Survival (M. Stuart, 1993)


実は教える側と教わる側は表裏一体で,相手がどのようなことを考えているか,どんなことを気にしているかを知っておくことは悪いことではありません。そのことで良い学び手になることができます。追って、教える側向けのエントリーをまとめます。

2010/04/02

    例によって

昨日のエントリーはエイプリルフールネタでございます。
ご協力ありがとうございました。

こだわる理由はここ

しかし,この日が最もアクセスが多いというのはどのように咀嚼すれば良いのやら。。

2010/04/01

    書籍の案内

とってもとっても筆無精の私なのですが、本当に大切にしたいことはやっぱりやり遂げられるものです。

「家庭医から政治家へ 国の健康を憂うなら医師では不十分」

決断、構想に1年,執筆に1週間缶詰でなんとか本日という私にとって大きな意味のある日に間に合わせることができました。

ずっとずっと頭の隅っこに引っかかっていたことでしたので、こういう形で整理できたのは本当に良かったです。



大サービスで目次まで紹介してしまいます。

1. 私が医師を目指した理由
2. 少数派としての意識の目覚め
3. なぜ家庭医をめざしたのか
4. 医師の育成に携わって教育の重要性に気づく
5. 公衆衛生を学ぶこと、集団の健康というとらえかた
6. 健康に寄与する医療の役割はとっても小さい
7. 学校教員としてできる国民の健康への寄与
8. 臨床、教育、研究、そして政策関与のインパクトの大きさ
9. 私が政治家になったら実現すること(マニフェスト)
10. 日々の暮らしで出来る政策関与
さいごに


増刷、増版になりましたら帯をどなたかにお願いしようと思っています。


最後にどうしてもこのページと、このページこのページだけ読んで頂ければ私の出版の「本当の」趣旨がご理解いただけるのではないかと思います。よろしくお願い致します。

貴重なお時間ありがとうございました。このようなことについてまじめに考えて頂くのも重要なことと思っています。

P.S. 友人が鋭意販売中のキャンペーン吊り広告/平積みの様子を送ってくれました





P.S.#2
友人より過分なレビューを頂きました。
> 【レビュー】
> 米国で家庭医療学レジデンシーを修了、帰国後8年間日本の家庭医療教育の
> 草分け的存在として、亀田ファミリークリニック館山を拠点に
> 全国レベルで指導者の指導に飛び回っておられる岡田氏。その岡田氏が今春、
> その精力的な活動の源である自らの胸中を明かされた。
> 本書は、そのいささか衝撃的なタイトルにも表現されている様に、
> 家庭医療を国内で普及させることに情熱を注ぐ真の理由を明らかにし、
> 医師として既に比類なき社会貢献を行ってきた同氏が医師の立場を超越し、
> 国際競争力に関する日本の力不足を憂い、国の再生に立ち上がろうと決意した、
> その信念に基づく行動を如実に語る著作となっている。人を治す医師の立場で、
> 人を導き国を勝利に導こうとの役割をも担おうとするのは、
> 「病む悲しみ」ということと真剣に向き合って自問自答を繰り返してきたという、
> 真摯な足跡の証でもあろう。
> 本書は関係者ばかりでなく、全ての読む人を感動させ奮い立たせるに十分な
> 魅力を備えた類稀れな良書として、自信を持ってお薦めするものである。
> 尚、岡田氏は現在海外遠征中であり、チームは事前評をくつがえす好成績で順調な
> スタートを切った。今度こそ指導者として、目前の1試合だけでなくチーム全体の
> ムードまで把握した将来の日本の成長を視野に置いた采配を務められることを、
> サッカーファンとして期待する。   あれれ?

2010/03/27

    Management of Health Systems/ Practice Managementについての気づき

前述のエントリーで引用したACGMEのprogram requirementのManagement of Health Systems/ Practice Management関する部分、読み直していましたらショッキングなことに気づきました。

以下全文の原文を載せて日本語でコメントを入れます。()の中は私のコメント

Management of Health Systems
must receive at least 100 hours of management and leadership instruction to include both the didactic and the practical settings.

実践と講義を含めて100時間(これは前から知っていた)

This curriculum should prepare residents to assume leadership roles in their practices, their communities, and the profession of medicine. The residency must have specific strategies to demonstrate that residents have mastered these skills.

医療機関、コミュニティー、医療プロ集団の中でのリーダーシップがとれるよう準備させなければならない
その技能が習得したことが証明出来るよう意図された方略が必要
(これは,プロジェクトのポートフォリオ/卒業課題が最適)

The FMC must be considered the primary site for teaching management and leadership skills, and should serve as an example on which residents may model their future practices.

家庭医療センターがその教育の主たる場所として考慮されること。そして彼らの将来の仕事場のモデルとして機能すること。

Each resident must receive reports of individual and practice productivity, financial performance, patient satisfaction and clinical quality, at least quarterly, as well as the training needed to analyze these reports. Residents must attend regular monthly FMC business meetings with staff and faculty to discuss practice-related policies and procedures, business and service goals, and practice efficiency and quality.

各レジデントは少なくとも四半期ごとに、その診療の生産性(時間あたり患者数)、経済的なパフォーマンス、患者満足度、医療の質についての報告書を受け取るべき(その読み方についての教育と併せて) 

運営に関するビジネスミーティングには参加しなければならない(済)

They must participate in projects to improve the quality of care and service delivered to the FMC patient population.

センターのケアする患者集団に対して提供される医療の質を改善するプロジェクトに参加しなければならない。(なんとなく済)

The management curriculum should include current billing practices, designing and managing a budget, assessing practice staffing needs, the impact of new technologies on practice, determining value in the marketplace, assessing customer satisfaction, measurement of clinical quality, tort liability and risk management, office scheduling systems, computers in practice, alternative practice models, and employment law and procedures. Residents should also learn principles of public relations, media training, and personnel management.

マネジメントのカリキュラムは以下のものを含む必要がある
請求、予算計画の策定と管理、職員人員確保や配置の必要性の判断、新しいテクノロジーが診療に与える影響、市場に置ける価値の測定、利用者満足度の評価、医療の質の測定、医療過誤についてのマネジメント、診療時間とシフト作成、診療におけるコンピュータ、他の診療モデル、労働法と運用

また、PR(広報活動)、メディア、自己管理の原則についても学ぶ必要がある。

The leadership curriculum should include training to provide leadership for a clinical practice, a hospital medical staff, professional organizations, and community leadership skills to advocate for the public health.

リーダーシップのカリキュラムは
医療機関、病院のスタッフ、プロ集団のそれぞれに対してリーダーシップを発揮するトレーニングとともに、公衆衛生を擁護するためのコミュニティーに置けるリーダーシップについても含む必要がある。

---------------

米国のカリキュラムが全てではありませんが、もう少しこういったことも意識してレジデントに要求していきたいと思います。
診療のパフォーマンス(質,満足度、生産性,売り上げ)の個別フィードバックについては、同僚同士で関係がぎすぎすする可能性もありますし,注意深くやる必要はありますが、いやがるかもと思ってやっていなかったということもあります。大義名分が出来たので少し取り組んでみようかと思います。

2010/03/26

    医師は経営を教わらない? Management of Health Systems/Practice Management(診療所運営)という分野

ものを書くには「こんなことが世の中に向けて言いたい」ということがある程度たまってくることが必要で、そのエネルギーを書くエネルギーに変えることで書けるのですが、twitterにて小出しに主張(ここ)していると、「ガス抜き」というか,そのような状態になってblogを核エネルギーがたまらない,という印象です。去年からがくんと執筆のペースが落ちてしまいました。ストレスはためずにこまめに発散が良いのですが(夫婦喧嘩も),執筆はその逆の方が良いような気がします。

twitterのなかで、医師が経営、運営を学ばないというコメントがいくつかありました。
日本の場合医療機関の院長は医師である必要があるという縛り,一方で問題意識の高い医師が積極的に求める以外はマネジメントについて学ぶ機会がない、ということが関係あるかどうかはわかりませんが、多くの中小病院が経営難に陥っています(診療報酬の問題もあるのでしょうが)

米国の家庭医研修ではその研修中にPractice Management(診療所運営)と呼ばれる分野を必ずカバーすることが要求されています。
ACGME program requirement for family meidicine
の31ページ前後

全て抜き書きしておきます(個人的には,知らない間にManagement of Health Systemsと書き換えられていたのが興味深いです)

Management of Health Systems
must receive at least 100 hours of management and leadership instruction to include both the didactic and the practical settings.

This curriculum should prepare residents to assume leadership roles in their practices, their communities, and the profession of medicine. The residency must have specific strategies to demonstrate that residents have mastered these skills.

The FMC must be considered the primary site for teaching management and leadership skills, and should serve as an example on which residents may model their future practices.

Each resident must receive reports of individual and practice productivity, financial performance, patient satisfaction and clinical quality, at least quarterly, as well as the training needed to analyze these reports. Residents must attend regular monthly FMC business meetings with staff and faculty to discuss practice-related policies and procedures, business and service goals, and practice efficiency and quality.

They must participate in projects to improve the quality of care and service delivered to the FMC patient population.
The management curriculum should include current billing practices, designing and managing a budget, assessing practice staffing needs, the impact of new technologies on practice, determining value in the marketplace, assessing customer satisfaction, measurement of clinical quality, tort liability and risk management, office scheduling systems, computers in practice, alternative practice models, and employment law and procedures. Residents should also learn principles of public relations, media training, and personnel management.

The leadership curriculum should include training to provide leadership for a clinical practice, a hospital medical staff, professional organizations, and community leadership skills to advocate for the public health.


さらに具体的には、研修中に学ぶことの概要として
Recommended Curriculum Guidelines for Family Medicine Residents
に公開されていますがその中に、

Management of Health Systems (Practice Management)
という分野があります。

同様に診療所運営ですが、医療の質管理の側面は
Practice-based Learning and Improvementという領域として別に設定されています(前述の2つのリンク参照)

Recommended Curriculum Guidelines for Family Medicine Residentsの方は,そのときの最新のものが日本語版として翻訳されています(その後英語の方は順次改訂されているので注意)



日本でも後期研修としての家庭医育成プログラムは数が増えてきましたが、
その認定要件の元となる、特定非営利活動法人 日本家庭医療学会 認定 後期研修プログラム(バージョン1.0)(PDFファイル)のなかでも、全ての医師が備える能力として、(3)組織・制度・運営に関する能力のなかで定義されています。

もちろん「知っていること」と「できること」は別で、特にマネジメント,リーダーシップなどの領域は、実際にリーダーや経営者になって実践してみないと絶対にわからないこと,学べないことがあるのは事実ですが、事前に知識や、起こりうる問題に対する解決法を想定して望むのとそうでないのとは雲泥の差があります。

こういった領域はビジネスや組織開発など多領域にまたがるため、同じ内容のものが様々な名前で呼ばれています。ビジネススキル,と呼ばれる場合もあり、以前,医師もそのようなスキルを学ぶ必要がある、という趣旨の執筆をさせて頂きました。

2008/12/03  JIM 特集 医師のためのビジネス・スキル

ここで,読めるようにしてあります。

改めてprogram requirementを読み返して、気づいたことがいくつかありますので、別エントリーにて。

2010/02/15

    第5回 若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー 家庭医療のそもそも論

表題の件 昨日無事終了しました。

2月14日(日) 9:00~10:20 第5回 若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー【二日目選択WS】家庭医療のそもそも論

8. 家庭医療のそもそも論

人間は自分が見聞したものの中でしか語ることが出来ません。自分が少数派と して日本に生まれ育ち、家庭医療に出会い、少数派として渡米して、Faculty Developmentと公衆衛生に出会い、帰国して研修医達と7年程家庭医療をやった、 その過程で、自分なりに「家庭医療とは」と考え続けてきて捻出したキーワード を紹介しながら、改めて「家庭医療」について考えるコアな会になれば,と思い ます。正解や簡単な解決法を知りたい方には向かないと思います。ネットにつな がるPCやiPhone所有者の方はたくさんいらしてください。皆さんにtwitterやfacebook などのSNSで実況中継をして頂くという社会実験をしてみましょう。事前にアカウ ントの取得と使用法の習熟をお勧めします。Twitterでのハッシュタグは #okadafmです。楽しみにしています。
●キーワード:家庭医療学 twitter facebook 理論的基盤


という形で、最近流行のtwitterによる同時に現場にいない人からも発言を頂きながら,結果的に記録も残せるという方法を実験的に試してみました。
現場の参加者の皆さんには、さえずり(tweet)よりは自分自身の学びを優先して下さい。とお願いしましたが,それでもたくさんの人がtweetして下さったおかげで外部からのからみをたくさん頂き,盛り上がったのではないかと思います。

今回は動画中継のUstreamまでは技術的に間に合わなかったので,次回への課題としたいと思いますが、もうひとつは、参加費を払って現場にいる人と,無料でネットで中継を見ている人との不公平感をなくすための配慮も必要なのではないかと思いました。(ライブにはかなわないとは思っていますが)

現在も成長しつつけているtweetのログは以下で見ることができます。(まだ増えていると思うので,その都度読み込みの更新をお願いします)

個人的には議論の時間を十分確保できなかった,などの反省はありますが、とにかく新たなちゃんねるでの取り組みの第一歩が踏み出せたということで、今後の展開を楽しみにしたいと思います。

現場での参加のみなさま、tweetでの参加のみなさま大変ありがとうございました。みなさまにとっても学びとなっていれば幸いです。

オリジナルログ(時系列的に逆です)
http://twitter.com/#search?q=%23okadafm


http://kiwofusi.sakura.ne.jp/hashtag/info.cgi?name=okadafm

ログ出力
こちらは時系列で追うことができます。

buzztter

2010/01/20

    タバコと環境

以前環境/エコ系のイベント(http://awaour.blogspot.com/)とコラボで出させて頂いた禁煙サポートのブースで健康のことに一切触れずにタバコの害を訴えよう,というコンセプトで作成した資料です。

「あなた自身の健康のために」といっても全く関心を示さない人が「孫のために」「赤ちゃんのために」というと行動変容を起こしてくれる場合がある,という経験から、最近の環境への関心と絡めて「自分のため」ではなく「環境と世界のために」禁煙をと訴えることで、これまでメッセージの届かなかった集団に訴えかけられるのではないか,というのがそもそものきっかけ。調べてみるといろいろありました。

こんな視点から禁煙を訴えるのもアリでは?

自分の健康は自分の好きにするとしても環境に対しては他者への責任が生じるのではないでしょうか。

追記:「自分自身のため」以外の方法として、なかなか検査や薬の増量、通院など納得されない人に、確立された医師患者関係を意図的に利用して,「今回は僕の顔を立てて〜してもらえませんか」という頼み方も家庭医ならではかなと思います。時々利用します。使いすぎるとパワーハラスメントになるので注意。

タバコと環境

2010/01/15

    病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー 11月ケースカンファレンス 水痘の7歳男児

恒例の総合医スキルアップセミナーの期間限定公開です。

※2009年11月29日東京都内で収録
この映像は、医療の向上に役立てていただく目的で、
主催者の御厚意により、期間限定で配信しております。(1月28日まで)


病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー
ケースカンファレンス担当
C&R グループビル2階大会議室 〒102-0083 東京都千代田区麹町二丁目10番9号

http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/special/career/jamep/

のシリーズ。


ケース 水痘の7歳男児
症例提供:岡田唯男氏
2009年11月29日東京都内で収録


実際の映像とスライドはこちら

なんとタイトルから診断名が「水痘」と書いてあります。
といったら当日は受けていましたが、結構まじめにスライドの最初に書きました。私の考えではこの総合医スキルアップセミナーでは扱う内容が

成人への偏重
診断への偏重

と感じていました。特に2つ目の診断の偏重では書籍や雑誌でもそうなのですが、いわゆる臨床決断というと主訴や病歴から,問診,診察を駆使して正確な診断にたどり着く、という「診断当てゲーム」的なものが多いですね。もちろん正確な診断があってよい治療が出来るのですが、臨床,特にプライマリケアの現場は

1. ほとんどが診断には困らない(感冒、胃腸炎、高血圧、糖尿病などなど)
2. もしくは診断は調べても解らない(不定愁訴という意味ではなく)が自然経過で症状がなくなってしまう

ものばかりで、
逆に 
診断はわかっているが治療がうまく行かない (アドヒアランスの問題、その他)
患者の受診理由以外に提供しなければいけない医療ニーズがある(患者本人の認識しないニード)
診断をはっきりさせないまま診療を継続する必要がある

などの診断以外の臨床決断という高度なサイエンスとアートが要求される事例は多いのですが、それらに日が当たることが比較的少ない、ということを主張する意味もありましたし、むしろそれらの方が家庭医の診療の大半を占めるからより現実に即したケースカンファレンスをやりたい。ということもありました。

水痘の子どもを本当の意味で包括的に診るということはどのようなことなのでしょうか。風が吹けば桶屋が儲かる的な展開と結末ですが、実際に私が対応した症例と対応した内容ほぼそのままです。お楽しみあれ。

2010/01/14

    ジェネラリストセミナー〜1日家庭医追体験記〜(名古屋)1/16

今週末16日(土曜)
名古屋で医学生の皆さんを中心に家庭医療の魅力についてお話しさせて頂きます。
私の話を聞いたことある方にはいつもの話ですが、私なりの家庭医療の魅力について聞いてみたい方はぜひご参加ください。
学生さんが作ってくださった告知内容をそのまま下記に添付します。

--------------------------------------------
◎ジェネラリストセミナー〜1日家庭医追体験記〜◎

今、医療先進国日本に足りない医療がある

専門分化の推進の中、分化されたのは分野だけでなく、患者さん
であった

患者さんを疾患ごと一人の人間として「診る」
その本当の意味を問うー

【日時】1月16日(土)

【場所】名古屋市立大学病院 研究棟 2階 臨床セミナー室
※地下鉄桜通線「桜山駅」下車三番出口目の前

【タイムスケジュール】
16:00〜開場
16:15〜17:00
アイスブレイク&家庭医て何?ディスカッション
17:00〜18:45
岡田唯男先生による1日家庭医追体験記
19:00〜21:00懇親会(希望者のみ)

【主題】
「家庭医の視点を追体験する」
家庭医は患者さんを診療する際に、診断や治療は当然ですが、それ以外に多くのことを考慮しながら診療しています。
とある症例を通じて家庭医が診療をしながらどのようなことを考がえているのか、それを皆さんに追体験して頂くことで家庭医の視点というのを感 じてもらえれば と考えています。

【講演者】
鉄蕉会 亀田ファミリークリニック院長
岡田唯男先生
米国で家庭医療学のレジデンシーを修了後、指導医となるため研修(フェローシップ)と公衆衛生大学院を並立して修了、
2002年亀田メ ディカルセンター入職。
2006年6月より家庭医療の実践、研修、研究の場として開設された亀田ファミリークリニック館山の院長。プライマリケア(家庭医療学)の専門家、卒後教育の専門家として院内外で活躍中。

【セミナー費】
学生500円
研修医・医師1000円

【参加方法】
fmzemi◯yahoo.co.jp  (◯を@へ変更)

◎氏名
◎所属(学年含む)
◎懇親会への参加の有無(別途食事代を徴収いたします)
◎家庭医に関して一言
をご記入のうえ、 ご返送下さい。

2010/01/11

    The Family Medicine Clerkship Curriculum

STFM (Society of Teachers of Family Medicine)のプロジェクトとして
表題のカリキュラムが整備されています

The Family Medicine Clerkship Curriculum

通常米国の家庭医療のクラークシップは通常3年目で2ヶ月ぐらいのところがほとんどだと思うので,また米国の医学生と日本の医学生のレベルを考慮すると,日本では卒後2年目にやる地域医療(必修化カリキュラム)の枠組みとして,もしくは3-6ヶ月程度の後期の選択研修,また日本家庭医療学会の診療所6ヶ月の部分のたたき台として有用なのではないでしょうか.
端的によくまとまっています.

リンクはpdfです.


the Executive Summary to the Clerkship Curriculum. (pdf)

the Family Medicine Clerkship Curriculum. (pdf)

鍵となる表を挙げておきます

Table 1 The Principles of Family Medicine
The biopsychosocial model
Comprehensive care
Continuity of care
Contextual care
Coordination/complexity of care

Table 2 Key Characteristics of Family Physicians
Prior knowledge of the patient
Care for a heterogeneous
patient population
Multiple settings with different diagnostic prevalence
Multi-purpose visits
Staged diagnostic approach
Opportunity for follow-up care

Table 3: Core Acute Presentations(省略)

Table 4 Key characteristics of Chronic Disease Management by Family Physicians
Chronic disease management knowledge and skill
Attention to co-morbidities
Continuity context
Relationship with the patient
Patient empowerment and self-management support

Table 5: Core Chronic Disease Presentations (省略)

Table 6 Characteristics of Preventive Care by Family Physicians
Evidence-based
Individualized
Opportunistic
Prioritized

Table 7 Core Health Promotion Conditions for Adults
Breast cancer
Cervical cancer
Colon cancer
Coronary artery disease
Depression
Fall risk in elderly patients
Intimate partner and family violence
Obesity
Osteoporosis
Prostate cancer
Sexually transmitted infection
Substance use/abuse
Type 2 diabetes mellitus

Table 8 Core Health Promotion Conditions for Children/Adolescents
Diet/exercise
Family/social support
Growth and development
Hearing
Lead exposure
Nutritional deficiency
Potential for injury
Sexual activity
Substance use
Tuberculosis
Vision

2010/01/01

    私が次の患者さんを呼び入れる際に立ち上がって自ら診察室のドアを開ける8つの理由

自分の診療でずっとこだわってやってきていることのひとつに、自分が立ち上がって診察室と待合室を隔てるドアを開けて待合室の中から次の患者さんを見つけてお呼びする。という行動があります。実は自分の施設でも全員がやっていることではないので、僕の外来についた学生さんや研修医の方はカルチャーショックを受ける人がいます。

1)歩み寄りの気持ち。本来医師が患者さんの自宅や職場へ伺っての診療があるべき姿である(その方が素(す)の状態が見られる)が、様々な制約でそれは難しい,ならば医療機関まで来てくださっている訳なので、せめてもの気持ちとして最後の何歩か、数メートルかは私の方から患者さんのいるところへ歩み寄りたいという少し申し開き的な,言い訳的な。

2)素の姿を見る。患者さんは医師の前で様々な演技をなさいます(意図的でなくても)。待合室ではそうでもないのに放送で呼び出されて診察室に入ってくる段になってからこれ見よがしに辛そうにはいってくる人、逆に通院の長いよく知った医師が忙しそうなのに気を使って、待合室では横になりたいほど辛いのに、全くそういったそぶりを見せずに気丈に振る舞おうとする人。顔の表情もいろいろな意味で作っている方も多いです。こちらがドアを開けて呼べば、患者さんにとっては不意打ちになるが、素の状態を観察することは非常に重要なのです。

3)家族ダイナミクス、家族関係など(同伴者との関係)を見る。たとえ受診は一人だけなのに夫婦で一緒で来られる場合、高齢者の方の足として娘さんや息子さんが一緒に来られる場合、中高生の子どもを親がつれてくる場合など同伴者がいることは多いですが、来ているにもかかわらず、診察室には入ってこない場合が多々あります。診察室のなかから呼び出し放送で呼んでしまっては、この「入ってこない同伴者」の存在があるのかないのか全く見えません。入ってこられないのは、受診者のプライバシーに同伴者が配慮している場合もあれば、同伴者が一緒に入ろうと立ち上がったところを受診者が制して一人で来ようとする場合もあります。またこれまでの別の医師の受診で何らかの良い/悪い体験があってそのような受領行動が形作られている場合などいろいろな理由があると思いますので,無理強いはしませんが、少なくとも同伴者が入ってこようとしない場合「一緒にいかがですか」と提案はするようにしています。ドアを開けて呼び入れたときに受診者と同伴者がとる行動でその二人の関係がどのようなものか少し推し量ることが出来ます。また同伴者が家族とは限りません。友達やそれ以外の大切な人の場合も。これは4)につながります

4)その他の人間関係を見る。これは,意図しなかった効果。地域密着でやっていますので、私の患者さんを呼び入れようと診察室のドアを開けて待合室を覗くと、今呼び入れようとしている患者さんと,それと数人あとの名字の全く違う僕の患者さんがなかよく雑談している風景を良く見ます。これも必ず呼び入れたあとでどういう関係かお尋ねして、出来るだけ診療録に書き留めておくようにしています。「実はお隣/近所なんです(住所を見ると実際そう)」「遠い親戚なんです」「ダンス教室で一緒だったんです」、70代の方同士で「小学校時代の同級生なんです」などなど。以前50台で娘さんがいるはずのない方が若い女性と同伴で(もちろん診察室へは一緒には入ってこない)、おそるおそる関係を尋ねたら,昔その娘がいろいろと警察のお世話になったりした(かなんかそのような)時に、いろいろと面倒を見てあげたとのこと。まあ医師用の説明かもしれませんが。うちの電子カルテには家族図を実現する機能すらありませんが、近所や幼なじみ、趣味友達などまで把握してこそ家庭医の醍醐味。

5)脚力、歩行などを見る。高齢者,リハビリに来ている人、ねんざ、腰痛などの回復などの様子が見られる。2)とつながりますが、名前を呼ばれて、座った状態から立ち上がる所にどのぐらいかかるか、診察室に入ってくるまでの歩き方、どのぐらいビッコを引いているか,無理しているかなど自然に観察することが出来ます。口で「大丈夫」といってても歩き方に出ます。また特に足腰の訴えがなくてもその立ち上がり方や歩き方で虚弱高齢者の転倒リスクを拾い上げて先にリハビリを導入したり、パーキンソンなどの神経疾患を見つけることもあります。

6)患者さんへの忠誠(loyalty)を示す。患者満足度につながる。受診するべき医師が制度によって制約されない日本だからこそ、医師としてはずっと自分のところに通ってきてほしいというのはあるはずです。互恵性(何かしてもらったら返したい.give & take)の法則を考えれば、loyaltyが欲しければまずloyaltyを示す。give & takeはgive先にあることには理由があります。1)に関連しますが、普通はそこまでしてくれるドクターはいないので「私の先生はわざわざ呼びにきてくれる」といった特別扱いされている感を与えます。もちろん自分のところに来てくださる患者さんは特別扱いをします。日本中どの医者へ行っても費用負担は同じなのに自分を選んでくださる訳ですから。耳の聞こえない患者さんにも配慮できます。目が合ったところで手招きするだけ。それから、耳が聞こえる方でも僕の診察室のドアが開くと「次は自分かな?」という具合にこちらを見る方が多いので、目が合ったらそのまま名前を呼ばずに「どうぞ」と招き入れることもあります。これは個人認識の上では多少リスクがあるのですが、大病院ではあり得ない「顔パス」の状態を作り出すことで、最高のVIP待遇が提供できていることになります。また、大病院の外来で仕事している人には特にお勧め。両隣は言うに及ばず同じ列の診察室のどのドクターもやっていない状況なら、本当に特別扱いです。他のドクターを待っている患者さんは羨望の目で。私の患者さんは鼻高々です。

7)その半コマのタイムマネジメントとして。8)につながりますが、その日の予約患者さんがどのくらい既に来て待っているか、新患の患者さんはどんな人か、外来のペースが送れているときに、待ち時間が長くて怒っている人や疲れている人はいないかといったことをさっと確認しています。通常、1時間遅れることはまずないのですが、突発的なことでたくさんの人が既に受付を済ませて待っている状況になったら、患者さんを呼ぶためにドアを開けるとその4−5人(場合によっては7−8人)の既に受付を済ませた患者さんが一斉に「次は自分が呼ばれるのか?」という雰囲気で刺すような視線をくださいます。ですからあまり待ちの人が多い状況になるとその視線が怖くて,放送呼び出しにしてしまいます。つまり、自分の中では予約外来で放送呼び出しをしている時は、その時点でそのコマのタイムマネジメントがうまくいっていない,ということの表れなのです。ですから、いかに放送呼び出しをせずに外来をやり遂げられるか,という自分にとってのプレッシャーとして利用しています。自分の心理状態(余裕があるかないか)を示すバロメータとしても機能しています。「今日も一こま,胸を張って全員直接お迎えできた」というのが自分への勲章。

8)現在は施設の管理者の立場もつとめているので、やはり全体の待ち時間も気にします。現在の施設は診察室が複数あって複数の医師が診療をしていますし、当日飛び込みの患者さんもたくさんいます。その時間帯の待合室がどのぐらい混んでいるか、ぐったりしている人や苦しそうな人,怒っている人などいないか。もちろんこういったあたりは受付、看護師なども気を配ってくれていますが、目が多いにこしたことはありません。

直接診察室の外へ出て待合室を見ながら患者さんを呼び出すことで得られる情報量とメリットは計り知れません。

欠点は時間がほんの少しよけいにかかることです。でも一人30秒程度ですから半日で20人なら10分余分にすぎません。10分余分にかけるだけでここに書いただけのメリットと情報量が得られるのですから、しない理由はありません.

例外は上記の様に、自分に余裕がないときと、初診患者さんです。初診患者さんは顔を知らないので探すのが大変なのと,その分声を張り上げないといけないからです。放送呼び出しです。

米国は既に診察室に患者さんが入っていますし,入るときはノックをしてから入りますから、上記の多くのメリットを放棄しています。そこからは「効率」が得られるのですが....