2009/04/06

    一人でできる学び(最後はやっぱり個人)

家庭医になるべくして渡米したのはもう二昔も前のことになってしまったが,当時は「日本では家庭医になれる環境がないから」という単純な理由でした.(今考えれば,当時でも日本で家庭医になれる環境はあったのですが,情報が不十分で自分にはたどり着けませんでした.)

そのような日本の状況と,米国のレジデンシーの状況(既にProgram Requirementやら,評価やら,カリキュラムやら,しっかりと整備されていました)を比べて,当時の私は「渡米してレジデンシーに入りさえすれば家庭医になれる」という大きな勘違いをしていました.

なぜそれが勘違いだと気づいたか.

1.レジデントの最終学年半ばになって,クラスメイトと経験したコルポスコピーの数の話になったときに,あまりの差に愕然とした.「何でそんなに出来たの?」と聞くといろいろと腑に落ちる理由を説明してくれましたが,(詳細は省略)1つは本人がどのように研修をとらえていたかに大きな差があった.(乗っかっていれば何とかなる vs 自分の研修は自分で確保する)

2.そのまま,同じプログラムに指導医のタマゴとして残ったわけですが,後輩達の成長を見る中で,3年間の修了時期になっても,個人的には「家庭医とは言えないよな~というような人が時々見られる」勿論,様々な理由で研修を終了できずにドロップアウトするひともいる.

3.日本人としてアメリカで臨床研修をした人たち(家庭医療に限らず)の中に,どう考えてもお友達になれないな~というタイプの人種がいる.

4.日本でしか研修をしたことのない人たちの中に多くの「ああこの人はすばららしい家庭医だな~」と思える人たちが沢山いる

確かに指導医や研修環境が整っていることで70-80%しか良い医師になれないところを90%ぐらいには出来るかもしれませんが,逆に言うと整っていないところでも70-80%はちゃんと育つのです.ですからその環境の差が意味を持つのは環境の無いところではうまく伸びることが出来ないが,環境が整備されると伸びることの出来る10-20%(この数値は任意なので,勿論この差が80%ぐらいある場合もあるでしょうが)の人たちに過ぎません.

同様に,左記の例にあるように,同じ環境でも当然結果の差は出るわけでその差は個人に帰結する訳です.

ということで,良い環境にいても,そうでない環境にいてもより多くのことを学ぶために,学び方を学ぶ,工夫する必要があるわけです.

1人で出来る学びにも6種類ほどあるようですが,そのうちの比較的簡単に取り組める3つについてまとめています.

うちの研修医の中にも,見学に来る人たちの中にも,懸命にメモを取る人たちがいます.長期的にどのような差になるか.(メモ=>より良くなるという保証はないですが,そんな風に思えます)

今年の家庭医療学会による第21回 医学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナーでは,自分自身の努力と工夫でどこまで学びを最大化できるか,そんなサムライのようなストイックな学び方について考えるセッションを予定しています.


一人でできる学び



「学び」で組織は成長する (光文社新書)
吉田 新一郎
光文社 ( 2006-01-17 )
ISBN: 9784334033392
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1 コメント:

familymed758 さんのコメント...

いつも楽しく読ませていただいています。今回の項は個人的に、うなずきながら読ませていただきました。

アメリカにいるからと言って、学びになっているわけでもなく、こんなに恵まれている環境なのに、学べていない人もいますし。自分自身も、環境の違いへの適応にエネルギーを削がれて、学びのスピード、効率が落ちている気がしなくもありません。2年次以降になって余裕が出たら、指数関数的に視野が開けてくることを期待はしていますが・・・。

1人でできる学びについては、ブログを書いていることがまさに「書くことによる学び」になっていますし、それを意識して書いています。

シャドーイングも、最近日本人クリニックに見学にきた医学生さんを、自分の外来のシャドーイングに無理矢理誘っており、自分のためにもなっている気がします。確かにダイレクトに感想を求めると、「良かったです」ぐらいしか言ってもらえず、ちょっとがっかりなのですが仕方が無いですね。