本日発表のonline firstから
しかし、いつもこの方は早い。
IDEAL Study:透析早期導入に疑問符
背景は上記blogに端的にまとまっている
長期透析の増加が世界でも問題となっており、開始時期は尿毒症の兆候・症状の存在により開始することが世界的には一般的となっている。確かに、観察コホートや症例対照治験で、透析早期導入にて患者の生存率、QoL、労働能力、コンプライアンスなど改善したと報告がある。しかし、この研究の多くは、lead timeによるバイアス、患者選択、参照期間などのバイアスがあるが、析開始時期目標早期化が臨床ガイドラインに用いられている。
しかしながら、最近の観察研究にて、早期導入は有害ですらあるという報告がなされてきたため、ランダム化対照治験が求められていた。
Published at www.nejm.org June 27, 2010 (10.1056/NEJMoa1000552)
A Randomized, Controlled Trial of Early versus Late Initiation of Dialysis
批判的吟味
P 828名 eGFR 10-15 平均60歳、355人が糖尿 3.59年のフォロー ニュージーランド
E 透析導入 early start eGFR10-14で導入
C late start eGFR 5-7で導入 (恐らくこちらが標準的な診療)
O primay outcome 全ての理由による死亡
early start vs late start群の順で
primary outcome
death from any cause 37.6% vs 36.6% (hazard ratio 1.04; 95% CI, 0.83 to 1.30; P=0.75)
導入までの期間中央値 1.8ヶ月 vs 7.4ヶ月
実際の透析導入時eGFR 12 vs 9
その他のアウトカム
心血管イベント、感染症、透析合併症に有意差無し
鍵となるグラフは上記blogに
pitfall
late start群の75.9%が症状発現のために、eGFR<7まで待てずに透析導入
early start群の18.9%が実際はeGFR<10になってから導入
両方とも差を減らす方へのバイアス。sample数は予定通り確保できているが、結果としてのβエラーはあり得るか?
take home message
どちらにせよ透析導入から4年弱で36~37%の人が死亡 (日本の統計でもほぼ同じ 4年生存率0.68)
上記のデータが本当とすると透析導入まで約5ヶ月の差
figure 2-Aの表面積の差の分だけ医療の質を変えずに透析回数が節約できることになる
(単純計算で、国・患者さんにとって一人あたり150万円、通院12-13回・月x5ヶ月分の負担、時間として300時間ぐらいー>その分、仕事や他の生産的活動に従事できる。医療機関にとってはその分の収入損失)
日本での年間新規導入は36000人ぐらい (x150万円で540億円ですね〜)
疑問と課題
日本ではスコアを元に導入しているが、そのなかにクレアチニン値は用いられていても
eGFRの具体的な数値は提示されていない
K-DOQIでは eGFR<15+尿毒症症状で導入とされている
30.1 血液透析への導入基準
http://202.216.128.227/%93%A7%90%CD%95S%89%C8/30.01.htm
eGFRで診たときの日本の透析導入時期の実態はこの研究で言うどちらの群に近いのか?
この研究を元に、日本でも透析導入の決定にeGFRの数値を織り込むか
それとも、日本の基準で、変更可能な物があるか探すために新たにRCTを行うか
さて、この診療が本当なら自分の診療は変わるか?
透析導入の決定には直接関わらないという意味ではno
導入直前で症状のない患者さんで、導入を出来るだけ先送りにしたいという希望があれば、専門医にこのデータを元に相談を持って行ける。
総作業時間約30分
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