2008/06/17

    高齢者は避けて欲しい薬のリスト

最近日経メディカルでも小さく取り上げられたので知っている人もいるだろう.

国立保健医療科学院の疫学部 今井博久氏による仕事

高齢者は避けて欲しい薬のリスト

高齢者全てに注意すべき薬剤のリストと,特定の疾患や状態を持つ高齢者で注意すべき薬剤のリストをまとめ,それぞれに問題となる副作用などが起こった場合の重症度(重要度)がつけられている.

詳細は上記リンク内のpdfを見ていただくとして,自分があまり意識していなかったもの,それから,以外に頻繁に使っているものを抜き出してみた.

インダシン CNS副作用
トリプタノール
トレドミン
アダラート 便秘
H2blocker せん妄
チラージン(乾燥沫のみ) チラージンS(合成製剤) は別
パナルジン 
ジフェンヒドラミン
抗コリン作用の強い抗ヒスタミン アタラックス,ペリアクチン,ポララミン
SSRI SIADH
腎機能低下症例でのH2blocker

トリプタノールについてはかなり頻繁に使用するので,副作用などは把握しているが,やはりリストでやり玉に挙げられると...もちろん禁忌のリストではないのだが.H2Blockerも安全な薬,との印象が強いのではないだろうか.


2001年ー2006年の 4045の論文 からのリスト作成とのこと.
このリストを取り上げた記事では日本のBeers Criteriaを目指す,という但し書きがついていることが多いので,今まで知らなかったBeers criteriaについて調べた.

Wikipediaにも存在
Beers Criteria

1991年にオリジナルが発表.今回の2003年に3度目のupdateが行われている,”Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults”のリスト.

The Center for Clinical and Genetic Economics (CCGE), established in 1999 in the Duke Clinical Research InstituteのHPにリストとその用法へのリンクがまとめられている

Potentially Inappropriate Medications for the Elderly According to the Revised Beers Criteria

2003年の論文は以下で見られる.



Donna M. Fick, PhD, RN.et al. Updating the Beers Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults. Results of a US Consensus Panel of Experts. Arch Intern Med. 2003;163:2716-2724. (Vol. 163 No. 22, December 8, 2003)


リストの厳密な定義は以下の通り

(1) medications or medication classes that should generally be avoided in persons 65 years or older because they are either ineffective or they pose unnecessarily high risk for older persons and a safer alternative is available and (2) medications that should not be used in older persons known to have specific medical conditions.


Results This study identified 48 individual medications or classes of medications to avoid in older adults and their potential concerns and 20 diseases/conditions and medications to be avoided in older adults with these conditions. Of these potentially inappropriate drugs, 66 were considered by the panel to have adverse outcomes of high severity.


全文は読まないとしても以下の3つの表には目を通して置いても良いだろう

Table 1. 2002 Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults: Independent of Diagnoses or Conditions

Table 2. 2002 Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults: Considering Diagnoses or Conditions

Table 3. Summary of Changes From 1997 Beers Criteria to New 2002 Criteria

注意するべきは”日本のBeers Criteriaを目指す”とした今井のリストはBeers Criteriaの日本語訳ではなく,オリジナルに文献検索から行われ,作成されたリスト,ということ.挙げられた薬剤の一致などの検証はしていないが,一部重ならないところもあると思われるので注意.また今井のリストは文献検索のみのようであるが,(原文の調査方法には当たっていないので定かではないが)Beers Criteriaは論文検索を元にして,専門家集団がそれを何度か叩いて調整して出来たconsensusということ.方法論はデルファイ法と呼ばれ,前回のエントリーで詳述した.

デルファイ法(未来予測,合意形成,質的研究)

いつまでたっても新しいことがでてくるなぁ.Beers Criteriaも2003年の発表...

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