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2008/07/08

    postitive deviance/deviant

尊敬する先輩のblogに触発されて昔読んだコンセプトを思い出した.(positive showerがあふれ出る先輩で会うといつも元気になるので大好きです)

後半の麻疹対策もそれはそれで,目を見張るのだが,質改善のための方法論について

問題ばかりが目に付くとnegativeな報告や会話になりがちですが、「うまくいっている病院をモデルにしてみよう」というやり方もありますね。
成果=Evidenceは説得力があります。

「ICUの抗菌薬使用量が半減」「広域抗菌薬は年一桁」というような病院が実際にあるわけです。

Best practice modelにはいろいろあります。「言語化」できるかどうかはひとつのカギです。できる人たちだけやればいいわけではありませんので。


残念ながら引用が出来ないがおそらくいつぞやのHarvard Business Reviewだったと思う

postitive deviance/deviant

についての記載があった.そこで挙げられていた例はある保険会社が全体にどの営業所も軒並み売り上げが落ちている中で,なぜか一つだけ売り上げを伸ばしている営業所があった.そこのやり方が他の営業所と何が違うかを徹底的に調べて他の営業所ではやっていなかった行動を他の営業所に取り込む,という事例で,その一つだけ飛び抜けている営業所のことをpostitive deviantと呼ぶ.

同じような症例が下記の本で紹介されていたと思う.(定かではないが)
ファーストフードのチェーン店で同じような来客数なのに売り上げに大幅な差がある2店舗に実際にいって,何が違うかを観察すると,売り上げの多い方は「もう一品いかがですか」「サイズは大きくしますか」などのお勧めのせりふが毎回確実に言われていたが,低い店はそれが徹底されていなかったとのこと.(やっぱり意味あるんですね)

本当にそれが売り上げの差の原因なのか,他の要素に差はなかったのか,交絡因子は?という反応をするのがほとんどの医師.

質改善の活動と研究は別物である

ということが理解されていない.というより,「質改善活動」そのものを体系立ててはこれまでの医師は教わったことがない.質改善活動は良くなりそうで,出来そうなことはとりあえずやってみる,それで良くなれば続ける,相でなければ方法を再検討する.というやり方で,結果として現場が良くなれば良し,とする立場.

その事の詳細はまたの機会にするとして,

postitive deviance/deviant

という言葉は未だ日本語にはなっていないし,それほど浸透してもいないようである.
ただ,「best practice modelから学ぶ」という言葉はある.基本的には同じ.


Positive Deviance Initiative
より,

What is Positive Deviance?

In every community there are certain individuals (the "Positive Deviants") whose special practices/ strategies/ behaviors enable them to find better solutions to prevalent community problems than their neighbors who have access to the same resources. Positive deviance is a culturally appropriate development approach that is tailored to the specific community in which it is used.


「find better solutions to prevalent community problems than their neighbors who have access to the same resources.」というところがみそ.やはりあまりにも違いすぎる状況では何がその差を生んでいるのかわからないので.

positive deviant network

から
The first successful large-scale field application of positive deviance was initiated in Vietnam in early 1991 to address the problem of childhood malnutrition. Over the following decade, the positive deviance approach to nutrition became a national model and today reaches a population of 2.2 million inhabitants in 250 Vietnamese communities.


Positive Deviance
From Wikipedia, the free encyclopedia


より

Positive Deviance (PD) is an approach to personal, organizational and cultural change based on the idea that every community or group of people performing a similar function has certain individuals (the "Positive Deviants") whose special attitudes, practices/ strategies/ behaviors enable them to function more effectively than others with the exact same resources and conditions.[1] Because Positive Deviants derive their extraordinary capabilities from the identical environmental conditions as those around them, but are not constrained by conventional wisdoms, Positive Deviants standards for attitudes, thinking and behavior are readily accepted as the foundation for profound organizational and cultural change.


いわゆるヒーローと言うことかもしれません.ただし,positive deviantが必ず目立っているとは限りません.

For example, even though poverty is often the root-cause of ill health, in any community there will usually be some families, the Positive Deviants, that manage to stay healthy, or raise healthy kids, despite their poverty. Their practices, such as washing their hands more often, cooking the food differently, consuming crops that were considered taboo by the rest of the village etc. became the foundation for large scale community change.



あそこは患者さんの病状が軽い人が多いから.指導医がいいから.医者のできが違うから.スタッフが潤沢だから.うちの方が難しい患者の症例をかかえているから,等の言い訳をするのは簡単だろう.
しかし,いいわけをしたらその時点で改善の種(チャンス)は消えてしまう.

「~だからxxできない」では,そこで頭脳の活動がストップするが,そうではなく「どうすればxxできるようになるか?」からはじめるだけで,頭がフル回転をし始める.同じ状態をどのようにとらえるかが成功者とそうでない人との違いである,とは,すでに古典となったロバートキヨサキの著書より(後述)

再度wikipediaより

Their extensions include methodologies and technologies for:


*Quickly identifying the Positive Deviants
*Efficiently gathering and organizing the Positive Deviant knowledge
*Motivating a willingness in others to adopt the Positive Deviant approaches
*Sustaining the change by others by integrating it into their pre-existing emotional and cognitive functions
*Scaling the positive deviant knowledge to large numbers of people simultaneously[


結局その道の達人を見つけ,ノウハウを言語化し,その他の人がそれをまねしようという気持ちにさせ,それを思考過程レベルで習慣化させ,大きな規模に広げる.

組織変革の話になってしまいます.

最後に医学の世界での使用例を(とうぜんあります)

MEERA SHEKAR et al. Use of Positive-Negative Deviant Analyses to Improve Programme Targeting and Services: Example from the TamilNadu Integrated Nutrition Project.International Journal of Epidemiology 1992, 21: 707–713.

The power of positive deviance -- Marsh et al. 329 (7475): 1177 -- BMJ (BMJにアクセスすると必ずブラウザがクラッシュするのでabstractすら読めてませんが)

飛び抜けたケースを「例外」といって除外するのが量的研究の指向(いいすぎかも)
「なかまはずれ」に意味があるとして,それ自体をよく見たり,なぜ生じたか考えるのが質的指向.

短期間で組織が変わる
石田 淳
ダイヤモンド社 ( 2007-09-29 )
ISBN: 9784478300756
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金持ち父さん貧乏父さん
ロバート キヨサキ
筑摩書房 ( 2000-11-09 )
ISBN: 9784480863300
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2008/06/02

    日本家庭医療学会 学会賞 受賞!

表題通りです.
週末に行われた 日本家庭医療学会第23回学術集会で発表した学会賞候補演題の一つに結構なウエィトで関わっていたのですが,その発表が見事第3回の学会賞を獲得することが出来ました.

G-04 麦谷 歩 医学生は家庭医療コース参加の結果、どのように変わるのか?

勿論,4件中の1つと倍率はそれほどでもなかったですし,授賞式の講評でもこのままではpeer reviewの雑誌でのacceptは難しいというコメントもいただきましたが,構造的に最もリサーチとしてしっかりしていたということが受賞の理由だったようです.

研究のデータ取得に使われたアンケートは私が作成していました.共同研究者の一人(Y.M女史)が「今度の家庭医療学会何か発表したいんだけど」といったことに,「ネタならあるよ.データも取ってあるし,後まとめるだけ(そこが自分は一番苦手なので)」といって,このアイデアを提供しました.抄録の応募の原稿の時点で「折角だから学会賞ねらったら?」と言ったら,「そうですね,折角ですから.その方が注目も得られるでしょうし」とすんなり.ところが諸事情によりその当人が当日発表できないとのことが判明(応募の時点でそのことは知ってた節があるのですが),発表者が今回の麦谷女史に.何度かリアルとバーチャルな会議を重ねて,やっぱり僕は前の日までスライドの最後の手入れと当日の朝まで読み原稿の手入れ.

当日は麦谷女史と発表の打ち合わせをして無事終了.

自分の子どもの発表会のような気持ちで大変緊張しながら授賞式まで過ごしました.

様々な偶然も積み重なってのことだと思うが,ルイ・パスツールの言葉である,「Chance Favors the prepared mind」や「人事を尽くして天命を待つ」の様に,やるべき事を全部やったのでダメでも悔いはなかったにせよ,久しぶりに大変嬉しい出来事でした.

医療は基本的に他者との勝負ではないので,その他の業種のように入札で選定されたり,projectのコンペで勝ったり,自分の案が採用されたりということが余り無いので,本当にこういう機会はたまには良いものです.勿論研究も勝ち負けではないのですが,何らかの評価が得られる,ということが,やはり次のやる気に繋がることを改めて認識しました.(自分が他者にどれだけ好意的な評価を与えているだろうか...)

スライドは近日中に公開できるよう考えています.

この週末は教え子の結婚式もあり,その披露パーティーの抽選でとんでもない賞品に当たったりと,最近の運を全部使ってしまったのではないか,と心配になるような良い週末でした.

6/16/2008
スライドupしました.
学会賞受賞演題スライド,読み原稿,審査基準

9/15/2009
報告原稿が公開されています。

学術集会報告(第3回学会賞受賞演題)
麦谷 歩,武者 幸樹子,喜瀬 守人,亀谷 学,岡田 唯男. 学術集会報告(第3回学会賞受賞演題)医学生は家庭医療コースの結果どのように変わるのか? 家庭医療 2008. vol.14 (2) pp26-27


http://jafm.org/journal/pdf/vol14no2/14_2_26.pdf

2008/04/25

    臨床研究初学者のための勉強会,資料

平成20年度 臨床研究初学者のための勉強会
に向けて,参考資料を2つ準備.

量的研究と質的研究
プライマリケアでの研究ニーズ(分野、領域)

昨年同じ勉強会で参加者からでたresearch questionがあまりにも狭い領域に限定されていたので(治療薬の効果を見るようなものばかり),第2回か3回目でプライマリケアでの研究ニーズ(分野、領域)の話をしたら,「もっと早く聞きたかった」との声が多かったため,第1回で提示することとした.

僕が質的研究,量的研究をバランスよくトレーニングを受けたこともあるだろう.量的研究と質的研究については今回の勉強会では質的研究は扱わないが参加者のresearch questionの解決に質的研究の方が適しているものを立ててしまった場合,やはり途中で大幅な方針変更(research questionの変更)を必要とするため,量的研究が扱えるresearch questionの性質を知った上でresearch questionが立てられるよう,研究という大きな領域の中での量的研究の位置づけと役割についてまず提示するものである.

質的研究 qualitative research のリソースのentryをupdate

プライマリケアでの研究ニーズ(分野、領域)の引用元となった本.名著です.

Primary Care: Balancing Health Needs, Services, and Technology
Primary Care: Balancing Health Needs, Services, and Technology
  • 発売元: Oxford University Press, USA
  • 価格: ¥ 4,298
  • 発売日: 1998/10/15
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2008/03/13

    質的研究 qualitative research のリソース

質的研究は、公衆衛生大学院の修士論文のテーマとして「データ収集開始までに方法論が完成してなくても良いから(とりあえず始めてから修正できる)」というだけの理由で方法論として選択し、泥縄式にそれから勉強したのだが、(本来はresearch questionありきで、それに適した方法論を選ぶ)、自分の人生にとって大きな収穫となった。その詳細は別の機会にしたいが、世の中のデータのほとんどは量的な物ではなく、質的なものであることを考えると、一般に狭義で「サイエンス」と呼ばれる医学、理学、工学、物理学などが伝統的に使用してきた量的研究で解明できる現象は質的な方法で解明できるそれよりもずっと少ないことだけ言及しておく。アインスタインの名言にもある通りです。
Everything that can be counted does not necessarily count; everything that counts cannot necessarily be counted. Albert Einstein.
「数えられるもののすべてに意義があるわけではない。意義のあるものすべてが数えられるわけではない。」

家庭医療、プライマリ・ケア、という領域において質的な研究が重要であることはいうまでもない。

現在いくつかの質的研究を先輩としてサポート中であり(反応が遅くて済みません)、質的研究が初めての人たちに手っ取り早い取っ掛かりをまとめる良い機会となったので世界の皆さんと共有します。

今本当に無料でオンラインで手に入るものの質も、量も豊富になりました。知識は持っているだけでは価値がなく、人と人の間を動いて初めて意味を持つということを噛みしめる必要があります。(このエントリーの後半)

次の2つのリンクは参考 (4/25/2008に追加)
量的研究と質的研究
プライマリケアでの研究ニーズ(分野、領域)

1)
“Qualitative Research in Health Care”
著:CATHERINE POPE, NICHOLAS MAYS (c)BMJ Publishing Group 1996
の現在東京医科大学教授の大滝純司氏らによる翻訳
入門としてはうってつけですウェブで読むのがあわない人は本にもなっています(途中で紹介します)
概略だけ知りたい人は第8回までとりあえず読んでみましょう。

大滝純司(北大医学部附属病院総合診療部):監訳
杉澤廉晴(同):訳
黒川 健(同):訳
瀬畠克之(北大医学部研究科):訳

藤崎和彦(奈良医大衛生学):用語翻訳指導


Appendix(付録)より
――保健医療サービス調査研究部門の廊下での議論

質的研究入門 第1回
ブラックボックスを開く(1)
医学界新聞 第2357号 1999年10月4日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2357dir/n2357_05.htm#00

質的研究入門 第2回
ブラックボックスを開く(2)
医学界新聞 第2359号 1999年10月18日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2359dir/n2359_04.htm#00

質的研究入門 第3回
ブラックボックスを開く(3)
医学界新聞 第2363号 1999年11月15日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2363dir/n2363_03.htm#00


第1章より

質的研究入門 第4回
保健医療サービスにおける質的研究方法とは(1)
医学界新聞 第2365号 1999年11月29日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2365dir/n2365_05.htm#00
用語説明もあり

質的研究入門 第5回
保健医療サービスの研究における質的研究方法とは(2)
医学界新聞 第2371号 2000年1月17日

http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2371dir/n2371_04.htm

質的研究入門 第6回
保健医療サービスの研究における質的研究方法とは(3)
医学界新聞 第2374号 2000年2月7日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2374dir/n2374_03.htm#00


第2章より

質的研究入門 第7回
質的研究と正確さ(1)
医学界新聞 第2378号 2000年3月6日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2378dir/n2378_03.htm#00

質的研究入門 第8回
質的研究と正確さ(2)
医学界新聞 第2380号 2000年3月20日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2380dir/n2380_05.htm#00

第3章より

質的研究入門 第9回
保健医療の現場における観察法(1)
医学界新聞 第2388号 2000年5月22日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2388dir/n2388_04.htm#00

質的研究入門 第10回
保健医療の現場における観察法(2)
医学界新聞 第2390号 2000年6月5日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2390dir/n2390_02.htm#00


第4章より

質的研究入門 第11回
医療の研究における質的面接法(1)
医学界新聞 第2402号 2000年9月4日

http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2402dir/n2402_06.htm


質的研究入門 第12回
医療の研究における質的面接法(2)
医学界新聞 第2406号 2000年10月2日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2406dir/n2406_03.htm#00

オリジナル。翻訳当時の第1版から2006年に第3版に改訂されています。

Qualitative Research in Health Care
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翻訳はこちら
質的研究実践ガイド―保健・医療サービス向上のために
  • 発売元: 医学書院
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  • おすすめ度 5.0




2)Qualitative Research Guideline Project
http://www.qualres.org/index.html
Robert Wood Johnson Foundationによる。
英語であるが、無料でこれ以上まとまっているものはない。さらに深く知りたい人のために出典、リンクも充実
Research In Family Medicine Wiki What is Qualitative Research?からたどりつきました。

3)Doing Qualitative Research (Research Methods for Primary Care)
私が質的研究の勉強に使用した本。質的研究について教える時にもよくここからの引用をします。
編集の1人Benjamin F. Crabtreeは米国プライマリケア領域のトップリサーチャーです。
もう1人のWilliam L. Millerもそうで、特に質的研究の第1人者ではないでしょうか。米国家庭医療においてかなり重要な論文の著者でもあります。修士論文の計画の段階で直接アドバイスをいただきました。

Doing Qualitative Research (Research Methods for Primary Care)
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4)質的研究方法ゼミナール―グラウンデッドセオリーアプローチを学ぶ
自分の論文ではcodingおよびimmersion and crystarizationという方法論をとったので、最も代表的なグラウンデッドセオリーについては理解が不十分でした。昨年の研究ワークショップで質的研究を教えるに当たり、それではいかんということで勉強するのに使用した本です。実際のゼミに参加している感じで段階的に、実際の分析を交えながらやるので非常に理解しやすいです。ただし、グラウンデッドセオリーはあくまでやり方の一つなので、この本だけで質的研究が解るわけではない。

質的研究方法ゼミナール―グラウンデッドセオリーアプローチを学ぶ
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その他参考文献
Catherine Pope, Nick Mays. Education and debate: Qualitative Research: Reaching the parts other methods cannot reach: an introduction to qualitative methods in health and health services research. BMJ 1995;311:42-45 (1 July)
http://www.bmj.com/cgi/content/full/311/6996/42
用語の定義もあり Box2も参考に (質的研究と量的研究の違い)


Editorials. Why do qualitative research? BMJ 1995;311:2 (1 July)

http://www.bmj.com/cgi/content/full/311/6996/2
一部以下に引用
Qualitative research takes an interpretive, naturalistic approach to its subject matter; qualitative researchers study things in their natural settings, attempting to make sense of, or interpret, phenomena in terms of the meanings that people bring to them. Qualitative research begins by accepting that there is a range of different ways of making sense of the world and is concerned with discovering the meanings seen by those who are being researched and with understanding their view of the world rather than that of the researchers.

Britten et al. Qualitative research methods in general practice and primary care. Fam. Pract..1995; 12: 104-114
http://fampra.oxfordjournals.org/cgi/reprint/12/1/104?ijkey=d85e467a11f0c3c452cabed6fab3fdf38739c5d4&keytype2=tf_ipsecsha
(要subscription)

質的研究の代表例は以下のリンクで
http://www.qualres.org/HomeExem-4288.html

以下は効果的な申請書の書きかた。
Penrod J. Getting funded: writing a successful qualitative small-project proposal.Qual Health Res. 2003 Jul;13(6):821-32.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12891716?dopt=AbstractPlus
As a program of research is developed, the small-project grant is a perfect means for initiating discrete projects to build support for larger funding. The author describes the development of a successful small qualitative project proposal on the disabling effects of osteoporosis. She dissects the process of writing a small-project proposal to assist novice or junior researchers in securing funding for small projects that, she hopes, will build toward funding on a larger scale. Major portions of the proposal are included in this article to demonstrate the keys to success in getting small qualitative projects funded.
PMID: 12891716
本文は残念ながら読めません。

一つのエントリーを30分ぐらいで書けないのはインプットが不十分であるからだ、という意見がありますが、そういう意味では、まだまだインプットが足りないようです。(90分近くかかりました。マックが遅いせいもあるのですが)

2008/02/05

    インパクトファクターと読者数(academic value vs fidelity)

書き始めると際限がなくなって,公開できなくなるので,とりあえず.
関連医学雑誌についてのimpact factorをまとめた.

ここ


なぜこんなことを調べているかというと,どこに発表するのがもっとも世の中を変えるのに効果的か(費用対効果)ということを考えているから.これが「どこに発表するのが大学で評価されるか,academic rank のpromotionに効果的か」という質問になると間違いなくimpact factorの高い雑誌という答えであることに疑いの余地はない.ところが,私が興味があるのはそうではなく,

どこに発表するのがもっとも世の中を変えるのに効果的か(費用対効果)

ということであり,多くの論文が実際には診療の現場に影響を及ぼしていない,いわゆるエビデンスー診療ギャップが存在しているため,(fidelityという言葉で下記の論文に詳しく記されている)academic journalへの発表が本当に診療の中身を変えるのに効果的かと疑問を抱かざるを得ない.実際,academic journalを読んで,自分の診療を変えた経験,頻度はどのぐらいであろうか.

Woolf et al.The Break-Even Point: When Medical Advances Are Less Important Than Improving the Fidelity With Which They Are Delivered . Annals of Family Medicine 3:545-552 (2005)

では,その代替え案としてどのような発表手段をどのような基準について選ぶかについて,readership(読者数,leadershipと間違えないよう)を基準にすることを模索する必要があると感じている.

医学雑誌読者数

これをみてみると,日経メディカルが圧倒的な発行部数であることがわかる.もちろん読者数,という点では有名タレントのブログには及ばないが.
しかしここでも,fidelityの問題がつきまとう.発行された雑誌のうちどのぐらいが実際に読まれているのか,そのうちどのぐらいの診療家が自分の診療をその結果変更するのか.何となく,個人的にはacademic journalよりも日系メディカルの方が実際に読んだものが役に立つ割合が高いようなが気がする.
ここは研究が必要なところ(すでにあるのかもしれないが)

このことは大学人やacademicianにはけしからん問題かもしれない.しかしacademic journalといわゆるthrow away journal(アメリカでは,スポンサーの広告がいっぱい入った,読み物的な医学雑誌を,軽蔑を込めてこのように呼ぶ.academic journalは本棚に保管されるが,日○メディ○ルなどは読んだら捨てられるため)の取り扱う内容には多少方針の違いがあり,どちらがよいということではない.(もちろんきちんと吟味されて書かれた,という前提がつくが)

まず,学者としての活動には大きく4種類ある.以下のページを参考にされたい.
1.The scholarship of discovery(発見)
2.The scholarship of integration(統合)
3.The scholarship of application/practice(適用、実践)
4.The scholarship of teaching(教育)

4種類のscholarship

今でも多くの大学人がそう考えていると思われるが,いわゆる学者(大学人)の仕事は1.という定義.その定義に基づけばimpact factorの高い雑誌に採用される研究をすることが学者のとしての価値である,ということになる.

私がこだわるのは,現場がどう変わるか,多くの知識の集積であるガイドラインや質の高いエビデンスのどれだけ多くを実際に患者さんに届けることができるか.現場でのfidelityの向上であり,質改善なのである.これは研究とCQI(continuous quality improvement)活動の目指すところの違いである.高血圧の治療をたとえにすると

研究:血圧を下げると健康寿命が延びる,という普遍的事実を発見,証明すること
QI:証明された普遍的事実がきっちりとできるだけ多くの患者さんに届けられるように工夫,実践の活動をすること.

実際に高血圧と病名がついた患者さんの多くは,管理目標まで血圧が下がると長生きできる,というほぼ普遍的事実があるにもかかわらずその利益の享受ができていない(管理目標まで下がっていない).このギャップには多くの障害があるとされているが(今回は省略),そのギャップを取り除く作業をQIと呼び,また別の視点からは教育とよぶ.

従来は,狭義の1の活動のみが学術活動と考えられてきたが,たくさん世の中に出る論文をわかりやすくまとめること(統合.質の高いreviewをわかりやすくまとめること),現場で体系的に質の向上に努めること(適用、実践),患者さんに,他の医療者に,研修医,医学生にわかりやすく伝えること(教育)もすべて学術的活動とかんがえられている.しかし,それぞれ,体系的であったり,計画的であったり,その効果が測定されている必要があるなど,学問として認められるには少しの縛りはある.
ただ,白い巨塔にいなくても学者として学問はできるということは間違いない.

最終的にもう一つ重要な条件がある.OHSU(オレゴン健康科学大学)の家庭医J.SaultzとS.Fields氏がいっていたことだが,「学術的活動はdissemminationをもって初めて学術的活動となる.」つまり,どれだけすばらしい活動をやっていてもそのことが世界に知らされなければ学問としての価値はないということ.「知識は人から人へ伝えられるまで何の価値も持たない」という動的知識論と整合性をなしている.つまり発表,論文.ということ.私が一番苦手なことだ.

そしてdissemminationにはwebがもっともよい.フューチャリスト宣言の梅田望夫氏の言葉を借りるまでもなく,もっとも多くの人の目にさらされる可能性を秘めているのだから.

さて,impact factorの高い雑誌での発表か,読者数の多い雑誌やメディア,またはwebでの発表か.どれが世界を効果的に変えるのだろう.新たな発見はimpact factorの高い雑誌での発表,それ以外は,うまく媒体を選んで,ということになるのだろう.

現場の臨床家は,自分たちがよいと信じてやっている様々な活動,工夫の効果測定と発表をもっと.
大学人は,純粋な知識の発見以外の学術活動(2.3.4)に対しての大学での正当な価値評価のための認識とその仕組み作りを.

P.S.現場で研究ができないわけでもしてはいけないわけでもない.現場にしか研究の種は転がっていない.しかし,圧倒的に資源が足りない.大学と現場の協働が不可欠である.

impact factorについては,下記の書籍がもっともよくまとまっている.なぜ学術集会の抄録が(suppliment:付録)なのかなども,そして,impact factorが全てではないこともわかる.

インパクトファクターを解き明かす
  • 発売元: 情報科学技術協会
  • 発売日: 2004/03
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2007/10/01

    Family Medicine (STFM) Volume 39 Issue 8

表題の号より抜粋

Family Medicine Specialty Selection: A Proposed Research Agenda
この号で一つ,というならこの論文.
家庭医療という専門を選択することに関してどのような視点で研究をすればよいかという事への提案.リサーチのアイデア満載.
Table 2参照のこと
Table3にはどのような研究デザインを使用すればよいかについて提案.

勇敢な研究者求む!


Entry of US Medical School Graduates Into Family Medicine Residencies: 2006—2007 and 3-year Summary

各医学部の卒業生の何%が 家庭医療のレジデンシーに進んだかの3年間のまとめ.
最高が21.7% カンザス大学(2006年は178人中39人)
下の方にはアイビーリーグが並ぶ
最下位の10校のうち,家庭医療学のDepartmentを持たないのが7校(Departmentを持たない医学部は8校しかない),部門(division)しかないのが1校,Centerしか持たないのが1校.
大学の価値観と医学部の進路は相関する.
2006年の全国平均は8.5%
日本の場合100人のうち8-9人が家庭医療に進めば上等だと思うが.

Results of the 2007 National Resident Matching Program: Family Medicine

58%は米国医学部以外の人間でマッチする.(ほとんどがIMG:International Medical Graduate)
これから家庭医の認定を取る人たちの10人に6人は外国人ということ.この数字のトレンドを追いかけることに何の意味があるのかよくわからないが.ただし,純粋なIMGは20%ぐらい2005年から減少傾向.
マッチしたひとのうちIMGが多い順に核医学,内科と来て家庭医療が続く.

Women's Health Content Validity of the Family Medicine In-training Examination
Women's healthがどのぐらい教育の中で重要視されているかを,In-training Exam(年に1回レジデントが受ける認定医試験の模擬試験)の問題を分析することで見る.
過去10年間3460問のうち,23%がWomen's healthに関する問題.これを,AAFPの推奨カリキュラム

プライマリ・ケア何を学ぶべきか―米国家庭医療学会研修ガイドラインから
プライマリ・ケア何を学ぶべきか―米国家庭医療学会研修ガイドラインから
  • 発売元: プリメド社
  • 売上ランキング: 381221
  • おすすめ度 5.0

のWomen's healthに挙げられている13の分野に分類すると,全体の18.6%は生殖と性器の問題であり,そのほかの問題は4.6%しかなかった.
バランスが悪い,という話.
量が適切かという問題は難しいが少なくとも問題作成者側における重要視の度合いとしてはとれる.
ただ患者,地域のニーズに合致しているかはこれだけではわからない.


Assembling Patient-centered Medical Homes—Is This Focus on Patient Care a Distraction From STFM's Primary Mission?

より,有用そうなリンク2つ
Patient Centered Primary Care Collaborative

The Institute for Family-Centered Care
詳細はまたの機会に

2007/09/15

    効果的な学会抄録の書き方

最近例年の行事であるSTFMの年次学術集会へ行くために抄録を提出した.(学会に行くために提出という動機も情けないが)
大変親切で,acceptされる抄録を書くには,というガイドがwebで公開されている

”PREPARING A GREAT CONFERENCE SUBMISSION: A PLANNING GUIDE”

また,そのacceptance rate(採択率)も開示されており,戦略的に応募できる.
どういう点が評価されるか,今年はどのような視点のものに優先順位があるか,といったことも開示されている.

その方が,集まる抄録のレベルも上がり,それ故,参加した人の満足度が上がり,また参加したいと思い,補助で参加するために応募をしようと思い,採択されるためにサラによい発表を計画する.という良い循環に入る.

日本の学術集会がこのレベルになるのはいつの日か........


Note, review the data in the following table. The more time you request, the less likely you may be to
have your submission selected for presentation.
Submission Category # Submitted # Accepted Acceptance
Rate
Preconference Workshop (4-8 hours) 8 2 25%
Theme Session (3 hours) 8 4 50%
Workshop (3 hours) 29 14 48%
Seminar (90 minutes) 110 64 58%
Research Forum (90 minutes)
(including Hames Award Winner & Best
Research Papers)
60 38 63%
Lecture-Discussion (45 minutes) 151 96 64%
PEER Papers (15-25 minutes) 91 57 63%
Research Poster*
(including Award Winners & Fellows) 15 42 280%
Scholastic Poster* 49 130 265%
Special Topic Breakfast* (50 minutes) 37 40 108%
TOTALS 558 487 87%
*The number accepted includes submissions converted

2007/09/03

    家庭医療の特徴や定義についての研究2編

家庭医療の特徴や定義についての研究2編が時期をほぼ同じくして発表になったので簡単にまとめ。どちらも2004年に行われた研究 (FFM:future of family medicineの報告は2003年に出版)

1つめ

Annals of Family Medicine 5:336-344 (2007)
Operational Definitions of Attributes of Primary Health Care: Consensus Among Canadian Experts
Jeannie Haggerty, PhD et al
http://www.annfammed.org/cgi/content/full/5/4/336

カナダのcontextでプライマリヘルスケアの特徴を再定義するために,20人のエキスパートがdelphi法を用いてconsensusをつくる。 4巡の過程を経た。

結果 全部で25の特徴を
カテゴリーとしては
1.診療形態の特徴 (6)
2.構造の特徴 (4)
3.人間指向性(疾患指向性に対して)(7)
4.地域指向性 (4)
5. システムの質 (3)
の5つに分けています(全部で24しかないのですが。。。。)
それらについて,

プライマリ・ケアに特有かどうか
その項目の評価はどの情報源から得るのがよいか
どの程度コンセンサスが得られたか
早い時期に出た項目はどれで,後から出てきたのはどれか
という視点で分類されています。

table 1,2が良くまとまっています
http://www.annfammed.org/cgi/content-nw/full/5/4/336/T1
http://www.annfammed.org/cgi/content-nw/full/5/4/336/T2

コメント一つだけ。
25のうち
プライマリ・ケアに特有とされたのは5つだけ
first contact
continuity(relational)
family centered care
intersectoral team
population orientation


2つめ
Defining the Concept of Primary Care in South Korea Using a Delphi Method
Jae Ho Lee et al
Family Medicine Volume 39 Issue 6
June 2007
http://www.stfm.org/fmhub/fm2007/June/Jae425.pdf

同様にdelphi法
16人のプライマリ・ケア政策研究者,45人の利権関連者,16人のプライマリ・ケア医
3巡 point制によるランキング

結果
4つのコア
first contact
comprehensiveness
coordination
longitudinality

3つの付随的特徴
personalized care
family and community context
community base

コメント
韓国にも追い抜かれた?!

2編を通じて
扱う対象の定義が出来ないと研究も出来ない,評価も出来ない
合意に達するかどうかは別としてまず定義をしてそれに基づいて動き始める,少し動いたらそれに対して氷化,降り帰りをする。その結果で調整をする。

参考
delphi法 質的研究の一つのやり方。完全なコンセンサスを得るための方法
http://en.wikipedia.org/wiki/Delphi_method
日本語ではいいものがありませんでした


追加:デルファイ法についての詳細な記述upしました(2008/6/17)
デルファイ法(未来予測,合意形成,質的研究)