2009/04/07

    日本医師会 生涯教育カリキュラム2009出ました

表題の文書が発表になっています.発行はH21年3月付けです.


日本医師会生涯教育on-line


の一番上から

日本医師会 生涯教育カリキュラム2009

全文が見られます.

そもそもこれは,厚生労働省が医師の自浄作用のなさにしびれを切らして,意図的に掲げた「総合医」構想

受診、最初は「総合科」 専門医に橋渡し (2007年4月30日 読売新聞)

に対抗する形で(見事に厚労省の思惑通りのせられた形で,というのが私の解釈です),「国に言われなくても自分たちで開業医の総合力は保証していきますから」というアピールをするために日本医師会のなかで第IV次および第V次生涯教育推進委員会か作成したものです(というあくまで私の解釈)

そのために組織された3学会ワーキンググループには日本プライマリケア学会から前沢,津田,藤沼,日本家庭医療学会からは山田,竹村,日本総合診療医学会からは小泉,尾藤,大滝(全て敬称略で失礼しました)が参加.オブザーバーとして日本老年医学会,日本臨床内科医会,日本小児科医会,日本専門医制評価・認定機構が参加して作成されました.任せていれば大丈夫.という面々が参加していました.

内容,構成的にも総論,各論共にしっかりしており,
症候別の具体的対応の中に,視力障害,目の充血,外傷,関節痛,排尿障害,精神か領域の救急,不安,うつ,流・早産及び満期産,成長・発達の障害など,内科医としてのトレーニングだけでは対応できない項目が挙げられています.

流・早産及び満期産の項には,妊産婦に起こる一般的健康問題に対処できる
成長・発達の障害の項には,月齢相当の身体的発育や神経学的発達,行動統制力の発達について把握し,必要に応じて専門医へ紹介できる

と書いてあります.

また
頻度の高い慢性疾患の管理には
脳血管障害後遺症が含まれるあたりも憎いです.

何よりもその前の大項目としては

I. 医療専門職としての使命 ………………………………
   1. 専門職としての使命感 2. 継続的な学習と臨床能力の保持
   3. 公平・公正な医療
II. 全人的視点 ………………………………………………
   1. 医療倫理 2. 医師-患者関係とコミュニケーション
   3. 心理社会的アプローチ
III. 医療の制度と管理 ……………………………………
   1. 医療制度と法律 2. 医療の質と安全 
   3. 医療情報 4. チーム医療
IV. 予防・保健 ………………………………………………
   1. 予防活動 2. 保健活動
V. 地域医療・福祉 …………………………………………
   1. 地域医療 2. 医療と福祉の連携
VI. 臨床問題への対応 ………………………………………
   1. 臨床問題解決のプロセス 2. 症候別の臨床問題への対応
VII. 継続的なケア ……………………………………………
   1. 慢性疾患・複合疾患の管理 2. 在宅医療 3. 終末期のケア
   4. 生活習慣 5. 相補・代替医療(漢方医療を含む)


と非常に優秀な家庭医,総合医になるのに必要な項目が掲げてあります.書かれている目標を全部達成するには実のところうちのプログラムでも無理です.

さらにその前の一般目標として

頻度の高い疾病と傷害、それらの予防、
保健と福祉など、健康にかかわる幅
広い問題について、わが国の医療体
制の中で、適切な初期対応と必要に
応じた継続医療を全人的視点から提
供できる医師としての態度、知識、技
術を身につける。


素敵です!

最初のカリキュラムの利用に際してというところには,

原案について,47都道府県医師会,日本医学会加盟105学会等に意見を求め,それを反映させた上で作成されたものである.


また,

都道府県,群市医師会の講習会,日本医師会での講習会,e-learningでもこれとリンクさせて,ということが書いてあります.


さて,問題は,きちんとこれにリンクさせた医師会の生涯学習とその評価が行われるか,ということ.

assessment drives curriculum


という言葉の裏返しは「評価なきカリキュラムは進まない」ということですから,努力目標では変化は非常に遅々たるものしか期待できません.参考(原典には諸説あり)

医師会を馬鹿にしたり,揶揄するつもりはまったくありません.
むしろ医師会の様々な活動は米国家庭医療学会の活動と非常に近似しており,好感を持っているぐらいです.(たった1つの立場を除いて)

是非医師会員の全てがこの様な目標を達成できるような生涯学習の実施をお願いしたいと思います.

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