久しぶりにまったく仕事のない週末だった(自分で抱えている物は別)
3月1日土曜日には
南総文化ホールにて
千教組安房支部教育フォーラム2008
【開演/終演】14:00/15:40 【入場料】無料
【主催者】安房教育会館(千教組安房支部) 0470-22-0670
に行ってきた。
なんだやっぱり仕事じゃないか,と思う人がいるかもしれない。内容は
ムツゴロウこと畑正憲さんの「命に恋して」というタイトルでの講演会
ネットで調べたら一切みつからない。ちゃんと宣伝すればいいのに。
地元の商店の張り紙で知った。
少し遅れていくと小ホールはいっぱい。子供は程なく飽きてしまいロビーで遊んでいてもらった。
なんと登壇一言目から「命に恋して,という題をもらっていますが,話し出すと止まらなくなるので,皆さんの聞きたいことに少しずつ答えていきたいと思います.質問がないようでしたら,これで帰らせて頂きます.」
場はうけていたが,究極の講演である.結局80分ぐらいで6つぐらいの質問に余談を交えながら答えて講演を終えた.
このパターンは以下の本を読んで以来記憶に残っている.
- The Courage to Teach: Exploring the Inner Landscape of a Teacher's Life
- 発売元: Jossey-Bass Inc Pub
- 価格: ¥ 2,707 (10% OFF)
- 発売日: 1997/11/21
- 売上ランキング: 106463
- おすすめ度
英語なので途中まででそのままになっているが,教師の心構えについては著者のParker Palmerの言葉がもっともしっくりくる.
本の中で優れた教師として評価の高かった人の教育スタイルとして,毎週講義の時間にやってきては開口一番「質問のある人は?」と尋ね,何もなければそのまま講義時間を終える教師の話が出てくる.数回はそれが続くがそのうち学生が焦り始め,教材を必死に読んできて質問をし始める.質問が出たとたん彼のその領域についての知識や洞察が素晴らしいことがすぐににじみ出て,非常に深い学びの講義がその後毎回続いた,という話.
最近Prerequisite(必要条件,前提条件等と訳される)について考えることが多い.もちろんある教育に対しての学習者のPrerequisiteのことだ.Instructional designにおいてはある教育を行うときにその教育が効果的であるためのPrerequisiteを考える必要があるとされる.簡単に言うと足して10を超えるひと桁の足し算が確実にできなければ繰り上がりのある2桁の足し算は学べないということ.readinessと言い換えても良いだろう(ただし,readinessはより心構え的なことを指すことが多い)学べなくはないが,やっぱり足して10を超える一桁同士の足し算を習得するところから始めざるを得ない.大学のコースでも履修条件として「経済学基本編の習得が前提」とか書いてある.
話は戻るがこの「質問がなければ終わります」というのは質問が出るためには何を知りたいかについて参加者が十分に考えていること,何が分かっていて何が分かっていないかについて分かっていること,その分野について何らかの興味や問題意識を持っていることが前提となる.そして,手短に答えられるような形の質問のレベルまで言語化できるほど質問者の意識の中でねられていること,などが前提となる.
つまりそのようなレベルをPrerequisiteとして聴衆に求めている,ということである.
もう一つは,話す側が全く何を話すか準備できず,完全にその場の質問に答える,という意味では究極の「学習者中心」の講演であり,この形式が最も講師の能力を必要とすることは自明であろう.
私も時々自分へのチャレンジとして招待された講演で「今日は質疑応答の時間にします」とすることがある.さすがに質問がなければこれで終わりにして帰りますとは言わないが.
当日ムツゴロウさんに対して出た質問は(覚えているものだけ)
「なぜムツゴロウと呼ばれるようになったか」
「ムツゴロウさんは動物を殺して食べることはどう思いますか」
「苦手な動物はいますか」
「像が殺された仲間の像の牙が隠されているところを探し出すはなしがありますが,それはどうやるのですか」
「県では有害鳥獣といって,鹿やハクビシン,イノシシなどを捕まえて殺すことがありますがそれはどう考えますか」
など
これまでの豊富な経験を元に非常に生き生きとお話しをされた.
学んだこと
全ての生き物は他者の命を犠牲にして生きている.他者の命を犠牲にせず生きることはできない.感謝して,必要なだけ,有り難く頂く.
最近の子どもは魚や鶏を食べるために自分で(もしくは目の前で)殺すという体験がない.そのような体験は必要.(命のありがたみが分からなくなる)
人間に害を与える動物は徹底的に駆逐せよ(ムツゴロウさんの言葉としては意外でした)
ムツゴロウさんの学習スタイルは徹底的に自分で経験して学ぶ(アナコンダに首をわざと絞めてもらったり,ピラニアやワニの池で泳いだり,ライオンに首筋にかみついてもらったり,サソリに刺してもらったり,全部自分から求めていったそうです)
人間は特別な動物ではなく他の動物と同じように食物連鎖の中にあり適者生存のルールによって生きていくのだ(だから生存に必要なことはせざるを得ない)というスタンスで人間をとらえている印象でした.
その人間性と人生経験だけで話しを聴いてもらってお金ももらえるなんて,良い仕事だなあ.
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