2008/04/10

    会議の費用

仕事柄「会議法」についてのWSを行なうこともあるのだが、改めて会議にかかるコストについての記述に出会ったので、現在の組織について適応してみる。
後期研修医の時給は大ざっぱに計算して2500円ぐらい。(本当に大ざっぱに)
スタッフ3人+後期研修医12名のうち3分の2が出席として全員で11名
スタッフの時給も同じとして(本当はもう少し高いが)、
1時間の会議で27500円
週1回の実施なので、月4回で11万円
1年間50回で137万5千円
の人件費を会議をすることに費やしている。

1回1時間当たり3万円の価値のある会議をしているか?
何でも効率、コストというせち辛い世の中であるが、利益を無視して本当にやりたいことをやるための人と時間を確保するためには、出来るだけ短時間で最低限必要な利益を生み出すことを考えなければならない。
極論をすると月25日のうちの最初の10日で最低限必要な売り上げ(損益分岐)が出ればあとの15日は本当にやりたい医療や社会貢献、新しいことへの取り組みなどに使える。

演奏家は自分の出したい音程や音色を出すために指の位置はこうで、構えかたはこうで、力のかけ具合がこうで、といったことを考えながらやっているようでは、本当に表現したいこと、伝えたいことにエネルギーが注げないの。だから何も考えなくても自動的に求める音程や音色が出るようになるまで(楽器が体の一部になるまで)基本的な練習を積む。
プロとして正確な音程や温色は大前提であって、勝負はその先ですること。

原始仏教の教徒は永遠の精神(肉体に束縛されない自由な精神)を得るために徹底的に肉体を鍛えた。

のどが痛いといってきた人の問診項目はこれで、診察のポイントはここで、鑑別診断は。。
コレステロールが高いと検診で言われてきた人にまず聞くことは、、、この人のLDLの目標値は、選択するべき薬剤は?
といったことに意識がいっている間は、自分が医療を通じて患者さんに伝えたいことを伝える時間はない。患者さんに「どんな人生を送りたいの?」といった本質的な対話を持つ時間はない。
自分が本当に患者さんと交わしたい対話に十分な時間をとるために、絶対にやっておかなければならないこと(正確な診断、治療、安全の確保、科学的根拠に基づいた診療など)を徹底的に体に覚え込ませる。またシステムとして保障する。
プロとして、正確な診断、治療、安全の確保、科学的根拠に基づいた診療などは大前提であって、勝負はその先ですること。

急がば回れというが、よりレベルの高いこと、本質的なこと、自分のやりたいことに取り組むために、好むと好まざるとに関わらずやらなければならない基本的なこと、必ずクリアしなければならない事、の効率を最大限にする、という逆説的なことになるが、これが物事の本質だと思う。

大きな木ほどその根(見えない部分)は深い、水上は優雅な白鳥も水面下ではたくさん水をかいている、大きな建物ほどその基礎(土台が重要)、すそ野が広いほど山は高い。

奇抜なピカソも青の時代までは基本的なデッサンをしっかりやった。

優秀なプレイヤー(演奏家も、アスリートも)ほど基礎練習、原理原則論に忠実である。

医が算術になって久しい、といわれるが、医が本当に仁術であるためにまず算術でなければならない、というのが現実的な所。上記の理由からこれは全く恥ずるべきことではないと思う。問題なのは、算術の段階で止まってしまっていることなのだ。意図的に算術だけで済ませてしまうのは論外としても、経営的にランニングコストを出すのに精いっぱいの医療機関では、そこを達成するために不必要な検査や処方を出さざるを得ず、医療がゆがむ。仁術をやる余裕がないのだ。そしてそれはそこで働く医師の本意ではないだろう。

効率的に会議を行なう事が目的ではなく、それによって生まれた時間と人で何かをするために効率的に会議を行なう事が必要なのだ。

急がば回れ。

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