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2009/06/18

    温故知新 Textbook of Family Medicine 第3版 by I. McWhinney & T. Freeman

教科書には2種類ある。その領域に必要な知識をカバーするためのもの、そして、その領域を定義して、概念化するためのもの。この本は後者に属する一冊である。臨床領域の教科書のほとんどは疾患を分類する伝統的な方法にあわせて書かれているが、家庭医療の教科書がそのような構造をとろうとすると2つの問題に直面する。家庭医は問題が分類されるよりも前に問題に遭遇する(診断がはっきりしない)。原則的に家庭医はあらゆる種類の問題に対処をする準備ができている(もちろん適切な紹介も含めて:岡田注)。つまりどれほどまれであっても、家庭医療の現場で出会う可能性のない疾患など存在しない。もし教科書がその領域にわたる全ての知識をカバーしようとすると、内科の教科書の焼き直しになってしまうリスクを抱える。さらに深刻なことに、時に家庭医療でも使用されることはあるが、基本的には、従来の構造(おそらくbiomedical model;岡田注)は我々の領域において非常に自然である有機的な思考体系(おそらくbiopsychosocial modelを代表とするシステム理論など:岡田注)とは矛盾しているという意味において、家庭医療はその他の分野から異なっているのだ。(翻訳岡田)



総論屋、理屈派、原理原則論重視人間の私としては、歴史をよく学んでそこから生かせることがないかいつも考えたり、Classic(古典)に立ち返ることを重視しています。(というか好きなだけなのですが)

香港でのWONCA に参加したことの収穫の一つにPatient-centered Medicine: Transforming the Clinical Method: Transforming the Clinical Method(下記:以下PCCM本)の著者であるMoira Stewartの講演を聴き、個人的にお話しできたことがあります。そのスクープは追ってお話しするとして、そこでPCCM本の第3版の話がでていること、また家庭医療の古典の一つであるマクウィニーの教科書が改訂になったばかり、という話を聞きました。

早速購入。昨日届きました。また私としては、最初にPreface(前書き)なぞを通読してしまうのです。(意味のない作業ではなく、特にそれまでの版を読んでいる場合、どこが改訂になったかをまず知る方が効率がよいからです。ガイドラインの改訂と同じです)

そのprefaceの最初の段落を最初に挙げましたが、(英語だとかなり格調高い文体なのですが...) 家庭医療の本質をよく表しています。

同様のラインでは廣岡 伸隆氏の投稿が参考になります。
廣岡 伸隆 Family Practice 概論 より良い理解のためのイントロダクション ―米国Family Practice Residency の経験から―
家庭医療11巻1号 2004 pp.66-71

つまり、家庭医療は医学、生理学、社会学、心理学などなどの多くの学問から得られた知見をもとにしてそれを適切な場面で適切に組み合わせて実践する2次学問であるということ。

その他の第3版の変更点としては初めてThomas Freeman氏を共著者にして、単著ではなくなったこと、McWhinney氏とFreeman氏が二人で第2版の抄読会を進める中で時代遅れになっている部分や改訂が必要な部分を変更したことなどが書かれています。

五つだけ臨床問題に関する章(咽頭痛、頭痛、疲労、糖尿病、高血圧)が用意されていますが、その意図については以下のように書かれています、

前述の通り、家庭医療という領域がカバーする全ての知識を網羅することはできないこと。疾患の分類にあわせて教科書を構成するという行為自体が、家庭医療のものの見方に相反するということなどから、あくまで、1−10章にかかれた家庭医療の基本的原理の実践例や実践方法を例示するためのものである。(岡田意訳)

一応具体的な治療方針などについては執筆時の最新のカナダのガイドラインなどにあわせていますが、時間とともにそれは古いものとなるため、その都度最新の情報を参考にする必要があること、特に薬物療法に関しては、今の時代、どの教科書でさえも、適切な情報源とは言えないため、特に理由がなければ具体的な投薬のレジメ(dosage)については意図的に言及しない、ことが書いてあります。

ではなぜあえて臨床のトピックを扱う章を用意するのか。
前述の「あくまで、1−10章にかかれた家庭医療の基本的原理の実践例や実践方法を例示するためのものである。」が全てを語っていますが、その5つについてはprefaceで症状3つと古典的な疾患概念である糖尿病、生理学的な多様性と危険因子についての高血圧という風に説明されていますが、具体的にそれらの章を眺めてみると

急性咽頭痛では、いわゆる検査前確率などの診断精度の問題、家族の影響、見逃してはならない診断(もちろん急性喉頭蓋炎)など診断の周辺と費用対効果に乗っ取ったマネジメント(全員治療vs検査で治療vs etc)
頭痛では鑑別診断、自然経過でなおることの多い疾患のマネジメント、見逃してはならない診断、急性期の治療、予防、慢性化した頭痛の治療)
疲労では心身相関や精神疾患の症状としての身体症状、鬱病、慢性疲労症候群
高血圧では、疫学、人種や年齢その他の危険因子毎の発生率の違い、診療所のシステムとして未診断の高血圧を見つけるシステムの構築、薬物治療へ踏み切るタイミングなど
糖尿病では一般的な慢性疾患の管理(合併症予防まで含めて)

と言った具合である。ただしそのbiomedicalなマネジメントの内容は場合によっては他の書籍の方が優れた内容を提供していると思われる場合も多く、prefaceにあるように、そのトピックの診断、治療について学ぶというよりは、その例を通じて、家庭医療の理念に基づいた疾患のスクリーニング、診断、治療、管理、家族との関わりなどの表現方法を学ぶことに徹する方がよいだろう。

Part 3は家庭医療の実践、ということで、往診、記録(電子カルテも含めて)、紹介、コメディカル、地域資源の利用、代替相補医療(CAM)、診療所運営の章立てで、この部分が特に最近の進歩にあわせて大幅の改訂がなされたようである。

Part 4は生涯学習とリサーチ。

まとめるとやはりprefaceの第1文にあるようにこの教科書は家庭医療を定義して、概念化するための教科書であり、その理論的基盤はやはり現代でも通用するclassic(古典)としてその位置は揺るがない。最も価値のあるのはPart I(基本原理)の1−10章。ただ残りのpart2~4は一部参考になる部分があるものの、よりよい内容を得られる類書も多く、個人的にはむしろない方がこの教科書の価値を高めるのではないかとまで感じられる。

家庭医療の教科書をひもとく楽しみはその「総論」「基本的理念」にある。それぞれの著者がそれぞれの「家庭医療観」に基づいて章立てと構成、理論展開を行うため、その著者の「家庭医療観」がよくわかるからであり、それはさらにいくつかの教科書を比較することでよくわかる。

米国のSaultzやSouth-Paulのものと比較すると、米国のそれは非常にダイナミックであり、いわゆるcutting-edge(変化しつつある最先端)を明確に意識し、できる限り適応しようとする意図が見える一方で、McWhinnyのそれは、英国圏の影響であろうか、徹底的に基本的原理を守ることが重要であり、時代の変化に対しては必要だから対応する、というような半ば受け身の雰囲気も感じられる。

私自身はどちらの肩を持つでもなく、その差異そのものの存在を喜びたいと思う。McWhinnyの弁護をしておくと、その第1章のごく早い段階(p6)において、医学の高度専門分化の歴史を語った後に、考えなければならない2つの教訓として

1. もし専門家(profession)がパブリックのニードを満たすことができなければ社会は自らのニードを満たすために何らかの方法を見つけ出す、場合によってはその専門家集団の外にいる人たちに解決を求めて。(例えば代替相補医療もその一例かもしれない)。
2. professionは時には、社会からの圧力に対応する形でそのメンバーの主張する方針や意図に反する方向で進化することがある。


を挙げていることを指摘しておきたい。

なんだかんだといいながら書評を書いてしまいました。
これから少しずつ熟読を進めていきます。

Textbook of Family Medicine
Ian R. McWhinney, Thomas Freeman
Oxford University Press, USA ( 2009-04-08 )
ISBN: 9780195369854
おすすめ度:アマゾンおすすめ度



Moira Stewart, Judith Belle Brown, W. Wayne Weston, Mcwhinney, McWilliam
Radcliffe Medical Press ( 2003-07 )
ISBN: 9781857759815






CURRENT Diagnosis & Treatment in Family Medicine Second Edition (LANGE CURRENT Series)
Jeannette South-Paul, Samuel Matheny, Evelyn Lewis
McGraw-Hill Medical ( 2007-09-04 )
ISBN: 9780071461535

2009/06/07

    中国の国家情報統制?

香港滞在中はばりばりWONCAの情報をupしようと思っていたのですが、滞在中ずっとネットにはつながるもののどうやってもblogに投稿ができなくて(写真を除外してもブラウザーを換えても、メールから投稿してもエラーか、反応なし)、困っていたら、以下のようなエントリーを発見

ある小児科医の育自 ~根拠?に基づく育児を目指して
水曜日, 6月 03, 2009
中国当局はbloggerもブロック

http://mashable.com/2009/06/02/china-blocks-twitter-and-almost-everything-else/
によるとyutubeだけでなくbloggerやtwitterなど色々中国がブロックしているようです。
(proxyを通して書いています。)

実はhotmailもブロックしているようでgmailだけに頼っているとリスクありますね・・・

thunderbirdでローカル保存と他のプロバイダからもgmailのコンタクトリストを使って
メールできるようにしておくにこしたことないですね


上記のリンク先の情報からでは

6/4の天安門事件20周年が直前に迫り、blogger,twittter, youtubeその他のソーシャルネットワーキングに関連するメディアをブロックしたとのことです。(そんなこと出来るというのがすごい)

China Blocks Twitter (And Almost Everything Else)
June 2nd, 2009 | by Stan Schroeder
It seems that as of today, the Chinese authorities have blocked internet access to Twitter, Flickr, Bing, Live.com, Hotmail.com and several other sites. Wordpress, YouTube, Blogger are also blocked.

According to early reports on Twitter and on blogs it seems that the Chinese authorities want to quiet down the entire major social networking and social media part of the web ahead of the 20th anniversary of Tiananmen massacre on June 4th.

As far as solutions for evading the block go, you can find some advice here and here. Furthermore, Twitter may be working if you’re using third party apps to access it, such as TweetDeck.


ということでそのことすらblogにかけずに困っていてtwitterはどうかと試していたところ、twitterは大丈夫なようでしたので、とくてのMLと、twitterでそのことだけ少し流しました。

初日の夜に、このことでいろいろとやっている間に急にbloggerが機能しだして一瞬だけエントリーを挙げることができたのですが、その後すぐに、また挙げられなくなりました。コンピュータの不具合かもとも思いましたがたくさんのこれを裏付ける情報がありました。

天安門事件から20年--記念日に向け多くのサイトでアクセスが遮断
文:Dong Ngo(CNET News)
翻訳校正:編集部
2009/06/04 13:16
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20394345,00.htm

MSの新検索サービス「Bing」、中国内でアクセス禁止に
http://journal.mycom.co.jp/news/2009/06/03/070/index.html

天安門事件の記念日を前に、中国でTwitter遮断6月4日の天安門事件20周年を控え、中国からTwitterやHotmailにアクセスできなくなったという。(ロイター)
2009年06月03日 15時10分 更新
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0906/03/news063.html

中国が全力でTwitterをブロック中・・・
http://www.ideaxidea.com/archives/2009/06/twitter_banned_in_china.html

GFW, Twitterを遮断
http://hua.yinguo.net/arc/2009/06/20090602-2055.php


本当に一瞬の隙でbloggerなどつながることはあるようです。

以前ある人から、
boundary is important. boundary creates diversity. (多様性の維持のためには境界は不可欠)
という言葉を言われてずっと頭に残っています。

今回の中国の統制に賛成する訳ではありませんが、現在のグローバリゼーションの中で日本も含めて、世界中が効率性と安さというロジックでそれにそぐわないものが消失していく状況(昔からの守るべき伝統など)を見ていると、ネットを通じて全ての情報が行き来する世の中でその国らしさ、自分らしさというのを維持することとはどういうことなのか、いろいろな情報の波に翻弄されないために時として意図的に境界線を引く(MLやネットを読まないなど)と行ったことも必要なのではないかと感じてしまいます。

2009/06/03

    香港到着 (WONCA) 前夜

WONCA アジアパシフィックの参加のために(正確には学術集会の前
日に行われるcouncil meetingの参加のために)香港に来てい
ます。羽田20時45分初 香港0時台着という便でさっきホテル
にチェックインしたところです。
council meetingというのは、各国の代表が参加してWONCA 
アジア太平洋地域の運営をどうするかとか、うちの国の家庭医療は
こんな状況ですとか、こんなことで困っていますとかを話し合うと
ころです。
その運営委員会になぜだか入れられてしまい、最も苦手な書記官と
いう仕事(多分一番大変な仕事なので、一番若い自分に、というこ
とでしょう)を仰せつかっていますから、議事録、会議資料の準備
など大変でした(もちろん英語)。今日午後3時間半の会議です。
会期中はスムーズな議事進行への配慮.終了後は議事録の作成が
まっています。ほんとに苦手なんだけど、やれという天の声なので
すから、これも勉強と思ってできるだけ積極的に取り組んでいます
(議題を2つ出しています。)

羽田の国際線ターミナルは初めて利用したのですが、こんなところ
があったのね、という感じです。2010年にはきれいになるよう
です。香港は往復で35000円程度で、時差も1時間なので
ちょっとした国内旅行という感じです。

新型インフルエンザのことですが、一応香港の空港では簡単な検疫
(症状と経由地の問診票と、あとから連絡が取れるように滞在先と
飛行機の座席番号を書いたものの提出。体温測定はなし)がありま
した。時間はほとんどかかりませんでした。

ホテルでは簡単に体温だけ測られました。



写真は検疫用に書いた問診票。

雷雨に迎えられて到着です。1週間雨とのことです。orz

学術集会が始まる明日には私にとってのメインイベントはほとんど
終了しています。

2009/05/26

    WONCA APR 2009 Hong Kongは予定通り実施です。6月4−7日(木ー日)

今週末のプライマリケア関連3学会の合同学術集会は延期となりましたが、来週末の香港でのWONCA Asia Pacific(世界家庭医機構)の学術集会は予定通り開催されます。
http://www.wonca2009.org/
6/4−7(木ー日)

大会長より新型インフルエンザは心配ないから安心していらしてください。というメッセージが出されています。

We Are Ready

Some of you may be concerned with the new worldwide H1N1 epidemic and are reluctant to leave the safety of your homes, but we wish to reassure you that Hong Kong is stable and safe. We have had two imported cases but there is no community outbreak. The Government has done a sterling job in containing the infection and earned praises from the community as well as those international travelers who were caught up in the quarantine. Dr. York Chow, Secretary for Food and Health Bureau of the Hong Kong Government and the official responsible for directing the fight against this new disease, will be giving the keynote speech in our conference. There is no restriction on travelers entering Hong Kong regardless of where you come from as long as you do not have a fever or symptoms of flu. So be rest assured. Furthermore, not a single international conference in the next three months has been cancelled because of the new disease, so Hong Kong is business as usual. At the conference, we will take the necessary precautions to safeguard your health and prevent cross infection and we are confident that as health professionals, we will look after each other’s health.


香港は羽田からも便がでていて、便によっては往復3万円台で国内旅行とそれほど変わりません。医師の皆様はそれなりの金額ですが、また学生、レジデントの皆さんはUS$50、US$100と格安です。

香港、スーパーエコ割

registration

患者中心の医療の著者であるDr. Moira Stewart、日本からは岐阜大学医学部 医学教育開発研究センター(MEDICAL EDUCATION DEVELOPMENT CENTER, GIFU UNIVERSITY)から鈴木 康之先生などが基調講演のspeakerとして予定されています。

Speakers

今週末の学会が延期になり、ネットワーキングや刺激のチャンスを逃してしまった皆さん、新型インフルエンザ対策でちょっと煮詰まってきた皆さん、まだ参加間に合います。

ただし、麻しん同様 新型インフルエンザ輸出国として悪評がでないように体調管理を。

私は書記官として議事次第や資料の準備に追われています。


Moira Stewart, Judith Belle Brown, W. Wayne Weston, Mcwhinney, McWilliam
Radcliffe Medical Press ( 2003-07 )
ISBN: 9781857759815

2009/01/22

    The World Health Report 2008 Primary Health Care – Now More Than Ever

Think Globally, Act locally.

使い古された言葉だが、WONCAでお仕事をさせていただくようになって,ほんの少しだけ、"think globally"の方の視点が自然に身に付いてきたような気がしています。

PHC:Primary Health Careの重要性を訴えたアルマアタ宣言から30年の昨年、WHOから毎年出されるWHO World Health Reportのテーマは、

Primary Health Care – Now More Than Ever

PHCへの回帰です。

当時は重要だ、という信念が先行したところはありましたが、この10年ぐらいでエビデンスはたまりにたまっています。

Press Releaseから、summary、重要な表の抜粋、果ては、ビデオ、audio、poscastまで全部用意されています。

The World Health Report 2008 Primary Health Care – Now More Than Ever


詳細はなんとかうちのレジデントたちには話せれば、と思っていますが、ここでは、その中から引用を一つだけ。(訳 岡田)


Five common shortcomings of health-care delivery
ヘルスケア提供の際にありがちは5つの欠陥

Inverse care. (ケアの逆転):最も資源を持つ(しばしば医療の必要性がより少ない人)がケアの大半を消費する。最も資源や手段の少ない人、抱える健康問題の大きい人が最もケアを利用しない/できない。

Impoverishing care. (貧困にさせるケア):最も社会的に守られていない/ヘルスケアに対する保険のない人ほど、現金支払い/自腹を求められる。必要なケアにかかるために、破産的な金額の費用が必要。年間で1億の人が、ヘルスケアに対する支払いのために、貧困になる。

Fragmented and fragmenting care. (断片化したケア、断片化させるケア):医療従事者の過度の専門分化と、疾患対策のプログラムの焦点の狭さは、個人や家族に対する、包括的なアプローチをないがしろにし、継続的なケアの重要性を認識しない。貧しい人々や、少数派のためのケアはしばしば高度に断片化しており、かつ資源が少ない。一方でそこに手を加えて発展させることは往々にして、更なる断片化を促進する。

Unsafe care. (安全でないケア):説明はしません

Misdirected care. (間違った方向性のケア):医療資源(人、金、もの、時間、熱意)の分配はしばしば、コストのかかる高度な治療へ集中し、一次予防や健康促進が最大70%にも及ぶ疾患のインパクトを軽減する、という事実を無視してしまっている。


150ページほどの報告書にざっと目を通しましたが、この最近のWHOおよび、WHO/WPRO(西太平洋地区)の仕事(報告書)の流れをきちんとふまえた延長線上にあります。

参考

昨秋のWONCAとWHOのjoint repot

New joint WHO/Wonca report 'Integrating mental health into primary care - a global perspective'

2007年11月 WHO/WPROによる、

People at the Centre of Care Initiative

Relevant publications and documentshttp

こういったことが日々の診療に関係なさそうで、すごくあるんです。。。

2008/10/07

    New joint WHO/Wonca report 'Integrating mental health into primary care - a global perspective'

WONCA APR 2008 Melbourneより無事戻りました.
たくさんの刺激を貰い,アイデアを持って帰ってきました.
アジア太平洋地域は時差が少ないのでずいぶん楽です.
今日はまたいつもの日常にすぐに戻りましたが.アタらしく短期研修にくるひとが3人いて,スタッフのS医師が中心に研修の目標設定.

WONCAについては1参加者としてではなく,APR(Asia Pacific Region)の運営側の立場で参加した視点で少しずつ報告をしていきたいと思います.

まず最初.
学術集会の初日.開会式でWONCAのpresident Dr. van Weelよりプレゼンテーション.
メルボルンは1972年にWONCAが結成された地.そして前任のWONCA CEO Dr.Wes Fabbのhomeのために,しばらく事務局があった土地.

今回はWHOとの協働プロジェクトとして,メンタルヘルスをプライマリケアの診療にしっかりと統合していくことを重点に置きたいという話をされました.

Press Releaseはこちら

抜粋.

Integrate mental health better into primary care

Friday, 3 October 2008, 3:33 pm
Press Release: World Health Organisation

New report calls for mental health to be better integrated into primary care

Melbourne, 3 October 2008–The World Health Organization (WHO) and the World Organization of Family Doctors (Wonca) today released a joint report that aims to offer help to hundreds of millions of people who are affected by mental disorders but cannot receive the care and treatment they need.

The report "Integrating mental health in primary care - a global perspective" shows through detailed examples of best practices from 12 nations that, even though the current provision of mental health in primary care is still globally insufficient and unsatisfactory, integration can be successfully achieved in a variety of socio-economic contexts.

The report also outlines 10 broad principles to guide countries in their efforts to successfully integrate mental health into primary care. These principles have been derived from an in-depth analysis of the best practices, and range from clear policy directions and resource allocation at national level through to local-level commitment and capacity building on the ground.


関連するWHOのHPがこちら

Mental health Improvements for Nations Development: The WHO MIND Project

そして,レポートそのものがここ.

New joint WHO/Wonca report 'Integrating mental health into primary care - a global perspective'[pdf 4.03Mb]

From Blogger の画像


当日はDe. van Weelにつづいて,今回の報告書のWHOがわの統括のDr. Michelle Funkも檀上にあがりその重要性を話していました.

reportの本文は是非Part1とPart2のイントロまでは目を通してほしいのですが,(残りは各国の工夫や成功事例)エッセンスだけ.

Part1のChapter2
Seven good reasons for integrating mental health into primary care

1. The burden of mental disorders is great
2. Mental and physical health problems are interwoven
3. The treatment gap for mental disorders is enormous
4. Primary care for mental health enhances access
5. Primary care for mental health promotes respect of human rights
6. Primary care for mental health is affordable and cost effective
7. Primary care for mental health generates good health outcomes


我々にとっては当たり前の話ですね.

その中で印象的だったのは,Dr. van Weelがプレゼンで用いた一枚の図.いわゆる我々の世界では前提となるWhiteのdiagram (もしくはGreenのdiagram,ecology of careとも呼ばれています.1000人が1ヶ月の間にどのぐらい病気になるか,専門医にかかるか,入院するか,といった統計.)
のmental healthに限定したバージョンの図.

図は引用できませんが,その元となる文献を.(以下のリンクのどれでもみれます.Dr. van Weel自身の関わった研究であるところがみそ)

http://cat.inist.fr/?aModele=afficheN&cpsidt=18383208
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17256447
http://www.websciences.org/cftemplate/NAPS/archives/indiv.cfm?ID=20064890

Int J Clin Pharmacol Ther. 2007 Jan;45(1):23-9.

Treatment of mental health problems in general practice : a survey of psychotropics prescribed and other treatments provided

VAN RIJSWIJK E. ; BORGHUIS M. ; VAN DE LISDONK E. ; ZITMAN F. ; VAN WEEL C. ;

Objective: Real-life data on the treatment of patients with mental health problems are important as a reference to evaluate care and benchmarking. This study describes the treatment of mental health problems in general practice as diagnosed by general practitioners (GP). Material and methods: Data on mental health problems were available from structured psychiatric interviews in the general population and data on mental health problems diagnosed by general practitioners. Pharmacological and non-pharmacological treatment data were taken from patients records held electronically in general practices. Results: GPs diagnosed a mental health problem in 13.2% of the 1,756 cases examined and 86% of these patients were treated by the GPs themselves. Of the 16% referrals, the majority were referred within primary care. Nearly all patients with a mental health problem received counseling or advice from their GP. Half of the patients with a medication-related disorder, a (single) mood disorder or an (single) anxiety disorder and all patients with a combined anxiety and depressive disorder received a prescription for psychotropic drugs (antidepressants and/or benzodiazepines). Nearly all patients with a sleep disorder received a prescription for benzodiazepine. In patients with psychosocial problems, 20% received benzodiazepines. Conclusion: The majority of mental health problems, when professionally treated, are treated in primary care. More than half the patients are treated with antidepressants and/or benzodiazepines. Most patients also receive supportive counseling or advice.
Revue / Journal Title
International journal of clinical pharmacology and therapeutics ISSN 0946-1965
Source / Source
2007, vol. 45, no1, pp. 23-29 [7 page(s) (article)]


GPの診療で13.6%がメンタルヘルスの問題で,そのうち86%がGPにより治療される.abstractには書いていませんが,その約半分は何らかのカウンセリングのみで,残りがカウンセリング+投薬とのこと.本文に立ち返って読む必要があります.

WHOのreportに戻ります.Dr. Funkも強調し,reportの中でも強調されている,

10 principles for integrating mental health into primary care

1. Policy and plans need to incorporate primary care for mental health.
2. Advocacy is required to shift attitudes and behaviour.
3. Adequate training of primary care workers is required.
4. Primary care tasks must be limited and doable.
5. Specialist mental health professionals and facilities must be available to
support primary care.
6. Patients must have access to essential psychotropic medications in primary care.
7. Integration is a process, not an event.
8. A mental health service coordinator is crucial.
9. Collaboration with other government non-health sectors, nongovernmental
organizations, village and community health workers, and volunteers is required.
10. Financial and human resources are needed.


当たり前のことばかりですが,その中でもさらにDr. Funkは

7. Integration is a process, not an event.


ということを強調していました.
統合は一夜にして生じない.過程である.

いい言葉ですね.

これらの中でも我々のできることはまだまだありそうです.


8. A mental health service coordinator is crucial.


PSW (psychiatric social worker)という職種があることをどのぐらいのプライマリケア医が知っているでしょう.また自分の地域にいるのか,どうやって連絡を取ればいいのか.を把握しているでしょうか.

またこの報告書の付録には

Suggested functions that general practice physician trainees should be able to
perform before graduation

といった研修到達目標

• Serve as the first point of contact with the health care system for all patients, regardless of age or sex.
• Use a patient-centred approach, oriented to the individual, his/her family, and
the community.
• Use a biopsychosocial approach to understand and manage health problems.
• Identify health problems at an early stage where possible.
• Manage both acute and chronic health problems of individual patients.
• Provide care that is coordinated over time and determined by the needs of
the patient.
• Use health care resources efficiently through coordinating care, collaborating
with other primary care workers, and managing interfaces with medical specialists.
• Undertake health promotion with individual patients and communities.
• Provide population-based care, by considering the health needs of the local
population and undertaking interventions to reduce risks or improve quality of
life in specified groups.


英国での紹介のタイミング

Summarized guidelines for referring adults and children to secondary mental
health services, United Kingdom
(コレは引用しません)

等様々なリソースが含まれています.

あとは,こういった世界レベルの取り組みが,減衰することなく,国,行政,病院,医師レベルまで下りてくるか.ということです.うちのプログラムでも早速取り組んでいきたいと思います.

その他のWONCA報告は少しずつ.

2008/09/29

    WONCA APR Melbourne 2008

サポートをするということ

私は10月3日からオーストラリアのメルボルンで開催されるwonca APR(世界家庭学会 アジア太平洋地区)の運営委員(書記官)としての準備で目がまわりそうです.学術会議は3日からですが,COUNCIL MEETING(加盟国の代表が集まって行う国際会議)が2日からで当日入りは危険なのでその準備もかねて前日入りするために明日出発です.

英語でのAGENDA(議事案+資料)作製です.また終了後は英語での議事録の作成が待っています....

リーダーはリーダーについて行く人たちのために働く(尽くす)のが仕事.マネージャーはそのリーダーを支えるのが仕事.会議がうまく運ぶように混乱の種を取り除いて資料や議事案を用意するということで,影のサポーターです.

会期中はたくさんのランチ,ディナー,レセプション,カクテルパーティーなどの社交イベントに招待されており,参加しないわけにも行かず,内向的な性格(信じられない人もいるかもしれませんが)としては気疲れをすごいしそうで心配です.

いわゆる外交.です.
世界中の人の健康のために,(今回はアジア太平洋地区の人のために,ですが)プライマリケアの質と底へのアクセスを向上させることを通じて貢献しようというのがWONCAの使命です.その共通の目的のためにに国境を越えて協力しましょうということです.
そのために運営委員会(EXECUTIVE COMMITTEE)は各国の代表と連携をして協働をスムーズに出来るようサポートをします.

知っていることと出来ることは別物だなとしみじみ感じます.ただ,あるべき姿が分かっているのでゆっくりでも正しい方向に進んでいけるため不安はありません.

サポートというのはGIVINGということです.(見返りを求めずに)
それをするのは大変なことです.

でも見返りは必ずあるものなのです.(金銭的見返りにこだわらなければ)


徹底的に断ったこの仕事,他にやる人もいないため渋々受けたのですが,行ったことのない国に行くチャンスをもらい,苦手な種類の仕事に取り組むチャンスをもらいと,大変ありがたい限りです.

苦手分野に取り組むのは仕事を振られるのが一番ですね.

自分が時間と労力を提供することで,何かがうまくいく,何かが変わる,感謝される,世の中が少しだけ良くなる,何か少しだけ学んで今までの自分より成長する.

逆にそういう見返りはお金で買うことは出来ません.自ら身を挺して何かを提供することでのみ得られる成果なのでしょう.

ボランティア精神旺盛な人,というのはそういった世の中の本当の仕組みをよく知っている人のことを言うのでしょう.

これからまだ書類の準備が一杯残っています...