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2009/06/15

    「求められる家庭医・総合医」明日の臨床研修教育を考える 試写会&合同シンポジウム :平成21年6月20日

セミナーのお知らせばかりで恐縮です.

医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班

の関連シンポジウム

として

「求められる家庭医・総合医」明日の臨床研修教育を考える 試写会&合同シンポジウム(PDF:218KB)

が行われます.
以下上記pdfから抜粋

主催:財団法人がん集学的治療研究財団
共催:厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業がん医療の均てん化に資するがん医療に
携わる専門的な知識および技能を有する医療従事者の育成に関する研究(片井班)
入場無料

シンポジスト(敬称略、50音順。当日変更、追加がある可能性があります)
秋山美紀 慶應義塾大学総合政策学部
加藤章  成宗診療所(杉並区) 院長
小宮山学 亀田ファミリークリニック館山
竹内麻里子 医師のキャリアパスを考える医学生の会
土屋了介 国立がんセンター中央病院院長
浜名哲郎 富士見診療所(鎌倉市) 院長
松岡慶  市立伊東市民病院臨床研修医
村林彰  村林クリニック(目黒区) 院長
吉野雄大 慶應義塾大学医学部学生


私たちのプログラムで研修を終えたばかりの小宮山医師がシンポジストとして参加してくれます.(私は別のWSでいけません)

くだんの研究班(以下の関連エントリー参照)の班長も癌センターですし,今回の主催,共催も癌関連で,家庭医との関連は?と思う人もいるかも知れませんが,

がんはcommon disease(高頻度疾患).家庭医はcommon disaeseの専門家.common disaeseの診療の質を上げるには,それを取り扱うgeneralistの質を上げなくては話にならないので至極当然のこと.沢山の患者さんがいるので沢山の医者のレベルを上げなければいけないわけです.

一般の方へ,あなたの家庭医はいつ,どのようながんの検診を受けるべきかについて具体的な推奨をしてくれるでしょうか?

generalistの方へ,自分の患者さんに,いつ,どのようながんの検診を受けるべきかについて「個別の」具体的な推奨をするための指針を知っていますか?


関連エントリー
「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」のホームページ
2008/10/7

医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究 総括研究報告書(骨子)の公開  2009/3/25

ところでこのシンポジウムで取り上げられる西川美和氏監督のディア・ドクターという映画.注目しています.
西川美和氏には前から注目していた(まだ一つも作品は見れていないのですが,「彼女の「ゆれる」はかなり評価が高かったこと,笑福亭鶴瓶と瑛太という配役.アカデミー賞の登竜門である第33回モントリオール世界映画祭の「ワールド・コンペティション部門」に選出.:関連記事)からです.

以下はネタばれ注意なので承知の人だけ見て欲しいのですが,医療,医師患者関係の基礎となるのはサイエンスだけではなく,信じる,信じられる(患者から医師の一方向だけではなく,双方向性に)ということが重要であることを考えさせられる映画のようです.基本的に医療,医師などを取り扱った映画,ドラマ,バラエティーは見ないのですが,(おくりびともまだです)これはそのうち見ることになりそうです.

ディア・ドクター公式サイト

ディア・ドクター:速映画批評(ネタばれ注意)

2009/03/25

    医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究 総括研究報告書(骨子)の公開

本日班会議最終回にて早速最終報告書の骨子が公開されています。

多くの皆さんが頭を寄せ集めて時間を割いて作ったものを一言でまとめてしまうことは大変失礼とは思うのですが、

非常によくまとまっていることと、基本的には海外(特に米国)の制度に倣って卒後医学教育認定機構(仮称)を設立しましょう(名称も米国のACGMEに倣ってJCGME)ということです。意義は大きいと思います。画餅にならないようにこれからそれぞれが汗を流さなければなりません。

関係者の方はぜひ全文を読んでいただきたいと思います。

医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究
総括研究報告書(骨子)の公開にあたって



総括研究報告書の骨子
医療における安心・希望をもたらす
専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)の方向性
〜卒後医学教育認定機構(仮称)設立の要望〜
平成21年3月25日

以下、一部抜粋します



我が国において、現時点で家庭医療、総合診療に従事している医師の大多数は、内科、外科を含めて各診療科の診療に専ら従事し、該当する診療領域において(専門医研修を含め)研修教育を受けた病院勤務医師が、第2のキャリアパスとして診療所において開業したものである。
専門医としてのプライマリケア領域を担うべき体系的な研修プログラムの課程を修めた家庭医は現状ではごくわずかしか存在しない。今後も各診療科の専門領域からの総合診療領域への移行は続くと考えられる。
このとき問題となるのは、「専門医からの移行による総合診療医ではプライマリケアが担うべき地域医療のニーズに対応できず、そのため地域における偏在の問題を解消できない、へき地医療体制を確保できないということと、その総合診療医としての質の担保ができないということである。」
(鍵括弧 太字強調 岡田による)

中略)


家庭医・総合医は幅広い疾患の管理だけでなく、生活、家庭環境などの背景を踏まえた上で、予防や健康増進までを含めた医療を展開することから、地域に根ざした医師として、各々の地域の特性に応じた連携や、医療の提供体制の中に位置づける必要がある。
こうした医師を養成する、あるいはこれからの医療提供体制に位置づけるという視点で考えると、その養成プロセスや行う医療の具体像をより明確にすることができる。つまり、疾患の特性や公衆衛生、社会的な背景基盤などの地域性に根ざした医療、つまり「地域が育てる医師」による医療ということになる。

家庭医・総合医の具体像を得ることで、その研修には地域におけるプライマリケアを行う診療所、より高次の専門医療を担う病院での研修、さらには救急や周産期管理、小児、メンタルヘルス領域、在宅医療など、地域住民の健康増進と安心、公衆衛生の向上にとって必要な要素が含まれることになる。逆に言えば、こうした前提を踏まえることなく、
「各専門診療領域や医療機能毎の横断的なローテーションを足し合わせることによるのでは、家庭医・総合医として必要な資質を得ることができないことを認識する必要がある。」

(鍵括弧 太字強調 岡田による)

家庭医・総合医の具体像と医療システムにおけるプライマリケアの担うべき役割を明確にした上で制度として位置づける必要がある。つまり家庭医・総合医は専門性を有する医師として、充実した教育体制と厳格な専門
医認定制度のもとに認証されるものでなければならない。
家庭医・総合医の認証制度は、地域医療体制や教育指導体制と関連づけられるものである必要がある。具体的には、認証制度を運営するための人員や組織、費用が、地域医療の提供体制や教育研修の実施計画の中に位置づけられ、互いに連携するものでなければならない。

「プライマリケアを担う家庭医・総合医への受療について、地域住民の継続的なケアを行うことが可能になるよう、何らかのアクセス制御を行うような連携と各診療領域を担う専門医への誘導の仕組みの整備が必要である。」
(鍵括弧 太字強調 岡田による)


「家庭医・総合医がプライマリケアを担う専門医としての役割を医療提供体制の中に明確に位置づけられ、継続的な健康管理と一般的な救急時の対応などを担うことによって、患者にとって最適な医療を行うことができるとともに、救急、周産期、小児、精神神経を担う専門医の負担が軽減され、それぞれの専門医はよりその専門性を発揮できるようになる。」

(鍵括弧 太字強調 岡田による)

さらにグループ診療を含めた地域の医療体制に応じた連携の取り組みが促進されることが期待される。
この提言はこれからの医療の方向性についての私たちの考えを示している。


24ページほどですが、非常によくまとまっていますし、勇気づけられる文章だと思います。

3/26/2009 追記
既に通読5回ほどやりましたが、本当によくまとまっています。


骨子は(私なりの解釈)
家庭医・総合医という名の専門家の養成。その分野の社会的位置づけ(定義)の明確化
各分野の医師の予測需要、ニーズ分析に基づいたある程度の分野ごとの定数のコントロール
この2つを専門的に行う第三者機関を設立し利害関係に縛られず実行する。(5年間のロードマップまで具体的に提案されています)

12ページに海外諸国との比較表が載っていて、いかにも「完全自由なのは日本だけですよ〜」的なプレッシャーを感じます。

私が家庭医になって10年足らずですが、当時の日本の状況からすると隔世の感があります。
両方とも医師会がずっと反対してきたことですから、提言にすぎないこの報告書から実行に移すまでがまた大きな一仕事と思います。

まだまだやらなければならないことはいっぱいありますね。

2008/10/07

    「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」のホームページ

ロハスメディカル ブログ より

「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」のホームページ

まだ整備はこれからの部分が多いが、このような形で議論がオープンになるのはすばらしいことと思う。
すべての利害関係者を巻き込んで。
できれば患者さん、一般の人の声が聞きたいです。

研究班 班長は国立がんセンター中央病院 院長 土屋 了介先生。 例の家庭医本のアイデアを出した張本人である。

ほんの後書きに、土屋先生の言葉として(逐語ではないが)、「癌センターの専門医にかかるのは一生に1回あるかないか。ほとんどの人がしょっちゅうかかる家庭医の本の方がいいのでは?」という意見で、企画ができたとのこと。

専門医の立場でgeneralistの必要性を訴えてくださる人がいるのは本当にありがたい。自分たちの仕事をやりやすくするために、generalistが優秀でなければならないことをよく理解しているからなのだと思う。

ロハスメディカルの記事で、

知って得する診療科のナゾ【9月30日UP】
2008年9月号掲載(512KB)


にも、わかりやすい形で現在の標榜科の問題と、家庭医の必要性がかかれています。

2008/08/18

    楢戸健次郎先生のこと・家庭医は腰を据えてじっくりと.

「ただ日本のようにこれがいいとかあれがいいといってすぐに出来るわけではないので,うちの団体では,はじめの3年間は,極端なことをいうと活動するなと言われているのですね.はじめは言葉を覚え,友達を作り,問題がどこにあるかをしっかり見なさいと.今までの経験だけでものを言ったら間違える,ということで,新しいところにったら3年間は黙っていなさいと.そして次の3年間で,その問題の1つでもいいから,地域の方々と一緒にそこにある資源を使って解決する努力をしなさいと.さらに次の3年間で,その地域の方々にバトンタッチしなさい,という団体なのですね.
(中略)
私が帰ってきてしまったら,またなくなってしまったというのでは何もならないので,向こうの方が出来るものを少しずつ提案していくような形でやっていきたいと考えています.」


『月刊地域医学』 というコアな雑誌(地域医療振興協会)より.(かなりおもしろいので毎月楽しみに読んでいます.)

Vol.22.No.8 2008
Interview「日本の家庭医の先達が,今,ネパールで新たに挑む」

として,楢戸健次郎先生のインタビューから.自分が一番印象を受けた下り.

今はあまり知る人もないのかもしれないが,楢戸健次郎先生は日本の家庭医としては先駆け.

以下はインタビューからの要約.

海外医療協力を元々やりたくて,そのためには全科ができないとだめだろうと考えていたとのこと.
学生時代に,(恐らく1960年代後半)米国で家庭医療が専門として立ち上がるのを目の当たりにして,その当時に作られようとしていた米国の家庭医療の研修プログラムと同じような物を日本で自分で構築.卒後2年は内科研修の合間に外科のopeに参加,週1日の休日に産婦人科の研修.3年目からは北海道で小児科1年,外科,整形外科系の診療所で2年.また東京に戻って産婦人科,皮膚科,眼科,耳鼻科等を含め,計7年半で,自分なりに家庭医の初期研修にピリオドをつけたと.

その後北海道新冠の国保病院で内科小児科産婦人科を担当,健康管理課の課長補佐を兼任,老人病棟の開設,学校医,産業医の勉強をしながら4年半.

それからたまたま無医村になった地域の美流渡診療所(2500人)でグループ診療を開始.(卒後10年ちょっとと推測)
ここへ行ったのは明確に3つの目的があったとのことです.
1.人口の出入りのない地域で医療の実践をやりたかった(家庭医はdefined populationを責任を持ってケアするという意味で,救急医と区別される)
2.海外で一般的になっていたグループ診療を試したかった.
3.家庭医は日本でも受け入れられるか試したかった

長い間美流渡で診療をされた後(20年以上),後進にに現場を引き継いでようやく,学生時代からの念願の海外医療協力のために,ネパールへ.

---------------
そのほか家庭医療学会の前身である家庭医療学研究会の発起人だったり,数年だけ続いた家庭医療という幻の雑誌の立ち上げ役だったりといううろ覚えの僕の記憶.

現在とは隔世の感のある当時に,学生時代に家庭医を明確に目指し,その研修を自ら組み,グループ診療を意図的に開始,など先駆的なその功績はその価値は測りしれません.

個人的には一度だけ医学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナーでお話を聞いたことがあるだけですが,非常に穏やかな方だという印象を受けました.

楢戸健次郎ワーカー報告会実施中

楢戸先生については

地域に根ざした家庭医を見学して

地域医療に取り組む

〔座談会〕家庭医になりたい君へ(このメンバーの全員がHANDS関係者となってしまいました)

で少し知ることが出来ます.(以前医療ルネサンスの家庭医の特集で取り上げられていましたが,ネットでは見つけられませんでした)

そのような背景を踏まえて,

はじめの3年間は,極端なことをいうと活動するなと言われているのですね.はじめは言葉を覚え,友達を作り,問題がどこにあるかをしっかり見なさいと.今までの経験だけでものを言ったら間違える,ということで,新しいところにったら3年間は黙っていなさいと.そして次の3年間で,その問題の1つでもいいから,地域の方々と一緒にそこにある資源を使って解決する努力をしなさいと.さらに次の3年間で,その地域の方々にバトンタッチしなさい


これは何も外国に限ったことではない.日本中にたくさんの文化圏があり,様々なお国言葉がある.

家庭医の研修制度が進み,最短で初期2年+後期3年で,一通り家庭医の基礎は作れるようになったが,それから家庭医として本当の意味で地域で何かをするには9年かかるということ.そのぐらいの腰の据え方で.

地域に出た若き家庭医たちよ.まだ皆さんはその地域の「言葉を覚え,友達を作り,問題がどこにあるかをしっかり見る」段階でしかない.「今までの経験だけでものを言ったら間違える」から.

家庭医は腰を据えてじっくりと.

冒頭のインタビューは数ヶ月後にそのHPで読むことが出来るようになると思います.

2008/06/23

    日本初!かかりつけ医を探すガイド 日本の家庭医1435人

表題のタイトルで,AERAの増刊号が本日付で発刊となった.

本誌でも何度か連載をされた特集であるが,そこから大幅に情報を追加した形である.

日本初!かかりつけ医を探すガイド  日本の家庭医1435人
定価:680円(税込) 発売日:2008年6月23日 A4変判 228ページ アエラ臨時増刊(2008/07/05)


嬉しいことに,名前を載せて頂いた.他者の評価は関係ないといいつつも小市民の私は,家庭医を名乗る立場として,やはり推薦がもらえたことはうれしい(またほっとした)

だいぶ前に,診療科目などの聞き取り調査があったので,推薦があったことは知っていた(推薦がないと載せてもらえない)が,誰からの推薦かは発刊まで教えてもらえなかった.なので,ずっと,誰の推薦なのか想像を巡らせていた.

今日妻に慌てて買ってきてもらって,本誌を手に,ようやく,本の趣旨などがわかった.
誰が推薦をしたか:地域中核病院の院長や,診療科長,大学の教授など
私を推薦してくれた人,本院の主要な立場にある人3名.

ずっと誰が想像してくれたのかを考えていた都合,正直少しがっかりした.誰が紹介をするのかも知らなかったので,同業者(家庭医)が紹介してくれるのだと思っていたから.まったく事前のやりとりはなかったにせよ,見る人によってはやらせや,内輪と取られても仕方ないから.

しかし本当の意味で,我々の仕事の中身を知った上で推薦できるのは,
1)同業の家庭医ではない.グループ診療で同じ診療所やグループでやらない限りお互いの診療録を見ることすらないのだから.多くの家庭医を友人,知り合いに持ち,学会や,ワークショップで共に仕事をするが,医師としての彼らの仕事ぶりや診療録を見たことはない.普段のやりとりから,人柄とコミュニケーション能力はわかるので,そこから,「患者さんと接するときはこうなのかな」と想像をするしかない.診療の医学的なレベル,質についてはわからないとしかいえない.
診察室の中と外で人が変わる医師もいますから ...

2)患者さんが家庭医の質を見極められるか. yesでありno. 家庭医は自ら名乗るのではなく,患者さんに「私の家庭医」と呼んでもらって初めて家庭医という言葉がある.医療は患者さんに評価されなければという意味ではyes.しかし,医療の質はそれなりでも,人当たりのいい医師が非常に受けるということはある.また,その地域での医師と住民の需給バランスで医師の相対的に少ないところは受診者数が多い.だから,受診者数のランキングで質の指標とは出来ない.また「この医師はすばらしい」と例えば5段階評価の最高ランクをつけた患者の多い医院ということでも,母集団が多ければそれだけ,多くの評価は得られる可能性があるのでダメ.あり得るとすれば,受診者数を分母として,最高ランクをつける患者の割合.これなら,一つの患者の視点からの家庭医の質として成立し得る.
しかし,医学的に細かいことのわからない一般の方々に医療レベルの細かい違いは見分けられない.

(これは一般的にどの分野でも,中にいる人たちがこだわっているほどの,また気づけるほどの小さな差異は外部のものにはたいしたことはない,また見えないことが多い,といわれている.車の整備の腕の違いがわかる人がどのぐらいいるだろう)

3)ということで,家庭医の医学的な質について最もよく見ることの出来る立場にある人たちが,紹介状のやりとりをする,中核病院や臓器疾患専門医なのだ.紹介状の記載内容やそのタイミングそして,家庭医が診ていた患者さんを引き受けて診療する場合は,直接患者さんからのその家庭医の評価も得ることがあり,一般の人からの評価も,医学的な評価も下す事が出来る.

そういう意味で,本当の意味で医学的内容も患者さんの評判も含めて評価できるのはその家庭医の診療圏で頻繁にやりとりをしている中核病院の医師,当然知り合い,ということになる.内輪といわれても,そうするしかないかもしれないのである.

ただこのやり方には,大きな問題が残る.中核病院が近くにない家庭医,また,本当に力のある家庭医で,大きな病気は全て未然に防いでしまい,完全にその家庭医のところで医療が完結してしまう場合.中核病院との患者や紹介のやりとりは起きないので,そこでどのような医療が行われているかについては,良くも悪くも見えないのである.(推薦に値するかどうかを判断する情報すら得られない)

「何でも全て診る」を地で行く,本当のスーパー家庭医であればあるほど,この方法では推薦されないというジレンマが起きる.

また,家庭医療もれっきとした専門分野,循環器の医師が泌尿器の医師の質を評価できるか,というのと同じ問題は起こる.これも一部yes一部noであろう.

ということで,最初は無理と書いたが,最近はやりの「有名料理人が通うレストラン」といった本のように,「家庭医自身が通う家庭医」というのが一番正しい評価になるのではないかと思う.勿論距離の問題があり,「実際にかかっている」事を前提にすると,首都圏の医師が上位に挙がることになるのだが.一方で,「家庭医自身が通いたい家庭医」とすると,1)と同じ事になり,必ずしも医療の質を見ていない事になる.

そうすると,地理的な問題がないとしたら自分が家庭医としてかかりたいのは.....と考えたときに,いろいろな人の顔が思い浮かぶ.でもそれは前述の1)に過ぎない.普段の医師患者関係ではないつきあいからの想像でしかない.


やっぱりかかってみなければわからない.

これが家庭医の善し悪しを見分ける本当の方法.ガイドはガイドでしかない.家庭医の質の担保と主張のため,チェックリストや質の判断基準を作る必要はある(絶対に).しかし,それは必要条件であり,十分条件ではない.

なんだか月並みな結論になってしまった.



ざっと本を眺めると
自分以外に25人のよく知った人たちの名前が並ぶ,そして,推薦者の名前も「さもありなん」.しかし,(その診療は見たことないが,想像するに)もっと,そこに名前が並んでしかるべき何倍もの数の家庭医を知っている.そしてその人達は3)で書いたような「本当のスーパー家庭医」だから名前が挙がらなかっただけなのかもしれない.

医療の質の評価は本当に難しい.

本に関して.
途中で,膝の名医が出てきたり,後半で内視鏡の名医のリストがあったり,最後には医療機関の広告がいっぱいあったりで編集の一貫性や,評価の中立性に非常に頭をかしげたくなる部分も多い.また,「家庭医療」という標榜が出来ない以上,その包括性を表すために多くの標榜を挙げているところもあるのだが,リスト掲載の際に「主要3科」と限定されてしまっているのが残念.

個人的に,大事だと考えて取り組んでいる生活習慣病に大きく関わる内分泌内科の部長の推薦は意外でもあり,大変嬉しかった.そして,院長の推薦文は本当に私の仕事をよく見ている事が伝わる文章.リーダーの鏡.


推薦に恥じないようにまた頑張るしかないなという結論になりました.(またハードルがあがってしまった...)


医療の質の評価は本当に難しい.

2008/03/03

    American Family Physician(Online Journal)がアクセス出来なくなる日

AAFP (American Academy of Family Physicians:米国家庭医学会)
より封書が届いた。以下要約。

会員の利益と価値を高めるために以下の変更が生じるので承知置き下さい。
4月1日をもって雑誌American Family Physician: AFP,およびFamily Practice Managementのonlineアクセスを発行から12ヶ月間は会員限定にします。(log-inが必要とのこと)
12ヶ月経過後はほぼ全文がオンラインでアクセス可能になります


Family Practice Managementに関しては
会員に対しての印刷版は会員限定のページを8ページ余分につけます
また,外来が中心でない会員に対しては,リクエストがない限り印刷版の発送を中止します
----------(ここまで)-------------------

見てすぐの感想は「残念」ですが,落ち着いて考えてみるととっても難しい問題ですね。
良くも悪くも現在の診療で生じる殆どの疑問の解決のソースはAFPです。またレジデントからの質問にも要点を答えたあと「あそこによくまとまっているよ」と紹介する情報源の多くはAFPです。それだけ,家庭医の診療と最もマッチした分野,内容,ニュアンスで書かれており,その妥当性や信頼度,evidence leveleについてはまだまだ改善の余地はあるものの,2004年からは家庭医療関連の雑誌で共同声明としてStrength of Recommendation Taxonomy (SORT) というevidence level, recommendation levelの統一記載方法をまとめ,著者は違えどそれに乗っ取ったまとめを載せるように心がけており,私にとっては簡単に復習をする方法として非常に役に立っています。何より無料でonlineで見られることがその価値の高さだと思っています。
なぜならそれはfidelity(もしくはエビデンス診療ギャップ)の壁を取り去る一つの方法だからです。
米国に渡る前,AAFPには入会も認められませんでした。まだインターネットがそれほど普及していなかった当時,AFPを読むには家庭医の指導医に貸してもらうか,医学図書館に行くしかなかったのです。
実際の会員の何倍もの人が世界中でAFPの文献に(偶然も含めて)遭遇し,それに従って診療を変えてきているはずです。それが12ヶ月のタイムラグを生むことになるとどうなるか。。。
実際12ヶ月遅れてがらっと内容が変わるような医学知識の発展は年に数回あるかないかで,それ自体は問題にならないと思われますが,最新のものがみられないようになって,臨床家の検索対象情報源の選択枝として意識下での優先順位がだんだんと下がっていくことの方が懸念なのです。

一方会員は高いお金を払っています。
active memberは年$330(international memberは$110)
これらの人たちが,年会費の分だけ自分たちにそれなりの見返りを,ということになるとやはり学会としては何らかの対応を迫られます。
雑誌を年20冊発行するには大変な資源が使われています。
今無料のアクセスが出来る状態では会費をさらに上げるということは無理でしょうし,やはり会費の額はお金を払う人とそうでない人とが得られるものの違いに見合ったものでなければならないのでしょうから,その差が小さいからといって,会費を値下げすることは考えにくいでしょうし,今回の決断となったのでしょう。

私も学会の理事をしていたり,自分で会費を取ってHANDS-FDFなる指導医養成コースを運営する立場ですので,

大事なことは出来るだけ多くの人に(fidelity)知ってもらいたい,患者さんに最終的には還元したい

ということと,

お金を払う人の見返り

のconflictのなかで,非常に難しいと感じるしかないのです。

さてこの情報を中心としたチープ革命の時代にどうやって情報の持ち主はそれに価値を持たせ,かつその情報から得られる利益を出来る限り多くの人へ届けるという対立概念を両立させればよいのでしょうか。

今回の決定が裏目に出ないことを祈るばかりです。

ちなみにこの通知はまだAAFPのHPでは見つけられませんでした。いっぱい反対が出るのを心配してでしょうか。

2008/02/19

    hospitalistの費用対効果

Outcomes of Care by Hospitalists, General Internists, and Family Physicians

Peter K. Lindenauer, M.D., Michael B. Rothberg, M.D., M.P.H., Penelope S. Pekow, Ph.D., Christopher Kenwood, B.S., Evan M. Benjamin, M.D., and Andrew D. Auerbach, M.D., M.P.H.

Volume 357:2589-2600 December 20, 2007 Number 25 NEJM


abstractのみですが。
18歳以上の45の病院、76926人の患者 2002/9から2005/6までに入院になった人(入院のcommon problem:肺炎、心不全、胸痛、虚血性脳梗塞、尿路感染症、COPD急性増悪、AMI)
284人のhospitalist、993名の一般内科医、971名の家庭医
後ろ向きコホート

結果
hospitalistと一般内科医の比較
入院期間 0.4日短縮 P<0.001 
コスト削減 $268 P=0.02
有意差なし
院内死亡率 (odds ratio, 0.95; 95% confidence interval [CI], 0.85 to 1.05)
退院後14日再入院率 (odds ratio, 0.98; 95% CI, 0.91 to 1.05)

hospitalistと家庭医の比較
入院期間 0.4日短縮 P<0.001 
有意差なし
費用 $125; P=0.33
院内死亡率(odds ratio, 0.95; 95% CI, 0.83 to 1.07)
退院後14日再入院率(odds ratio, 0.95; 95% CI, 0.87 to 1.04)

コメント

疾患ごとのquality indicatorについては調査されていないが、合併症が出たり、急性期治療の質が悪いと入院日数が長引いたり、再入院したりするだろうから、そこを見ればよいのでは、という考え。
sample calculationがされていないので、有意差のない物についてはβエラーの可能性。(それでも0.95とか0.98なので大差ではない。→臨床的に有意ではない)死亡率は4.1-4.5% 14日再入院率は6-7%
患者の平均70歳
対象患者の性質(併存症など)には最初から少し差はある(鬱や糖尿病は家庭医の患者に多い)
一人の医師あたりの1年あたりの担当入院患者数は家庭医、一般内科医、hospitalistの順に20人、30人、75人
平均入院日数は3日前後(これ以上効率化して短くしようがないような気がする。。)

0.4日程度の入院日数の差(半日程度)はhospitalistなら朝の採血結果やバイタルを見て午前中に患者さんに話しに行って、そこで退院を決めて、オーダーが書けるところが、一般内科医や家庭医は朝回診しない場合もあるので、午前中の外来が終わって昼休みや午後に病院に行って患者さんにあって、データ見て退院を決めて、それから指示。という程度の違いだろうと思う。

入院ごとの$100-$200ドル程度の違いであるが、一つの急性期病院にしてみれば大きな問題。単純に800床、360日として、平均3日として96000件の入院であるから額にすると、20億円超。hospitalistさらに数名余分に雇ったり、他のサービスに回せる。

評価されていないのは患者さんの満足度。この研究の通り医療の質(狭義での)が変わらないとして、入院中に主治医が変わることによる(日本ではよくあることだが)満足度の低下がどのぐらいあるか。1回入院あたり1-2万円余分に自己負担が増えても外来の主治医に入院中に診てもらいたいと考えるか。このあたりの研究が必要。

日本では、家庭医、内科医、hospitalistの定義をするところから始めないといけない。
家庭医はプライマリケア学会専門医か、家庭医療学会認定プログラム修了生
内科医は内科認定医(これでは広すぎるか?)
hospitalistは外来をやらない人
で出来るような気はするが。。。

そもそもhospitalistとしての研修というのはなく、一般内科や家庭医として研修を受けた人がlife styleとしてhospitalistを選ぶので(つまり同じ研修を受けるので)妥当な結果といえば妥当な結果。医師の質と言うより、午前中に退院指示が出せるかどうかだけの違いのような。。そうすると病棟張り付きの研修医がいればそれほど問題にならないが。。。。

2007/10/29

    Dr Guts 院長奮闘物語(本音の家庭医)

google readerにておおくのwebsiteやblogをskim readingしているが、すでに61feedとなってしまった。(つまり61種類のblogやサイトを定期的に見ているということ)
自分と同様家庭医、もしくは家庭医を目指す人たちのblogもかなり増えてきていて、それだけでも15を超える印象。これから一つずつ、紹介していきます。
自分にとってはどこの誰だかすぐ分かるのですが、そのblogで本名を明かしていない限り私がばらすということはしません。

単純に登録順にいきますが、トップバッターは

Dr Guts 院長奮闘物語(本音の家庭医)

名前は出ていませんが、すぐ分かる人は分かる。似顔絵もあるし。ちょっとユニークな経緯でアメリカで家庭医になった人。帰国後は一時的に同じ施設で仕事をしたこともありますが、その後何度か転職して現職。非常に研修医に慕われておりました。もっと一緒に仕事がしたかったのですが....