2008/04/10

    会議の費用

仕事柄「会議法」についてのWSを行なうこともあるのだが、改めて会議にかかるコストについての記述に出会ったので、現在の組織について適応してみる。
後期研修医の時給は大ざっぱに計算して2500円ぐらい。(本当に大ざっぱに)
スタッフ3人+後期研修医12名のうち3分の2が出席として全員で11名
スタッフの時給も同じとして(本当はもう少し高いが)、
1時間の会議で27500円
週1回の実施なので、月4回で11万円
1年間50回で137万5千円
の人件費を会議をすることに費やしている。

1回1時間当たり3万円の価値のある会議をしているか?
何でも効率、コストというせち辛い世の中であるが、利益を無視して本当にやりたいことをやるための人と時間を確保するためには、出来るだけ短時間で最低限必要な利益を生み出すことを考えなければならない。
極論をすると月25日のうちの最初の10日で最低限必要な売り上げ(損益分岐)が出ればあとの15日は本当にやりたい医療や社会貢献、新しいことへの取り組みなどに使える。

演奏家は自分の出したい音程や音色を出すために指の位置はこうで、構えかたはこうで、力のかけ具合がこうで、といったことを考えながらやっているようでは、本当に表現したいこと、伝えたいことにエネルギーが注げないの。だから何も考えなくても自動的に求める音程や音色が出るようになるまで(楽器が体の一部になるまで)基本的な練習を積む。
プロとして正確な音程や温色は大前提であって、勝負はその先ですること。

原始仏教の教徒は永遠の精神(肉体に束縛されない自由な精神)を得るために徹底的に肉体を鍛えた。

のどが痛いといってきた人の問診項目はこれで、診察のポイントはここで、鑑別診断は。。
コレステロールが高いと検診で言われてきた人にまず聞くことは、、、この人のLDLの目標値は、選択するべき薬剤は?
といったことに意識がいっている間は、自分が医療を通じて患者さんに伝えたいことを伝える時間はない。患者さんに「どんな人生を送りたいの?」といった本質的な対話を持つ時間はない。
自分が本当に患者さんと交わしたい対話に十分な時間をとるために、絶対にやっておかなければならないこと(正確な診断、治療、安全の確保、科学的根拠に基づいた診療など)を徹底的に体に覚え込ませる。またシステムとして保障する。
プロとして、正確な診断、治療、安全の確保、科学的根拠に基づいた診療などは大前提であって、勝負はその先ですること。

急がば回れというが、よりレベルの高いこと、本質的なこと、自分のやりたいことに取り組むために、好むと好まざるとに関わらずやらなければならない基本的なこと、必ずクリアしなければならない事、の効率を最大限にする、という逆説的なことになるが、これが物事の本質だと思う。

大きな木ほどその根(見えない部分)は深い、水上は優雅な白鳥も水面下ではたくさん水をかいている、大きな建物ほどその基礎(土台が重要)、すそ野が広いほど山は高い。

奇抜なピカソも青の時代までは基本的なデッサンをしっかりやった。

優秀なプレイヤー(演奏家も、アスリートも)ほど基礎練習、原理原則論に忠実である。

医が算術になって久しい、といわれるが、医が本当に仁術であるためにまず算術でなければならない、というのが現実的な所。上記の理由からこれは全く恥ずるべきことではないと思う。問題なのは、算術の段階で止まってしまっていることなのだ。意図的に算術だけで済ませてしまうのは論外としても、経営的にランニングコストを出すのに精いっぱいの医療機関では、そこを達成するために不必要な検査や処方を出さざるを得ず、医療がゆがむ。仁術をやる余裕がないのだ。そしてそれはそこで働く医師の本意ではないだろう。

効率的に会議を行なう事が目的ではなく、それによって生まれた時間と人で何かをするために効率的に会議を行なう事が必要なのだ。

急がば回れ。

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2008/04/02

    完全な指示を出すための7つの要素

自分の意見はほとんどありませんが。。
人が多くなるにつれて、熱意、やる気、根性、といった精神論だけではうまく行かないことが増えてきている。また、これまで数日かかって教えていたことをもっと短時間でとりあえずの形にする必要性が高まっている。



  1. 仕事の目的(より高いレベルの目標)

  2. 仕事の目標(望ましい結果のイメージ)

  3. 計画の一連の手順

  4. 計画の論理的根拠

  5. 行うべき重要な決定

  6. 反目標(望ましくない結果)

  7. 制約及びその他の注意点


完全な指示を出すための7つの要素 - *ListFreak




最も丁寧なリスト、という事で、すべての指示にこの項目すべての必要はないでしょうが、一度検証してみるのに良いリストといえるでしょう。
反目標(望ましくない結果)というのが重要だそうです(道を説明するのに、XXが見えたら行き過ぎとか、OOをしないように気をつけながらとか)

以下の本にこういったリストがまとめられています。


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    オリエンテーション

新人の時期です。
オリエンテーションは必要なのか。必要だとしたらどのぐらいの期間? なにをやる?

今からでは今年のものの変更には間に合わないかもしれませんが、参考までに他施設での取り組みを

週刊医学界新聞 第2735号 2007年6月11日
2週間で研修医を鍛えあげる方法 市立堺病院(大阪府堺市)


市立堺病院のオリエンテーションは「グループ制でのShadowing」の導入や「仕事人リスト」「失敗リスト」の活用によって年々ブラッシュアップされ,ほぼ完成形に近いという。課題としては,後期研修医のスタート(後期のオリエンテーションは現在1週間)を改善したいとのことだ。



「仕事人リスト」「失敗リスト」という言葉がいいですね。
この理論的裏付けはあとで。

週刊医学界新聞 第2735号 2007年6月11日
病院理念を反映した他職種や地域医療の体験 東葛病院(千葉県流山市)


――他職種体験も重視されています。このねらいは何でしょう。

下 チーム医療の中で医師にはリーダーとしての役割が求められるわけですが,そのためにはコメディカルのパフォーマンスを十分に知る必要があります。医師はいったん伝票を起こせば終わりですが,その伝票を受けて仕事をしているコメディカルがいるから業務が成り立っているわけです。朝出した指示を2時間後に変えれば,指示を受ける側はいかにストレスを感じるか。医師からしてみれば,病状は刻一刻と変化するのだから変更も仕方ないかもしれません。でも,そういった時のちょっとした配慮が大切なのですね。


組織運営の重要なことは組織構成員が最大のパフォーマンスを発揮できるようにすること。ある部門のメンバーが簡単にできる仕事を、そのことを知らないために自分で苦労して、時間かかってやって、そのメンバーは手持ちぶさたにしている。
相手の立場に立った連携ということと同じぐらい人財を効果的に利用する、という意味では、他職種の人たちがどのような仕事ができるかを把握することは重要です。うちのオリエンテーションでも数年前から導入しています。うちは「他職種体験」まではいかず「見学」ですが。

川島篤志氏、下 正宗氏ともに良く知った間柄。共に初期研修医が対象なので、私の仕事とは少し異なりますが、他施設で同志が頑張っていることを風の便りで知ることで自分がさらに頑張って行ける気がします。

今月から、我々の施設でも家庭医を目指す4名の後期研修医と1名の初期研修医が研修を始めています。最初の1か月はオリエンテーションと称して他の11か月ではやらないさまざまな取り組みをするのですが、今年もまたいくつもの新しいアイデアを試験的に導入する予定です。

一つだけ先述の記事にからめて。レジデントからのアイデアで、入院ではありませんが、受診体験を新人にしてもらいます。受診される方の待つ時間の長さとか(意図的に待たせているわけではありませんが)、患者側の視点から我々の診療がどのように見えているか、などをまだ仲間として完全に打ち解ける前に外部者の視点で我々の診療の改善点も見つけてもらおうという意図も含まれています。どうなることやら。

2008/04/01

    やっぱりこれで良かったのだ??(かも)

最近読むようになったblog
ライフハックス心理学
医学部にはいると決めたときは脳外科医になろうと思っていた.医学生になって自分の適性やそれぞれの専門の仕事内容の本質がみえてきて,脳外科医になりたいのではなく脳の働きに興味があったのだということ,外科医は基本的に「構造」を扱う仕事であり直接,働き「機能」を扱う仕事ではないということ(機能を最適化するために構造が決まるので,構造を扱うことでもちろん機能を扱っていることになるのだが,一方で構造をかえることなく機能に介入することはできる.分子レベルで構造も変わっているのかもしれないが)などから,紆余曲折を経て家庭医と教育の仕事をしているが,結局人間は脳の働きによって人間たり得るので,しかも家庭としての仕事の多くは本人の行動や認知の変容であり,教育もしかりなので今やっていることは脳の働きを良く理解して効率よく効果的にその働きを良い方へかえる手助けをする仕事が割合として多い.そういう意味で医師になると決めたときから仕事の肩書きは別にして本質的なやりたいことを実現している.(この考え方の根底にあるのがキャリアアンカーという考え方.また別の機会に)

そのブログの最近のエントリー

私たちは雑務好きだ
から,


「脳」と「やる気」の関係において、「答えが見えている」ことに、「脳」は「やる気」を費やしたがります。書き進めてきたプログラムや文章は、自分が書き進めてきたので、これをどうすればより良くなるか、一目瞭然です。一目瞭然だと、「やる気」が沸くのです。
真っ白のエディタに、一文字目から入れていく作業は、多大な精神力が必要です。「脳」は、まだ海のものとも山のものともつかない、見通しの立たない仕事には「やる気」を回そうとしません。真っ白い(真っ黒い)画面を前にして、マンガを読んでいたりしたくなります。(ちなみに「マンガを読む」ことは「見通し」が明らかなので「やる気」が回ってくる)。

こうした時に、私たちはつい、「やる気」が出ない理由を誤解するのです。

そうかわかった!
これまでの構造が悪いから、先へ進めないのだ!

これは100%ウソではないのですが、80%以上は、ウソです。次のように考える方が本当です。私たちは、「創造的な仕事」(は、先が読めない)よりも、「雑用」(は、やり方が明らかに見える)を好むのです。


先日アメリカに行った時に、かの一流の研究者と同じような話をしていて「どうして雑用ばかりにかまけてしまうのか?」という話題になったときのことです。私のつまらない疑問を先生は一言で喝破してのけました。

「それは雑用は答えがわかっているからです!」


そこから更に孫引き
夢を実現するには、「緊急ではないもの」を「緊急」にする

雑用というのは、手間はかかるけれどもやり方はわかっている。それに対して重要なタスクはまだ答えが見えず、不安との戦いを強いられる分だけ、どうしても人間の心理はそれを後回しにしてしまうというわけです。

そうであるなら、

「この重要なタスクをしないと1年後の夢が実現しないよ!」

「この一歩を踏み出さないと人生に後悔するよ!」

こんなよい意味でのプレッシャーを自分に与えることで、安易にクリアできる雑用に傾いた針を、逆の方向に傾けないと、いくら遠大なビジョンがあっても、実現のための一歩も踏み出せないのかもしれません。



自分は何でもギリギリまで先延ばしにして最後のラストスパートで仕事をする人間である.(アドレナリンで仕事をする)
色々な仕事術や,タイムマネジメントの本や雑誌などで決まって書かれているのは,重要だけれど締め切りのないことをこつこつやりましょう.ということ.


でも,自分はなかなかそのやり方に移行できないけれど,今までのやり方でもいいような気がしてきた.

まあ,先のブログは本質的にはそういうことは書いていないのだけれど.

自分の見たいこと,聞きたいことを選択的に認知するのが脳というプロセッサーの特徴でもある.
今まで通り,自分らしく,でも少しずつ進化を.

    Dr. Rodnick追加

STFMの雑誌Family Medicine3月号はDr. Rodnickへの追悼号となりました.
追悼記事はここ
http://www.stfm.org/fmhub/fm2008/March/Joseph158.pdf
まだ読めてませんが.

2008/03/24

    Dr. Jonathan (Jack) Rodnick 氏を偲ぶ

何気なく診療の合間に,今日届いたWONCA News(17ページ)を見て,思わず「あっ」と声を上げてしまった.

日本にも関わりの深い米国の家庭医,Jonathan (Jack) Rodnick, MD 氏の訃報である.

昨年の米国独立記念日に65歳の誕生日を迎えた後,今年の1/26にハワイで休暇中になくなったとのことです.
奥様とジョギング中に突然倒れてそのまま,ということでした.

1973年に家庭医療のレジデンシーを修了ということですから,ほぼ第1期生です.(GIMからの転向組と勘違いしていました)

1987-88 STFMのプレジデント
1988-2005まで17年間UCSFのDept Chair
2007にはSTFMの代表としてWONCAに参加

日本との関わりは,
第11 回日本総合診療医学会 2003 年3 月1 日(土)・2 日(日)北海道大学
特別講演「世界のプライマリ・ケア教育の現状と課題」

Kyoto WONCAでも基調講演をされていました.

また,彼が執筆したほんの翻訳に我らの仲間が関わっています.

テイラー家庭医療実践マニュアル
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第2章 よくみられる症候

 2.4 咳嗽
  Jonathan E.Rodnick and James K.Gude/松田 諭訳

もちろんこのほかにもたくさんあると思います.

個人的に彼との関わりは二つ.

彼がSTFMの代表として参加した昨年のWONCA (Singapore)の懇親会でゆっくり話が出来たこと.日本での医療の形を詳しく知るようになって,家庭医の確立されていない日本での健康レベルの高さ(プライマリケアパラドックスと個人的に呼んでいます)を説明するには,健康度と実際の医療従事者と患者の接触時間の総計が関係しているのではないか,ということを話されていました.個人的に賛同できる意見です.一回の診察時間は大変短いですが(実は諸外国とそれほど変わらないのですが)平均受診回数はかなり多いので総計は圧倒的になるのではと思われます.
証明が難しいですがやりがいのある研究の種です.

もう一つは,彼がずっとFamily Medicineという雑誌のInternational Family Medicine Education column. という連載のsection editorをされていて,世界の家庭医の教育に関する話題をずっと取り上げていたのですが,fellowの時に彼とメールのやりとりをして,今日本の家庭医療がダイナミックに動いていて,大変面白いので,ぜひ日本の話題を投稿して,といわれていたのですが,私のひどい筆無精で,約束を果たすことが出来ませんでした.

最新号のこのセクションでは彼に対しての一言が添えられています.

The abstracts published in this issue and the April issue of Family Medicine were the last he wrote before he died. We will miss you, Jack.

We will miss you, Jack という言葉にやり場のない寂しさを感じます.

3/2にサンフランシスコでお別れの会と基金が設立されたようです.
Memorial for Dr. Jack Rodnick: UPDATED LOCATION

きちんとお話ししたのはたった1回でしたが,とっても気さくで,話しやすい方でした.

世界中の家庭医療の動向をずっと気にされ,日本のことも気にかけてくださっていたRodnick先生に恥ずかしくないように,この世で出来ることを頑張っていくしかない.

前から感じていることなんだけれど,人の訃報を聞いてあわてて最後のお別れにと,告別式に出向いていくのは不要とは思わないが,やっぱりそこで,それまでの不義理を精算するように「最後ぐらいは」と行くのではなく,生きている間に,できるだけ,会いに行く,手紙や電話のやりとりをする.そんな方がずっとお互いの良い冥土のみやげになると.

「今できることを精一杯」

忙しくて時間がないからこそ,そういったやりとりの時間を作ることが,相手を尊重していることのメッセージになると信じて,出来る限りのことをするようにしている.

たくさんの人からのお願いや,約束が果たせないまま,不義理を重ねている最近の自分に,何とも言えない不全感がある今日この頃.身の丈にあった仕事と生活をして,一つ一つの仕事,生活に責任を持って確実に句読点を打つ,そんな毎日が送れるといいね,と最近伴侶と話していた矢先の訃報でまたそんな思いを新たにしました.

そういえば彼岸で実家に帰ったとき級友に連絡をとるのをめんどくさいとさぼってしまった.

2008/03/14

    過ぎたるは及ばざるがごとし

どうしても忘れずに書き留めておきたかった言葉

読売新聞3月4日付 編集手帳より

伊達政宗の壁書(家法)より、「仁過ぐれば弱くなる/義過ぐれば固くなる/礼過ぐれば諂(へつらい)となる/智過ぐれば嘘をつく/信過ぐれば損をす」


(引用ここまで)
捕鯨船が動物保護団体に攻撃を受けたことについてこの言葉を引用しての文章

まとめの部分。
だが、おのが「義」を貫くためならば、違法行為を含むあらゆる手段が正当化される——そう信じているとすればテロリストと変わらない◆壁書が教えるように、「仁過ぐれば弱くなる」。彼らもいずれは日本の主張を理解してくれようから、ここは穏便に…と、過剰な「仁」は禁物だろう。
(引用ここまで)


ここまで書きながら、よく似た文章を思い出した。

夏目漱石の「草枕」有名な冒頭部分

山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
 智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい。


この続きを初めて読んだ。

住みにくさが高(こう)じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟(さと)った時、詩が生れて、画(え)が出来る。
 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣(りょうどな)りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
 越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、束(つか)の間(ま)の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降(くだ)る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故(ゆえ)に尊(たっ)とい。


(引用ここまで)
人の世は住みにくいけれど、逃げる所もないので、少しでも住みやすくしよう。その仕事をするのは芸術家である。

こんな流れだったとは。やっぱり芸術だよな。

冒頭分の解釈はこちら

岩波全集版の注解を見ると、次のようにあります。

 智・情・意地は知・情・意の三分方に従うもの。『文芸の哲学的基礎』の中で、〔漱石は〕「精神作用を知、情、意の三に区別します」と述べている。順に intellect, feeling, will に当たる。『文学論』では feeling を「情緒」としているが、井上哲次郎他編『哲学字彙』(明治十四年初版)では「感応」をあて、第三版(明治四十五年)になって「感応、感触、感情」とし、「情緒」は emotion の訳語にあてている。

 なるほど、単に漫然と句を並べているのではなく、「知・情・意」の3つを踏まえているのですね。
それはいいんですが、では、この一節をもっと簡単に言えばどういうことなのか、やはり納得がゆかない。
 そこで、この部分を飛ばして先に行く。「情に棹させば流される」の「棹さす」は、よく「流れに逆らう」と誤解されますが、正しくは「棹を水底につきさして舟を進める」で、つまりここは「感情の方面に(感情にまかせて)突き進む」という意味でしょう。次の「意地を通せば窮屈だ」はそのままで説明不要でしょう。
 とすれば、「智に働けば角が立つ」も、続く部分に対応するはずです。さしずめ「理詰めの方向に突き進んでゆくと、他人と摩擦を起こす」ということではないでしょうか。


(引用ここまで。太字、イタリック岡田による。)

本題に戻るが、何事も「中庸」「ええあんばい」「ええかげん」が一番。これが一番難しい。一昨日の診療はちょっと不足気味だった。

「過不足ない診療」

去年ぐらいまでのteachingの際の口癖。最近言わなくなったなあ。

不足していないか、行き過ぎていないか。確認しながらひとつひとつ。

(ぱっと書けたのですが、引用ばっかり)

2008/03/13

    質的研究 qualitative research のリソース

質的研究は、公衆衛生大学院の修士論文のテーマとして「データ収集開始までに方法論が完成してなくても良いから(とりあえず始めてから修正できる)」というだけの理由で方法論として選択し、泥縄式にそれから勉強したのだが、(本来はresearch questionありきで、それに適した方法論を選ぶ)、自分の人生にとって大きな収穫となった。その詳細は別の機会にしたいが、世の中のデータのほとんどは量的な物ではなく、質的なものであることを考えると、一般に狭義で「サイエンス」と呼ばれる医学、理学、工学、物理学などが伝統的に使用してきた量的研究で解明できる現象は質的な方法で解明できるそれよりもずっと少ないことだけ言及しておく。アインスタインの名言にもある通りです。
Everything that can be counted does not necessarily count; everything that counts cannot necessarily be counted. Albert Einstein.
「数えられるもののすべてに意義があるわけではない。意義のあるものすべてが数えられるわけではない。」

家庭医療、プライマリ・ケア、という領域において質的な研究が重要であることはいうまでもない。

現在いくつかの質的研究を先輩としてサポート中であり(反応が遅くて済みません)、質的研究が初めての人たちに手っ取り早い取っ掛かりをまとめる良い機会となったので世界の皆さんと共有します。

今本当に無料でオンラインで手に入るものの質も、量も豊富になりました。知識は持っているだけでは価値がなく、人と人の間を動いて初めて意味を持つということを噛みしめる必要があります。(このエントリーの後半)

次の2つのリンクは参考 (4/25/2008に追加)
量的研究と質的研究
プライマリケアでの研究ニーズ(分野、領域)

1)
“Qualitative Research in Health Care”
著:CATHERINE POPE, NICHOLAS MAYS (c)BMJ Publishing Group 1996
の現在東京医科大学教授の大滝純司氏らによる翻訳
入門としてはうってつけですウェブで読むのがあわない人は本にもなっています(途中で紹介します)
概略だけ知りたい人は第8回までとりあえず読んでみましょう。

大滝純司(北大医学部附属病院総合診療部):監訳
杉澤廉晴(同):訳
黒川 健(同):訳
瀬畠克之(北大医学部研究科):訳

藤崎和彦(奈良医大衛生学):用語翻訳指導


Appendix(付録)より
――保健医療サービス調査研究部門の廊下での議論

質的研究入門 第1回
ブラックボックスを開く(1)
医学界新聞 第2357号 1999年10月4日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2357dir/n2357_05.htm#00

質的研究入門 第2回
ブラックボックスを開く(2)
医学界新聞 第2359号 1999年10月18日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2359dir/n2359_04.htm#00

質的研究入門 第3回
ブラックボックスを開く(3)
医学界新聞 第2363号 1999年11月15日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2363dir/n2363_03.htm#00


第1章より

質的研究入門 第4回
保健医療サービスにおける質的研究方法とは(1)
医学界新聞 第2365号 1999年11月29日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2365dir/n2365_05.htm#00
用語説明もあり

質的研究入門 第5回
保健医療サービスの研究における質的研究方法とは(2)
医学界新聞 第2371号 2000年1月17日

http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2371dir/n2371_04.htm

質的研究入門 第6回
保健医療サービスの研究における質的研究方法とは(3)
医学界新聞 第2374号 2000年2月7日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2374dir/n2374_03.htm#00


第2章より

質的研究入門 第7回
質的研究と正確さ(1)
医学界新聞 第2378号 2000年3月6日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2378dir/n2378_03.htm#00

質的研究入門 第8回
質的研究と正確さ(2)
医学界新聞 第2380号 2000年3月20日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2380dir/n2380_05.htm#00

第3章より

質的研究入門 第9回
保健医療の現場における観察法(1)
医学界新聞 第2388号 2000年5月22日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2388dir/n2388_04.htm#00

質的研究入門 第10回
保健医療の現場における観察法(2)
医学界新聞 第2390号 2000年6月5日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2390dir/n2390_02.htm#00


第4章より

質的研究入門 第11回
医療の研究における質的面接法(1)
医学界新聞 第2402号 2000年9月4日

http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2402dir/n2402_06.htm


質的研究入門 第12回
医療の研究における質的面接法(2)
医学界新聞 第2406号 2000年10月2日

http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2406dir/n2406_03.htm#00

オリジナル。翻訳当時の第1版から2006年に第3版に改訂されています。

Qualitative Research in Health Care
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翻訳はこちら
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2)Qualitative Research Guideline Project
http://www.qualres.org/index.html
Robert Wood Johnson Foundationによる。
英語であるが、無料でこれ以上まとまっているものはない。さらに深く知りたい人のために出典、リンクも充実
Research In Family Medicine Wiki What is Qualitative Research?からたどりつきました。

3)Doing Qualitative Research (Research Methods for Primary Care)
私が質的研究の勉強に使用した本。質的研究について教える時にもよくここからの引用をします。
編集の1人Benjamin F. Crabtreeは米国プライマリケア領域のトップリサーチャーです。
もう1人のWilliam L. Millerもそうで、特に質的研究の第1人者ではないでしょうか。米国家庭医療においてかなり重要な論文の著者でもあります。修士論文の計画の段階で直接アドバイスをいただきました。

Doing Qualitative Research (Research Methods for Primary Care)
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4)質的研究方法ゼミナール―グラウンデッドセオリーアプローチを学ぶ
自分の論文ではcodingおよびimmersion and crystarizationという方法論をとったので、最も代表的なグラウンデッドセオリーについては理解が不十分でした。昨年の研究ワークショップで質的研究を教えるに当たり、それではいかんということで勉強するのに使用した本です。実際のゼミに参加している感じで段階的に、実際の分析を交えながらやるので非常に理解しやすいです。ただし、グラウンデッドセオリーはあくまでやり方の一つなので、この本だけで質的研究が解るわけではない。

質的研究方法ゼミナール―グラウンデッドセオリーアプローチを学ぶ
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その他参考文献
Catherine Pope, Nick Mays. Education and debate: Qualitative Research: Reaching the parts other methods cannot reach: an introduction to qualitative methods in health and health services research. BMJ 1995;311:42-45 (1 July)
http://www.bmj.com/cgi/content/full/311/6996/42
用語の定義もあり Box2も参考に (質的研究と量的研究の違い)


Editorials. Why do qualitative research? BMJ 1995;311:2 (1 July)

http://www.bmj.com/cgi/content/full/311/6996/2
一部以下に引用
Qualitative research takes an interpretive, naturalistic approach to its subject matter; qualitative researchers study things in their natural settings, attempting to make sense of, or interpret, phenomena in terms of the meanings that people bring to them. Qualitative research begins by accepting that there is a range of different ways of making sense of the world and is concerned with discovering the meanings seen by those who are being researched and with understanding their view of the world rather than that of the researchers.

Britten et al. Qualitative research methods in general practice and primary care. Fam. Pract..1995; 12: 104-114
http://fampra.oxfordjournals.org/cgi/reprint/12/1/104?ijkey=d85e467a11f0c3c452cabed6fab3fdf38739c5d4&keytype2=tf_ipsecsha
(要subscription)

質的研究の代表例は以下のリンクで
http://www.qualres.org/HomeExem-4288.html

以下は効果的な申請書の書きかた。
Penrod J. Getting funded: writing a successful qualitative small-project proposal.Qual Health Res. 2003 Jul;13(6):821-32.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12891716?dopt=AbstractPlus
As a program of research is developed, the small-project grant is a perfect means for initiating discrete projects to build support for larger funding. The author describes the development of a successful small qualitative project proposal on the disabling effects of osteoporosis. She dissects the process of writing a small-project proposal to assist novice or junior researchers in securing funding for small projects that, she hopes, will build toward funding on a larger scale. Major portions of the proposal are included in this article to demonstrate the keys to success in getting small qualitative projects funded.
PMID: 12891716
本文は残念ながら読めません。

一つのエントリーを30分ぐらいで書けないのはインプットが不十分であるからだ、という意見がありますが、そういう意味では、まだまだインプットが足りないようです。(90分近くかかりました。マックが遅いせいもあるのですが)